5月26日のニュース<br>・マンU対アセアンオールスターズの試合にマレーシアから出場する選手5名が発表<br>・国内無敗もACLで結果を出せなかったジョホール監督が退団-後任は英国プレミアリーグ監督経験者か<br>・スーパーリーグ不参加決定のペラとクダでも無条件での下部リーグ受け入れはしない-AFL会長

来月のアジアカップ2027年大会3次予選のベトナム代表戦に向けてマレー半島南端のジョホール州で合宿中のマレーシア代表をアンワル・イブラヒム首相が訪問し、自身のSNSには「全てのマレーシア国民は代表チームに揺るぎない支援を送るだろう」と激励の言葉を添えた投稿を行っています。6月10日にホームのブキ・ジャリル国立競技場で行われるベトナム代表戦は、両チームが属する予選F組の首位攻防戦ですが、対ベトナム代表戦ではマレーシア代表は現在5連敗中、しかもこの5試合では1得点10失点と明らかに分が悪い相手です。この試合に負ければアジアカップ2大会連続出場が遠のくだけに、代表強化に公金1500万リンギ(およそ5億円)を注ぎ込んでいるマレーシア政府のトップとしてアンワル首相も気が気でないかもしれません。

マンU対アセアンオールスターズの試合にマレーシアから出場する選手5名が発表

今週5月28日に行われるマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズ戦にマレーシアから出場する5名の選手が発表になっています。

翌日5月29日には前述のベトナム代表戦に向けてのウォームアップとなる国際親善試合マレーシア代表対カーボベルデ代表戦があるため、当然ながら主力代表選手は出場せず、今回発表になったのは代表合宿参加中のGKハジク・ナズリ(ペラFC)、DFアザム・アズミ(トレンガヌFC)、DFデクラン・ランバート(クアラルンプールシティFC)、DFアディブ・ラオプ(ペナンFC)、そしてアルゼンチン出身の帰化選手MFセルヒオ・アグエロ(スリ・パハンFC)の5名です。この内、ハジク選手は代表合宿参加メンバーで、アザム、アディブ、アグエロの3選手は代表合宿のサブメンバーとなっています。またハジク、アザム、ランバートの3選手はジョホール・ダルル・タジムFCからローン移籍中の選手です。

2009年のプレシーズンツアー以来のマレーシア来訪となるマンチェスター・ユナイテッドは5月21日のUEFAヨーロッパリーグ決勝で同じプレミアリーグのトットナム・ホットスパーズに惜敗したばかりですが、今回のツアーにはブルーノ・フェルナンデス、カゼミーロ、アレハンドロ・ガルナチョ、マタイス・デ・リスト、ラスムス・ホイルンドら主力が帯同すると報じられています。このマンチェスター・ユナイテッドと対戦するアセアン・オールスターズは、東南アジア選手権2024年大会優勝のベトナム代表を率いるキム・サンシク監督が指揮を取流ことが発表されています。

マレーシアからは当初、いずれもマレーシア代表でプレーするDFドミニク・タン、MFスチュアート・ウィルキン(いずれもサバFC)が参加すると発表されましたが、両選手は今オフでの国外移籍が噂されており、最終的には上記の5選手に落ち着いたという経緯があります。他国でも当初は出場が発表されていたベトナム代表のエース、グエン・クアン・ハイが過密日程を理由に出場を辞退している他、タイ代表のニコラス・ミケルソンは所属するデンマーク1部オデンセBKが招集を拒否した結果、出場取りやめとなっています。


この親善試合が5月28日にマレーシア代表のホーム、ブキ・ジャリル国立競技場で行われ、翌日5月29日のマレーシア代表対カーボベルデ代表戦が収容人員1万8000人のKLフットボールスタジアムで行われるのは個人的には釈然としませんが、観客動員力という点ではマンチェスター・ユナイテッドの方が上なのは事実ですので、致し方ありません。なおマンチェスター・ユナイテッド戦の方は一番安い席が50リンギ(およそ1700円)、一番高い席が1500リンギ(およそ5万円)なのに対し、マレーシア代表対カーボベルデ代表戦は一律40リンギ(およそ1400円)となっています。

国内無敗もACLで結果を出せなかったジョホール監督が退団-後任は英国プレミアリーグ監督経験者か

5月23日にジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は公式SNS上で過去3シーズンに渡り監督を務めたエクトル・ビドリオ監督の退任を発表しています。2022年シーズンに監督に就任したベネズエラ出身のビドリオ監督は、途中テクニカル・ディレクターなども務めながら、2022シーズンと2024/25シーズンにはリーグ戦、FAカップ、マレーシアカップの国内三冠を達成しています。しかも監督在籍時には、JDTは国内で無敗と無双し続けました。しかし国外に目を転じると、2022年のACL、そして今季のACLエリートでは、いずれもグループステージを突破しながら、ノックアウトステージ1回戦の壁に跳ね返された結果、今回、その責任を取る形で退任します。英字紙スターは、このビドリオ監督の後任として、スペイン出身で44歳のシスコ・ムニョス氏の名前が上がっていると報じています。

JDTのCEOに就任したやはりスペイン出身のルイス・ガルシア氏とも近いことからも監督就任が有力視されているムニョス氏は、現役時代はバレンシアやレアル・ベティスなどでウィングとして活躍しました。晩年にプレーしたジョージアのディナモ・トビリシで指導者生活を始めたムニョス氏は、2020年に前年のコーチから監督に昇格するとその年のリーグ優勝を果たしました。翌2021年には英国2部のワトフォードで監督に就任するとリーグ2位の成績を残し、クラブを1部プレミアリーグへ昇格させました。しかし、翌年2021/22シーズンのプレミアリーグでは開幕からの7試合を2勝1分4敗として14位に沈むと解任されてしまいました。その後の2021/22シーズンはスペイン2部のSDウエスカで9勝12分9敗の成績で退団し、2022/23シーズンはキプロス1部のアノルトシス・ファマグスタで3勝2分7敗としました。、2023/24シーズンは再び英国に戻り、3部のシェフィールド・ウエンズデーで監督となりますが、10試合で0勝2分8敗の最下位となると解任され、スロバキア1部リーグのドゥナイスカー・ストレダで2023年11月監督に就任しました。当初は2023/24シーズン終了までの契約でしたが、就任10試合で6勝3分1敗の成績を上げると、契約が2年間延長されました。しかし今季2024/25シーズンは開幕からの15試合を6勝4分5敗とすると、2026年6月までの契約を解除されて昨年11月に退団しています。

英字紙スターは、ムニョス氏がスペイン国内メディアとのインタビューで自信を冒険好きと評し、さまざまな国のサッカーを見たり、新しい環境に挑戦することも好きだと述べたことがJDT監督就任を示唆する発言ではないかと報じています。

またJDTにはスペイン出身のFWサム・カスティジェホ、MFフアン・ムニョス、DFオスカル・アリバス(登録はフィリピン=東南アジア枠)、DFエディ・イスラフィロフ(登録はアゼルバイジャン)らがいることからチームに入って行きやすく、監督就任の際には同胞のセットピースコーチのロベルト・ケスト、アナリストのトニー・ヴァジェの両氏を連れてくるだろうと予想しています。

スーパーリーグ不参加決定のペラとクダでも無条件での下部リーグ受け入れはしない-AFL会長

来季2025/26シーズンのマレーシアスーパーリーグ参加に必要な国内クラブライセンスが交付されなかったケダ・ダルル・アマン(KDA)FCとペラFCは、代わりに3部にあたるA1セミプロリーグへ参戦する可能性がありますが、リーグやカップ戦で優勝経験のある両名門クラブであっても、このA1セミプロリーグへ無条件で参加することはできないようです。

A1セミプロリーグを運営するアマチュアフットボールリーグ(AFL)のユソフ・マハディ会長は、両クラブとも依然としてAFLの規定の対象であり、登録選手が20人以上いることなど、リーグ参加の基本基準を満たさなければならないと述べていると、マレー語紙ブリタハリアンが報じています。。

その一方でユソフAFL会長は、両クラブが財政問題に直面していることを理解した上で、AFLが求める財政的義務を果たすことができれば、リーグ参加については特に問題はないと述べた。

「選手や監督、コーチに給与を払い、チームをうまく運営できれば、両クラブともA1リーグへの参加に何の障害もない」と語ったユソフ会長は、「A1セミプロリーグの運営コストはスーパーリーグでのプレーに比べてそれほど高くなく、300万から400万リンギ(およそ1億から1億4000万円)あれば、シーズンを通してチームを運営するには十分である」と述べています。

リーグ戦、FAカップ、マレーシアカップの国内三冠を初めて2季連続で達成したクダ・ダルル・アマンFC、そして創設100年を超えるペラFCの両名門クラブは、クラブ経営状況に問題ありとして第一審機関(FIB)が今季の国内クラブライセンス交付を行わないことを発表された直後に、ユソフAFL会長は、両クラブがA1セミプロリーグでプレーしながら、財政再建を続けていくことで、将来のスーパーリーグ復帰に向けた「生き残る」を図ることができると、A1セミプロリーグへの参入を歓迎する発言をしていました。

5月25日のニュース(2)<br>来季のリーグ規約が発表:秋春制以降により開幕は8月初旬・外国籍選手は1クラブ最大15名が登録可能、ピッチ上では同時7名の出場が可能に・ブルネイDPMM FCの正式参入が決定・ファイナンシャルフェアプレーを導入

マレーシア1部スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が来季2025/26シーズンの規約を発表しています。主な変更点としては来季の開幕が8月初旬となること、外国籍選手登録の上限が15名となったこと、ブルネイのDPMM FCの参戦が正式発表されたこと、そしてクラブ収入に基づく給料の上限を決めるファイナンシャルフェアプレー(FFP)が正式に導入さることなどが挙げられます。

来季2025/26シーズンの開幕は8月初旬に決

AFCの秋春制導入に伴い、2025/26シーズンの開幕は8月初旬となることが発表されています。例年、開幕戦は英国のチャリティーシールド(現コミュニティーシールド)を模し、前年度のリーグ覇者とマレーシアカップ優勝チームが対戦するスンバンシーカップですが、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)がリーグ戦、マレーシアカップ、FAカップの国内三冠を達成しているため、2024/25シーズンに続き、JDTはリーグ2位のスランゴールFCが対戦します。

英国のチャリティーシールドと大きく異なるのは、この試合がリーグ戦の一環として行われ、さらにリーグチャンピオンのホームで行われること。昨年のスンバンシーカップもJDTとスランゴールFCの顔合わせとなりましたが、試合の5日前にスランゴールFCのファイサル・ハリムが酸攻撃を受け事件が起こりました。スランゴールFCは安全上の懸念を理由に試合の延期を求めましたが、MFLはこれを拒否。スランゴールFCは後見者でもあるスランゴール州スルタンの同意を得て出場を辞退した結果、MFLはJDTに勝点3を与えることを決定しています。

