Mリーグ移籍期間はさらに3月5日まで延長
Mリーグを運営するマレーシアンフットボールMFLは、今季1回目のトランスファーウィンドウ(移籍期間)がFIFAの承認を得て2月19日から3月5日まで延長されたことを公式サイトで発表しています。
MFLのアブドル・ガニ・ハサンCEOは、FIFAから期間延長申請に対する承認の連絡を受け取ったとして、今週2月15日からチーム練習が解禁となったMリーグの各クラブに対して、より充実した戦力補強が可能になるだろうと話しています。
今回の期間延長は新型コロナウィルス対策として国内に施行されている活動制限令MCOおよび条件付き活動制限令CMCO、復興のための活動制限令RMCOによりチーム練習が禁されていたことに加え、州境を超える移動が禁止されたことからマレーシア人選手、外国籍選手を問わず移籍が難しくなっていたことを受けての申請であったとしています。
クダ州FAはクラブ買収企業の要求拒否も企業側はクダ州FA会長を非難
マレーシアでは伝統的に州サッカー協会(州FA)が州政府からの資金援助に依存してプロサッカークラブを運営されてきましたが、アジアサッカー連盟AFCの指導のもと、マレーシアサッカー協会は各クラブに州サッカー協会から独立した民営化を求めています。大半のクラブはこれまで州の公金を主な運営資金源としていることから、クラブの民営化には新たな運営資金源の確保が必要なっています。
そんな中、Mリーグ1部クダ・ダルル・アマンを運営するクダ州サッカー協会(クダ州FA)は州内企業であるフルメンホールディングス社とクラブの買収交渉を行ってきましたが、その交渉が決裂したとマレーシア語紙ハリアンメトロ電子版が報じたの一昨日2月18日のことでした。
この記事ではクダ州首相でもあるムハマド・サヌシ クダ州FA会長が記者会見し、クダ州政府関連企業が保有するクラブ株式の80%を2400万リンギ(およそ6億2700万円)で購入する条件としてフルメンホールディングス社の要求する内容にクダ州政府およびクダ州FAは応じることができないとして、交渉を打ち切ると述べています。
「フルメンホールディングス社は農業用地に指定されている州保有の土地の工業用地指定への変更を求めた他、提案された株式購入資金支払い方法についても、州民に損害を及ぼす恐れがあり承服できない。またクダ州が保有する本拠地のダルル・アマンスタジアムの所有権も求めており、州の資産を求める要求も交渉打ち切りの理由である。」と話すムハマド・サヌシ州FA会長は、今後も買収希望企業があれば交渉の席に着くつもりであると話しています。
******
しかしこのムハマド・サヌシ州FA会長の発言が報じられると、今度は英字紙ニューストレイトタイムズ電子版がフルメンホールディングス社の困惑を報じました。
フルメンホールディングス社のアフマド・シャイズアン会長はムハマド・サヌシ州FA会長が交渉打ち切りの理由としてあげた内容に驚き、さらに理解できないとして、これまでの交渉の経緯をニューストレイトタイムズに明らかにしています。
自分は政治家でもなく、政治家に対して否定的な意見を持っているわけではない」と前置きした上でシャイズアン会長は「ムハマド・サヌシ州FA会長は、当社がクダ・ダルル・アマンの選手や監督、コートおよびスタッフの昨年12月から今年2月までの給料を負担することを拒否したと非難しているが、我々がクラブ株式の保有を求めているのは今季Mリーグが始まる今年の3月からであり、その契約すら完了していない現時点でこのような非難を受ける筋合いはない。3月以降はより透明性が高い会計監査を行なった上で、クラブの運営費用を全て負担する用意もあることは既に先方に伝えてある。」
「また、本拠地のダルル・アマンスタジアムについては、買収後1年目のキャッシュフローを改善するため、今年1年間のみスタジアムの使用料免除を要求しただけである。この他、クラブが現在、練習場として使用しているスカ・ムナンティスタジアムの運営権を求めたが、この施設は整備が不十分で寮、食堂、事務室などは見窄らしい状況のまま放置されている。ここを修繕することにより、クラブは新たな収入を生み出す可能性があることから、この施設の運営権が与えられれば、その修繕費用として340万リンギ(およそ8890万円)を投資する準備がある。」と説明した上で、今回の混乱についてはクダ州のサッカーファンに対して謝罪しています。
*****
この論争の背景にはムハマド・サヌシ州首相兼州FA会長の思惑が見え隠れします。クダ州政府は昨年起こった連邦政府内での政変の影響により、マハティール前首相の息子ムクリズ・マハティール州首相が辞任し、その後任として昨年5月に就任したのがムハマド・サヌシ州首相です。
