11月23日のニュース
AFC U23アジアカップの組み合わせ決定-マレーシアはウズベキスタン、ベトナム、クウェートと同組に

AFC U23アジアカップの組み合わせ決定-マレーシアはウズベキスタン、ベトナム、クウェートと同組に

来年2024年4月にカタールで開幕するAFC U23アジアカップ2024年大会のグループステージ組み合わせ抽選が行われ、マレーシアはウズベキスタン、ベトナム、クウェートと同組のD組に入ることが決まりました。

カタールのドーハで行われた組み合わせ抽選では、各組の組み合わせが以下のように決まっています。

<A組>
カタール(開催国)
オーストラリア(予選I組1位)
ヨルダン(予選A組1位)
インドネシア(予選K組1位)

<B組>
日本(予選D組1位、2016年大会優勝)
韓国(予選B組1位、2020年大会優勝)
アラブ首長国連邦(予選G組1位)
中国(予選G2位)

<C組>
サウジアラビア(予選J組1位、2022年大会優勝)
イラク(予選F組1位、2013年大会優勝)
タイ(予選H組1位)
タジキスタン(予選I組2位)

<D組>
ウズベキスタン(予選E組1位、2018年大会優勝)
ベトナム(予選C組1位)
クウェート(予選F組2位)
マレーシア(予選H組2位)

4月15にから5月3日まで開催されるこの大会では、グループステージ各組の上位2チームがノックアウトステージとなるベスト16に進出します。なおこの大会の上位3チームは2024年パリオリンピックの出場権を獲得し、4位のチームはアフリカサッカー連盟(CAF)のアフリカU23ネイションズカップの4位チームと大陸間プレーオフで対戦し、勝者がパリオリンピック出場権を獲得します。

AFC U23アジアカップには今回が3度目の出場となるマレーシアU23代表ですが、初出場の2018年中国大会では、サウジアラビア、イラク、ヨルダンと同組ながらサウジアラビアを破るなど1勝1分1敗のグループ2位でベスト16に進出したものの、ノックアウトステージでは初戦で韓国に1-2で敗れています。また2022年ウズベキスタン大会では、韓国、ベトナム、タイと同組になり、0勝3敗でグループステージ敗退となっています。

*****

この大会で個人的に気になるのは、マレーシアが「最強」チームを編成できるかどうかです。具体的には、トップリーグでもプレーし、A代表候補にも名前が上がるDFフェロズ・バハルディンやホン・ワンことMFナサニエル・シオ、そして今やA代表の主力となっているMFアリフ・アイマンといったこの年代のトップの選手を抱えるジョホール・ダルル・タジムFCが、このAFC U23アジアカップに出場を許すかどうか、という点です。

クラブオーナーでジョホール州皇太子でもあるトゥンク・イスマイル殿下は、FIFA国際マッチカレンダー外での代表戦にはトップチームの選手の招集に協力しない姿勢を表明しており、昨年末の東南アジアサッカー連盟AFF選手権三菱電機カップでも、その姿勢は変わりませんでした。三菱電機カップは東南アジア域内の大会でしたが、はたしてAFC主催大会でもその姿勢を貫くのかどうか。かつてはマレーシアサッカー協会の会長も務めた経験があるイスマイル殿下の以降次第でマレーシアU23代表の戦力は大きく変わります。


2023マレーシアスーパーリーグ第24節結果とハイライト映像(1)-ジョホールはクチンシティに快勝で来週のACLに弾みをつける

W杯アジア2次予選などで中断されていたマレーシアスーパーリーグがほぼ1ヶ月ぶりに再開し、第24節の1試合が行われています。首位のジョホール・ダルル・タジムFCは既に今季の優勝を決めており、注目は来季から始まるACL2の出場権がかかる2位を争うスランゴールFCとクダ・ダルル・アマンFCの結果と個人タイトル争いとなりそうです。
(試合のハイライト映像はマレーシアンスーパーリーグMFLの公式YouTubeチャンネルより)

2023年11月23日@スルタン・イブラヒムスタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
観衆: 8,441人
ジョホール・ダルル・タジムFC 2-0 クチンシティFC
⚽️ジョホール:ベルグソン・ダ・シルヴァ(34分)、フアン・ムニス(43分)
🟨ジョホール(0)
🟨クチンシティ(1):ジョセフ・カラン・ティー
MOM:ワン・アズライ(クチンシティFC)
ジョホール・ダルル・タジムFCの邦本宜裕選手は先発して57分に交代しています。
クチンシティFCの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

主力選手が11名がマレーシア代表に招集されていたジョホールは、11月21日の台湾戦では90分から交代出場したDFシャールル・サアドや、出場のなかったDFシャーミ・サファリ、MFモハマドゥ・スマレ以外の全員がこの試合ではベンチ外でした。このため、代表だけでなくクラブでもポジションをシーハン・ハズミに奪われているファリザル・マーリアスが今季リーグ戦初先発、また邦本宜裕選手も加入後3試合目となる先発を果たしています。

一方、今季のチーム総得点18点中12点を挙げているFWアブ・カマラが、W杯アフリカ予選に出場中のリベリア代表に招集されているクチンシティは明らかに火力不足。マレーシアンフットボールリーグ(MFL)の公式サイトによると、この試合ではジョホールのシュート数19本(枠内14本)に対して、クチンシティはシュート0本に終わっています。

試合は34分にベルグソン・ダ・シルヴァのミドルシュートで先制したジョホールが、43分にはクチンシティGKワン・アズライが全く反応できないほどのフリーキックをフアン・ムニスが決めてリードを広げると、そのまま危なげなく逃げ切っています。

