9月29日のニュース<br>・ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑に新展開-FIFAはイスラエル問題から世間の目を逸らすためにマレーシアに制裁⁉︎<br>・マレーシアサッカー協会は書類提出の際の「軽微なミス」を認めるもヘリテイジ帰化選手の国籍取得の正当性を主張

セレッソ大阪でプレーするマレーシア代表DFディオン・クールズが、Jリーグ移籍後の初ゴールを京都サンガ戦で決めています。マレーシア人選手としてもJリーグ初とな利、本来ならマレーシア国内では大きく報道されそうですが、ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑に揺れるマレーシアサッカー界はそれどころではありません

ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑に新展開-FIFAはイスラエル問題から世間の目を逸らすためにマレーシアに制裁⁉︎

昨日のブログでも書いた通り、本来ならば発表までの手順に時間をかけるべきマレーシアサッカー連盟と国籍を偽装してアジアカップ予選に出場したとされる7名のヘリテイジ帰化選手への制裁措置について、マレーシアの一部メディアはFIFAがこの制裁措置をを唐突に発表したのは、別の目的があるのではと報じています。

ここまでのできこととを改めて時系列で整理すると次のようになります。
6月12日:FIFAがヘリテイジ帰化選手7名の試合出場を許可
6月25日:7名の選手がAFCアジアカップ予選・ベトナム戦に出場
7月5日:AFCが「不服申立ては出されていない」と発表
9月28日:FIFAが一転し、「書類捏造」を理由に制裁処分を発表

当初は正式に出場許可が出ていたため、FIFA自身の判断を覆す形となり、マレーシア国内では「なぜ急に処分を下したのか」という疑問が広がると当時に、FIFAには何か別の目的があるのではという疑惑へ繋がっています。

一部のマレーシアメディアは、FIFAの対応の背後には「イスラエル問題」があり、この「イスラエル問題」から世論の目を逸らすために制裁が行われたのではと分析しています。実際、現在のW杯予選ではイスラエルの参加資格を巡る議論がヨーロッパサッカー連盟(UEFA )内では激化しているとされています。

さらにFIFAとUEFAは2022年にロシアを即座に資格停止とした一方で、パレスチナ自治区への攻撃を続けるイスラエルには同様の措置を取っていないことが、「ダブルスタンダード」であるとして批判が集まっています。

UEFAでは、来週にもイスラエルのW杯予選参加を停止するかどうかの緊急採決が予定されており、可決されれば代表・クラブともに国際大会から締め出される可能性があります。こうした状況の中で、FIFAが「敢えて」マレーシアに焦点を当てたのではないか、という見方が浮上しているのです。

またマレーシアはパレスチナを国家として承認しており、政府も世論もパレスチナ支持を鮮明にしています。その一方でイスラエルとは国交を持たず、強い批判姿勢を示してきました。

その一例が、今月ジョホール州で行われたマレーシア対パレスチナの国際親善試合です。試合前にはジョホール州摂政トゥンク・イスマイル殿下が、パレスチナ代表に250万リンギ(約8900万円)を寄付するという行動も話題になりました。

こういった点を踏まえると、今回のマレーシアへの制裁は、単なる国籍偽装疑惑の問題ではなく、国際政治が深く絡んでいるとの見方も出ています。真相は不透明ですが、FIFAの判断基準に対する不信感と「ダブルスタンダード」批判は、今後さらに強まるかも知れません。

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別のマレーシアメディアは、この状況下で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は著名なサッカー関係者などに個人的に連絡をとり、イスラエルが資格取り消しにならないように手を尽くしたとしています。そして最終的にはアメリカのトランプ大統領まで巻き込み、トランプ大統領はFIFAのジャンニ・インファンティーの会長に対しイスラエルが資格停止された場合には、その影響として2026年北中米W杯の開催が危うくなる可能性も言及したとしていますが、流石にここまで行くと「陰謀論」のようにも聞こえます。

マレーシアサッカー協会は書類提出の際の「軽微なミス」を認めるもヘリテイジ帰化選手の国籍取得の正当性を主張

マレーシアサッカー協会(FAM)が9月29日に声明を発表し、FIFAへの書類提出の際に職員による「軽微なミス」があったことを明らかにし、この「軽微なミス」がFIFAが今回の制裁に踏み切った理由である可能性があると説明しています。

FAMのノー・アズマン事務局長は「職員による書類提出の過程において『軽微なミス』があることが発覚した。FAMはこの事態を重く見ているが、このミスは7名のヘリテイジ帰化選手がマレーシア国籍を持っているという事実には何ら影響を及ぼすものではない。」と述べています。

またFIFAによる7名のヘリテイジ帰化選手とFAMへの制裁措置に対する不服申し立てについては、現時点ではFIFAによる制裁判断を説明する公式文書が届くのを待っている最中だとし、それを受け取った上で、法的手順に則って行う予定であるとも説明しています。

9月28日のニュース<br>・ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑-国外組所属の4クラブは処分対象選手を出場停止に<br>・ヘリテイジ帰化選手強化策の中心人物イスマイル殿下は正当性を主張、さらに「陰謀論」の可能性も示唆

9月26日にFIFAはマレーシア代表でプレーする7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)が捏造書類による国籍偽装を行ったとして、2,000スイスフラン(およそ37万円)の罰金と12ヶ月間に渡るあらゆるサッカー活動への関与の禁止する処分を発表しましたが、この処分が発表されてからおよそ1日が経過し、マレーシアだけでなく世界各地から様々なニュースが入ってきています。

なお処分対象となった7選手は以下の通りです。

  • MFヘクトル・ヘヴェル(29)オランダ出身 
    所属:ジョホール・ダルル・タジム マレーシア国籍取得:2025年3月 
    代表デビュー:2025年3月25日アジアカップ予選ネパール戦 代表戦出場数:2
  • DFガブリエル・パルメロ(23)スペイン出身 
    所属:ウニオニスタス(スペイン3部) マレーシア国籍取得:2025年3月 
    代表デビュー:2025年5月29日親善試合カーボ・ベルデ戦  代表戦出場数:4
  • DFファクンド・ガルセス(26) 
    所属:デポルティーボ・アラヴェス(スペイン1部) マレーシア国籍取得:2025年6月 
    代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:2
  • FWロドリゴ・オルガド(30)アルゼンチン出身
    所属:アメリカ・デ・カリ(コロンビア1部) マレーシア国籍取得:2025年6月 
    代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:2
    • FWイマノル・マチュカ(25)アルゼンチン出身
      所属:ベレス・サルスフィエルド(アルゼンチン1部)マレーシア国籍取得:2025年6月 代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:1
    • FWジョアン・フィゲレイド(29)ブラジル出身 
      所属:ジョホール・ダルル・タジム マレーシア国籍取得:2025年6月 
      代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:3
    • DFジョン・イラザバル(28)スペイン出身 
      所属:ジョホール・ダルル・タジム マレーシア国籍取得:2025年6月 
      代表デビュー:2025年6月10日アジアカップ予選ベトナム戦 代表戦出場数:2

国外組所属の各クラブは処分対象の選手の出場を見送る

渦中の7名のヘリテイジ帰化選手の内、FWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルの3選手はマレーシアスーパーリーグのジョホール・ダルル・タジムでプレーしていますが、残る4選手はいわゆる「国外組」です。この4選手が所属するクラブが次々にこの事態への対応を発表し、4選手全員が出場停止となっています。

国籍偽装疑惑の渦中にいる7名のヘリテイジ帰化選手の1人、DFファクンド・ガルセスが所属するデポルティーボ・アラベスは「クラブは、選手に適用される推定無罪の原則が尊重され、この問題が可能な限り迅速に解決されることを希望しています。」という声明を発表しています。なおガルセス選手は祖母がマレーシア人であることからヘリテイジ帰化選手の資格を満たしているとされています。

また9月27日のラ・リーガ第7節のマジョルカ戦では、ガルセス選手はベンチ外となっています。今季は開幕戦からの6試合全てに先発しフル出場しているアラベス選手を欠くデポルティーボ・アラベスは、前半37分にマジョルカの日本代表FW浅野拓磨選手のゴールで先制を許すと、そのまま逃げ切りを許して今季3敗目を喫するとともに、マジョルカに今季初勝利を献上しています。

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また渦中のヘリテイジ選手の1人であるFWロドリゴ・オルガドが所属するコロンビア1部アメリカ・デ・カリは、FIFAによる裁定を受けてオルガド選手を活動停止処分とすると発表しています。

「当クラブに所属するロドリゴ・オルガドがFIFAより12ヶ月の出場停止処分を受けたことを報告するとともに、当該選手は本日よりこの出場停止処分により当クラブのあらゆる活動への参加を停止することをファンやメディア、また一般に向けて告知する」

さらにクラブの法務部門はマレーシアサッカー協会(FAM)と現在の状況について緊密に連絡を取り合い、FAMと共同でオルガド選手の12ヶ月に及ぶサッカー活動停止処分についてFIFAに対して不服申し立てを行うと発表しています。なおオルガド選手は祖母がマレーシア人であることからヘリテイジ帰化選手の資格を満たしているとされています。

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また7選手の内の1人、DFガブリエル・パルメロが所属するスペイン3部のウニオニスタス・デ・サラマンカはFIFAの裁定を受け取ったことを明らかにするとともに、今後の方針を決定するために情報を収集中だとしています。またその間はパルメロ選手がクラブのあらゆる活動に参加しないことも発表しています。パルメロ選手は祖母がマレーシア人であることからヘリテイジ帰化選手の資格を満たしているとされています。

パルメロ選手は前述のロドリゴ・オルガド選手に続き、クラブから活動停止処分を科された選手となります。

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4人目のFWイマノル・マチュカが所属するアルゼンチン1部ベレス・サルスフィエルドは声明を発表し、クラブがFIFAの裁定について連絡を受けたことを明らかにするとともに、クラブにはこの事態に介入する権限がないとして、今回の裁定に対して不服申し立ては行わないとしています。