リーグ覇者とマレーシアカップ王者の対戦という試合の性格から、本家がウェンブリーアリーナで開催されるのと同様に、このスンバンシーカップもブキ・ジャリル国立競技場のような中立地で、しかもリーグ戦の一環ではなく単なるカップ戦として開催するべきだと思うのですが、主催するMFLはそうは考えていないようです。

トランスファーウィンドウは6月と来年1月オープン

年2回のトランスファーウィンドウ(移籍期間)は、1度目が開幕前の6月9日から8月31日まで、シーズン途中の2度目は2026年1月5日から2月1日となっています。

FAカップは8月、マレーシアカップは来年1月開催

FAカップは8月に予定されており、マレーシアカップとその敗者が出場するチャレンジカップはいずれも2026年1月に予定されています。マレーシアカップは昨年と同じであれば、1部スーパーリーグの14チームにおそらく3部A1セミプロリーグの2チームが加わった16チームで1回戦がスタートすることになりそうです。またFAカップはトップリーグ以外のカブリーグでプレーするのクラブに門戸が開かれる大会ですが、2024/25シーズンは16クラブと、前年2023年の20、2022年の34、2021年の59から毎年減少しています。国内サッカー人気の低迷が危ぶまれる中で、日本の天皇杯サッカーのようなアマチュアレベルから出場できる唯一の国内大会はサッカー振興という観点からも重要なので、是非とも出場チーム数の拡大を検討してもらいたいところです。

出場登録選手の半数に当たる最大15名の外国籍選手の登録が可能に

各クラブは登録選手の上限が今季2024/25シーズンの32名(ACLエリートに出場のJDTとACL2出場のスランゴールは例外措置で34名)から30名に減る一方で、外国籍選手枠についてはAFC大会出場の有無に関係なく何と15名まで登録できるようになりました。今季は各クラブの外国籍選手登録は最大9名、ACLエリートに出場したJDTとACL2に出場したスランゴールに限って12名となっていました。

ピッチ上では同時に7名の外国籍選手のプレーが可能に

ベンチ入り可能な外国籍選手数も今季の最大7名から8名となり、ピッチ上の外国籍選手数も今季の6名から東南アジア枠が1名増えて7名(無条件4名、アジア枠1名、東南アジア枠2名)が同時に出場することが可能になっています。

外国籍選手枠の増加により、これまで以上にクラブ格差が広がりそうです。このブログでも何度も取り上げているように多くのスーパーリーグクラブは給料未払い問題を抱えるなど運営資金の捻出に苦労しています。一方で、今季ACLエリートに出場したJDTとACL2に出場したスランゴールについてはそういった問題が起こっていないことから、15名に拡大した外国籍選手枠をフル活用するクラブがあるとすれば、おそらくこの2クラブしか考えられません。(後は可能性があるとすれば、世界屈指の産油国ブルネイからスーパーリーグに参加するDPMM FCでしょうか。)

ACLエリートやACL2での上位進出を目指すクラブにしてみれば、この外国籍枠拡大は大きなメリットですし、試合そのもののレベルアップやエンタメ性がますという利点はある位一方で、資金的にも苦しい中位から下位のクラブには全く関係ない話です。しかも既にJDTが圧倒的な強さを誇るスーパーリーグで、今後さらにクラブ間格差が広がれば、大味な試合が増え、リーグそのものに魅力がなくなってしまう恐れがあります。またピッチ上で同時に最大7名の外国籍選手がいるということはマレーシア人選手は4名飲みの出場となり、これが各選手の出場時間減少につながり、ひいては代表チーム教科にに及ぼす影響も少なくなさそうです。

    ブルネイのDPMM FCのスーパーリーグ参加が正式に発表で今季参加の全14クラブが決定

    MFLからはこれまで何の発表もなかったブルネイのクラブであるDPMM FCの今季スーパーリーグ参入についても正式に発表しています。2008年以来のマレーシアリーグ復帰となるDPMM FCの参戦は、FIFAによる「招待クラブ」との承認を受けたことで実現しています。この結果、2025/26シーズンのスーパーリーグは、ジョホール・ダルル・タジムFC、スランゴールFC、サバFC、クチンシティFC、トレンガヌFC、クアラルンプールシティFC、スリ・パハンFC、PDRM FC、ペナンFC、ヌグリスンビランFC、クランタン・ダルル・ナイムFCに加え、昇格組のマラッカFC、イミグレセン(入国管理局)FC、DPMM FCの14クラブに決定しています。ただし、クアラルンプールシティFC、PDRM FC、クランタン・ダルル・ナイムFCの3クラブについては条件付きでのクラブライセンス交付となっており、今月末までにクラブの財政状況についての詳細をライセンス交付を担う第一審期間(FIB)に提出することが求められています。これが行われない場合、この3つのクラブのクラブライセンス交付は取り消しとなり、今季のスーパーリーグ出場ができなくなります。

    ファイナンシャルフェアプレーの正式導入

    これまで導入が検討されてきたファイナンシャルフェアプレー(FFP)が導入されます。これにより、各クラブはFIBに提出した2025/25シーズンのクラブ運営予算額の80%が選手への給料支払いの上限となります。

    5月25日のニュース(1)<br>・ベトナム戦に向けたマレーシアの秘密兵器はコロンビアリーグのストライカー<br>・スランゴールFCは来季のチーム強化へ積極補強も<br>・6シーズン在籍も帰化選手になれなかったレゾヴィッチがトレンガヌFC退団<br>プルシスの1部残留を果たしたオン監督はマレーシア出身選手の獲得も視野

    5月21日の東南アジアクラブ選手権「ショッピーカップ」決勝2ndレグでは、タイの王者ブリーラム・ユナイテッドがベトナムのハノイ公安FCを通算成績5-5、PK戦3−2という大接戦の末に破り、ショッピーカップ初代王者に輝いています。そのブリーラム・ユナイテッドではシーズンを通して安定したプレーを見せたのが、マレーシア代表でもプレーするディオン・クールズです。ベルギー出身の父とマレーシア出身の母を持つクールズ選手はベルギーの年代別代表でもプレー経験がある選手ですが、、そのコールズ選手がJリーグのセレッソ大阪移籍が濃厚だとマレーシアやタイのメディアが報じています。マレーシア人選手として初めてJ1でプレーする選手となれるのでしょうか。

    ベトナム戦に向けたマレーシアの秘密兵器はコロンビアリーグのストライカー

    しかしよくこんな人材を地球の反対側から見つけてきたなぁ。

    6月10日のAFCアジアカップ2027年大会第3次予選でベトナム代表と対戦するマレーシア代表に強力な秘密兵器が加わりそうです。アルゼンチン出身で今季はコロンビア1部のアメリカ・デ・カリでプレーするFWロドリゴ・オルガドが、マレーシア人の血を引くとして「ハリマウ・マラヤ(マレーの虎)」の愛称を持つマレーシア代表に招集されたと国内外のメディアが報じています。

    直近の10試合で5勝3分2敗の成績を残しているマレーシア代表ですが、FW陣はブラジル出身のパウロ・ジョズエ(KLシティFC、代表通算25試合出場8ゴール)やアルゼンチン出身のセルヒオ・アグエロ(スリ・パハンFC17試合出場3ゴール)、コロンビア出身のロメル・モラレス(ジョホール・ダルル・タジムFC、同9試合2ゴール)、ら帰化選手たちに依存しています。そんな南米コネクションに新たに加わることが期待されているのがオルガド選手です。

    29歳のオルガド選手は2024年にアメリカ・デ・カリに移籍以来、44試合で17ゴールを挙げているFWですが、いずれも元々は所属クラブではMFだったものの代表チームの得点力不足からFWにコンバートされたジョズエ、モラエスの両選手、そしてやはり本来はMFであるアグエロ選手らとは違った、いわゆる「アウトアンドアウト」ストライカーならではプレーが6月の試合では見られるのではとの期待が高まります。


    スランゴールは来季のチーム強化へ積極補強も

    2シーズン連続で王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)の後塵を拝することになったスランゴールFCは、FAカップでは決勝に進出するも同じJDTに1-6と惨敗し、マレーシアカップではまさかの1回戦敗退、そして8年ぶりとなったAFC主催大会出場もACL2ではグループステージ敗退と、2024/25シーズンは思うような結果を残すことができませんでした。そんなスランゴールFCが来季に向けて、国内外の選手を積極的に補強しそうだと英字紙スターが報じています。

    今季のメンバーからはキャプテンを務めたシンガポール代表のDFサフワン・バハルディンが契約を1年残して退団することが明らかになっている他、チーム最多の10ゴールを挙げたチリ出身のFWロニー・フェルナンデス、チーム最多先発出場を記録したベネズエラ出身のMFヨハンドリ・オロスコ、そしてヨルダン代表FWアリ・オルワンらがチームを去ることが発表されています。

    この記事の中でスランゴールFCのシャーリル・モクタル理事は、サフワン選手についてクラブとの関係は良好で、サフワン選手が「新たな挑戦」を求めていることから、退団を希望したと説明しており、現在はローン移籍先を探している最中だと説明しています。

    サフワン選手に代わるキャプテン候補としてはマレーシア代表MFノーア・ライネや同じく代表選手のFWファイサル・ハリムを挙げたシャーリル理事は、来月6月17日から始まる予定のプレーシーズンに向けて、喜熨斗勝史監督と来季に向けたチームの補強策について検討中とも話しています。

    「現在はヨーロッパ、南米、東南アジア、日本出身の数名の候補選手の名が上がっており、プレシーズン前には新加入の選手が確定できるだろう。」と話したシャーリル理事は具体的な名前は挙げなかったものの、SNS上では2023年シーズンにクダ・ダルル・アマンFCでプレーした経験もある元Jリーグ甲府のFWウィリアン・リラ、元ベネズエラ代表MFフアンピこと、フアン・パブロ・アニョル・アコスタ(現ギリシャ1部ヴォロスFC)のいずれも31歳の両選手の名前が挙がっています。

    また獲得を目論んでいたとされるインドネシア代表DFエリアノ・ラインデルス(オランダ1部PECズヴォレ)との交渉は破談となったものの、シャーリル理事はさらに東南アジアの「大物」獲得を続けていくと話していることもスターは報じています。

    6シーズン在籍も帰化選手になれなかったレゾヴィッチがトレンガヌFC退団

    2019年からトレンガヌFCに在籍してきたモンテネグロ出身のDFアルグジム・レゾヴィッチが自身のSNSで対談することを明らかにしています。33歳のレゾヴィッチ選手は190cmのセンターバックで2018年にPDRM FCに移籍してマレーシアリーグでプレーを始めると翌2019年からはトレンガヌFCに移籍しトップチームとセカンドチームのトレンガヌFC IIでプレーを続けてきました。

    トレンガヌ州の隣のパハン州出身のマレーシア人女性と結婚し、子供も生まれていたレゾヴィッチ選手は、マレーシアでのプレーが5年目を過ぎてからはマレーシア国籍取得を目指していることが報じられていました。しかし、今年3月の英字紙ニューストレイツタイムズの報道では、クラブが国籍取得の審査を行う内務省に積極的に働きかけ、マレーシアサッカー協会(FAM)からも推薦状を得ているものの、契約満了となる4月30日を前に国籍の取得はできていませんでした。