勝ったジョホールは来週11月28日にACL第5節の川崎フロンターレ戦が控えており、代表戦に出場し、この試合を欠場した主力も万全の体調でアウェイマッチに臨めそうです。ノックアウトステージ進出には、最低でも引き分けが求めらるこの試合は、11月でも日中の気温が30度を超えることもあるマレーシア勢からすれば過酷な気候での試合となりますが、リーグ10連覇の実力を発揮してもらえることを期待したいです。一方、敗れたクチンシティは、来週11月29日にPDRM FCとのチャレンジカップ決勝ファーストレグが控えています。この試合では欠場したアブ・カマラも戻るでしょうから、ベストの布陣で今季初タイトルを目指して戦って欲しいです。

2023マレーシアスーパーリーグ順位表(第24節途中)

順位チーム勝点
1JDT2423109078370
2SEL23171564214352
3KDA23162546252150
4SAB23143657332446
5SRP23135542281444
6TRE23106741291236
7PDRM2310492730-334
8KLC238783837131
9PRK2364132547-2222
10NSE2349102645-2121
11PEN2355132539-1420
12KLU2335152356-3314
13KCH2416171847-299
14KEL23221924102-788
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC

2023マレーシアスーパーリーグ 得点ランキング(第24節途中-記録はMFL公式サイトを参照)

順位選手名(所属チーム)枠内/シュートアシスト
1エイロン・デル・ヴァイエ(SEL)2137/59423
2フェルナンド・フォレスティエリ(JDT)1934/75718
3ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)1834/94420
4アブ・カマラ(KCH)1219/43121
クパー・シャーマン(SRP)1223/43722
6ファイサル・ハリム(SEL)1126/38720
7イヴァン・マムート(TRE)1025/54118
ステファノ・ブルンド(SRP)1020/42021
9フアン・ムニス(JDT)921/44421
10ロメル・モラレス(KLC)817/33219
パウロ・ジョズエ(KLC)825/50420
アリフ・アイマン(JDT)818/431122
イフェダヨ・オルセグン(KDA)815/3118
ウィリアン・リラ(KDA)811/36214
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC

11月23日のニュース
2024/25シーズンのクラブライセンスはクランタンFCを除く13クラブに交付
前スランゴールのヨルダン代表に無期限出場停止処分
U23代表合宿に英国出身のリチャード・チンが初参加
大量の帰化選手について問われたキム監督が台湾メディアに反論

W杯2026年大会アジア2次予選ではキルギス、台湾に連勝し、今年の通算成績を9勝2分2敗で終えたマレーシア代表。FIFAランキングでは格上のキルギスにも勝利したことで、次のランキング発表では120位代も予想されています。代表戦も終わり、国内リーグも今季残り3節となっていますが、早くも秋春制移行の第一歩となる2024/25シーズンに関するニュースが出ています。

2024/25シーズンのクラブライセンスはクランタンFCを除く13クラブに交付

来季2024/25年シーズンのための国内クラブライセンス交付状況が発表され、今季マレーシアスーパーリーグでプレーする14クラブ中、13クラブが来季の国内クラブライセンスを交付される一方で、今季最下位に沈むクランタンFCは未払い給料問題が解決したかどうかについての報告が不十分であることが交付が保留になっています。

国内クラブライセンス交付を行う第一審機関(FIB)のシーク・ナスリ委員長は、ジョホール・ダルル・タジムFC、スランゴールFC、クダ・ダルル・アマンFC、スリ・パハンFC、トレンガヌFC、PDRM FC、ペラFC、ヌグリスンビランFC、ペナンFC、クチンシティFCの10クラブは来季の国内クラブライセンスが交付されたことを明らかにしています、またサバFC、KLシティFC、クランタン・ユナイテッドFCについては、国内クラブライセンスを交付するものの、必要書類の提出が期限を過ぎていた上に、その内容に「誤り」があったことから罰金として2万リンギ(1リンギはおよそ32円)が科されています。

この他、未だ必要書類が提出されていないクランタンFCについては、その遅れに対して罰金2万リンギが科された他、11月30日までに今季の給料未払い問題の解決とその証明を、また12月13日までにFIFAおよびFAMに訴えられている昨季以前の給料未払い問題の解決とその証明を提出することを求め、それが果たされない場合には来季の国内クラブライセンスを交付しないことを表明しています。

また3部に当たるM3リーグの国内クラブライセンス申請については、今季優勝を果たしたイミグレセン(入国管理局)FC、準優勝のKLローヴァーズを含めた7クラブ全てが、ライセンス取得の条件を満たしていないとして、非交付を決めています。この中には、昨季までスーパーリーグでプレーしながら、今季は国内ライセンスを交付されずにセミプロリーグのM3リーグに降格したサラワク・ユナイテッドFCとマラッカFCも含まれています。

クラブが国内クラブライセンスを交付されるためには設備、人件、運営、法務、財務、実務の6つの基準で一定の評価を受ける必要がありますが、さらにFIBは、負債や未払い給料、更には未払いの所得税などがないことの宣誓供述書(宣誓者本人が把握している情報を基に作成した供述書の内容が真実であることを、特定の国家資格保有者の立会いのもとで、宣誓した上で署名している書類のこと)の提出も義務付けています。