「当クラブは、アルゼンチンサッカー協会経由で今回の裁定について、所属するイマノル・マチュカが12ヶ月の出場停止処分を受けたことを告知された。FIFAの(裁定を下した)規律委員会の法的手続きに関与しておらず、その結果として今回の裁定に影響を与えることも不服申し立てを行う立場にはない。」

「この裁定により、決定が覆る通知をFIFAから受け取るまでは、当クラブ所属選手(のマチュカ選手)はクラブの試合に出場することはない。」とも発表したベレス・サルスフィエルドですが、マチュカ選手については今後の事態に発展に沿って支援を続けるとしています。

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「国外組」4選手はいずれも所属クラブから出場停止となっていますが、その一方でジョホールでプレーするFWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルの3選手については、クラブからは何も発表はありません。ジョホールは9月30日にACLエリート第2節でJリーグの町田ゼルビアとホームのスルタン・イスマイル・スタジアムで対戦しますが、果たしてこの3選手は出場するのか否かに注目が集まります。


ヘリテイジ帰化選手強化策の中心人物イスマイル殿下は正当性を主張、さらに「陰謀論」の可能性も示唆

ヘリテイジ帰化選手によるマレーシア代表の強化策の中心人物で、国内リーグで11連覇中のジョホール・ダルル・タジムのオーナーでもある、ジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、マレーシアに対するFIFAの制裁処分に対し、7選手がマレーシアにルーツを持つ選手であることを証明するマレーシア政府による公式文書があると主張しています。

さらに、マレーシアサッカー協会(FAM)は正規の手順に従って申請を行った結果、FIFA自身が一度はこの7選手がマレーシア代表として試合に出場する資格があるとの決定を下したにもかかわらず、今回、FIFAがFAMと7選手に対して唐突とも言える制裁処分を下したことに疑念を抱いているとも述べています。

さらにこの突然の決定変更に対してイスマイル殿下は、その原因について外部からの「見えない力」が働いている可能性もあると述べています。

「今回の制裁措置についてはその理由が明確にされておらず、さらにその不服申し立てが行われる前に今回の措置を公表している点も異例である。この決定が下された際にFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長がいたニューヨークにいた人物は誰だろう。FAMは速やかに不服申し立てを行うべきだ」と自身のSNSに投稿したイスマイル殿下は、この投稿とともに、インファンティーノFIFA会長とインドネシアサッカー協会のエリック・トヒル会長が並んで写っている写真も合わせて投稿しています。

またイスマイル殿下は、国民登録局(NRD)からの正式文書があるとし、「マラヤの虎」の愛称で知られるマレーシア代表の台頭を危惧する者からのどんな圧力にも屈しないと述べて、FIFAとの対決姿勢を明確にしています。
*国民登録局:マレーシアにおける国民の身分登録、身分証の発行、出生、死亡、婚姻、離婚などの公的記録を管理する政府機関。

さらにイスマイル殿下は、マレーシア人の祖父母を持つ外国生まれの人物についてマレーシア国籍を与えるとする連邦憲法第19条に基づく検証プロセスが完了していることを示す国民登録局局長のサイン済みの文書の写真も合わせて投稿しています。

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実はイスマイル殿下が示す国民登録局による文書が今回の争点になる可能性がある部分です。国民登録局によると、今回の7選手への国籍付与については彼らが提出した書類をブラジルやアルゼンチン、スペイン、オランダといった出身国の記録とマレーシア国内の記録とを使って多面的にチェックしたとしています。しかしマレーシア国内に保管されている書類の中に該当するマレーシア人祖父母の出生記録の原本が見つからなかったとして、「証拠に基づいた上でおそらく原本に間違いがないとする」認証コピーを交付したことを明らかにしています。さらに国民登録局局長は全ての手順がマレーシアの法律を遵守したものであり、また憲法で規定されている要件も満たしていると説明しています。

国籍申請に使われた書類が、マレーシア人の祖父母の出生証明の原本ではなく「認証コピー」であることが、おそらく国籍取得のために「捏造」された書類だととされる根拠だと考えられます。しかし、1957年に独立を果たすまでは英国の植民地だったマレーシア(独立当時の名称はマラヤ連邦でマレー半島部のみが英国から独立し、現在のサバ州とサラワク州は1963年のマレーシア成立まで英国の植民地状態が続いていた)は、市民権付与の要件についても紆余曲折を経験しています。戦後の1946年ごろから英国は19世紀後半から20世紀初頭にかけて錫鉱山の労働者として移住してきた華人や、ゴムのプランテーションの労働者として移住してきたインド人も含めたマレー半島に住む市民全員に市民権を付与しようと検討していましたが、それ以前からマレー半島に住むマレー人は、自らの既得権利の侵害につながると考えて猛反発しました。このため、マレー半島に住んでいた市民の中でも、特に移民やその末裔は自身の出自を証明する書類をそもそも持っていなかった可能性もあります。実際に私の周りでも、20世紀初頭に生まれた父親が出生証明を持っておらず、代わりにキリスト教の「洗礼証明書」をもとに身分証明書を作ったという話なども聞いたことあるので、原本がないから「捏造」だと簡単に言い切れない難しさもあります。

9月27日のニュース(2)<br>・スランゴールが喜熨斗勝史監督を解任!今季リーグの監督解任第1号に<br>・マレーシアの至宝、ジョホールのアリフ・アイマンがアジア年間最優秀選手候補に<br>・フットサルアジアカップ予選:マレーシアはG組2位で終了も3大会ぶりの本戦出場決定

スランゴールが喜熨斗勝史監督を解任!今季リーグの監督解任第1号に

開幕から2ヶ月足らずで解任。

今年8月に開幕した2025/26年シーズンのマレーシアスーパーリーグで最初の監督交代劇が起こりました。第5節を終えて2勝3敗でリーグ5位のスランゴールFCが喜熨斗勝史監督の解任を発表しています。スランゴールは本日9月27日にムルデカ・スタジアムで開催されるスランゴール・スルタン・カップでシンガポール選抜と対戦する予定ですが、スランゴールは元スリ・パハン監督で、ベトナム代表監督時代のフィリップ・トルシエ監督の元でコーチも務めたクリストファー・ギャメル氏が監督代行を務めるとも発表しています。

過去2シーズン連続でリーグ2位のスランゴールですが、リーグ11連覇中のジョホールからは23年シーズンは勝点差15、昨シーズンは同18と大きく水を空けられての2位だっただけに今季は捲土重来を期したものの、開幕戦のジョホール戦で0-3と完敗すると、第3節は昨季は12位のヌグリスンビランに1-2と敗れ、さらに第5節ではクチン・シティに0-1で敗れ、今季早くも3敗となっていました。

特に昨季途中までスランゴールを指揮していたニザム・ジャミル監督率いるヌグリ・スンビラン戦での敗戦は、ニザム氏に代わって就任した喜熨斗勝史に大きくプレッシャーがかかるものでした。さらに前年の13位から昨季は4位へとチームを押し上げたシンガポール出身のアイディル・シャリン監督率いるクチン・シティとの上位争いに敗れたことで喜熨斗監督の立場はさらに悪くなっていきました。

また2季連続での出場となったACL2では、スランゴールは9月18日にグループステージ初戦のバンコク・ユナイテッド(タイ)戦に2-4で敗れた一方で、ジョホールが一昨日9月25日アセアン(東南アジア)クラブ選手権ショピーカップのグループステージでほぼ同じスタメンのバンコク・ユナイテッドを4-0と粉砕したことも少なからず影響していそうです。なおスランゴールは、9月24日に行われたショピーカップではBGタンピネス・ローバーズ(シンガポール)では4−2と快勝していましたが、この勝利では喜熨斗勝史監督の首はつながらなかったようです

昨年11月に前述の通りスランゴール監督を辞任したニザム・ジャミル氏に代わり、セルビア代表コーチの職を辞してマレーシアにやってきた喜熨斗氏ですが、これまでクラブチームでの監督経験が全くないこともあり、当初からその手腕に疑問の声が上がっていました。それでもシーズン途中の監督就任ながらも昨季は8勝3分3敗のリーグ2位で終えていました。しかし今季はここまで5勝1分4敗で、通算成績は、国内リーグやACL2など全てを合わせると13勝4分7敗、勝率は5割4分2厘となっています。また特にホームでは8勝1分3敗で勝率6割6分7厘なのに対し、アウェイでは5勝3分4敗の4割1分7厘で、今季リーグ戦での3敗はいずれもアウェイマッチでした。

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今季のスランゴールは国内リーグの他、ACL2とアセアン(東南アジア)クラブ選手権「ショピーカップ」に出場していることもあり、今月9月は12日間で4試合という過酷な日程に直面していましたが、その際には「ローテーションできるほど十分に選手がいない」と発言するほど「正直」である一方で、敗れた試合でも選手を批判せず、常にポジティブな対応は好印象でした。またモティベーター型の指導者であるようなエピソードが度々報じられた他、試合後のスタンドへの挨拶も非常に丁寧で「良い人」であることはサポーターには伝わっていましたが、今のスランゴールに必要なタイプの監督ではなかったのかも知れません。

また今回の解任劇で喜熨斗氏以上に批判を浴びているのがスランゴールの経営・運営陣です。2020年にB・サティアナタン氏(故人)が監督を解任されて以来、過去5シーズンで暫定監督の3名を加えると何と延べ9名がスランゴールの監督を務めています(ただし9名の内、ミヒャエイル・ファイヒテンバイナー(前ミャンマー代表監督、現TSG1899ホッフェンハイム アカデミー監督)とニザム・ジャミルの両氏は監督代行と監督の両方を経験しており、人数では7名)。また前任のニザム監督が辞任した理由の一つとして、ニザム監督が希望する選手ではなく、運営陣が選んだ選手を押し付けられて、戦術的に起用が難しかったと言った話もあり、サポーターの中では問題は監督ではなく運営・経営陣であるという認識があります。現在のCEOであるジョハン・カマル・ハミディン氏が就任したのは2020年ですが、今や年中行事とも言える監督交代の責任を負うジョハンCEOの去就にも注目が集まっています。