クダ州議会第一党でイスラム原理主義を標榜する汎マレーシア・イスラム党PASに所属するムハマド・サヌシ州首相は、昨年末には州の公用地に違法に建っているヒンドゥー寺院の取り壊すと発言し、発言撤回を求めるインド人系政党のマレーシア・インド人会議(MIC)や華人系の民主行動党(DAP)議員に対し、トディ(ヤシから取れる液体を発酵させて作る醸造酒でインド系に人気がある)を飲み過ぎていると人種差別とも取れる発言を行なったり、今年1月にはやはりヒンドゥー教の重要な祭日であるタイプーサムをケダ州政府は今年は祝日扱いとしないと発表し、ヒンドゥー教徒や野党議員らから「非マレー系マレーシア人の権利を奪うもの」、「宗教弾圧」などといった批判の声を上げられるなど、これまでにも様々な「問題発言」を行なっている「前科」を持つ政治家です。
ムクリズ前州首相退任直後から続いたクダ・ダルル・アマン(当時はクダFA)の選手や監督、コーチへの給料未払い問題も、前任者(前政権)への当てつけのように放置し続けるなどの行為も行なっており、このような政治家がプロクラブに影響を及ぼせないようにするためにも、早く州FAから独立して欲しいですが、上の記事を読む限りでは、難癖をつけて手放すことを今後も拒みそうです…。
トレンガヌとトレンガヌIIはそれぞれミニトーナメント出場
Mリーグ1部トレンガヌとそのセカンドチームであるMリーグ2部トレンガヌIIは3月5日に迫った今季開幕を前に、それぞれミニトーナメントへ出場します。トレンガヌは同じ1部のJDTが本拠地のあるジョホール州で主催する大会に出場し、JDTや同1部のマラッカ・ユナイテッド、そしてJDTのセカンドチームで同2部のJDT IIと対戦します。(この大会には当初、クチンシティも出場の予定と以前のニュースで取り上げましたが、変更になったようです。)また、トレンガヌIIはスランゴール州シャーアラムで大会を主催する1部UITMそしてもう1チームと対戦します。(こちらも当初は1部ペラが参加とされていましたが、UITMの公式Facebookではペラの表記がなくなっています。)
トレンガヌIIのバドルル・アフザン監督は既にUITMでミニキャンプを行なっており、トーナメントでは勝利よりも選手のパフォーマンスをチェックすることを優先すると話しています。
「このトーナメント以降はリーグ開幕まで練習試合を組めない可能性もあるので、選手たちにはこのトーナメントで実力を見せてほしいと伝えてある。今季は昨季からのメンバーが大半を占めるものの、中心選手として期待している渡邉将基選手など新戦力もおり、既存の選手たちとうまく融合させたい。」と話すバドルル監督は今季は5位以内を目指すと話しています。
******
昨季2020年シーズンはトレンガヌが1部で3位、トレンガヌIIは2部で2位といずれも好成績を収めています。ただし、両チームともそれぞれ主将を務めたリー・タック(1部スリ・パハンへ移籍)、鈴木ブルーノ(2部PDRMへ移籍)両選手が退団するなど、外国籍選手の顔ぶれは大きく変わっており、この入れ替えが果たして吉と出るのか凶と出るのかが気になるところではあります。
マラッカ・ユナイテッドは外国籍選手枠が全て埋まる
Mリーグ1部のマラッカ・ユナイテッドは公式Facebook上でモンテネグロ出身のFWステファン・ニコリッチの加入を発表しています。このニコリッチ選手の獲得で、マラッカ・ユナイテッドはMリーグ1部のクラブに与えられている5名の外国籍選手枠全てが埋まりました。
自国のU19やU21代表でのプレー経験もある30歳のニコリッチ選手は、セルビア、ルーマニア、ロシア、ポーランド、クロアチア、そしてボスニアのクラブでプレー経験がありますが、アジアでのプレーは今回が初めてということです。
マラッカ・ユナイテッドはこの他、前クダFA(現クダ・ダルル・アマン)主将のDFカイルル・ヘルミ・ジョハリとケランタンFCからFWワン・ザハルルニザム・ワン・ザカリアの加入発表しています。(ちなみに29歳のザハルルニザム選手は2012年にFC琉球のトライアルを受験したことがありますが、その際には契約には至りませんでした。)
マラッカ・ユナイテッドは昨季からプレーするハイチ出身のMFソニー・ノルデと韓国出身で2017年にはJ2ファジアーノ岡山でもプレーしたDFチャン・ソグォンに加え、今季はブラジル出身のFWアレックス・ドス・サントス・ゴンサウヴェス(インドネシア1部プルシカボ1973より移籍)、そして東南アジア(アセアン)枠でフィリピン代表のMFマヌエル・オット(フィリピン1部ユナイテッドシティより移籍)も獲得しています。