*****

クランタンFCはマレーシアスーパーリーグのシーズン最多失点記録を現在102失点で更新中であることは、このブログでも取り上げていますが、そのクランタンFCを指揮するアイルトン・シルヴァ監督が今季残り試合3試合を残してチームを去るようです。2019年にはチェンライ・ユナイテッドを率いてタイ1部リーグを制覇し、この年のリーグ最優秀監督にも選ばれたシルヴァ監督ですが、給料未払いに加えて、経験不足の若い選手で構成されたチームを指揮することは難しかったのか、或いはシルヴァ監督自体も給料未払いだったのかは不明ですが、このままだと来季のスーパーリーグは奇数の13チーム編成となりそうな気配です。

前スランゴールのヨルダン代表に無期限出場停止処分

マレーシアサッカー協会(FAM)の規律委員会が開催され、9月24日にスランゴール州のMBPJスタジアムで行われたマレーシアカップ準々決勝セカンドレグのスランゴールFC対トレンガヌFCの試合で、ハスロル・アミル主審に対して暴行したスランゴールFCのヤザン・アル=アラブに対して、マレーシア国内で行われる全ての試合について無期限の出場停止処分を科すことを発表しています。

この試合でヤザン選手は、試合終了後に激しくハスロル主審に抗議したことからレッドカードを出されましたが、それに激昂しハスロル主審に向かって唾を吐き、その胸を押し、最後は背中を向けたところで尻を蹴るなどの行為に及んでいました。

なおヤザン選手は、その後の10月3日にスランゴールと契約を両者同意のもとで解除しています。現在は無所属ですが、11月21日に行われたFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選のG組第2節ヨルダン対サウジアラビア戦ではヨルダン代表としてベンチ入りしています。

この試合で引き分けたスランゴールは通算成績1-3でトレンガヌに敗れていますが、試合後は審判の判定をめぐってスランゴールFCの関係者と審判団が大荒れとなりましたが、その結果、スランゴールFCのアシスタントチームマネージャーのワン・アジマル氏を含む5名にはそれぞれ罰金1万リンギから1万5000リンギ(1リンギはおよそ32円)と公式戦10試合のスタジアム入場禁止処分が、また保安担当ながら審判に向かって水の入ったボトルを投げるなどしたM・ジャヤバラン氏には罰金2万リンギと2年間の全てのサッカー関連活動禁止処分が出されています。またスランゴールFCもクラブとして2万3000リンギの罰金を科されています。

また同じ規律委員会では、リーグ10連覇を果たしたジョホール・ダルル・タジムFCにも2件で合計3万リンギの罰金処分を科しています。7月22日にジョホール州のスルタン・イブラヒムスタジアムで行われたFAカップ決勝のジョホール対KLシティFC戦では、サポーターに暴力行為があったとして罰金1万5000リンギを、さらにJDTのフットサルチームも5月27日のジョホール対スランゴールMACでサポーターに挑発行為があったとして罰金1万5000リンギが科されています。

U23代表合宿に英国出身のリチャード・チンが初参加

11月13日から一昨日21日までクアラ・ルンプールのKLフットボールスタジアムで行われていたU23代表合宿に英国出身で英国3部のチャールトン・アスレティックに所属するDFリチャード・チンが参加していたと、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。先月10月に就任したばかりのスペイン出身のフアン・トーレス監督率いるマレーシマレーシアU23代表は、来年2024年4月に開催されるAFC U23アジアカップの出場権を得ており、今回の合宿は大会に向けた準備の一環として行われています。

マレーシア人の父親とセイシェル出身の母親を持つチン選手は、合宿途中の11月15日から参加すると、すぐにその存在感を示していたということです。また11月16日にはU23代表のチームメイトとともに、クアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で開催されたW杯予選のマレーシア対キルギス戦も観戦したということです。

今年22歳になるチン選手は、昨年にはマレーシア代表でプレーしたい意思を表明していましたが、この度、マレーシアのパスポート取得に必要な全ての書類が揃ったことから、今回のU23代表合宿への参加が実現したということです。

現在は英国6部のセミプロクラブ、ダートフォードFCに期限付き移籍中のチン選手は、所属先では守備的MFとしてプレーすることが多いようですがが、この合宿ではサイドバックとして、代表でもプレーするサフワン・マズラン(トレンガヌFC)、ジクリ・カリリ(スランゴールFC)、ウマル・ハキム、フィルダウス・ラムリ(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC II)らとのポジション争いに臨んだようです。

AFC U23アジアカップは4月15日から5月3日までカタールのドーハで開かれますが、今年9月にタイで行われた予選H組では、マレーシアはタイに続く2位になったものの、各組2位チームの中で成績上位4チームに入り、前回2022年、2018年大会に続き、2大会連続3回目となる出場権を獲得しています。

大量の帰化選手について問われたキム監督が台湾メディアに反論

一昨日行われたFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選D組第2節で台湾を1-0で破ったマレーシアのキム・パンゴン監督が試合後の記者会見で台湾メディアから出ていた意見を真っ向否定したと、マレーシア語氏のブリタハリアンが報じています。

試合後の記者会見で、台湾側のメディア関係者から代表チームに多くいる「帰化選手」の存在について指摘されたキム監督は「マレーシア代表には『帰化選手』はいるが、彼らは外国籍選手ではなく、マレーシア国民であると」と反論したようです。

さらにキム監督はFIFAワールドカップ2018年大会で優勝したフランスが「帰化選手」のおかげで優勝したことや、アジアでも日本を含めた複数の国が「帰化選手」によって強化されていると述べた上で、「帰化選手」は外国籍選手ではない点を強調しています。