    退団を伝えるSNSへの投稿でレゾヴィッチ選手は、自身のキャリアの中で最も長く所属したクラブであるトレンガヌFCとチームメート、そしてサポーターへの感謝を伝えています。

    今季5位に終わったトレンガヌFCは、シーズン途中でトミスラフ・シュタインブリュックナー監督(現ベトナム1部タインホアFC監督)を解任し、バドルル・アフザン・ラザリを暫定監督に据えましたが、来季はこのバドルル暫定監督を正式監督として迎えることをすでに発表しており、バドルル監督の元でチーム再建の一環として大幅なメンバーの入れ替えを行うとされています。

    プルシスの1部残留を果たしたオン監督はマレーシア出身選手の獲得も視野

    マレーシアの隣、インドネシアの1部リーグ「リガ1」は昨日5月24日に最終第34節を終えて2024/25シーズンが終了しましたが、そのリガ1で2連覇を達成したのが、クアラルンプールシティFC前監督のボヤン・ホダック監督が指揮するプルシブ・バンドンでした。そして最終節にこのプルシブと対戦したのが、マレーシア出身でサバFC前監督のオン・キムスウィー監督率いるプルシス・ソロでした。マレーシア国内でも対戦経験のある両氏が舞台をインドネシアリーグに変えて対峙した結果は、プルシブがかつてJ2金沢やトレンガヌFCでもプレーしたダビ・アパレシド・ダ・シルバのゴールなどで一時は3点差をつけてリードするも、プルシスもMF山本奨選手のゴールなどで追い上げましたが、3-2と逃げ切ったプルシブがシーズン最終戦を勝利で飾っています。

    プルシブ・バンドンに敗れたペルシス・ソロですが、5月11日に行われたリーガ1第32節のPSBSビアク戦で2-0と勝利し、今季の1部残留を既に決めています。 このプルシブのオン監督はマレーシアでは代表監督やU23代表監督、またマレーシアサッカー協会(FAM)のテクニカルディレクターなどを歴任し、2011年の東南アジア競技大会通称シーゲームズではマレーシアを優勝に導いています。このオン監督はマレーシアスーパーリーグの2024/25シーズン途中の昨年11月にリーグ3位にいたサバFCからの契約延長オファーを断り、当時降格圏の16位にいたプルシスの監督に就任しました。

    好成績を残しているクラブから2部降格危機に直面するクラブへの転身したオン監督でしたが、プルシスは、オン監督就任以降の7試合では0勝3分4敗の成績で、一時は最下位の18位に転落してしまいました。しかし年が明けた今年1月20日の第19節PSISスマラン戦でオン監督が初勝利を挙げると、チームもそこからの15試合を7勝5分3敗とし、第25節で15位に浮上してついに降格圏を脱すると、その後は2度と降格圏内に落ちることなく最終成績を14位とし、オン監督は課せられていた1部残留というミッションを果たしました。

    今季最終戦となったプルシブ戦を前にオン監督はインドネシアのメディアとのインタビューで、「ペルシス・ソロに来た時の目標は明確で、降格を回避することができたことは喜ばしい。プルシスがリガ1で6か月近く降格争いを続けなければならなかったことが、この国のサッカーリーグがいかに競争が厳しいかを示しているだろう。」と話しています。さらに、負けても立ち上がる先進的な強さを持つ選手たちに加え、クダ・ダルル・アマンFCから移籍したCBクレイトンをはじめ、MFラウタロ・ベレッジャ、FWジョン・クレイ、DFジョーディ・トゥトゥアリマのシーズン途中に加入した4選手の影響も大きかったとオン監督は話したということです。

    プルシスとの契約は今月末で切れることから、オン監督はクラブ側との契約延長についての話し合いを始めたいしていますが、個人的には来季もプルシスで指揮を取りたいと話し、クラブの予算次第ではあるもののマレーシア出身選手数名との契約も視野に入れているとも話しています。

    5月23日のニュース:<br>・FIBが来季のスーパーリーグ参戦に必要なライセンス交付クラブを発表-クダとペラはリーグ不参加が決定<br>・ブルネイDPMM FCが来季のスーパーリーグ参戦を公式発表もリーグからは発表なし

    FIBが来季の国内クラブライセンス交付クラブを発表-クダとペラには交付されずリーグ不参加が決定

    5月22日に国内クラブライセンス交付の可否決定を行う第一審機関(FIB)が来季2025/26シーズンのクラブライセンス審査の結果を発表し、今季2024/25シーズンに国内1部スーパーリーグに参加した13チーム中、8チームに来季の国内クラブライセンスが交付されたことを発表しています。

    国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)の公式ホームページで発表された審査結果によると、来季のクラブライセンス交付条件となるクラブ運営のための資金基準を満たしていないことから、今季のスーパーリーグで8勝6分10敗で7位に終わったペラFCと、6勝6分12敗の11位に終わったクダ・ダルル・アマンFCの2クラブには来季の国内クラブライセンスが交付されず、このまま不服申し立てと再審査が行われない限り、この両クラブは2025/26シーズンのスーパーリーグへの参戦が不可能となりました。

    またFIBは今季優勝のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)、同2位のスランゴールFC、以下サバFC(同3位)、谷川由来選手が所属するクチンシティFC(同4位)、トレンガヌFC(同5位)、スリ・パハンFC(同8位)、ペナンFC(同10位)、佐々木匠選手が所属するヌグリスンビランFC(同12位)の8クラブには、来季の国内クラブライセンスが交付されたことを発表しています。

    その一方でFIBライセンス委員会のシーク・ナシル・シーク・シャリフ委員長名で出された声明では、今季6位のクアラルンプールシティFC(KLシティFC)、鈴木ブルーノ選手所属の同9位PDRM FC、そして最下位13位に終わったクランタン・ダルル・ナイムFCについては暫定措置としてクラブライセンスを交付するものの、5月31日を期限として財務状況に関するさらなる書類の提出を求めており、その提出がない場合にはライセンスの取り消し措置となることも発表しています。

    また今季3部のA1セミプロリーグで優勝したマラッカFCとイミグレセン(出入国管理局)FCについては、MFLの規定に基づき国内クラブライセンスが交付され、来季のスーパーリーグ参戦が可能なったことも明らかになっています。(注:2部リーグのプレミアリーグは現在、休止中でこのセミプロリーグであるA1リーグが実質のマレーシア2部リーグとなっています。)


    今回の発表では、さまざまな憶測を読んでいた来季のスーパーリーグ参戦クラブが明らかになりました。今季最終戦となったマレーシアカップ決勝でJDTに惜敗したスリ・パハンFCは、試合後にオーナーでパハン州のトゥンク・アブドル・ラーマン・スルタン・アフマド・シャー王子がクラブから身を引くことを明らかにし、同時にクラブの来季のスーパーリーグ撤退を示唆するような発言をしていました。また今月初めにはクラブから選手や監督、コーチに対しても来季のリーグ撤退を伝える手紙が送られたと報じられており、今回このスリ・パハンFCがライセンスを交付されたことで、リーグ撤退の方針からUターンしたようです。

    その一方で、今季終了後にやはりスーパーリーグ撤退を発表していたペラFCにはライセンスが交付されませんでした。前身のペラ州サッカー協会クラブ(ペラFA)から数えるとクラブ創設100年を超える名門は数年前にも資金不足からクラブ史上初となる2部降格を経験したものの、一昨年には国内通信会社がオーナーとなり再建が始まりましたが、道半ばで断念となりました。

    また2023シーズンの給料未払い問題未解決により、今季開幕前に勝点3の剥奪処分を受けてスタートしたクダ・ダルル・アマンFCは、シーズン中には主力選手が練習をボイコットした他、アウェイの試合への帯同を拒否し、急遽U23やU19チームの選手を集めて試合を行うなどの問題を抱えており、頼みの州政府からの資金援助も得られなかったことから、やはりライセンス交付を受けるだけの金銭的な安定が示せなかったようです。今季はJDTが3季連続国内三冠を達成しましたが、マレーシアで初めて連続で国内3冠(リーグ戦、マレーシアカップ、FAカップ)を達成したのは2006/07,2007/08の2シーズン連続で国内三冠を達成したクダ・ダルル・アマンFCの前身クダFAでした。そんなかつての強豪にとって、今回のリーグ不参加は残念としか言いようがありません’。

    この他、追加書類の提出がなければライセンス取り消しとなることが発表されたKLシティFC、クランタンFCも今季中から数ヶ月に及ぶ給料未払い問題が起こっていたことがメディアでは度々報じられており、期限の5月31日までにFIBを納得させるだけの書類が用意できるかどうかは正直、疑問です。


    また来季の1部スーパーリーグ撤退が決定したペラFCとクダ・ダルル・アマンFCに対し、3部A1セミプロリーグが参戦を求めたいと報じられています。A1セミプロリーグを運営するアマチュアフットボールリーグ(AFL)のユソフ・マハディ会長は、両クラブを救済し、復活のための機械を提供できると話しています。

    マレーシアサッカー協会(FAM)の副会長でもあるユソフAFL会長は「両クラブがこのまま消滅してほしくない。A1セミプロリーグは両クラブが参戦して、将来スーパーリーグに復帰するための舞台となりうるものだ。」と述べ、すでに終了した来季のA1セミプロリーグ参加の申請を再開して、両クラブの受け入れを行う用意があるとしています。

    A1セミプロリーグの下には、A2、A3と下部リーグがありますが、一昨年には新設されたマラッカFCを「マラッカ州サッカー発展を妨げないように」という謎の理由でいきなり下部リーグを経ずに参入させたり(これはユソフAFL会長がマラッカ州出身であることも影響していると言われています)、不十分な資格審査で参入させては途中離脱を許すなどゆる〜いAFLの審査であれば、ペラFC、クダ・ダルル・アマンFCとも参入の壁は高くなさそうです。


    ブルネイDPMM FCが来季のスーパーリーグ参戦を公式発表

    来季2025/26シーズンのマレーシアスーパーリーグの参加クラブ数減が危ぶまれる中、これまで噂に上がっていたブルネイのDPMM FCが、クラブ公式サイトで来季スーパーリーグへの参入と新規選手獲得を発表しています。なおスーパーリーグを運営するMFLからは現時点では何の公式発表もありません。現在、参戦中のシンガポールプレミアリーグを運営するシンガポールサッカー協会(FAS)もDPMM FCがリーグを離脱し、「他のリーグ」へ移籍することを公式サイトで発表しています。

    DPMM FCはペナンFCのDFファイズル・ザカリアの加入を発表するとともに、ブルネイ出身選手と、DPMM FCでプレーするマレーシア出身選手は、いずれも他のクラブのマレーシア出身選手と同じ扱いとなり、外国籍選手登録とはならないことも併せて発表しています。