マレーシアの至宝、ジョホールのアリフ・アイマンがアジア年間最優秀選手候補に

アジアサッカー連盟AFCは9月25日に2025年のアジア年間最優秀選手(男子)の候補3名を発表し、そのうちの1名に国内リーグ11連覇中のジョホール・ダルル・タジムFCに所属するアリフ・アイマン・ハナピが選ばれています。

マレーシア人選手としては初めて候補に上がったアリフ選手は、アジア杯2023年得点王でもあるカタールのFWアクラム・アフィフ(カタール1分アル・サッド)、サウジアラビアのサーレム・アル=ドーサリー(サウジアラビア1部アル=ヒラル)ともに最終候補3名にノミネートされています。

マレーシアの選手では2000年まで続いていたアジアンオールスター(ベスト11)には、ミュンヘンオリンピックに21歳で出場し、その代表キャップ数195は世界第3位のAFC殿堂入りしているソー・チンアウン、マレーシア史上最高のサッカー選手と言われ、その名が国内トップアカデミーに付けられているモクタル・ダハリ、そしてマレーシア人選手としては1985年に最後の受賞者となったザイナル・アビディン・ハサンらが選ばれたことはありますが、個人表彰へのノミネートはマレーシア人選手初となる快挙です。

マレーシア国内では4年連続のリーグMVPを獲得しているアリフ選手ですが、今回のノミネートで国外クラブからの注目を再度集めることになりそうです。なお全部20となる受賞者発表が行われる表彰式は、10月16日にサウジアラビアのリヤドにあるキング・ファハド文化センターで行われます。

以下は主な賞のノミネートリストです。

男子年間最優秀選手
選手国籍所属
アリフ・アイマンマレーシアジョホール・ダルル・タジム
アクラム・アフィフカタールアル=サッド
サーレム・アル=ドーサリーサウジ・アラビアアル=ヒラル
女子年間最優秀選手
選手国籍所属
ホリー・マクナマラオーストラリアメルボルン・シティ
ワン・シュアン(王霜)中国武漢江大女子
高橋はな日本浦和レッドダイヤモンズ・レディース

男子国際最優秀選手賞

選手国籍所属
ホリー・マクナマラオーストラリアメルボルン・シティ
ワン・シュアン(王霜)中国武漢江大女子
高橋はな日本浦和レッドダイヤモンズ・レディース

男子国際年間最優秀選手(アジア以外のクラブチームに所属するアジア国籍の選手が対象)

選手国籍所属
メフディ・タレミイランオリンピアコス(ギリシャ)
久保建英日本レアル・ソシエダ(スペイン)
イ・ガンイン(李康仁)韓国パリ・サンジェルマン(フランス)

女子国際年間最優秀選手(アジア以外のクラブチームに所属するアジア国籍の選手が対象)

選手国籍所属
ステファニー・キャトリーオーストラリアアーセナル(英国)
浜野まいか日本チェルシー(英国)
長谷川唯日本マンチェスター・シティ(英国)

フットサルアジアカップ予選:マレーシアはG組2位で終了も3大会ぶりの本戦出場決定

パハン州クアンタンで行われていたAFCフットサルアジアカップ2026年大会予選G組の最終第3節が行われ、マレーシアはアジア王者のイランに0-4で敗れてG組2位となったものの、通算成績を2勝1敗とした結果、全2位チームの成績上位7チームに入り、2018年の第15回大会以来、3大会ぶり(2020年大会はコロナ禍のため中止)のフットサルアジアカップ出場を決めています。

初戦のアラブ首長国連邦戦を1-0の僅差で勝利すると、続くバングラデシュ戦を7−1と快勝して2勝とし、やはり2連勝中のイランと最終節で無条件で本選出場となる1位を争って対戦しました。前々回2022年大会準優勝、そして前回2024年大会優勝の成績を残すイラン相手に

タイ出身のラクポル・サイネットガム代表監督は予選を通じて選手たちが闘志を見せてくれたことが勝因と述べ、当初の目的だった本選出場が果たせたことは喜ぶ一方で、来年1月に開催されるアジアカップではより厳しい試合となるとして、インドネシアのジャカルタで開催される本選に向けた準備を早めに始めたいとも述べています。このためラクポル監督は、マレーシアサッカー協会(FAM)のフットサル委員会と会合を持ち、年内12月の東南アジア競技大会通称シーゲームズ、そして翌1月の不ットサルアジアカップと続く試合に向けての準備のための話し合いを持つ予定であるとも述べています。

「できれば10月半ばから1ヶ月あるいは2ヶ月程度の合宿と他国の代表チームとの試合を組んで、選手たちを高いレベルのフットサルに慣れさせたい。」と話しラクポル監督ですが、年末に切れる自身の3年契約の更新については、あくまでもFAMとの話し合いを優先するとし、現状では何も話すことはできないと述べています。

9月27日のニュース<br>・マレーシアサッカーに激震!FIFAがマレーシアサッカー協会と7名のヘリテイジ選手の資格停止処分を発表-偽装書類提出による国籍詐称が理由か

スランゴールの喜熨斗勝史監督解任や、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)のAFC年間最優秀選手ノミネートなど全てのニュースが吹っ飛ぶようなニュースが昨日金曜日の夜に入ってきました。

FIFAがマレーシアサッカー協会と7名のヘリテイジ選手の資格停止処分を発表-偽装書類提出による国籍詐称が理由か

FIFA規律委員会は、FIFA規律規程第22条(文書偽造・改ざんに関する条項)違反を理由にマレーシアサッカー協会(FAM)および7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に対する制裁を科すことを発表しています。FIFAによると、FAMはFIFAに対し選手資格に関する照会を行った際、7名のヘリテイジ帰化選手がアジアカップ予選に出場可能とするために改ざんされた書類を使用していたということです。

なお今回処分の対象となった7名のヘリテイジ帰化選手は以下の通りです。

氏名(出身国)所属(リーグ)
DFガブリエル・パルメロ
(スペイン)
23ウニオニスタス・デ・サラマンカ
(スペイン3部)
DFファクンド・ガルセス
(アルゼンチン)
26デポルティーボ・アラベス
(スペイン1部)
FWロドリゴ・オルガド
(アルゼンチン)
30アメリカ・デ・カリ
(コロンビア1部)
FWイマノル・マチュカ
(アルゼンチン)
25ベレス・サルスフィエルド
(アルゼンチン1部)
FWジョアン・フィゲイレド
(ブラジル)
29ジョホール・ダルル・タジム
DFジョン・イラザバル
(スペイン)
28ジョホール・ダルル・タジム
MFエクトル・へヴェル
(オランダ)
29ジョホール・ダルル・タジム

この7選手はいずれもマレーシアにルーツ(父母あるいは祖父母がマレーシア出身)を持つということで、今年に入ってからマレーシア国籍を取得した選手たちで、この7選手全員が2025年6月10日にクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われたAFCアジアカップ2027年大会3次予選のベトナム戦に出場しました。試合はジョアン・フィゲイレドの先制ゴールでリードしたマレーシアが、ロドリゴ・オルガドのゴールなどで追加点を挙げ、4-0で大勝しましたが、この勝利は対ベトナム戦11年ぶりの勝利でした。

しかしこの試合後に後、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラザバル、エクトル・ヘベルの5選手についてその資格適格性に関する異議申立てがFIFAに寄せられたため、FIFAの規律委員会はすべての証拠を精査し、以下の制裁を決定しました。

1)マレーシアサッカー協会(FAM)はFIFAに対し、35万スイスフラン(およそ6600万円)の罰金をFIFAに支払う。
2)7名のヘリテイジ帰化選手(ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘベル・)は、それぞれ2,000スイスフラン(およそ37万円)の罰金をFIFAに支払う。
3)上記の7選手はさらに、本決定の通知日から12か月間、全てのサッカー関連活動への関与を停止される。なおこの7選手のマレーシア代表としての試合出場資格の適格性については、FIFA規律委員会からFIFAフットボール審判部門へ付託され、審理される。

FIFAからは9月26日付でFAMおよび7名のヘリテイジ帰化選手に対して、FIFA規律委員会による決定の内容が正式に通知されまており、FIFA規律規程の関連条項に従い、通知から10日以内に理由付き決定(不服申し立て)を請求することが可能だということです。

またマレーシアサッカー協会(FAM)も9月27日早朝に公式声明を発表し、FIFAからの通知が届いていることを明らかにした上で、以下のような声明をモフド・ユソフ会長代理名で発表しています。

「FAMは、関係する選手たちとFAM自身が、このプロセス全体を通して誠意を持って、完全な透明性をもって行動してきたことを強調したい。」

「FAMは、定められたガイドラインに従い、すべての書類手続きと関連手続きを透明性をもって管理してきた。実際にFIFAは既に選手たちの資格を審査し、マレーシア代表として出場する資格があることを公式に確認していた。」

「FIFAによる今回の決定に関して、FAMは控訴を行い、選手たちとマレーシア代表チームの利益が常に保護されるよう、利用可能なあらゆる法的手段と手続きを活用する。FAMは、毅然とした行動、国際規則の遵守、そしてマレーシアサッカーの公正性の擁護に引き続き尽力する。」

「また、マレーシア政府およびすべての関係者と緊密に連携し、このプロセスが透明性、公正性、そしてスポーツマンシップ精神に基づいたものとなるよう努めるつもりだ。」とした声明では、控訴手続きおよびFAMによる今後の対応に関する今後の進展については、随時公表されるということです。

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FIFAからの発表には含まれていませんが、勝利していた6月のベトナム戦はもちろん、3月のネパール戦の勝利が剥奪されるなど試合結果が変更となる可能性があるだけでなく、現在出場中のアジアカップ予選すら出場禁止となる可能性すらあります。

報道ではFAMのユソフ・マハディ会長代理が不服申し立てを行う旨の発言をしたとも伝えられており、マレーシアのサッカー界は当面はこの話題で持ちきりとなりそうです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第5節 試合結果とハイライト映像<br>・無敗のチームは早くもジョホールとクアラ・ルンプールの2チームのみに<br>・ヌグリ・スンビランは今季未勝利のイミグレセンと引き分け<br>・クチンがスランゴールに勝利し4位浮上