「マレーシア代表にいる多くの帰化選手は、片親あるいは両親がマレーシア出身ながら国外で生まれ育ったヘリテージ帰化選手であり、彼らは外国籍選手ではなくマレーシア国民である。またマレーシア人の血縁を持たない帰化選手もいるが、彼らにとっては国籍を変えてマレーシア人となる決断は簡単ではない。」と説明しています。

「しかも外国で生まれ育った選手は、国籍を変更する前に自分がマレーシア代表となるだけの能力や献身的姿勢、さらには国家に対する忠節を示す必要がある。それを理解した上で、帰化選手の存在を否定するべきではない。」とも話しています。

台湾との試合でマレーシアは先発XIの内、ヘリテージ帰化選手はDFマシュー・デイヴィーズ、DFラヴェル・コービン=オング(以上ジョホール・ダルル・タジムFC)、DFジュニオール・エルドストール(インドネシア1部デワ・ユナイテッド)、DFディオン・クールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)、MFスチュアート・ウィルキン(サバFC)の5名、帰化選手はブラジル出身のパウロ・ジョズエ(KLシティFC)の1名でした。またベンチにはDFダニエル・ティン、FWダレン・ロック(いずれもサバFC)、MFブレンダン・ガン(スランゴールFC)、MFノーア・レイン(フィンランド1部セイナヨエン・ヤルカパッロケルホ)の4名のヘリテージ帰化選手と、ブラジル出身のMFエンドリック・ドス・サントス、ガンビア出身のモハマドゥ・スマレ(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC)の2名の帰化選手も入っています。

2023マレーシアスーパーリーグ第22節結果とハイライト映像(2)-7失点大敗のクランタンは今季総失点もシーズン新記録の102失点

W杯アジア2次予選の裏で、未消化となっていたマレーシアスーパーリーグ第22節の1試合が行われ、5位のサバFCが最下位14位のクランタンFCに大勝して4位に浮上しています。
(試合のハイライト映像はマレーシアンスーパーリーグMFLの公式YouTubeチャンネルより)

2023年11月21日@UITMスタジアム(スランゴール州シャー・アラム)
観衆: 235人
クランタンFC 0-7 サバFC
⚽️ サバ:ジャフリ・フィルダウス・チュウ(25分PK)、ファルハン・ロスラン(29分)リザル・ガザリ(39分)、イルファン・ファザイル(57分)、テルモ・カスタネイラ(68分)、ラモン・マチャド(70分)、S・クマーラン(89分)
🟨クランタン(0)
🟨サバ(0)
MOM:リザル・ガザリ(サバFC)

FIFA国際マッチカレンダー期間に行われたこの試合。サバはエースのFWダレン・ロック、MFスチュアート・ウィルキン、DFドミニク・タンの3人がW杯予選を戦っている代表に招集されており不在です。主力3人を欠くサバにとっては不利な試合かと思われましたが、終わってみれば今季チーム最多の7ゴールを挙げて大勝し、順位も1つ上げて4位となっています。

この試合は9月29日に予定されていたクランタンのホームゲームでしたが、ましたが、当日の豪雨でピッチの状態が悪くなったことから延期となっていました。新たに発表された11月20日は、今度はホームスタジアムのスルタン・ムハマド4世スタジアムが他のイベントで使用できず、結局、この試合は本拠地のクランタン州コタ・バルから450km以上離れた、スランゴール州シャー・アラムのUITMスタジアムで行われています。

試合は25分にテルモ・カスタンヘイラがクランタンのペナルティエリア内で倒されていたPKをジャフリ・フィルダウス・チュウが決めてサバが先制すると、前半だけで3ゴールを挙げたサバがリードします。後半に入ってもイルファン・ファザイルのロングシュートなどで4点を追加したサバが、異なる7選手がゴールを挙げ、7-0で大勝しています。この勝利で勝点45としたサバはスリ・パハンに代わって4位に浮上、一方のクランタンは勝点8のまま最下位に沈んでいます。

なおこの試合で7失点大敗のクランタンは今季リーグ戦での総失点が102(カップ戦も合わせると132)ととなり、更新中のシーズン通算最多失点記録を更新しています。これまでの記録はPDRM FCが2009年に記録した75点(26試合)ですが、すでにこの記録を大幅に更新しているクランタンは今季まだ3試合を残しています。相手はリーグ3位のクダ・ダルル・アマンFCや7位のPDRM FC、そして同じクランタン州に本拠地を持つ12位のクランタン・ユナイテッドとのクランタンダービーも残っており、記録はまだまだ更新されそうです。

給料未払いなどにより外国籍選手が1人もいないクランタンは、マレーシア人選手の流出も続きましたが、トランスファーウィンドウでは給料未払い問題未解決を理由に新規選手獲得を禁じられています。その結果、例えばこの日の試合の出場登録選手20名中、キャプテンで25歳のDFガファール・アブドル・ラーマンと控えで30歳のDFアリプ・アミルディン以外の18名は全員がU23の選手で、中にはU20やU18の選手もそれぞれ数名含まれています。本来ならU23リーグのMFLカップに出場するべき選手が、トップチームの選手不足を補うために駆り出されている格好で、リーグ上位のサバと対峙するには選手のレベルが違いすぎたと言えるかもしれません。。

2023マレーシアスーパーリーグ順位表(第23節終了)

順位チーム勝点
1JDT2322108878167
2SEL23171564214352
3KDA23162546252150
4SAB23143657332446
5SRP23135542281444
6TRE23106741291236
7PDRM2310492730-334
8KLC238783837131
9PRK2364132547-2222
10NSE2349102645-2121
11PEN2355132539-1420
12KLU2335152356-3314
13KCH2316161845-279
14KEL23221924102-788
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC

2023マレーシアスーパーリーグ 得点ランキング(第23節終了-記録はMFL公式サイトを参照)

順位選手名(所属チーム)枠内/シュートアシスト
1エイロン・デル・ヴァイエ(SEL)2137/59423
2フェルナンド・フォレスティエリ(JDT)1934/70718
3ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)1733/90419
4アブ・カマラ(KCH)1219/43121
クパー・シャーマン(SRP)1223/43722
6ファイサル・ハリム(SEL)1126/38720
7イヴァン・マムート(TRE)1025/54118
ステファノ・ブルンド(SRP)1020/42021
9ロメル・モラレス(KLC)817/33219
パウロ・ジョズエ(KLC)825/50420
アリフ・アイマン(JDT)818/431122
フアン・ムニス(JDT)820/42420
イフェダヨ・オルセグン(KDA)815/3118
ウィリアン・リラ(KDA)811/36214
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC

FIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選第2節-マレーシアは2連勝でD組首位浮上

FIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選のD組第2節が行われ、FIFAランキング137位のマレーシアは同152位の台湾と敵地で対戦し、苦しみながらも1-0で辛勝し、2連勝しています。

第1節ではFIFAランキング97位のキルギスをホームに迎え、ロスタイムに挙げた決勝ゴールで4−3勝利したマレーシア。キム・パンゴン監督はキルギス戦に勝利した後も、台湾に敗れることがあればマレーシアは3次予選に進めるだけのチームではないと話し、格上相手との勝利に自信を持った選手たちの気持ちが緩むことを懸念しました。

キム監督は5日前のキルギス戦からFWダレン・ロック(サバFC)、MFブレンダン・ガン(スランゴールFC)、DFドミニク・タン(サバFC)、DFシャールル・サアド(ジョホール・ダルル・タジムFC)の4名に代えて、FWアキヤ・ラシド、MFアフィク・ファザイル(以上ジョホール・ダルル・タジムFC)、パウロ・ジョズエ(KLシティFC)、DFジュニオール・エルドストール(インドネシア1部デワ・ユナイテッド)を起用しています。またキルギス戦同様3-4-3のシステムながら、前線は左からアキヤ・ラシド、パウロ・ジョズエ、ファイサル・ハリム(スランゴールFC)、中盤はラヴェル・コービンオンと、1列下がったアリフ・アイマン(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC)が左右サイドハーフ、インサイドハーフにはスチュアート・ウィルキン(サバFC)とアフィク・ファザイル、そして最終ラインはディオン・クールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)、ジュニオール・エルドストール、マシュー・ディヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジムFC)と、先発11名中、ジョホールの選手が6名という布陣で、この試合ではディオン・クールズがキャプテンとなっています。


試合は開始からマレーシアが積極的に攻め込むものの、かつてのブキ・ジャリル国立競技場のような土も見えるピッチに戸惑い、ボールコントロールに苦しむ場面も見られます。それでも29分にアキヤ・ラシドが、40分にはスチュアート・ウィルキンがシュートチャンスを得るものの、いずれもゴール上にふかしてしまいます。さらにその3分後には、アキヤ選手のパスがDFを振り切って走り込んできたファイサル・ハリムに渡り、GKと1対1の場面を作るものの、ファイサル選手のシュートはゴールポストに弾かれ、決定的なチャンスを逃してしまいます。

試合を押し気味に進めながら前半を0-0で折り返すと、チャンスがありながら得点できない嫌な空気が立ち込める中、キム監督が動きます。62分には本来のMFからこの試合ではFW的な役割を求められていたパウロ・ジョズエと、ボールに絡む場面が少なかったアフィク・ファザイルに代えて、ダレン・ロックとMFエンドリック・ドス・サントス(ジョホール・ダルル・タジムFC)を投入して、状況の打開を図ります。すると72分に右コーナーキックからのクリアボールを繋いだエンドリック・ドス・サントスがシュートを放つと、これは台湾GK潘文傑(パン・ウェンチエ)が弾いたものの、ゴール前に詰めていたダレン・ロックがそのこぼれ球を押し込んで、マレーシアがついに先制します。

その後はギアが上がった台湾に攻め込まれる場面はあったものの、落ち着いた試合運びで台湾の反撃を抑えたマレーシアが2連勝で勝点を6と積み上げた試合でした。その後の試合ではFIFAランキング72位のオマーンが、アウェイゲームで同97位のキルギスに敗れる波乱もあり、D組で唯一2連勝したマレーシアが第2節を終えて、首位となっています。

FIFAワールドカップ2026大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選D組第2節
2023年11月21日@台北陸上競技場(台北市、台湾)
台湾 1-0 マレーシア
⚽️マレーシア:ダレン・ロック(72分)
🟨台湾(2):温智豪(ウェン・チーハオ)、王建明(ワン・チェンミン)
🟨マレーシア(1):パウロ・ジョズエ

試合のハイライト映像。スタジアム・アストロの公式YouTubeチャンネルより

FIFAワールドカップ2026大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選D組第2節
2023年11月21日@ドレン・オムルザコフ・スタジアム(ビシュケク、キルギス)
キルギス 1-0 オマーン
⚽️キルギス:オディルジョン・アブドゥラフマノフ(49分)
🟨キルギス(4):エルジャン・トコタエフ、タミルラン・コズバエフ、オディルジョン・アブドゥラフマノフ、ミルベク・アフマタリエフ
🟨オマーン(1):イサム・アル=サブヒ