    DPMM FCはブルネイ唯一のプロクラブで、今季2024/25シーズンはシンガポール1部のプレミアリーグに参戦中です。今季のACL2の決勝にライオンシティ・セイラーズFCが進出するなど躍進が著しいリーグですが、今年4月にシンガポールメディアが初めてDPMM FCのプレミアリーグ離脱の噂を報じました。またその際にはプレミアリーグ得点王を独走する土井智之選手(ゲイラン・ユナイテッドFC)の獲得なども同時にうわされました。今週末に最終節を迎えるプレミアリーグでは、DPMM FCは現在、11勝8分12敗で9チーム中6位につけ、また5月27日にはライオンシティ・セイラーズとのシンガポールカップ準決勝2ndレグも控えています。

    DPMM FCがマレーシアのリーグに参戦するのはこれが初めてではありません。2005/06シーズンに2部プレミアリーグ(シンガポールは1部がプレミアリーグですが、マレーシアは2部の名称がプレミアリーグです。)に参戦し、翌シーズンには1部スーパーリーグへ昇格するといきなり3位、そして翌シーズンは10位という成績を記録しています。しかしこの頃、ブルネイサッカー協会内部で問題が発生し、マレーシアリーグを離脱せざるをえませんでした。その後の2009年に今度はシンガポールリーグに参戦し、リーグカップで優勝するなどの成績を残しました。

    しかし、同年9月にはブルネイ政府によるブルネイサッカー協会人事への介入があったとしてFIFAはブルネイのサッカー活動全てを停止させる処分を科し、この結果DPMM FCはシンガポールリーグを離脱せざるを得ませんでした。FIFAの処分が解けた2012年にシンガポールリーグに復帰したDPMM FCは、同年そして2014年とリーグカップで優勝すると、2015年と2019年にはリーグ制覇も果たしています。

    その途中の2017年にはマレーシアリーグ復帰を目論んだ時期もありましたが、2015年からリーグ運営を始めたMFL(当時の名称はフットボールマレーシアLLP-有限責任パートナーシップ)がホームゲームはマレーシア国内で行うことや、ブルネイ出身選手は外国籍選手登録とし、主力をマレーシア出身選手で構成することなどを求めたため、シンガポールリーグに残ったという経緯もあります。

    しかし2020年には新型コロナの影響でブルネイ政府が国民の出国制限を設けたため、2020年から2022年までの3シーズンはシンガポールリーグに参加せず、昨季2023年に3シーズンぶりに復帰した際は9チーム中7位に終わっています。

    5月18日のニュース:<br>・マレーシア人監督率いるクラブがブルネイ国内カップ戦優勝に王手<br>・クラブライセンス申請期限を過ぎても「柔軟に」対応する第一審機関に疑問の声

    マレーシア人監督率いるクラブがブルネイ国内カップ戦優勝に王手

    来季のマレーシア1部スーパーリーグに、現在はシンガポール1部リーグに所属するブルネイのDPMM FCの参戦が噂されていますが、そのブルネイ国内ではマレーシア人監督が率いるクラブがカップ戦の決勝に進出しています。

    DPMM FCのセカンドチーム、DPMM FC IIは昨季のブルネイFAカップで優勝し、今季も決勝に駒を進めており2連覇目前です。国内リーグ2位に終わったDPMM FC IIと本日5月18日の決勝で対戦するのが同3位のインデラFCですが、その監督はマレーシア人のラジャ・イサ・ラジャ・アクラム・シャー氏で、もしこのインデラFCが優勝すれば、ラジャ・イサ監督はブルネイで初めて優勝を経験するマレーシア人指導者となります。

    インドネシアではPSMマカッサルやプルシカボ1973など全部で8クラブ、またバングラデシュでも指導経験を持つラジャ・イサ監督は、5月8日に監督に就任すると、5月11日にはFAカップ準決勝セカンドレグで国軍クラブのABDBを4-2で破り、通算成績7-3で決勝進出を決めています。

    2017/18シーズン以来のタイトルがかかるインドラFCが出場するブルネイFAカップ決勝はスルタン・ハサナル・ボルキア国立競技場で20時15分(現地時間)キックオフです。

    クラブライセンス申請期限を過ぎても「柔軟に」対応する第一審機関に疑問の声

    スーパーリーグ2025/26シーズンの国内クラブライセンス申請は5月10日に締め切られましたが、ライセンス申請を審査する第一審機関(FIB)はシーク・ナシル・シーク・シャリフ委員長名で5月16日に声明を発表し、FIBはクラブが提出した書類を受領前精査が終わっていないことを明らかにしたことが波紋を読んでいると、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

    シーク・ナシルFIB委員長の声明では、スーパーリーグ在籍クラブからの387通に加え、(3部に当たる)A1セミプロリーグ在籍クラブからの98通に及ぶ国内クラブライセンス申請書類を締切日の5月10日までに受け取っており、その受領前精査に時間がかかっていると説明しています。

    しかし、締切日の翌日の5月11日にFIBは声明を発表し、今季2024/25シーズンにスーパーリーグに在籍した23クラブとA1セミプロリーグ今季優勝のマラッカFC、同2位のイミグレセン(入国管理局)FCの 2クラブが期限までにクラブライセンス申請書類を受領したと発表しており、この内容が書類の受領前精査中というシーク・ナシルFIB委員長の声明を矛盾している点が指摘されています。

    4月26日のマレーシアカップ決勝で2024/25シーズンを終えたマレーシアスーパーリーグは、選手や監督、コーチに対する給料未払い問題を引き起こしている運営資金不足を理由に、今季7位のペラFC、同8位のスリ・パハンFC、同11位のクダ・ダルル・アマンFC、同13位のクランタン・ダルル・ナイムFCが、来季2025/26シーズンにはリーグ撤退を表明していました。しかしFIBがスーパーリーグ所属の全13クラブから国内クラブライセンス申請を受領したと発表していたことで、各チームのサポーターからは安堵の声も出ていましたが、運営資金不足が解消されたという報道がないこともあり、FIBの発表には一部からは審査の甘さを指摘する声も出ていました。

    当初の国内クラブライセンス申請書類の提出期限は4月30日でしたが、FIBは「複数のクラブからの要請を受けて、」その期限を5月10日まで延長していました。しかし、この5月10日を過ぎても、提出された書類の審査ではなく、「提出前の」書類の精査を行っていることが明らかになり、しかもこの提出前精査をFIBのライセンス発行部ではなく、FIB委員長以下総出で行っているような印象を与えていることも事態をより不明瞭にしています。

    またこれを報じているニューストレイツタイムズは、5月11日にFIBから出された声明ででは「全てのスーパーリーグクラブ」と自信に満ちて表現されていたものが、5月16日の声明では「各スーパーリーグ」と消極的な表現に変更されたことを指摘し、今季出場の13クラブの中から来季のクラブライセンス申請を行わなかったクラブがあることを示唆しているのではと分析しています。

    シーク・ナシル委員長名の声明では、全ての審査が終了した後、来季の国内クラブライセンスが発給されたクラブを発表するという内容で締めくくられていますが、4月30日の書類提出期限を5月10日まで延長した際には、再度の延長は行わないと強い調子て発表されましたが、今回の提出前精査の期限は区切られておらず、そもそも5月10日の締切日そのものに何の意味もなかったことが露呈した形になってしまっただけでなく、FIBの優柔不断な姿勢も今後の状況次第では批判を浴びることになりそうです。

    5月17日のニュース:<br>・6月のベトナム戦に向けた代表合宿参加メンバー38名を発表<br>・代表選考基準に疑問の声もクラモフスキー監督は選考に自信<br>・元エバートンの「神童」がマレーシア代表コーチに就任 

    6月のベトナム戦に向けた代表合宿参加メンバー大挙38名を発表

    マレーシアサッカー協会(FAM)は、5月15日に明日から始まる代表合宿の参加メンバー38名を発表しています。

    P氏名年齢所属
    GKシーハン・ハズミ29JDT
    アズリ・ガニ26KLC
    ハジク・ナズリ27PRK
    ラーディアズリ・ラハリム24TRE
    サイド・ナスルルハク26TRE
    DFラヴェル・コービン=オング34JDT
    マシュー・デイヴィーズ30JDT
    シャールル・サアド32JDT
    ジュニオール・エルドストル32JDT
    アリフ・アフマド22JDT II
    シャフィザン・アルシャド20JDT II
    ハリス・ハイカル23SEL
    ジクリ・カリリ23SEL
    クエンティン・チェン26SEL
    アイマン・ハキム20SEL U23
    サフワン・マズラン23TRE
    ウバイドラー・シャムスル22TRE
    ドミニク・タン28SAB
    ダニエル・ティン33SAB
    ガブリエル・パルメロ23TEN
    MFアフィク・ファザイル31JDT
    ナズミ・ファイズ31JDT
    ナサニエル・シオ・ホンワン25JDT
    シャマー・クティ31JDT
    ノーア・ライネ23SEL
    ムハマド・アブ・カリル20SEL
    ハイカル・ダニシュ20SEL U23
    スチュアート・ウィルキン27SAB
    ディオン・クールズ29BRU
    エクトル・へヴェル29POR
    FWアリフ・アイマン23JDT
    ファーガス・ティアニー22JDT
    ロメル・モラレス28JDT
    ファイサル・ハリム27SEL
    サファウィ・ラシド28TRE
    パウロ・ジョズエ36KLC
    ハキミ・アジム22KLC
    エンドリック・ドス・サントス30HMC
    チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC, SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、KLC-KLシティFC、PEN-ペナンFC、PRK-ペラFC、TEN-スペイン4部CDテネリフェB、POR-ポルトガル1部ポルティモネンセSC、BRU-タイ1部ブリーラム・ユナイテッド、HMC-ベトナム1部ホーチミンシティFC

    またこの他、以下の12名が追加招集候補として発表されています。

    P氏名年齢所属
    GKクリスチャン・アバド19JDT
    カラムラー・アル=ハフィズ30SEL
    シーク・イズハン23SEL
    DFアザム・アズミ24JDT
    シャルル・ナジーム26SEL
    シャールル・ニザム27TRE
    アディブ・ラオプ26PEN
    MFライアン・ランバート27KLC
    セルヒオ・アグエロ31SRP
    FWモハマドゥ・スマレ31JDT
    アキヤ・ラシド26TRE
    ダレン・ロック35SAB
    チーム名:PEN-ペナンFC、SRP-スリ・パハンFC、

    マレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督は、アジアカップ2027年大会3次予選の初戦となった3月25日のネパール戦から25名を引き続き召集する一方、トップリーグでは出場経験のない若い選手も複数名招集しています。

    今回の代表合宿は第1期から第3期までの3段階で行われ、5月18日から始まる第1期には28名が参加し、5月25日から始まる第2期にはジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)の7選手(シーハン・ハズミ、ラヴェル・コービン=オング、マシュー・ディヴィーズ、シャールル・サアド、ジュニオール・エルドストール、アフィク・ファザイル、ロメル・モラレス)と海外組のエンドリック・ドス・サントス(ベトナム1部ホーチミンシティFC)が合流し、6月1日からの第3期には、残る海外組のディオン・クールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)、エクトル・へヴェル(ポルトガル1部ポルティモネンセ)が合流して全員が揃う予定です。代表合宿は5月18日から5月26日まではジョホール州ジョホール・バルで、5月27日からはクアラ・ルンプールに場所を移して行われます。