2025/26年シーズンのマレーシアスーパーリーグ第5節の6試合が9月19日から22日にかけて行われています。第5節を終えて未勝利のチームが5つある一方で、首位のジョホールは開幕から6連勝で2位とは既に勝点差8をつけるなど、興味は優勝争いではなく2位争いになりつつあります。
今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節は鈴木ブルーノ選手が所属するペナンFCの試合がありません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第5節
2025年9月19日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 4-0 マラッカFC
⚽️トレンガヌ:ヤン・マベラ2(26分、45+5分)、ヌリロ・トゥクタシノフ(34分)、カレッカ(45+2分PK)
MOM: ガブリエル・シウバ(トレンガヌFC)

ヤン・マベラの2ゴールなどで大量4点を挙げたトレンガヌが、開幕から引き分けを挟んで4連勝。開幕から好調のアキヤ・ラシドがゴール前でのFWとしてだけでなくパサーとして2点目のゴールを演出するなど、久しぶりの代表招集の可能性を感じさせるプレーを見せました。

開幕からカップ戦も含めて全試合に出場していたCBヴィトール・カルヴァーリョが手の骨折で全治6週間、さらにバーナード・アーサー、ホアン・ダグラスの両FWを欠くなど既に満身創痍のマラッカは、この試合では前半終了間際の45分にチェ・ラシド・チェ・ハリムが自陣ペナルティエリア内でのハンドで退場となった直後に立て続けに失点し、前半だけで4失点して敗れています。なおクラブのヌル・アズミ・アフマド会長はK・デヴァン監督を含めた首脳陣に対し、ここまで未勝利のクラブを立て直す期限を第8節までの2試合とし、結果が出なければ容赦無く監督やコーチを更迭すると明言しています。なお2022年のクラブ創設以来初の1部スーパーリーグに昇格したマラッカは既に成績不振からFWアンデルソン・ブリトーとDFチャールズ・ダバオとの契約を解除したことが明らかになっています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第5節
2025年9月20日@ペナン州立スタジアム(ペナン州バトゥ・カワン)
イミグレセンFC 1-1 ヌグリ・スンビランFC
⚽️イミグレセン:ウィルマー・ホルダン(26分)
⚽️ヌグリ・スンビラン:ジョヴァン・モティカ(45+1分)
MOM: ガブリエル・シウバ(トレンガヌFC)

今季未勝利のイミグレセンと1勝のヌグリ・スンビランの対戦は1−1の引き分けに終わっています。前節のスランゴール戦に勝利し、FAカップもベスト8進出を決めるなど調子が上がっていたヌグリ・スンビランは、試合を優勢に進めながらもイミグレセン相手に痛い引き分けで上位進出の機会を逃しています。そんな中で朗報を探すとすれば、元横浜Y.S.C.C.のルクマン・ハキムが66分に途中出場してマレーシアリーグデビューを果たしたこと。調整不足を理由にニザム・ジャミル監督が起用を避けてきた「早熟の天才」がついにベールを脱いでいます。

イミグレセンは、前節マレーシアリーグデビューを果たしたDFヴィニシウス・ミラーニ、MFペドロ・サントス(ブラジル4部カンピネンセ・クルーベから加入)に続き、この試合ではDFケロン・オーンチャイヤプーム(タイ1部プラチュワプFCから加入)、FWウィルマー・ホルダン(ホンジュラス1部FCモタグアから加入)がリーグ戦初出場を果たすなど合流が遅れていた外国籍選手が揃いつつあり、FAカップでもリーグ2位のトレンガヌに勝利するなど、この日のヌグリ・スンビランのように油断すると足元を掬われかねないチームになりつつあります。

ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手は先発して78分に交代、常安澪選手は佐々木選手と交代で出場し、試合終了までプレーしています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第5節
2025年9月20日@MBSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 3-1 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC
⚽️PDRM:ヘンリ・ドゥンビア2(27分、35分)、イムラン・サムソ(55分)
⚽️クランタン:イフェダヨ・オルセグン(45分PK)
MOM: ヘンリ・ドゥンビア(PDRM FC)

開幕してから2ヶ月も経たないうちに給料未払い問題が報じられているPDRMが、エースのヘンリ・ドゥンビアの2発などで今季初勝利を挙げています。27分の1点目はPDRMに復帰した元岡山のハディ・ファイヤッドが右サイドを駆け上がってからのクロスを押し込んでのゴール、さらにその8分後にはクランタンのオフサイドトラップを抜け出し、GKと1対1となるもそれをかわしてゴールを決めています。この勝利でPDRMは6位に浮上しています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第5節
2025年9月21日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチン・シティFC 1-0 スランゴールFC
⚽️クチン:ラマダン・サイフラー(68分)
MOM: ラマダン・サイフラー(クチン・シティ FC)

今年6月にシンガポール代表の小倉勉氏(現JFA技術委員会副委員長)が辞任した際には、その後任候補として名前も上がったアイディル・シャリン監督率いるクチン・シティが今季2勝目を挙げるとともに4位に浮上しています。今季はジョホールに0−1で惜敗するなど昨季の4位からさらに上位を狙うクラブは、そのジョホールから完全移籍を果たしたラマダン・サイフラーのゴールを守り切って勝利しています。

9月18日のACL2第1節バンコク・ユナイテッド戦で敗れた後、ACL2に加えてアセアン(東南アジア)クラブ選手権(ACC)にも出場するスランゴールには「ローテーションするだけの選手が揃っていない」と会見でぶちまけた喜熨斗勝史監督ですが、前節のヌグリ・スンビラン戦での敗戦に続き、チームはこの日の敗戦で既に今季3敗目。なお、今季既に3敗以上しているのはスランゴールを除けばあとは最下位のペナンのみです。前節のヌグリ・スンビラン戦ではアレクサンダー・アギャルカワ、この日のクチン・シティにはスダニアル・アスリと、昨季は喜熨斗監督率いるスランゴールでプレーした選手たちが移籍先でも主力として活躍する様子を見ると、スランゴールの問題点は選手層の薄さではないような気もします。今週9月24日のACCタンピネス・ローヴァーズFC(シンガポール)で万が一、破れるようなことがあれば、喜熨斗監督の去就問題が起こる可能性があります。

レッドカードによる出場停止処分が明けたクチン・シティの谷川由来選手は、先発してフル出場しています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第5節
2025年9月21日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 8-0 サバFC
⚽️ジョホール:オスカー・アリバス(6分)、ジョアン・フィゲイレド3(11分、23分、45+1分)、ラウル・パラ(44分)、ベルグソン・ダ・シウバ3(61分PK、74分、90+2分)
MOM: ベルグソン・ダ・シウバ(ジョホール・ダルル・タジムFC)

開幕から5連勝中のジョホールが今季最多の8ゴールでサバを破り、連勝を6に伸ばすとともに、早くも2位に勝点差8をつけています。ブラジル出身のヘリテイジ帰化選手ジョアン・フィゲイレドと昨季のリーグ得点王ベルグソン・ダ・シウバが揃ってハットトリックを決めています。なおこれまでインドラ・プトラ・マハユディンの持つスーパーリーグの最多ゴール記録106に並んでいたベルグソン選手は、この試合でのハットトリックで一気に新記録を達成するとともにこれを109にまで伸ばしています。ベルグソン選手は2021年7月にジョホールに加入しており、従来の記録を5シーズンもかからずに更新したことになります。

過去3シーズン続けて3位と安定した成績を収めてきたサバは4試合を終えて未勝利と苦しんでいます。パク・テス(PDRM FCへ移籍)、サディル・ラムダニ(インドネシア1部プルシブ・バンドンへ移籍)その安定した成績を支えていた外国籍選手がチームを去っただけでなく、オン・キムスウィー前監督(現インドネシア1部プルシク・ケディリ)を引き止めることができなかた影響が昨シーズン後半あたりから見えていましたが、今季は開幕らそれが明らかになっています。


2025/26マレーシアスーパーリーグ第5節
2025年9月22日@ハサナル・ボルキア国立競技場(ブルネイ)
DPMM FC 0-4 クアラ・ルンプール・シティFC
⚽️クアラ・ルンプール:ユラ・インデラ・プテラ(25分PK)、ヴィクター・ルイス(56分)、サファウイ・ラシド2(64分、84分)
MOM: サファウイ・ラシド(クアラ・ルンプール・シティFC)

DPMMのDFユラ・インデラ・プテラのバックパスをGKハイミ・アブドラ・ニャリンが足で止め損なうお粗末なオウンゴールで先制したクアラ・ルンプールは、後半にはサファウィ・ラシドの2ゴールなどでリードを広げて完勝し、リーグ2位に浮上しています。

一方のDPMMは立ち上がりこそインドネシア代表FWラマダン・サンタナにボールを集めて好機を作りますが、それを逃すとそこからずるずると失点を重ねて敗れています。なおチームはハサナル・ボルキア国王の甥で、今季はタイ1部ラーチャブリーFCに所属するブルネイ代表主将のファイク・ジェフリ・ボルキアの獲得する方針を明らかにしています。サッカーの実力ではなく、育った家庭環境から「世界一裕福な」サッカー選手として知られるファイク選手の加入がどれほど戦力補強になるかはわかりませんが、参入初年度で最下位の屈辱は避けたいところでしょう。


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第5節終了)

チーム勝点
1ジョホール66002632318
2クアラ・ルンプール54101331013
3トレンガヌ5311167910
4クチン42117347
5スランゴール52039816
6PDRM51318806
7ヌグリ・スンビラン412189-15
8クランタン512238-55
9マラッカ403126-43
10サバ4031210-83
11イミグレセン402228-62
12ペナン5014213-111
13DPMM4013210-121

2025/26マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第5節終了)