FIFAワールドカップ2026大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選D組順位(第2節終了)

チーム得失差勝点
1マレーシア22005326
2オマーン21013123
3キルギス21011403
4台湾200204-40

11月21日のニュース
FAMとキム監督は2025年までの契約延長で合意
W杯アジア2次予選第2節に向けてマレーシア代表が台湾入り
不当解雇を訴えるリム前監督とでペラFCの争いは労働審判所での決着へ

FAMとキム監督は2025年までの契約延長で合意

先日始まったFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選の第1節では、FIFAランキング97位のキルギスをロスタイムのゴールで4-3と破った同137位のマレーシア。そのマレーシアを率いる韓国出身のキム・パンゴン監督との契約は今年末までとなっていましたが、マレーシアサッカー協会(FAM)とキム監督は契約を2年間延長することで合意に達したと英字紙スターが報じています。

昨年1月に前任者で現在スランゴールFC監督のタン・チェンホー氏が、東南アジアサッカー選手権2022年大会で、準決勝へ駒を進められなかった責任を取って辞任し、その後任としてマレーシア代表監督に就任したのが54歳のキム監督でした。2年プラス延長1年のオプションを含む契約内容に同意したキム監督の契約期間が残り2ヶ月を切りながら、契約延長の話が出ていませんでしたが、FAMのハミディン・アミン会長は、キム監督と新たに2025年までの2年契約を結んだことを明らかにしています。

ハミディン会長は、キム監督の博識さと勤勉さを評価した結果の契約延長であったと述べ、今回のW杯予選でマレーシアが目指す3次予選出場を果たせれば、長期政権の可能性も示唆しています。キム監督就任以来、マレーシア代表はFIFAランキングで常用を続け、先月10月には過去18年間で最高位となるFIFAランキング134位となっています。10月のFIFA国際マッチデーで同109位のタジキスタンに敗れて、現在は137位とランキングを下げたものの、W杯予選第1節では同97位のキルギスを破ったことで、次のランキング発表では130位も狙えるだけのポイントを獲得しています。

キム監督が就任してからの21ヶ月でマレーシア代表は25試合で17勝2分6敗、勝率68%という成績を収めています。

W杯アジア2次予選第2節に向けてマレーシア代表が台湾入り

本日11月20日に行われるFIFAワードカップ2026年大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選のD組第2節に向けて、マレーシア代表が試合地の台湾入りしています。

11月16日に行われたD組第1節ではFIFAランキング97位のキルギスをホームに迎え、ロスタイムの逆転ゴールで劇的勝利を挙げた同137位のマレーシアですが、第2節で対戦する同152位の台湾との試合は今予選初のアウェイマッチとなっています。

マレーシア代表のキム・パンゴン監督は、チーム初となるアジア3次予選進出のために最低でも勝点12を獲得することを挙げており、本日の台湾戦に勝利すると、まだD組ではFIFAランキング72位と最高位のオマーン戦を含めて残り4試合で6点獲得とある程度の計算が立ってきます。

台湾は、D組第1節ではアウェイでオマーンに0-3で敗れています。

2019年に東京ヴェルディーの監督も務めた(ただし成績不振のためシーズン途中で解任)ギャリー・ジョン・ホワイト監督率いる台湾は、今季はホームではタイやフィリピンといった格上チームの引き分けるなど2勝2分と負けなしです。またマレーシアとの対戦成績は直近では2018年9月7日に台北の台北陸上競技場で対戦し、このときはウー・チュンチン(呉俊青)とトルコ出身の帰化選手チュー・エンレ(朱恩樂、トルコ名オヌール・ドガン)がゴールを決めて、マレーシアを2-0で破っています。なおこのマレーシア戦でゴールを決めた両選手は、先日のオマーン戦ではチュー選手はベンチ外でしたが、ウー選手は先発して90分までプレーしています。

報道では台湾入りしたマレーシア代表チームはケガ人もおらず、全員が出場可能ということです。明日の台湾戦を終えると、W杯予選は来年3月21日のオマーン戦(アウェイ)、3月26日のオマーン戦(ホーム)、6月6日のキルギス戦(アウェイ)、そして6月11日の台湾戦(ホーム)が予定されています。

不当解雇を訴えるリム前監督とでペラFCの争いは労働審判所での決着へ

今季途中で監督職を解雇されたリム・ティオンキム氏は、雇用主のペラFCによる不当解雇を訴えて未払い給料の支払いを求めていますが、労働審判所による調停が決裂したことから、労働審判所による審判を受けることになったと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

ペラFCのボビー・ファリド・シャムスディンCEOは、クラブからリム氏に対して調停案を提示したものの、リム氏がこれを受け入れることを拒否したことを明らかにしています。係争中となったため詳細については明らかにできないと話したファリドCEOは、どのような判決が出てもクラブは控訴せずに労働審判所の判断に全面的に従うと述べています。

マレーシアサッカー協会(FAM)とマレーシア政府青年スポーツ省参加の国家スポーツ評議会(MSN)が共同で運営するエリートアカデミーのモクタル・ダハリ・アカデミー(AMD)の責任者を務めたこともあるリム氏は、2001年から10年間、ドイツ1部のバイエルン・ミュンヘンのユースチームでコーチを務めたのち、2013年に国家サッカー選手育成プログラム(NFDP)の責任者として招聘され帰国しています。