    直近のFIFAランキングでは131位のマレーシア代表は、同72位のカーボ・ヴェルデ代表と5月29日にKLフットボールスタジアムで国際親善試合を行った後、6月3日にブキ・ジャリル国立競技場で再びカーボ・ヴェルデ代表とこちらは非公開で対戦します。

    そして6月10日には、アジアカップ2027大会3次予選の2戦目としてブキ・ジャリル国立競技場でFIFAランキング109位のベトナム代表と対戦します。この予選では各組1位のみがサウジアラビアでの本大会に出場できるため、マレーシア代表はベトナム代表に勝利しない限り、2大会連続でのアジアカップ出場の可能性はありません。なおマレーシア代表は、ベトナム代表との対戦は5連敗中で、過去8試合で見ても0勝1分7敗と明らかに分が悪く、マレーシア代表が最後にベトナム代表に勝利したのは2014年12月の東南アジア選手権まで10年以上も遡らなくてはなりません。

    代表選考基準に疑問の声もクラモフスキー監督は選考に自信

    ​マレーシアサッカー協会(FAM)が5月15日に発表した代表合宿38名について、ピーター・クラモフスキー監督が本当にベストメンバーを選んだのかどうかを疑問視する声が上がっていると、英字紙スターが報じています。

    今回発表された代表合宿参加者38名中、3シーズン連続で国内三冠を達成したジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)からは12名(U23の選手を含めれば14名)が選ばれていますが、その中に含まれているDFジュニオール・エルドストールとMFナサニエル・シオ・ホンワンについて、今季の出場時間が少ないことから、他に選ぶべき選手がいるのではと言う声が上がっています。

    33歳のCBエルドスール選手は今季はリーグ戦未出場で、FAカップとマレーシアカップでそれぞれ1試合出場したのみ、一方の24歳のDMFホンワン選手はケガから復帰したこともありリーグ戦11試合カップ戦2試合で、リーグ戦の出場時間は425分となっています。

    同じポジションにはこのJDTと4月26日のマレーシアカップ決勝で対戦したスリ・パハンFCに元JDTのCBアダム・ノー・アズリン、そしてDMFイブラヒム・マヌシらもいましたが、この両選手は今回の代表合宿には招集されませんでした。そして、こう行った疑問の声が代表合宿参加者発表の記者会見で上がると、以下のように答えています。

    「私が選手に求めるものは試合での激しさと勝利への渇望だ。私はJDTや他のクラブの状況を逐一観察しており、ジュニオールは毎日、一生懸命トレーニングしており、私が求めるものを持ち合わせている。またホンワンは練習に復帰して数週間だが、動きに鋭さがあり、自分の能力を代表チームで発揮する機会を与えるために招集した。」

    3月25日のネパール代表戦の選手選考では、やはり今季のリーグ戦出場がわずか139分しかなかったJDTのFWモハマドゥ・スマレを試合前の合宿に参加させて同様の疑問が投げかけられましたが、その際にクラモフスキー監督は、選手選考は長期の計画に基づいていることや選考に漏れた選手は次に選ばれるように努力を続けて欲しいと話していました。

    「(今回招集された)ファーガス(ティアニー、JDT)を見て欲しい。ネパール代表戦では招集されなかったが、今回招集されている。私から選手たちへのメッセージは『ポジティブであり続けて自分をレベルアップさせれば、必ずチャンスは来る』だ。」と述べたクラモフスキー監督は、アダム(ノー・アズリン)とイブラヒム(マヌシ)のことは知っており、今後の代表合宿招集の可能性は大いにあるとも話しています。

    元エバートンの「神童」が代表コーチに就任

    ​エバートンの「神童」といえば2002年に16歳でトップチームデビューを果たしたウェイン・ルーニーかと思っていましたが、2008/09シーズンにそのルーニーを上回る16歳と191日でトップチームデビュを果たしたのがジョゼ・バクスターでした。しかしクラブ最年少記録でデビューしたバクスターは、その後、元アーセナル監督のミケル・アルテタや、ロシアW杯日本戦で同点ゴールを決めた元ベルギー代表のマルアン・フェライニらとのポジション争いに敗れ、さらに薬物使用などの経歴もあり大成せることはありませんでした。

    そんなバクスター氏が麻薬所持は死刑となるマレーシアで代表チームのコーチとなることが発表されています。2020年に現役を引退し、現在32歳のバクスター氏は、マレーシア代表コーチを就任からわずか3ヶ月で辞任したマーク・ミリガン(元ジェフユナイテッド)に代わるコーチとして、代表のコーチを務める他、U23代表のコーチも同時に務めることが発表されており、明日から始まるマレーシア代表合宿にも参加すると言うことです。

    バクスター氏のコーチ就任は「長期の計画に基づいたもの(!)」だと説明したピーター・クラモフスキー監督は、バクスター氏は当初はU23代表のコーチとして採用したが、ミリガン氏が辞任したことで、A代表も合わせてコーチしてもらうことにしたと説明しています。なお、これに関連しているかどうかは不明ですが、今回の代表合宿にはJDTのU23チームJDT IIからアリフ・アフマド(22)とシャフィザン・アルシャド(20)、スランゴールFCのU23チームスランゴールFC IIからはいずれも20歳のハイカル・ダニシュとアイマン・ハキムがそれぞれ選ばれています。またいずれもタイ1部で15位に終わったナコーンパトム・ユナイテッドで今季プレーしたファーガス・ティアニー(22、JDTからローン移籍)、モハマド・アブ・カリル(20、スランゴールFCからローン移籍)らも今回の代表合宿に招集されており、全参加者38名中で見ても、U23の選手は前述の6名を含めて全13名と全体の三分の一を占めています。

    4月27日のニュース:マレーシアカップ決勝<br>・ジョホールが優勝し3季連続国内三冠達成、主力を欠くパハンもあと一歩までジョホールを追い詰める

    4月27日に今シーズンの最終公式戦となる2024/25マレーシアカップの決勝が行われ、既にリーグ戦とFAカップの国内二冠を達成していたジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が、スリ・パハンFCを逆転で破り、2022年、2023年に続く3季連続の国内三冠を達成しています。

    今からおよそ104年前の1921年(大正10年)8月20日に始まったマレーシアカップは、同年9月に始まったサッカー天皇杯(天皇杯JFA全日本サッカー選手権)とともに、アジア最古のカップ戦の一つです。日本が当時の英領マラヤを占領した1942年から1945年まで、そして戦後の混乱期となった1946年から1947年までは中断されましたが、その時期を除く毎年開催された大会は今回が第98回大会となりました。

    マレーシアサッカーの歴史を簡単に紐解くと、FAカップは1990年に始まった比較的新しい大会です。また現在行われている国内リーグは、1974年からマレーシアカップの予選ラウンドとして行われていたものが独立、発展したもので、伝統という点ではマレーシアカップには遠く及びません。これに対して各州を代用するチームの対抗戦として始まったマレーシアカップは、サポーターにとっては自分の出身地のチームを応援する、いわば「甲子園」。そもそも「クラブ」という概念がなかったため、例えばスランゴール州を代表するのはスランゴール州サッカー協会チーム(スランゴールFA)の1チームのみ、ジョホール州を代表するのはジョホール州サッカー協会チーム(ジョホールFA)と各州から1チームのみの出場となっていたことも甲子園と重なります。このためマレーシアサッカーの古い記録では、このFAという名のつくチームが散見されますが、その理由にはこのような背景があります。

    話が逸れてしまいましたが、マレーシアサッカーの伝統を引き継ぐマレーシアカップの特に決勝は現在でもシーズン最大の注目を集める試合で、、昨年の決勝戦JDT対トレンガヌは公式発表80,550人、一昨年の決勝戦JDT対スランゴールは同79,98人と、どのチームが決勝に駒を進めても85,500人収容のブキ・ジャリル国立競技場は、毎回ほぼ満員となります。

    しかし今大会はリーグ覇者で今季無敗のJDTとリーグ8位のスリ・パハンの対戦ということもあってか、試合の1週間前にはおよそ60%のチケットしか売れていないと報じられていました。それでも蓋を開けて見れば、そこはマレーシアカップ、以下の通り55,000人を超える観衆が集まりました。

    ちなみにスタジアム周辺も結構な人出でした。特に今季最終戦ということもあり、ユニフォーム(大半がコピー商品)を売る屋台があちこちで今季の各チームのユニフォームを1枚20リンギ(1リンギはおよそ30円)で叩き売りしていました。


    なお試合前にJDTのサポーターグループ「ボーイズオブストレイツ」が、以下のようなコレオを披露していました。JDTにはサザン・タイガーズ「南の虎」、対するスリ・パハンにはエレファンツ「象」の愛称があることから、この図柄になっています。また書かれた文字は「いなくなっても悲しまない。絶対に。」のような意味ですが、これはスリ・パハンFCが今季をもってスーパーリーグを撤退するという話があることに関連するものです。

    以下がこの試合の両チームの先発XI。スリ・パハンは今季8ゴールでチーム得点王のFWクパー・シャーマンが警告累積により出場停止、またMFマヌエル・イダルゴはJDTからのローン移籍中のためこの試合はベンチ外と、主力の2選手を欠いています。一方のJDTは最終26節に試合がなかったため、4月16日以来の試合で休養十分です。

    試合の方は、開始からJDTが優勢に試合を進めるも、要所でのパスをスリ・パハンの選手が体を張ってことごとくカット。決定機を作らせない展開の中、なんと先制したのはスリ・パハンでした。14分にエセキエル・アグエロの左コーナーキックをアレクサンダー・ツヴェトコヴィッチが頭で合わせますが、これはマレーシア代表GKでもあるJDTのGKシーハン・ハズミがブロック。しかしそこ詰めていたT・サラヴァナンがそのこぼれ球を蹴り込んで、スリ・パハンが先制します。しかし34分にエセキエル・アグエロがこの日2枚のイエローを出されてしまい、退場となります。ちなみにハイライト映像ではヘベルチとアグエロの接触シーンが繰り返されていますが、2枚目のイエローは、そのプレー自体ではなく、その直後にベルグソン・ダ・シルヴァが倒れたアグエロを起こそうとした挑発に乗せられてしまった結果です。(同時にベルグソンにもイエローカードが出ています。)スランゴールFCとのFAカップ決勝でアレクサンダー・アギャルカワが反則覚悟で削られたように、JDTはキーになる選手を徹底的に潰しにくる戦略が得意ですが、この試合ではラズラン・ジョフリ主審の判定が一定しなかったこともあり、スリ・パハンには不利にも取れる判定が何度か見られた結果の退場劇のように見えました。ちなみに退場になったアグエロ選手はピッチを去る際に審判に向かって”How much? How much they pay?”と言っているようです。