得点選手名所属
16ジョアン・フィゲイレドジョホール
16ヘンリ・ドゥンビアPDRM
35サファウィ・ラシドクアラ・ルンプール
44アリフ・アイマンジョホール
44ベルグソン・ダ・シウバジョホール
44ジャイロ・ダ・シウバジョホール
44ジョン・イラザバルジョホール
44クリゴール・モラエススランゴール
44イフェダヨ・オルセグンクランタン
44ヤン・マベラトレンガヌ
113ワンジャ・ンガクチン
113ジョン・イラザバルジョホール
113ジョヴァン・モティカクチン
113カレッカトレンガヌ
152常安澪他9名ヌグリ・スンビラン

2025/26ACLエリートとACL2が開幕<br>・ACLエリート リーグステージ第1節:ジョホールはまたもブリーラムに惜敗<br>・ACL2 グループステージ第1節:スランゴールは4失点で黒星スタート

2025/26シーズンのAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)とAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)がそれぞれ開幕し。マレーシアからACLEに出場するジョホール・ダルル・タジムFCとACL2に出場するスランゴールFCは、いずれもタイのクラブと対戦し、ともに敗れています。

2025/26ACLエリート リーグステージ第1節:ジョホールはまたもブリーラムに惜敗

マレーシアリーグ11連覇中のジョホールが対戦したのは、現在タイ1部リーグを4連覇中、しかも過去10シーズンで7度優勝というタイの王者ブリーラム・ユナイテッド。マレーシア関連で言えば、昨シーズンまではマレーシア代表DFディオン・クールズ(現セレッソ大阪)が所属していたチームでもあります。

それぞれの自国リーグを席巻している両クラブですが、奇遇なことに公式戦での対戦は2024/25シーズンのACLエリートが初めてでした。昨年12月3日にジョホールのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行われたリーグステージ第6節では、ジョホールが2名、ブリーラムも1名の退場者を出す乱戦の結果、0-0で引き分けました

東地区12チーム中、上位8チームが進出するノックアウトステージ進出を決めていた両クラブですが、リーグステージ最終第8節の試合数時間前に山東泰山(中国)が「選手の体調不良」を理由に出場を辞退します。これにより山東泰山との試合結果全てが無効となり、山東泰山に敗れていたジョホールは、山東泰山を破っていたヴィッセル神戸の勝点3が無効となったことでリーグ3位に浮上、ノックアウトステージでは悲願のベスト8と進出をかけて同5位のブリーラムとの再戦が決まりました。

しかしホームアンドアウェイ形式で行われた今年3月のノックアウトステージ1回戦でジョホールは、初戦のアウェイマッチでは0−0と引き分けたものの、ホームでスパナット・ムエンターのゴールにより0−1で破れて敗退しています。東南アジアの盟主争いとも言える両チームの対戦は終わってみればジョホールの2分1敗、しかも3試合いずれもクリーンシートを許す屈辱的な試合でした。

そして迎えた今季2025/26ACLEでは、2024年12月以来何と4度目となる両クラブの対戦が実現しています。以下はこの試合の両クラブの先発XIです。半年前の2025年3月の対戦でも先発していたのはジョホールはGKアンドニ・スビアウレ、DFエディ・イスラフィロフ、FWアリフ・アイマンのわずか3名のみ、一方のブリーラムは8選手が前回対戦と同じ顔ぶれで、MFロベルト・ジュリ、SBシェイン・パティナマ、DFフィリップ・ストイコビッチが新たに加わっています。

過去3回の対戦でいずれも無得点のジョホールは、開始23秒でブラジル出身でヘリテイジ帰化選手としてマレーシア代表でもプレーするジョアン・フィゲイレドがゴールかと思われましたが、VARが介入すると直前にフィゲイレドにハンドがあったとして無効となります。その後ブリーラムも6分にロベルト・ジュリからジョホールのDFライン裏に絶妙のパスが出ると、それに走り込んだギリェルメ・ビソリがゴールしますが、こちらもVARが入ってオフサイドと判定されます。しかし28分、ついに均衡が破れます。アリフ・アイマンの右コーナーキックをCBながら現在国内リーグ得点王のジョン・イラザバルが頭で合わせると、このシュートにはブリーラムGKニール・エザリッジが反応よくブロックしますが、そのこぼれ球にアントニオ・グラウデルが反応よく蹴り込み、ジョホールに待望の先制点が入ります。

前半はボール保持率がジョホール49%に対してブリーラムが51%、シュート数(枠内)はジョホール8(2)、ブリーラム5(1)、コーナーキックはジョホールが2、ブリーラムが5、共にイエロー、レッドともなくファウル数はジョホール7、ブリーラム3という数字を残して、後半に入ります。

そして後半の開始5分、ジョホールの隙をついてブリーラムが追いつきます。この試合を通じて効果的なパスで何度もジョホールDF陣を翻弄したロベルト・ジュリがスパナット・ムエンターへパス。これをスパナットが狙いすましてシュートし、同点ゴールが決まったブリーラムが追いつきます。さらにその4分後には、ゴールライン近くでジョン・イラザバルに競り勝ったスパナットがゴール前でフリーとなっていたロベルト・ジュリへパス。これをジュリが落ち着いて決め、ついにブリーラムが逆転します。

負けられないジョホールは81分にはフィゲイレドがヘディングシュートを、90分にはベルグソン・ダ・シウバがシュートを放ちますが、いずれもGKエザリッジがスーパーセーブ連発で凌ぎ、ジョホールはゴールを割ることができず試合は終了。東南アジアの強豪同士の対戦は、またしてもブリーラムに軍配が挙がっています。

2025/26 ACLエリート リーグステージ第1節
2025年9月15日@ブリーラム・スタジアム(ブリーラム、タイ)
ブリーラム・ユナイテッドFC 2-1 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️ブリーラム:スパナット・(50分)、ロベルト・ジュリ(54分)
⚽️ジョホール:ジョアン・フィゲイレド(28分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

2025/26 ACL2 グループステージ第1節:スランゴールは4失点で黒星スタート

一方ACL2では、スランゴールFCがタイのトゥルー・バンコク・ユナイテッドと対戦しています。いずれも昨季は自国リーグで2位のチームですが、スランゴールは優勝したジョホールに勝点18と離されての2位に対し、バンコク・ユナイテッドは優勝したブリーラムとの勝点差はわずか1の2位でした。

そんな両チームの対戦は試合前から不穏な雰囲気でした。スランゴールのウルトラス「ウルトラセル」がこの試合の開始時間に不満を表明しました。「平日の午後6時にキックオフ!? マジで!?」「サッカーは労働者階級のものだ!」と言った横断幕をスタンドに掲げて抗議を行いました。以下はSNS上に投稿されたウルトラセルの声明文で、この中では「午前9時から午後6時まで働く労働者は、スタジアムまでの距離や渋滞状況からこのキックオフ時間では試合開始に間に合わない。放映権や商業価値と同じくらいサポーターのサッカーへの想いは重視すべきで、AFCにはこの後の試合開始時間の再検討を求めたい。」と言ったことが述べられています。ちなみに私も試合開始時間を確認せずに国内リーグ同様午後9時キックオフと思い込んでチケットを買い、結局、試合に間に合わうように職場を出られず観戦できませんでした。(以下はウルトラセルがSNSに投稿した声明文)

そんな試合の両チームの先発XIは以下の通りです。バンコク・ユナイテッドはいずれも今季新加入のFW久乗聖亜選手とシンガポール代表のMF仲村京雅選手が先発しています。ちなみに両選手は昨季はシンガポールのタンピネス・ローヴァーズFCでチームメートでした。

スランゴールサポーターの後押しもないままキックオフとなったこの試合は、開始11分でバンコク・ユナイテッドが先制します。ムフセン・アルガッサニのパスを受けたイリアス・アルハフトがスランゴールDFをかわしてシュート。GKカラムラー・アル=ハフィズが一旦はこのシュートをブロックするも、そのこぼれ球をイリアス選手自身が押し込んでゴールとなります。さらにその4分後には今度はムフセン選手自身が右サイドのジャカパン・プレイスワンからのクロスを頭で合わせて追加点となるゴールを挙げます。

スランゴールは22分、相手のミスからボールを得た右サイドのクエンティン・チェンが得意の低く速いクロスを入れると、クリゴール・モラレスがこれを押し込み1点を返しますが、その1分後には再び右サイドを上がったイリアス選手がシュートを放つと、これがDFケビン・ディーロムラムに当たって角度が変わりそのままゴールインし、バンコク・ユナイテッドが再びリードを2点に広げます。

そして39分にはマレーシア代表でもプレーするDFハリス・ハイカルが久乗聖亜選手との競り合いで挙げた足が九乗選手に当たる不運で1発レッドで退場なり、スランゴールは2点を追う展開の中で10名となってしまいます。

後半に入るとスランゴールが数的不利の中、何度か好機を作ると73分にはクリゴールのシュートをGKパティワット・カーマイが弾くと、マレーシアU23代表FWアリフ・イズワンがこのこぼれ球を押し込み、スランゴールは1点差に迫ります。

スランゴールは今季は終盤の失点が目立つ中、この試合でも84分に左コーナーキックからフィリペ・マイアにヘディングシュートからのゴールを許して万事休す。序盤の大量失点に苦しんだスランゴールは、今季のACL2を黒星でスタートしました。

スランゴールのACL2第2節は、10月1日のアウェイのライオン・シティ・セイラーズFC(シンガポール)戦です。なおこの試合は、車や電車でも行くことができる隣国シンガポールでの開催ということで多くのスランゴールサポーターが押しかけることが期待されましたが、ライオン・シティ・セイラーズFCがアウェイチーム用に用意したのはわずか120枚だということです。試合会場のビシャン・スタジアムの収容人数が2,400名(!)で、AFCの規定ではアウェイサポーター向けのチケットは収容人員の5%が最低ラインということから算定されているようですが、昨季のACL2決勝が同じビシャン・スタジアムで行われた際には、観客が9,737名でしたので、なぜ今回2,400名とされているかは不明です。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

2025/26 ACL2 グループステージ第1節
2025年9月18日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 2-4 トゥルー・バンコク・ユナイテッドFC
⚽️スランゴール:クリゴール(50分)、アリフ・イズワン(54分)
⚽️バンコク:イリアス・アルハフト2(28分)、ムフセン・アルガッサニ、フィリペ・マイア
🟥スランゴール:ハリス・ハイカル(39分)