さらに2016年からはAMDの責任者とU16代表の監督も兼任したリム氏は、FIFA U17ワールドカップ2019年大会への出場権獲得となるAFC U16選手権2018年大会での準決勝進出が期待されていました。しかしマレーシアで開催されたこの大会では、日本、タジキスタン、タイと同組となった予選A組でまさかの最下位に終わり、準決勝進出どころか、各組の上位2チームが進出するベスト8にすら届きませんでした。

その後、AMD責任者としての月給が17万5000リンギ(現在のレートでおよそ560万円)でしかも非課税であることを当時の青年スポーツ相に暴露された上に解任、またFAMには大会敗退の責任を負われる形でU16代表を解任されました。

その後、前年に起こった給料未払い問題によってクラブ史上初の2部プレミアリーグに降格していたペラFCの監督に2022年9月に就任したリム氏は、リーグ改編による1部スーパーリーグと2部プレミアリーグの合併により、今季は1部スーパーリーグで指揮を取りましたが、開幕から2勝3分8敗で11位に低迷していた5月25日に成績不振を理由にペラFCの監督を解任されていました。

FIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選第1節-マレーシアはロスタイムの逆転ゴールで白星発進

アジア各地でFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選が各地で開幕しています。予選B組では大阪で日本がミャンマーに5-0と完勝していますが、このミャンマー代表はかつてマレーシアスーパーリーグのスランゴールFCで監督を務めたミヒャエル・ファイヒテンバイナー氏が今年3月に監督に就任、また日本戦に先発したDFチョー・ミン・ウー(PDRM FC)とFWハイン・テット・アウン(ヌグリスンビランFC)はマレーシアスーパーリーグでプレーする選手です。

東南アジアの他国に目を転じると、タイとシンガポールが入ったC組ではタイはホームで中国に1-2、シンガポールはアウェイで韓国に0-5でそれぞれ敗れています。また東南アジアの3チームが集まったF組ではベトナムがアウェイでフィリピンに2-0で勝利した一方で、インドネシアはアウェイでイラクに1-5で完敗しています。

そしてD組では直近のFIFAランキング137位のマレーシアが同97位のキルギスとホームのブキ・ジャリル国立競技場で対戦し、両チーム合わせて7ゴールの大味な試合を制して勝点3を挙げています。

マレーシアのキム・パンゴン監督は就任以来、最終ラインについては左右にラヴェル・コービン=オングとマシュー・デイヴィーズのジョホール・ダルル・タジムFCコンビを、そしてセンターバックには右ディオン・クールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)とドミニク・タン(サバFC)を起用する4バックを採用してきました。しかしこの試合ではそのシステムを変更し、両サイドバックを高い位置に配置し、中央にシャールル・サアド(ジョホール・ダルル・タジムFC)、右にクールズ、左にタンの両選手を並べる3-4-3を選択しています。(以下はこの試合のマレーシアの先発XI)


試合はホームのマレーシアが試合開始とともに積極的に仕掛け、7分にはアリフ・アイマンの右コーナーキックにクールズが頭で合わせ、マレーシアがあっさりと先制します。この先制点で勢いづくマレーシアはその後も攻め続けますが追加点を奪えず、その間にキルギスが徐々にペースを掴み始めます。

そして42分には2度のシュートをGKシーハン・ハズミが防いだものの、最後はこぼれ球をフリーになっていたDFカイラット・ジャルガルベックに押し込まれて同点とされます。さらにその2分後にはGKエルジャン・トコタエフからのロングフィードをかつてPKNS FCでプレーしていたタミルラン・コズバエフがつなぎ、最後は今季途中までスーパーリーグのクランタン・ユナイテッドでプレーしていたFWエルニスト・バトゥルカノフがDFシャールル・サアドをかわして逆転ゴールを叩き込み、ついにキルギスが逆転します。試合後にキム監督が指摘しているように、早い時間帯でリードしたことでいわゆるボールウォッチングの場面が目立ち、慢心とも取れるプレーが見えていたマレーシアにとってはあっという間の逆転劇でした。

1点のリードを許して前半を折り返したマレーシアですが、同点ゴールを狙って前掛かりになる中、後半の57分にはゴール前の混戦から途中出場のFWカイ・メルクに代表初ゴールを許し、キルギスがリードを2点に広げます。この場面も選手の戻りが遅く、キルギスがゴール前で数的有利を作っての得点でした。

これまでのマレーシアならここから意気消沈してしまうところですが、この試合は違いました。キム監督はここでDFシャールル・サアド、MFでボランチのブレンダン・ガン、そしてこの試合では見せ場がなかったFWダレン・ロックに代えて、エンドリック・ドス・サントスとパウロ・ジョズエのブラジル出身のMFコンビとFWアキヤ・ラシドを投入し、より攻撃的な布陣でゴールを目指します。そしてこれが功を奏した57分、右サイドからアリフ・アイマンが持ち味のドリブルで持ち込むと、飛び出したGKとゴールポストの間に絶妙なボールを送り、キルギスDFクリスティアン・ブローズマンのオウンゴールを誘って、1点差に詰め寄ります。

そして77分には先制点の再現映像を見ているのか思うようなアリフ・アイマンの右コーナーキックから再びディオン・クールズが頭で合わせて、マレーシアはついに同点に追いつきます。しかしその後は両チームとも一進一退を繰り返し、試合は90分を過ぎてロスタイムに入りますが、引き分けでなく勝点3が欲しいマレーシアは、またもアリフ・アイマンが右サイドをドリブルでこじ開け、最後はゴール前のファイサル・ハリムへパス。これをノートラップで蹴り込んだシュートが決まり、マレーシアは4-3とし劇的な逆転劇は幕を閉じました。