    チームの司令塔が早い時間帯に退場となったスリ・パハンですが、前半はこの1点のリードを保って終了します。

    後半開始にJDTのエクトル・ビドリオ監督は、この日精彩を書いていたフアン・ムニスとナチョ・インサに代えて、ロメル・モラレスとイケル・ウンダバレナを投入し、より攻撃的な布陣へとシフトします。そして54分には右サイドのアリフ・アイマンのクロスにゴール前でJDTのオスカル・アリバスとスリ・パハンのアズリフ・ナスルルハクが交錯、長時間のVARが介入した後、JDTはPKを獲得します。(これも映像を見ると、アズリフが前、アリバスがその背後という位置関係で、しかもアズリフとアリバスがほぼ同時にボールに触れているように見えます。)このPKをベルグソンが決めて、JDTがついに同点に追いつきます。

    すると今度はJDTのDFパク・ジュンヒョンがミコラ・アハポフの足を狙ったタックルで2枚目のイエローで退場となり、なんと両チームが10人となる激しい試合となります。しかし自力に勝るJDTはペースを落とすことなく攻め続けると、最後はやはりこの人でした。なお先週のMリーグアウォーズで4季連続のMVPに選ばれたアリフ・アイマンが74分にヘベルチからのロングパスを右サイドで受けると、相手DFをかわして体をひねりながら狭いニアへ狙い済ましてシュート。このボールはスリ・パハンGKザリフ・イルファンが触れることはできたものの、そのままゴールイン。これが決勝点となったJDTが逆転で勝利を収め、通算5度目となるマレーシアカップ優勝を果たしています。なお決勝点を決めたアリフ選手はこの試合のMOMに選ばれています。

    2024/25マレーシアカップ決勝
    2025年4月28日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
    ジョホール・ダルル・タジムFC 2-1 スリ・パハンFC
    ⚽️ジョホール:ベルグソン・ダ・シルヴァ(54分PK)、アリフ・アイマン(74分)
    ⚽️スリ・パハン:T・サラヴァナン(14分)
    MOM:アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジムFC)

    この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

    敗れたスリ・パハンのファンディ・アフマド監督は、マレーシアカップ決勝戦における審判の質について、試合後の会見で問われるとコメントを控えています。この試合の主審をつとめたラズラン・ジョフリ主審は、昨年11月のJDT対ペラFCの試合で、JDTにPKを与えた判断と、JDTのアリフ・アイマンとペラのトミー・マワトの間の取っ組み合いを制御できなかったことで2試合の割り当て停止処分を受けた「前科」があります。ファンディ監督は、試合はチームがベストを尽くした結果であり、審判の質については試合を見たメディアが判断すべきと述べ、自身は審判にコメントはしないと述べています。その一方で試合中に退場者が出たことには失望し、それは明らかにチームのパフォーマンスに影響が出たとも話しています。なお、そのような審判をそもそもJDTの出場するこの決勝戦で起用したマレーシアサッカー協会(FAM)の意図も不明です。

    4月24日のニュース<br>・アリフ・アイマンが前人未到の4季連続MVP獲得-Mリーグアウォーズ<br>・今週末のマレーシアカップ決勝はチケット売り上げが60%まで上昇<br>・マンU対アセアンオールスターズ戦をマレーシア代表2選手が辞退<br>・クラモフスキー監督はアジア杯前1ヶ月間のシーズンオフに懸念

    今季2024/25シーズンが終了し、各クラブの補強に関する様々な情報がSNSに流れています。噂レベルのものもあれば、ほぼ確定というものもありますが、そんな中で今季は13チーム中12位に終わったヌグリスンビランFCに関するニュースが目立ちます。今季から加入した佐々木匠選手にシーズン半ばで早々と契約延長オファーを出すなど積極的に動いたクラブは、前スランゴールFC監督のニザム・ジャミル氏の就任が秒読みとされている他、佐々木選手に続く日本人選手獲得にも動いているとされており、今オフシーズンの注目のクラブとなりそうです。

    アリフ・アイマンが前人未到の4季連続MVP獲得-Mリーグアウォーズ

    4月23日に2024/25シーズンのナショナルフットボールアウォーズ(マレーシア語ではABK)表彰式が行われ、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のMFアリフ・アイマンが前人未到の4季連続となるMVPを受賞しています。23歳のアリフ選手は今季はリーグ戦の出場21試合全てに先発し7ゴール、7アシスト、カップ戦も含めると12ゴール、13アシストを記録しています。

    4季連続のMVP受賞は、これまでやはりJDTでもプレーしたノーシャルル・イドラン・タラハがクランタンFA(当時)時代に2010年から2012年の3季連続MVP受賞を更新する新記録となっています。

    またアリフ選手は、MVPの他、最優秀MF(初受賞、ただし過去3季は最優秀FWを3年連続受賞)、最優秀ゴール、そしてサポーターが選ぶベストイレブンも受賞しています。

    他の主な受賞者は、アリフ選手のチームメートでもあり、今季リーグ戦で32ゴールを挙げているベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)がリーグ得点王(外国籍選手部門)と最優秀外国籍選手を、最優秀GKはシーハン・ハズミ(3季連続3回目)、最優秀DFはフェロズ・バハルディン(初受賞)と例年同様、JDTとその選手が全17部門中8部門で受賞と他を圧倒する中、ベルグソン選手に次ぐ17ゴールを挙げた帰化選手のパウロ・ジョズエがマレーシア人選手として最優秀FWとリーグ得点王(マレーシア人選手部門)をいずれも初受賞しています。またジョズエ選手のチームメートで、今オフにJDT移籍が濃厚とされているハキミ・アジムがベストヤングプレーヤー賞を受賞しています。

    最優秀監督賞は、リーグ優勝クラブJDTのエクトル・ビドリオ、リーグ2位スランゴールFCの喜熨斗勝史両氏を抑えて、昨季13位のクチンシティFCを4位へと大躍進させたシンガポール出身のアイディル・シャリン監督が初受賞しています。かつてはクダ・ダルル・アマンFCでも指揮を取ったアイディル氏は、2019年、2020年、2021年とこの最優秀監督賞の候補となっていましたが、監督就任2季目のクチンシティFCで嬉しい初受賞となりました。

    2024/25Mリーグアウォーズ各賞受賞者
    最優秀選手:アリフ・アイマン(JDT)
    最優秀GK:シーハン・ハズミ(JDT)
    最優秀DF:フェロズ・バハルディン(JDT)
    最優秀MF:アリフ・アイマン(JDT)
    最優秀FW:パウロ・ジョズエ(クアラルンプールシティFC)
    最優秀監督:アイディル・シャリン(クチンシティFC)
    最優秀外国籍選手:ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)
    最優秀若手選手:ハキミ・アジム(クアラルンプールシティFC)
    最優秀選手(MFLカップ-U23リーグ):ガブリエル・ニステルローイ(JDT II)
    最優秀チーム:JDT
    フェアプレー賞:トレンガヌFC
    得点王(外国籍選手部門):ベルグソン・ダ・シルヴァ(32ゴール)
    得点王(マレーシア人選手):パウロ・ジョズエ(17ゴール)
    得点王(MFLカップ):ガブリエル・ニステルローイ(24ゴール)
    ベストサポーター:ボーイズオブストレイツ (JDT)

    サポーターが選ぶベストXI(オンライン投票による)
    監督:アイディル・シャリン(クチンシティ)
    GK:シーハン・ハズミ(JDT)
    DF:フェロズ・バハルディン、パク・ジュンヒョン(以上JDT)、ジミー・レイモンド(クチンシティFC)
    MF:ノーア・ライネ(スランゴールFC)、フアン・ムニス(JDT)、ダニアル・アミル、ナンド・ウェルター(以上クチンシティFC)
    FW:ファイサル・ハリム(スランゴールFC)、ベルグソン・ダ・シルヴァ、アリフ・アイマン(以上JDT)

    マンU対アセアンオールスターズ戦をマレーシア代表2選手が辞退

    5月28日にクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催されるマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズの試合に出場が発表されていたDFドミニク・タン(サバFC)とMFエセキエル・アグエロ(スリ・パハンFC)がいずれも出場を辞退したことをマレーシアサッカー協会(FAM)が発表しています。

    ジョハリ・アユブFAM会長は、両選手が6月10日に行われる2027アジア杯3次予選のベトナム戦に臨むマレーシア代表に招集される可能性があるとして、アセアン(東南アジア)サッカー連盟(AFF)からの出場要請を拒否せざるを得なかったと説明しています。なおジョハリ会長はAFFからはこの両選手とGKハジク・ナズリ(スリ・パハンFC)の3名のマレーシア選手出場が要請されていたと説明し、FAMは辞退する2選手に代わる選手として5名の代表経験者をリストアップし、AFFにそのリストを提出済みだとしています。なおハジク選手は、そのままマンUとの試合の出場メンバーに残るということです。

    ベトナム代表のキム・サンシク監督が率いることが発表されているアセアンオールスターズにはアセアン諸国から既に17名の選手の参加が決まっており、6月10日にマレーシアと2027アジア杯予選で対戦するベトナム代表からは、MFグエン・クアン・ハイ(1部ハノイ公安FC)、DFドー・ズイ・マイン(1部ハノイFC)、MFグエン・ホアン・ドゥック(2部フードン・ニンビン)のいずれもベトナム代表3選手が出場します。

    今週末のマレーシアカップ決勝はチケット売り上げが60%まで上昇

    今週末4月27日に開催されるマレーシアカップの決勝は今季の最後の公式戦です。リーグ戦、FAカップで優勝を果たしているジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が前人未到の3季連続国内三冠を達成するかどうかに注目が集まっていますが、今季国内無敗のJDTの決勝の相手は、今季リーグ8位で7勝8分9敗のスリ・パハンFCです。2018年のFAカップ優勝以来の国内タイトル獲得を目指すスリ・パハンですが、アルゼンチン出身で今季18試合出場の司令塔マヌエル・イダルゴはJDTからのローン移籍中で、いわゆる「紳士協定」により決勝には出場できず。また同じく今季18試合出場で8ゴールを挙げているエースのクパー・シャーマンは警告累積により決勝出場停止となっており、この試合はJDTに有利な条件しか揃っていません。

    今大会が第98回大会となるマレーシアカップは、天皇杯と並んでアジア最古とされるカップ戦で、決勝は85,500人収容のブキ・ジャリル国立競技場で開催されますが、今回の対戦カード、そして特にJDTの国内無双ぶりもあってか、両クラブのサポーターに割り当てられた33,600枚のチケットを大きく下回る25,000枚ほどのチケットしか売り上げていないことが先週末には報じられていました。

    しかし今週に入ると、リーグ戦やこのマレーシアカップを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は公式サイト上で、チケット売り上げが全体の60%に上っていることを発表しています。なおMFLはのシャズリ・シャリクCEO代行は最終的には80%までチケット売り上げを目指したいとして、オンラインでのチケット購入者を対象として、オートバイや電動スクーター、その他電気製品が当たるラッキードローを開催することも明らかにしています。