2025/26マレーシアFAカップ1回戦2ndレグ試合結果とハイライト映像<br>・トレンガヌとクチンシティが逆転でベスト8進出<br>・ヌグリ・スンビランは1stレグの大量得点に守られてベスト8進出<br>・クランタンがKLシティの反撃を抑えて初のベスト8進出

FAカップ1回戦の2ndレグ6試合が行われ、準々決勝進出の6チームが決定し、佐々木匠、常安澪の両選手を擁するヌグリ・スンビランFC、谷川由来選手が所属するクチン・シティFC、鈴木ブルーノ選手が所属するペナンFCと、マレーシアリーグで日本人選手が所属する3クラブ全てがベスト8進出を決めています。残る2チームはジョホール・ダルル・タジムFC対UMダマンサラ・ユナイテッドFCの勝者と、サバFC対ブンガ・ラヤFCの勝者ですが、ジョホールの試合は、ジョホールが出場するACLエリートの試合が9月16日に予定されていたため10月2日に延期されています。またサバの試合は会場となったコタ・キナバルで現在も洪水による被害者が出ている未曾有の豪雨によるピッチコンディション悪化のため延期されています。

試合のハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグ(MFL)の公式YouTubeチャンネルより。

2025/26マレーシアFAカップ1回戦2ndレグ
2025年9月12日@MPSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 1-0 ヌグリ・スンビランFC(通算成績1-5)
⚽️PDRM:ファクルル・アジム(4分)
MOM:ファディ・アワド(PDRM FC)

2ndレグはPDRMが辛勝したものの、1stレグで大量5点を挙げていたヌグリ・スンビランが通算成績5-1としてベスト8一番乗りを決めています。

開幕から1ヶ月半のこの時期に、早くも給料未払い問題がSNS上で噂されているPDRMは、開幕からキャプテンを務めていたミャンマー代表MFチョー・ミン・ウーがトランスファーウィンドウが閉まる直前にトレンガヌに移籍、さらに1stレグでレッドをもらっていたアグブレ・ノエルはこの試合は出場停止と苦しい状況でした。元J岡山のハディ・ファイヤッドが今季初出場を果たしましたが、焼け石に水でした。

一方のヌグリ・スンビランは、これまで「スーパーサブ」として起用されてきた常安澪選手が公式戦初先発を果たす一方で、出場が初期待されていた前JのY.S.C.Cのルクマン・ハキムはベンチ外でした。なお試合後の会見でヌグリ・スンビランのニザム・ジャミル監督は、ルクマン選手については、まだ試合に出場できるだけのフィットネスレベルに達していないと説明しています。

この試合ではヌグリ・スンビランFCの佐々木匠選手はキャプテンとして先発して87分までプレーし、常安澪選手も先発して61分までプレーしています。

なお準々決勝に進出したヌグリ・スンビランは、スランゴールと対戦します。


2025/26マレーシアFAカップ1回戦2ndレグ
2025年9月12日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 9-0 マレーシア大学(通算成績12-1)
⚽️スランゴール:ケビン・ディーロムラム2(12分、48分)、クエンティン・チェン(21分)、クリゴール・モラエス3(45+1分、76分、80分)、アルヴィン・フォルテス(55分)、ザック・クラフ(70分)、ジクリ・カリリ(90+2分)
MOM:ファディ・アワド(PDRM FC)

1stレグでは3−1と勝利していたスランゴールが、3部のマレーシア大学相手に今季最多となる9ゴールを挙げて大勝しています。クリゴール・モラエスがハットトリックを決め、ザック・クラフ(オーストラリア1部アデレード・ユナイテッドから加入)とジクリ・カリリが今季初ゴールを挙げています。

3部のチーム相手に容赦のなかったスランゴールは、準々決勝ではリーグ戦で敗れているヌグリ・スンビランと対戦します。対戦相手が決まった後にスランゴールの喜熨斗勝史監督は(リーグ戦の)リベンジをしたいと話す一方で、本日9月18日のアセアン(東南アジア)クラブ選手権、バンコク・ユナイテッドFC(タイ)に向けて集中したいとも話しています。


2025/26マレーシアFAカップ1回戦2ndレグ
2025年9月13日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 3-0 イミグレセンFC(通算成績 4-2)
⚽️トレンガヌ:ジュニア・ンゴン・サム(18分)、アキヤ・ラシド(32分、54分)
MOM:アキヤ・ラシド(トレンガヌFC)

1stレグでは1-2とイミグレセンに敗れていたトレンガヌが、ホームでの2ndレグで勝利し、通算成績を逆転してベスト8進出を決めています。

今季1部昇格し、リーグ戦未勝利のイミグレセンは、リーグ3位のトレンガヌを破る貴重な今季初勝利を挙げていましたが、その勢いは2ndレグまでは続きませんでした。

トレンガヌはベスト8でクチン・シティと対戦します。


2025/26マレーシアFAカップ1回戦2ndレグ
2025年9月14日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチン・シティ 7-1 DPMM FC(通算成績 9-4)
⚽️クチン・シティ:ワンジャ・ンガ2(2分、53分)、ダニアル・アスリ2(13分、78分)、ユラ・インデラ・プテラ(45+1分OG)、ラマダン・サイフラー(59分)、ジョアン・ペドロ(90+2分)
⚽️DPMM:ラマダン・サンタナ(58分)
MOM:ワンジャ・ンガ(クチン・シティFC)

今季からマレーシアリーグに参入したブルネイのDPMMに公式戦初勝利を献上したクチン・シティ。しかしホームに戻った2ndレグでは7ゴールを挙げる大勝で逆転して準々決勝進出を決めています。スランゴールから今季加入したダニアル・アスリが2ゴール、またリーグ戦3試合で3ゴールを挙げているワンジャ・ンガが2ゴールと新戦力の活躍しています。

DPMMは20分にDFジョーダン・デ・パウラが1発レッドで退場となり、試合の大半を10名でプレーするなど厳しい試合でした。またGKクリスティアン・ナウモフスキが好セーブを連発しなければ、さらなる大量失点の可能性もありました。

クチン・シティの谷川由来選手は先発して、フル出場しています。


2025/26マレーシアFAカップ1回戦2ndレグ
2025年9月14日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
クアラ・ルンプール・シティ 1-0 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC(通算成績 2-3)
⚽️クアラ・ルンプール:ヴィクトル・ルイス(71分)
MOM:ヴィクトル・ルイス(クアラ・ルンプールFC)

クランタンがクアラ・ルンプールの猛攻に耐えて、クラブ史上初のFAカップ準々決勝進出を果たしています。

この試合はスタジアムで観戦しました。試合は開始から終始クアラ・ルンプールのペースで進みました。一旦クアラ・ルンプールがボールを持つと、クランタンはキャプテンでFWのイフェダヨ・オルセグン1人を残して全員が自陣に戻って守る徹底ぶりで、逆にそこからカウンターという戦いぶりでした。

それでもクアラ・ルンプールは何度か好機を得るものの、ほとんどがシュートまで至らず、77分のヴィクトル・ルイスの1点のみに留まり、1-3で敗れた1stレグの得点差を詰めることはできませんでした。またこの試合はキャプテンのパウロ・ジョズエとCBのGGことジャンカルロ・ガリフオコがいずれもベンチ外で、試合の流れを変えることができませんでした。

クランタンはサバFC対ブンガ・ラヤFCの勝者とベスト8で対戦します。


2025/26マレーシアFAカップ1回戦2ndレグ
2025年9月15日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ペナンFC 3-0 マラッカFC(通算成績5-0)
⚽️ペナン:ステファノ・ブルンド(11分)、ハジク・クティ(39分)、チェチェ・キプレ(80分)
MOM:ハジク・クティ(ペナンFC)

リーグ戦では5試合を終えて未だ勝利がないペナンFCですが、FAカップでは1stレグに続き2ndレグも連勝して準々決勝進出を決めています。

ペナンはクラブの下部組織育ちで、代表MFでもあるシャマー・クティ(クアラ・ルンプール・シティ)の弟でもあるハジク・クティがトップチームで嬉しい初ゴールを挙げるなど、今季から1部に昇格したマラッカFCを相手に2試合連続のクリーンシートで完勝しています。

ペナンFCの鈴木ブルーノ選手は73分から出場して試合終了までプレーしています。

ペナンは、ジョホール・ダルル・タジムFC対UMダマンサラ・ユナイテッドの勝者とベスト8で対戦します。

9月10日のニュース<br>・国際親善試合:マレーシアは24年ぶりにパレスチナに勝利<br>・U23アジア杯予選-マレーシアはタイに敗れて3大会連続出場を逃す

現在FIFAランキング125位のマレーシアが同98位のパレスチナと対戦し、開始3分で上げた1点を守り切り、2001年3月以来24年ぶりの勝利を挙げています。

マレーシアが最後にパレスチナに勝利したのは2001年3月25日のW杯2002年大会予選で、そのときにはマレーシアは4-3でパレスチナを破っています。しかしその後はW杯2016年大会予選で再び同組となるもホーム、アウェイとも6−0と大敗しています。

今年1月に就任したピーター・クラモフスキー監督の元、マレーシアにルーツを持つヘリテイジ帰化選手による強化を図っているマレーシアは、FIFAランキング74位のカーボベルデと2度対戦して1分1敗となった以外は、ネパール(同176位)、ベトナム(同113位)、シンガポール(同159位)相手に勝利を収め、今年の成績は3勝1分1敗、現在は2連勝中です。

9月4日のシンガポール戦ではいずれも先発XIに名を連ねたDFディオン・クールズ(セレッソ大阪)、DFファクンド・ガルセス(スペイン1部デポルティーボ・アラベス)が所属クラブへ戻り、またFWファイサル・ハリム(スランゴールFC)は膝のケガと家庭の事情でチームを離脱しており、この日のパレスチナ戦でクラモフスキー監督がどのような布陣で臨むかに注目が集まっていましたが、シンガポール戦に続いて先発したのはFWジョアン・フィゲイレド、FWアリフ・アイマン、MFナズミ・ファイズ(以上ジョホール・ダルル・タジムFC)、MFノーア・ライネ(スランゴールFC)の4名のみでした。