    クラモフスキー監督はアジア杯前1ヶ月間のシーズンオフに懸念


    今週末のマレーシアカップ決勝が今季2024/25シーズンの最後の公式戦となるマレーシアリーグ。決勝に進出しているジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)とスリ・パハンFC以外のクラブは既にシーズンオフに入っていますが、6月10日の2027年アジア杯予選のベトナム戦を控えるマレーシア代表のピーター・クラモフスキー監督は、試合までの1ヶ月以上に及ぶこのオフシーズンが代表選に与える影響を懸念していると、英字紙ニューストレイツタイムズの取材で話しています。

    マレーシアはキム・パンゴン前監督(現蔚山HD監督)の下、開催国枠で出場した2007年大会以来16年ぶり(予選突破での出場は1980年以来43年ぶり)の出場となった2023年アジア杯では、国内リーグを中断して大会に臨んだものの2敗1分の成績でグループステージで敗退しています。

    クラモフスキー監督は、東南アジア選手権王者でもあるベトナム戦を前に代表合宿を行い、練習試合を少なくとも2試合は行い、予選突破のキーとなる試合に向けてチームの状態を上げていきたいと話しています。

    直近の5試合だけを見てもベトナム相手に全敗しているマレーシアですが、今年1月から指揮を取るクラモフスキー監督は、今オフシーズンは12ヶ月と長期に渡って続いた今季のマレーシアリーグでの疲れやケガから回復するために重要な期間であることを理解した上で、ベトナム戦には最新の注意を払って準備を行いたいとしています。

    「長いオフシーズンを考えると困難な試合であることは認めるが、試合に向けた準備を行うことは不可能だとは考えていない。ベトナム戦前に選手が試合感を取り戻せるよう練習試合も少なくとも2試合は行いたい。」と述べたクラモフスキー監督は、練習試合の詳細などは近々発表されるだろうと話しています。

    2027年AFCアジア杯予選でF組のマレーシアは、初戦でネパール3−0と下していますが、ベトナムはやはり初戦でラオスを5-0で破り、第1節を終えて得失差でベトナム1位、マレーシア2位となっています。

    4月23日のニュース<br>・6月のベトナム戦はブキ・ジャリル国立競技場で開催<br>・AFC主催大会出場に必要なクラブライセンスを交付されたのは4クラブのみ<br>・ブルネイが17シーズンぶりにマレーシアリーグに復帰濃厚

    2024/25シーズンが終了したマレーシアリーグ。オフシーズンに入るとパウロ・ジョズエ(KLシティFC)のベトナムリーグ移籍、スチュアート・ウィルキン、ドミニク・タン(いずれもサバFC)のタイリーグ移籍など、マレーシア代表選手の国外移籍の噂が飛び交っています。多くのチームで給料未払い問題が報じられる中でプロとしての成果を求めたい選手たちにとっては、自分を評価してくれるところへ移るというこの流れは加速する可能性もあります。

    6月のベトナム戦はブキ・ジャリル国立競技場で開催

    6月10日に予定されている2027年アジア杯3次予選ベトナム戦はクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催されることが発表されています。初戦となった先月3月25日に行われたネパール戦は、マレー半島最南端のジョホール州にあるジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行われ、マレーシアが2−0で勝利しています。

    この発表は、マレーシア代表のロブ・フレンドCEO名で、マレーシア代表の公式SNS、Malaysia NTに投稿されています。

    ネパール戦へ向けての準備は国内トップの設備を持つJDTの練習施設を使用し、ネパール戦は国内No. 1のピッチとされるスルタン・イブラヒム・スタジアムで行われたことから、ピーター・クラモフスキー代表監督は、今予選で最も重要なベトナム戦を初戦と同じスルタン・イブラヒム・スタジアムで行うことも検討していると述べていましたが、結局、マレーシア代表のホームでもあるブキ・ジャリル国立競技場での開催となったようです。なお3月25日のネパール戦の観衆は8,000人を切っており、これはブキ・ジャリル国立競技場で行われた昨年末の東南アジア選手権三菱電機カップのシンガポール戦の30,000人超えを大きく下回っていました。


    このニュースとは直接、関係はありませんが、今年1月1日付けて就任したピーター・クラモフスキー監督は、コーチ陣を同郷のオーストラリア人で固めていましたが、今月4月10日にそのうちの1人で元オーストラリア代表キャプテンのマーク・ミリガン氏が退陣しています。オーストラリア1部のアデレード・ユナイテッドのコーチ職を辞して、今年1月にマレーシア代表のコーチ陣に加わったばかりでしたが、コーチ就任からわずか3ヶ月でチームを去っています。なお40歳のミリガン氏はオーストラリア1部で監督を解任したニューカッスル・ジェッツの新監督候補に名前が上がっているということです。

    AFC主催大会出場に必要なクラブライセンスを交付されたのは4クラブのみ

    2024/25シーズンのAFCクラブライセンスについて、マレーシアの第一審機関(FIB)が詳細を発表し、申請を行った6クラブ中、ライセンスを交付されたのは4クラブだったことを明らかにしています。なおこの2024/25シーズンのAFCクラブライセンスは、来季2025/26シーズンのACLエリートやACL2などAFC主催大会に必要となるライセンスです。

    国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)の公式ホームページでは、今回AFCクラブライセンス交付を申請したのは、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)、スランゴールFC、サバFC、トレンガヌFC、クダ・ダルル・アマンFC、ペナンFCの6クラブで、この内、JDT、スランゴールFC、サバFC、ペナンFCの4クラブにAFCクラブライセンスが交付されたことが明らかになっています。

    JDTのAFC大会での活躍もあり、2025/26シーズンはACLエリート本戦出場枠1、ACL2本戦出場枠1がマレーシアに与えられており、リーグ11連覇の王者JDTはACLエリートに、リーグ2位のスランゴールFCはACL2に、いずれも今季2024/25シーズンに続いて出場することが決まっています。


    MFLの発表後、トレンガヌFCが声明を発表し、2024/25年シーズンのAFCクラブライセンスの取得について、「失敗した」のではなく、「申請を継続する意向がなかった」と説明しています。

    「トレンガヌFCは、AFCライセンス取得申請を締切前に継続しない旨をMFLに正式に通達した。これは、AFC主催大会にマレーシアから出場する2つの枠が、今季スーパーリーグが終了した4月20日前に、JDTとセランゴールFCの2クラブに既に確定してからである。」

    「そのため、クラブはAFCライセンス取得に必要な準備をこの期間内に進めないという決定を下した。なお、AFCライセンスの保持が必要ない東南アジアクラブ選手権「ショッピーカップ」への出場に関しては、何の問題もない。」

    と自身の名で公式SNSに投稿したトレンガヌFCのモハド・サブリ・アバスCEOは、この説明により、サポーターは状況をより正確に理解し、クラブに対する否定的な憶測を避けることを願ってる、としています。

    ブルネイが17シーズンぶりにマレーシアリーグに復帰濃厚

    英字紙ニューストレイツタイムズは、今季はシンガポール1部リーグでプレーしているブルネイのクラブ、ブルネイDPMM FCの来季のマレーシアリーグ入りが濃厚となったと報じています。なおブルネイDPMMは9チームで編成されているシンガポール1部リーグで現在7位につけています。

    ブルネイDPMMは、ホームを首都のバンダル・スリ・ブガワンにあるハサナル・ボルキア国立競技場とするとされていますが、ブルネイで試合をする際にはアウェイチームの移動費と宿泊費を負担する用意があるとも報じられています。

    ブルネイDPMMの参入についてニューストレイツタイムズがリーグを運営するMFLに問い合わせたところ、今月末までとなっている来季2025/26シーズンの国内クラブライセンス交付申請の結果を待つように、という回答を受け取ったいうことです。


    ブルネイDPMMがマレーシアリーグでプレーするのはこれが初めてではなく、2002年から2004年までブルネイ国内リーグで連覇を果たした後、2005/06シーズンにはマレーシア2部(当時)のプレミアリーグに参入しています。そしてこのシーズン3位となって1部スーパーリーグ昇格を果たすと、昇格初年度の2006/07年シーズンには3位、翌年は10位となった後、ブルネイサッカー協会内の問題によりマレーシアリーグを離脱し、翌2009年からはシンガポールリーグに移籍しています。

    シンガポールリーグでも、参入初年度にリーグカップで優勝するなど好成績を挙げましたが、ブルネイ政府によるブルネイサッカー協会への介入を理由に、FIFAがブルネイサッカー協会の資格を停止。この結果、この2009年シーズンは5試合を残してリーグ離脱を余儀なくされています。そしてFIFAの資格停止処分が解除された2012年シーズンから、再びシンガポールリーグに復帰すると、2015年にはリーグ優勝を果たしています。

    ブルネイDPMMは、2017年には再びマレーシアリーグ復帰の意思を表明しましたが、MFLの前身で当時のマレーシアリーグを運営したフットボール・マレーシアLLPが、1)ホームマッチをマレーシア国内で行うこと、2)ブルネイ国籍の選手は外国籍選手扱いとし、他のクラブ同様マレーシア人を中心としたとチーム編成とすることなどをリーグ参入の条件としたことからこの計画は頓挫し、その後もインドネシアリーグやタイリーグ参入を目指す報道などがあったものの、結局、シンガポール1部リーグに残留し、2019年シーズンにはリーグ優勝を果たしています。

    2020年シーズンは新型コロナの影響でシンガポールリーグの開幕が遅れ、さらにブルネイとシンガポール間の移動が制限されたこともあり、結局、前年の覇者がリーグ不参加という事態となりました。さらに翌2021年シーズンもブルネイ政府による国外への移動制限措置が続いたことで、シンガポールリーグ不参加となりました。

    2021年そして続く2022年シーズンはブルネイ国内リーグでプレーしたブルネイDPMMは、2023年シーズンにAFCの承認を経て、シンガポールリーグ復帰を果たし、現在に至っています。

    2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ最終節第26節の結果とハイライト映像<br>・ジョホールは11連覇でしかも3季連続国内無敗、クチンシティ13位から4位へと大躍進

    試合結果の投稿は1ヶ月ぶりとなってしまいましたが、4月19日から20日にかけてマレーシアスーパーリーグの今季2024/25シーズン最終節となる第26節が行われています。今節は試合がなかったジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が、国内3シーズン連続無敗を含めたリーグ11連覇を既に決めており、2位スランゴール、3位サバまでは既に順位が確定するなど、最終節での大きな順位変動はなく、強いて言えば、アセアンクラブ選手権出場枠がかかる4位争いが最終節では注目でした。
     また今季のスーパーリーグは13チーム編成のため、今節第26節はJDTの試合がありません。
    *試合のハイライト映像はアストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

    2位確定のスランゴールは最終戦勝利

    既に今季の2位を確定させていたスランゴールはPDRMとのもう一つの「クラン渓谷ダービー」で対戦し、2-0で勝利しています。

    今季で退団も噂されている元代表GKサミュエル・サマーヴィルが、喜熨斗勝史監督就任以来初先発した試合は、21分にペナルティエリア内での相手のハンドでスランゴールがPKを得ます。しかしロニー・フェルナンデスのキックはPDRMのGKノー・ハキム・ハミダンに止められてしまいます。チャンスは作るもののゴールに至らない、まさに今季を象徴する嫌な雰囲気の展開で、前半は0-0で終了します。