またシンガポール戦では本来のポジションとは異なる右ウィングバックで起用されながら、1ゴール1アシストを記録したスチュアート・ウィルキン(サバFC)、そして左ウィングバックのラヴェル・コービン=オング(ジョホール・ダルル・タジムFC)に代えて、クラモフスキー監督はガブリエル・パルメロ(スペイン3部ウニオニスタス・デ・サラマンカCF)とクエンティン・チェン(スランゴールFC)を左右のウィングバックに起用、DFもハリス・ハイカル(スランゴールFC)、シャールル・サアド(ジョホール・ダルル・タジムFC)、ドミニク・タン(サバFC)といずれも国内組による3バックをGKシーハン・ハズミ(ジョホール・ダルル・タジムFC)の前に配置しています。また初戦では出番がなかったロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)がCFで先発しています。ちなみにこの日の先発XIで帰化選手でないのは、GKシーハン・ハズミ、DFハリス・ハイカル、DFシャールル・サアド、MFナズミ・ファイズ、FWアリフ・アイマンの5名で、これは2024年12月のアセアン(東南アジア)選手権以来最多で、クラモフスキー監督就任後では初めてです。

以下はマレーシアとパレスチナの先発XIです。

この試合も先手を取ったのはマレーシアでした。所属するスランゴールでも今季は精度の高いクロスで得点機を演出してきたクエンティン・チャンが速く低いクロスをゴール前へ出すと、これをジョアン・フィゲイレドがダイレクトで押し込み、開始3分でマレーシアがリードを奪います。このゴールはパレスチナ相手に24年ぶりのゴールでもありました。

このゴールで勢いづいたマレーシアは、その後もシャールル・サードがミドルシュートを、またフィゲイレドやアリフ・アイマンが度々シュートを放ちますが、パレスチナGKラミー・ハマダ(カタール2部アル・マルヒーヤSC)の好守もあり、得点には至りません。

一方のパレスチナもバデル・ムーサ(エジプト1部ペトロジェットSC)が至近距離からシュートを放つ場面もありましたが、GKシーハン・ハズミがやはり好セーブで防ぎ、逆にマレーシアがチャンスを作るも、ガブリエル・パルメロのシュートは相手GKにセーブされてしまいます。

前半を1-0で折り返すと、クラモフスキー監督はドミニク・タンに代えてラヴェル・コービン=オングを投入し、さらに79分には代表戦初出場となるヘリテイジ帰化選手のDFリチャード・チン(スコットランド2部レイス・ローヴァーズFC)がクエンティン・チェンと交代で代表デビューを果たしました。

結局、終わってみればフィゲイレドの3戦連発となるゴールの1点で逃げ切ったマレーシアはこれで3連勝。来月再開するAFCアジア杯予選のラオス戦に向けては準備万端と言えそうです。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより

9月8日のニュース<br>・国際親善試合:マレーシア対パレスチナ-試合前日会見<br>・マレーシアサッカー協会がFIFAの指示に基づき給料未払いのプルリス州サッカー協会を除名処分<br>・プルリス州サッカー協会会長が反論「現在のFAMこそマレーシアサッカーの最大の危機」

国際親善試合:マレーシア対パレスチナ-試合前日会見

FIFAランキング100位以内を目指すFIFAランキング125位のマレーシアは、本日9月8日に同98位のパレスチナと対戦します。

マレーシアにとっては2015年11月以来の対戦となるパレスチナですが、最後にパレスチナに勝利したのは24年以上前のこと。2001年3月25日のW杯2002年大会予選で4-3で破っていますが、その後はW杯2016年大会予選で再び同組となるもホーム、アウェイとも6−0と大敗しています。

今年1月に就任したピーター・クラモフスキー監督の元、マレーシアは、FIFAランキング74位のカーボベルデと2度対戦して1分1敗となった以外は、ネパール(同176位)、ベトナム(同113位)、シンガポール(同159位)相手に勝利を収めており、FIFAランキング100位以内の相手との対戦で、どのようなプレーを見せてくれるかが注目です。

先日のシンガポール戦からは、いずれも先発XIに名を連ねたDFディオン・クールズ(セレッソ大阪)、DFファクンド・ガルセス(スペイン1部デポルティーボ・アラベス)が所属クラブへ戻り、またFWファイサル・ハリム(スランゴールFC)は膝のケガと家庭の事情でチームを離脱しており、守備陣に不安が残る一方で、シンガポール戦を欠場したアルゼンチン出身のヘリテイジ帰化選手FWロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)の出場が期待され、歴史的勝利を挙げた6月のAFCアジア杯予選ベトナム戦の強力FW陣がそろいます。

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そして昨日9月7日には試合前会見が試合会場となるジョホール州のスルタン・イブラヒム・スタジアムで行われています。

24年ぶりの勝利を目指すマレーシアのクラモフスキー監督は、質の高い選手をそろえたパレスチナに対して敬意を払うが、自分たちのプレースタイルを通りにプレーするようにしたいと話しています。

「この試合は我々にとって困難なものになるとは思うが、勇敢に、そして積極的な試合運びを目指し、スペースを上手く活用しながら、ポゼッションサッカーで臨みたい。(9月4日の)シンガポール戦では多くあった得点機を活かすことができなかったので、ゴールエリア内でのパスの精度を上げるようと選出には伝えた」と話しています。

「シュートの精度を上げることも必要で、それができればサポーターを満足させるような試合を見せられるだろう。」と話したクラモフスキー監督は、先発とベンチスタートの選手全員がそれぞれ重要な役割を担っており、全員が全力でプレーすることが重要で、単に個人個人ではなくチームとして機能できるかどうかが最優先されるとも話しています。

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一方パレスチナのイハブ・アブ・ジャザール監督は、開口一番、複数の主力選手がケガのためこの試合を欠場することを明らかにしており、DFムサーブ・アル・バタート(カタール1部カタールSC)、DFモハメド・サレハ、DFアメード・マハイナ(いずれもカタール1部アル・ラーヤンSC)、MFアミード・サワフタ(ヨルダン1部アル・サルトSC)、MFアグスティン・マンズール(パラグアイ1部クラブ・グアラニー)、FWアサド・アル=ハムラウィ(ルーマニア1部CSウニヴェルシタテア・クライオヴァ)といった主力選手が今回のチームには帯同していないと説明しています。

イハブ監督は、主力選手が欠場するこの試合は新たな選手が自身の能力を示す良い機会だと話す一方で、FIFAランキングのポイントを考えると、経験のある選手たちも出場することになるだろうとも述べています。

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パレスチナだけでなく、これまで西アジア諸国との対戦でマレーシアは直近では21試合で3勝、得失差が-41と苦手意識が強く、これがヘリテイジ帰化選手の大量加入で払拭できるのかどうかも、今日の試合の注目点となりそうです。


マレーシアサッカー協会がFIFAの指示に基づき給料未払いのプルリス州サッカー協会を除名処分

マレーシアサッカー協会(FAM)は、傘下のプルリス州サッカー協会(PFA)を除名処分とすることを発表しています。これによりPFAはマレーシア国内でのあらゆるサッカー活動に関わることができなくなります。

FAMのモハマド・ユソフ・マハディ会長代行は、FAMが除名処分前に6ヶ月の猶予を与えて問題解決を求めてきたが、その猶予期間が終了することに伴う処分であり、FAM理事会での決議を経て最終的な判断として除名が決まったと説明しています。

なおユソフ会長代行は、国内リーグ3部のA1セミプロリーグにプルリス州から出場しているプルリスGSA FCについては、PFAとは無関係のため処分の対象外であることも明かしています。

昨年12月にFAMはPFAに対して2019年1月から5月までPFAのテクニカル・ディレクターを務めたマット・ホランド氏(現香港代表コーチ)への給料が未だ支払われていないとしてPFAの資格を一時停止する処分を下し、6ヶ月以内のその支払い指示を出していました。なおFAMは、これらの指示が全てFIFAからのものであるとしています。


プルリス州サッカー協会会長が反論「現在のFAMこそマレーシアサッカーの最大の危機」

FAMによる除名処分に対してプルリス州サッカー協会(PFA)のザムリ・イブラヒム会長は、処分の不当性と州サッカー協会の存在意義を否定するものだと反論しています。

まず、プルリス州に本拠地を持つプルリスGSA FCがPFAとは無関係とする判断についてザムリ会長は、プルリスGSA FCはPFA傘下であるとし、各クラブが所属する州のサッカー協会経由ではなく、FAMが直接、処分を下すのであれば、州サッカー協会の存在意義を脅かすとしています。

「このような判断はFAMの規則に基づいておらず、危険な前例を作ることになる。また州サッカー協会がこれまで担ってきた役割も否定することになり、結局は州サッカー協会は不要ということになるだろう。」

また自身が弁護士でもあるザムリ会長は、PFAの資格停止や除名処分について、その手続きには間違いや矛盾があるとも指摘しています。

「FAMからPFAに宛てて送られた公式文書には問題解決の期限が「6ヶ月」とは明言されておらず、また期限内に解決できなければ「除名」となることも書かれていない。またFIFAがPFAを資格停止あるいは除名を求めた事実も存在しない。未払い給料問題が解決しない場合にFIFAが求めたのは、FAMからPFAへの助成金の20%カットと更なる助成金削減だけである。もしPFAの資格停止や除名がFIFAの指示によるものだと主張するのであれば、FAMはその指示書を公開するべきだ。

さらにザムリ会長は、「FAMは、その傘下にある州サッカー協会が『深刻な規則違反』を行なった場合にはその資格停止や除名の処分を科すことができる」という規則第17項を行使したことについても、PFAがホランド氏に未払いとなっているのは「わずか」90万リンギ(およそ3200万円)であり、それも未払いの罰則として課せられている年5%の利子によって金額が膨らんだものだと説明する一方で、この90万リンギが「深刻な規則違反」であるならば、ペラFCやクランタンFC(現クランタン・レッド・ウォリアーズFC)、マラッカ・ユナイテッドFC、クダ・ダルル・アマンFCなどそれぞれが数百万リンギの給料未払い問題を抱えているクラブやそれを運営する州サッカー協会への処分とPFAに対する処分の違いについての説明をFAMに求めています。