    しかし後半に入り、ゴールを狙う姿勢がより積極的になったスランゴールは49分、相手DFからボールを奪ったアルヴィン・フォルテスがドリブルで一気にペナルティエリア内まで持ち込み、左足を一閃。これが先制ゴールとなり、スランゴールがリードを奪います。その後はスランゴールが追加点を奪えない中、PDRMもなかなか前線までボールが繋がらず、このまま終了かと思われた90+2分でした。途中出場のアレクサンダー・アギャルカワを起点にアリフ・イズワン・ユスラン、ダニアル・アスリ、そしてフォルテスと繋ぎ、最後はヨハンドリ・オロスコがゴール前のこぼれ球を押し込んでダメ押しのゴール。スランゴールがPDRMを突き話し、今季最終戦を勝利で飾っています。

    途中交代したシンガポール代表のサフワン・バハルディンや、期待の大きさに応えられず批判を浴び続けたロニー・フェルナンデスなど、複数の主力選手がチームを去ることが予想されます。中途半端な補強では絶対王者JDTの牙城を崩すことは無理なので、来季はあえて大金をかけて目先の補強を行うよりも、喜熨斗監督のもとでノーア・ライネ、ハリス・ハイカル、ジクリ・カリリなど20代前半の選手を核にした長期的なチーム作りの第一歩を踏み出して欲しいです。

    一方のPDRMは9位で今季を終了しました。開幕後は好スタートを切りながら、シーズン途中の不透明な監督解任劇などもあり、最後はしりすぼみになってしまった印象です。鈴木ブルーノ(今季6得点)、イフェダヨ・オルセグン(同8得点)、シャーレル・フィクリ(同4得点)といった攻撃陣の役者は揃っていながら、今季のゴール数は13チーム中9位、1試合平均1点強の25ゴールと、自慢の攻撃陣までボールがなかなかつながらず、FWが前線で孤立するシーンを多く見たシーズンでした。

    2025年4月19日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
    スランゴールFC 2-0 PDRM FC
    ⚽️スランゴール:アルヴィン・フォルテス(49分)、ヨハンドリ・オロスコ(90+2分)
    MOM:アルヴィン・フォルテス(スランゴールFC)
    PDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発して56分に交代しています。

    4連勝でシーズンを終えたスリ・パハンはマレーシアカップ決勝に弾み

    リーグ戦は今節が最終節ですが、国内サッカーは4月27日のマレーシアカップ決勝が今季最後の試合となります。3シーズン連続の国内三冠を目指すJDTとその決勝で対戦するのがスリ・パハンです。このスリ・パハンはマレーシアカップこそ決勝まで駒を進めているものの、リーグ戦では20試合を終えて3勝8分9敗の11位と低迷していました。

    しかしそこから破壊チームとの対戦か続いたこともあり、この試合も含めて4連勝し、一気に8位まで順位を上げています。カザフスタンリーグ2部の得点王として加入しながら、今季ここまで1ゴールと期待を裏切ったミコラ・アハポフが18分に先制ゴールを決めたスリ・パハンは、粘るペナンに二度追いつかれたものの、アハポフノコの試合2点目となるゴールが決勝点となり、リーグ戦4連勝で来週末のマレーシアカップ決勝に弾みをつけています。

    敗れたペナンは、コーチから昇格した元代表FWのアクマル・リザル監督が成績不振でシーズン半ばで解任されるなど苦しい状況が続き、最終的には10位でリーグを終えています。

    2025年4月19日@MBTスタジアム(パハン州テメルロー)
    スリ・パハンFC 3-2 ペナンFC
    ⚽️スリ・パハン:ミコラ・アハポフ2(18分、87分)、シャズワン・アンディック(57分)
    ⚽️ペナン:アリフ・イクマルリザル(48分)、ステファン・ブルンド(64分OG)
    MOM:ミコラ・アハポフ(スリ・パハンFC)

    3位サバは最終戦を飾れず

    既に3位を確定させていたサバはホームでペラと対戦し0−1で敗れています。

    ペラの守備的な布陣を崩せずにいたサバは、29分にキャプテンのラウィルソン・バトゥイルのクリアミスからオウンゴールで失点すると、42分にはR・デニシュがボールに伸ばした足がペラのダニエル・ハキミの顔に当たり、このプレーでデニシュ選手は一発レッドで退場となってしまいます。結局この1点が決勝点となり、ペラが1−0で勝利し、採取順位を7位としています。

    サバは、既にこのブログでも取り上げたように前インドネシア代表FWサディル・ラムダニは、母国のプルシブ・バンドン移籍が噂されていますが、この他にもいずれも代表でプレーするMFスチュアート・ウィルキン、DFドミニク・タンの両選手のタイリーグ移籍などの話もあり、来季のチームの顔ぶれが大きく変わりそうです。

    またペラは最近になって、給料の未払いが5ヶ月間に渡っていることが明らかになるなど、サッカー界に新たな激震が走っていました。ペラFCのアブドゥル・アジム会長は、ペラFCの経営陣が、近いうちに選手やコーチングスタッフと話し合いを行うということですが、未払い給料については全額支払えるかどうか、またどのような方法で支払うかはまだ確定していないということです。

    さらにアブドゥル・アジム会長は、通信会社XOXが過去3年間でペラFCに3,000万リンギ(1リンギはおよそ32円)を支出してきたが、その資金は既に尽きてしまったとも説明しています。

    2025年4月20日@リカススタジアム(サバ州コタ・キナバル)
    サバFC 0-1 ペラFC
    ⚽️ペラ:ラウィルソン・バトゥイル(29分OG)
    MOM:ルシアーノ・ゴイコチェア(ペラFC)

    連敗ストップのトレンガヌは5位でシーズンを終える

    前々節のスランゴールFC、前節のPDRM FCを相手にいずれも0−1と敗れていたトレンガヌは、ホームに戻りクダ・ダルル・アマンFCを3-0で破ってシーズンを終えています。

    今季チーム最多の4,281人が足を運んだ試合は、前半終了間際のゴールで先制したトレンガヌが、後半に2点を追加して勝利しています。

    一方、やはり給料未払い問題を抱えるクダは、FWベネザー・アシフアがこの試合を前に本国ガーナへ帰国し、この試合では外国籍選手がついにミロス・ゴルディッチ1人となり、また、JDTからローン移籍中だった元代表FWシャフィク・アフマドもベンチ外、など戦力的には明らかに劣勢でした。

    2025年4月20日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
    トレンガヌFC 3-0 クダ・ダルル・アマンFC
    ⚽️トレンガヌ:サファウィ・ラシド(45+4分)、ウバイドラー・シャムスル(75分)、ヌリロ・トゥカタシノフ(90+1分)
    MOM:サファウィ・ラシド(トレンガヌFC)

    クチンシティはクラブ史上最高位の4位達成

    日本人所属クラブ同士の対戦となったこの試合は、谷川由来選手が所属するクチンシティFCが、佐々木匠選手のヌグリスンビランFCを相手に3−1と快勝しています。

    今季のクチンシティは、就任2季目のアイディル・シャリン監督のもと、ジェイムズ・オクウォサや元代表ヌル・シャミル・イズワン、いずれもJDTからローン移籍のダニアル・アミル、ラマダン・サイフラーといった新加入組、そしてアイディル監督がクダ・ダルル・アマンFC監督時代の選手だったシャーリル・サアリ、ロニー・ケルヴィン、チェチェ・キプレらが、今季5シーズン目の谷川選手やジミー・レイモンドなどこれまでクチンシティでプレーしてきた選手らと融合し、昨季の13位(2勝6分18敗)から10勝9分5敗の4位へと大躍進を果たしています。

    またヌグリスンビランは、この試合で敗れて今季は4勝4分16敗の12位となりましたが、シーズン途中に今季加入した佐々木選手との契約延長を発表しており、来季は佐々木選手を中心としたチーム編成となる可能性が高そうです。

    2025年4月20日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
    ヌグリスンビランFC 1-3 クチンシティFC
    ⚽️ヌグリスンビラン:A・セルヴァン(70分)
    ⚽️クチンシティ:ジョーダン・ミンター2(17分、90+6分)、ペトラス・シテムビ(37分OG)
    MOM:ジョーダン・ミンター(クチンシティFC)
    ヌグリスンビランFCの佐々木匠選手は、警告累積のため出場停止でベンチ外でした。
    クチンシティFCの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

    KLシティは最終戦で大勝

    最下位のクランタン・ダルル・ナイムFCをホームに迎えたKLシティFCは二度のリードを追い付かれる危うい展開だったものの、最後は地力の差を見せて突き放しています。

    給料未払い問題を抱えるKLシティは、勝点6剥奪の処分を受けながら今季は6位に終わっています。なおこの試合のゴールで今季はリーグ2位の17ゴールを挙げた、キャプテンでエースのパウロ・ジョズエは、今オフでのベトナムリーグ入りが噂されており、文字通りクラブの顔が移籍となれば、予算の少ないクラブ事情からも大型補強は期待できず、来季は苦しい試合を強いられそうです。

    2025年4月20日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
    KLシティFC 5-2 クランタン・ダルル・ナイムFC
    ⚽️KLシティ:ザフリ・ヤハヤ2(24分、45+1分)、パウロ・ジョズエ(71分)、ハキミ・アジム(75分)、ライアン・ランバート(86分)
    ⚽️クランタン:アダム・ダニアル(45分)、ファズルル・アミル(53分)
    MOM:ザフリ・ヤハヤ(KLシティFC)

    2024/25マレーシアスーパーリーグ最終順位表

    順位チーム勝点
    1JDT2470231090882
    2SEL24521444441628
    3SAB2440117641338
    4KCH24391095382810
    5TRE243598735269
    6#KLC2431114940337
    7PRK2430861036360
    8SRP24297893539-4
    9PDRM242776112536-11
    10PEN242668103137-7
    11*KDA242166122151-30
    12NSE241644162349-26
    13KDN24721211682-66
    チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC, SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC, KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC, PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC, KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
    *クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
    #KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
    2024/25マレーシアスーパーリーグ最終得点ランキング
    氏名所属ゴール
    1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT32
    2パウロ・ジョズエKLC17
    3ジョーダン・ミンターKCH14
    4ルシアーノ・ゴイコチェアPRK11
    ロドリゴ・ディアスPEN10
    ロニー・フェルナンデスSEL10
    アルヴィン・フォルテスSEL10
    ロメル・モラレスJDT10
    9イフェダヨ・オルセグンPDRM8
    クレイトンPRK8
    クパー・シャーマンSRP8
    11アリフ・アイマンJDT7
    ヘベルチ・フェルナンデスJDT7
    ステファノ・ブルンドSRP7
    ジョアン・ペドロSAB7
    サファウィ・ラシドTRE7
    チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC, KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハンFC, PRK-ペラFC、PEN-ペナンFC、SAB-サバFC、PEN-ペナンFC