ザムリ会長は、PFAがプルリス州内のサッカー活動にも関わることができないというFAMの発言にも異を唱えて、今後もプルリス州サッカーリーグなどを運営していく方針を明らかにした他、州サッカー協会を蔑ろにして悪しき前例を作ろうとしているFAMこそがマレーシアサッカーの最大の危機であると激しく非難しています。

9月7日のニュース<br>・国際親善試合:マレーシアはシンガポールに辛勝<br>・U23アジア杯予選:マレーシアはティアニーの3発などでモンゴルに大勝

フェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリッド)、ロナルド・アラウホ(バルセロナ)、マヌエル・ウガルテ(マンチェスター・ユナイテッド)らを擁するウルグアイがマレーシアで10月に試合を行うことが明らかになっています。対戦相手となるウズベキスタンサッカー協会が発表したもので、FIFAランキング16位のウルグアイは、ウズベキスタン(同55位)と10月13日に対戦するようです。しかし翌10月14日にはAFCアジア杯2027年予選のマレーシア対ラオス戦がブキ・ジャリル国立競技場で予定されていることから、サッカーファンなら是非とも見てみたい好カードはクアラ・ルンプールではなく、おそらくジョホールのスルタン・イブラヒム・スタジアムあたりでの開催となりそうです。

国際親善試合:マレーシアはシンガポールに辛勝

9月のFIFA国際カレンダーで2試合の国際親善試合を組んでいるマレーシア代表は、9月4日にその初戦となるシンガポール代表戦に臨み、2-1で勝利しています。

かつては同じ国だったマレーシアとシンガポール。マレーシアがあるマレー半島と島国シンガポールの間を流れるジョホール海道を横断して両国結ぶ土手道「コーズウェイ」にちなみ、両国の対戦は「コーズウェイダービー」として互いのサポーターが盛り上が離、また名勝負を生み出してきたマッチアップです。

両国が最後に対戦したのは、昨年末のアセアン(東南アジア)選手権「三菱電機カップ」(2026年大会よりヒュンダイカップ)のグループステージ最終戦でした。この時は、今回同様、マレーシアがシンガポールをホームのブキ・ジャリル国立競技場に迎えて対戦しましたが、結果は0-0の引き分け。この結果、マレーシアはグループ3位隣準決勝進出を逃すとともにグループステージ敗退。三菱電機カップがFIFA国際マッチデー外出会ったことから国内王者のジョホール・ダルル・タジムFCが選手の代表招集を完全拒否し、また前任のキム・パンゴン監督が退任し、代行監督で大会に臨んだなどの側面もありますが、FIFAランキングではシンガポールを上回るマレーシアにとっては屈辱的な引き分けでした。

その後のマレーシアは、前FC東京監督のピーター・クラモフスキー代表監督が就任し、さらに国外生まれのヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ国外生まれの選手)が続々と代表入りした結果、今年6月に行われたAFCアジア杯2027年大会予選では、いずれもヘリテイジ帰化選手によるゴールによりベトナムを4-0で撃破、11年ぶりとなるベトナム戦勝利を記録しています。

そして6月のベトナム戦勝利によりFIFAランキングが125位まで上昇したマレーシアにとって、久しぶりの試合が同159位のシンガポール戦でした。

この日の両チームの先発XIは以下の通りです。

マレーシアはセレッソ大阪でプレーするDFディオン・クールズがキャプテンを務め、そのクールズとDFファクンド・ガルセス(スペイン1部デポルティーボ・アラベス)、MFエンドリック・ドス・サントス(ベトナム1部ホーチミンシティ)の3名が国外組ながら、ヘリテイジ帰化選手7名、帰化選手1名が先発に名を連ねました。またシンガポールは、MF仲村京雅(タイ1部バンコク・ユナイテッド)、イルファンとイクサンのファンディ兄弟、ライハンとハリスのスチュワート兄弟など国外組5名が先発に名を連ねています。

マレーシアは右SBのレギュラー、マシュー・ディヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジムFC)がケガのため今回の代表には招集されておらず、所属するセレッソ大阪で右SBでプレーするディオン・クールズ、あるいはリーグ戦で好調なクエンティン・チェン(スランゴールFC)の起用なども考えられましたが、蓋を開けてみると所属するサバFCではMFのスチュアート・ウィルキンが起用されるサプライズでした。

しかしクラモフスキー監督の起用が当たります。試合開始から積極的に攻めたマレーシアは、26分にエンドリック・ドス・サントスからのパスを受けたウィルキンがシンガポールDFをかわして先制ゴールを挙げ、マレーシアが先制します。前半を1−0で折り返した後半の55分、今度は右サイドのウィルキンからのパスを受けたジョアン・フィゲレイド(ジョホール・ダルル・タジムFC)がこれを押し込んで、マレーシアがリードを2点と広げます。ブラジル出身のヘリテイジ帰化選手であるフィゲレイドは6月のベトナム戦に続く2戦連発となり、この試合ではウィルキンを抑えて、MOMにも選ばれています。

しかしシンガポールは72分に中盤で仲村京雅選手がノーア・ライネ(スランゴールFC)に競り勝って頭で落としたボールを、兄のイクサン・ファンディと71分に交代したイルファン・ファンディ(いずれもタイ1部ブリーラム・ユナイテッド)が、出場からわずか1分でミドルシュートを決めて1点差に迫ります。しかし、シンガポールの反撃はここまで。その後は危なげなく守り切ったマレーシアが最終的には22,329名が集まった観衆の前で勝利し、今年1月のクラモフスキー監督就任以来の通算成績を3勝1分1敗としています。

一方のシンガポールは、6月に小倉勉氏(現JFA副技術委員長)が代表監督を辞任し、かつては国内リーグ最年少監督としてBGタンピネス・ローヴァーズの監督を務めていた35歳のゲビン・リー氏を代表チームコーチから暫定代表監督として起用した初めての試合でした。またこの試合で3試合ぶりに先発した仲村京雅選手はフル出場しています。

なおマレーシアは明日9月8日にジョホール州のスルタン・イブラヒム・スタジアムでパレスチナと、またシンガポールは9月9日にミャンマーとそれぞれ国際親善試合を行います。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTube チャンネルより。

明日のパレスチナ戦はガルセスとクールズ、ファイサルが欠場へ


明日9月8日にマレーシアはパレスチナと国際親善試合を行いますが、前述のシンガポール戦に先発出場したディオン・コールズとファクンド・ガルセスがパレスチナ戦を欠場することを、マレーシアのピーター・クラモフスキー監督が明らかにしています。

マレーシアの好調を支えるヘリテイジ帰化選手の両選手ですが、セレッソ大阪では試合連続先発中のクールズ選手は9月13日の福岡戦に備えて、また英国プレミアリーグのクラブ移籍も噂されているガルセス選手は、、9月14日のアスレティコ・ビルバオ戦に向けて所属するスペイン1部デポルティーボ・アラベスへ戻るということです。

この2選手の離脱に加え、右SBレギュラーのマシュー・デイヴィーズ、MFヘクター・ヘヴェル(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC)と、歴史的快挙となったベトナム戦勝利時の先発メンバー4名を欠くことになります。

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またマレーシア代表からはファイサル・ハリム(スランゴールFC)も離脱することが明らかになっています。シンガポール戦では試合終了間際の交代出場ながら、最も多くの歓声を集めたファイサル選手ですが、膝の負傷に加えて、個人的な理由がチーム離脱の理由とされています。現地メディアでは、夫人が離婚請求をイスラム法裁判所に行ったことが報じられており、これが「個人的な理由」に関連するものだと考えられます。クラモフスキー監督も、自宅から離れたジョホールへ移動するチームに帯同するべきではないと判断したと述べており、まぁサッカーどころではないといったところでしょう。


U23アジア杯予選:マレーシアはティアニーの3発などでモンゴルに大勝

AFC U23アジア杯予選F組の第2節が行われ、マレーシアはモンゴルに7−0で対象し、通算成績を1勝1敗としています。

タイのパトゥムターニーで開催されている予選F組には、開催国タイ、レバノン、マレーシア、モンゴルの4カ国が入っていますが、9月3日の初戦でレバノンに0−1で破れているマレーシアはこのモンゴル戦に敗れればグループステージ敗退が決まる大事な試合試合でした。

地力で勝るマレーシアは開始13分にアリフ・イズワン(スランゴールFC)の先制ゴールでリードを奪うと、その2分後にはアイサル・ハディ(ジョホール・ダルル・タジムFC II)が2点目のゴールを決めてリードを広げます。そこからさらにファーガス・ティアニー(サバFC)が36分に追加点となるゴールを決めて、マレーシアが3−0とリードして前半が終了します。

ティアニーは後半に入っても48分、49分と立て続けにゴールを決めてハットトリックを達成、さらにアリフ・イズワンもこの試合2点目となるゴールを59分に決め、さらにジアド・エル=バシール(ジョホール・ダルル・タジムFC II)が7点目のゴールを68分に決めて完勝しています。

ナフジ・ザイン監督就任以来、U23代表はこれまで4試合を行なっていますが、7月ASEAN(東南アジア)U23選手権のフィリピン戦とインドネシア戦、そして今予選のレバノン戦と3試合で無得点の一方、ブルネイ戦とこの日のモンゴル戦と格下相手にはいずれも7ゴールと容赦なく得点を挙げています。

予選最終戦となる9月9日にはここまで1勝1分のタイと対戦しますが、この試合に勝利すればレバノン対モンゴル戦の結果次第では本戦出場の可能性が残っています。

AFC U23アジア杯予選F組順位表(第2節終了)

順位チーム勝点
1タイ211082+64
2レバノン211032+14
3マレーシア210171+63
4モンゴル2002013−130