このブログでも取り上げた通り、チケットの売り上げが伸び悩んだこの試合でしたが、1万7000を超えるサポーターにとっては記憶に残る文字通りの激勝でした。なおマレーシアの次戦は11月21日の台湾戦(アウェイ)となっており、ホームでのW杯予選は来年3月21日のオマーン戦となっています。

FIFAワールドカップ2026大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選D組第1節
2023年11月16日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
観衆:17,142人
マレーシア 4-3 キルギス
⚽️マレーシア:ディオン・コールズ2(7分、77分)、クリスティアン・ブローズマン(72分OG)、ファイサル・ハリム(90+3分)
⚽️キルギス:カイラト・ジュルガルヴェク(42分)、エルニスト・バトゥルカノフ(44分)、カイ・メルク(57分)
🟨マレーシア(2):ディオン・コールズ、アリフ・アイマン
🟨キルギス(2):グルシジット・アリクロフ、アディルジョン・アブドゥラフマノフ

試合のハイライト映像はスタジアム・アストロの公式YouTubeチャンネルより

なおD組のもう1試合はFIFAランキング位のオマーンが同位の台湾と対戦し、ホームのオマーンが3-0で台湾を下し、勝点3を獲得してマレーシアと並んだものの、得失差でD組首位に立っています。

FIFAワールドカップ2026大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選D組第1節
2023年11月16日@スルタン・カーブース・スポーツコンプレックス(マスカット、オマーン)
オマーン 3-0 台湾
⚽️オマーン:オマル・アル=マルキ(17分)、アフメド・アル=カアビ(41分)、マタズ・サレー(90+1分)
🟨オマーン(1):アフメド・アル=カアビ
🟨台湾(3):コアメ・アンジュ・サミュエル・游家煌(ユー・チーホアン)、游耀興(ユー・ヤオシン)

FIFAワールドカップ2026大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選D組順位(第1節終了)

チーム得失差勝点
1オマーン11003033
2マレーシア11004313
3キルギス100134-10
4台湾100103-30

11月16日のニュース
1300円は高過ぎ?本日のワールドカップ予選のチケット売り上げは試合当日になっても1万枚まだ
ピッチに不安?ワールドカップ予選で対戦のマレーシア、キルギス両代表チームは試合会場での前日練習が不許可に
試合前日会見-マレーシア代表のキム監督はD組で勝点12を目指すと表明
試合前日会見-キルギス代表監督はマレーシア代表の情報は収集済みと自信をのぞかせる

今週からアジア各地でFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選が始まります。マレーシアスーパーリーグでプレーする選手からは、ケヴィン・メンドーザ、パトリック・ライヒェルト(KLシティFC)、マニー・オット(クダ・ダルル・アマンFC)、ケヴィン・イングレッソ(スリ・パハンFC)、O・J・ポルテリア(クランタン・ユナイテッド)がフィリピン代表で、ジョルディ・アマト(ジョホール・ダルル・タジムFC)とサディル・ラムダニ(サバFC)がインドネシア代表で、ハイン・テット・アウン(ヌグリスンビランFC)とコー・ミン・ウー(PDRM FC)がミャンマー代表で、サフアン・バハルディン(スランゴールFC)がシンガポール代表で予選に臨みます。この他、バーレーン代表のモーゼス・アテデ(クダ・ダルル・アマンFC)、レバノン代表のソニー・サアド(ペナンFC)、タジキスタン代表のアミルベク・ジュラボエフ(クダ・ダルル・アマンFC)も各代表に招集されています。さらにはアフリカ予選には、リベリア代表にクパー・シャーマン(スリ・パハンFC)とマーカス・マコーリー(PDRM FC)、ナミビア代表にペトラス・シテムビ(クチンシティFC)も選ばれています。

隣国タイでは代表チームマネージャーのマダム・パンが、代表チームが2次予選を突破すればチーム全体に1000万バーツ(4250万円)を、また2次予選でも勝点1あたり100万バーツ(およそ425万円)のボーナスを出すことを表明して話題になっています。一方マレーシアでは、本日の初戦となるキルギス代表戦のチケットがあまり売れていないようです。

1300円は高過ぎ?-本日のワールドカップ予選のチケット売り上げは試合当日になっても1万枚

今日11月16日から始まるFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選初戦となるマレーシア代表対キルギス代表のチケットの売り上げ枚数が伸び悩んでいます。

先月10月のFIFA国際マッチカレンダーで開催されたムルデカ大会では、10月13日(金)に行われた初戦のインド代表戦が4万6,150人、10月17日(火)に行われた決勝のタジキスタン代表戦が3万6,559人と2試合で8万人を超える観衆がクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場に集まりました。

しかし本日11月16日(木)にブキ・ジャリル国立競技場で午後9時キックオフ予定のキルギス代表との試合では、本日11月16日の午前0時の時点でチケットの売上枚数が1万枚程度であるとマレーシアサッカー協会(FAM)が発表しています。キルギス代表のFIFAランキングは97位、マレーシア代表は同137位とマレーシアは格上の相手に挑むことから、ホームで戦う利点を生かし多くのサポーターの声援を期待したいところです。

歴史あるムルデカ大会とは言え、ただの国際親善試合に4万人を超える観衆が集まった一方で、ワールドカップ予選という公式戦のチケット売り上げが1万枚にも満たないという事態について、SNS上では、用事をギリギリまで伸ばすマレーシア人の特徴としてチケット購入も試合直前に行うからだ、といった意見や、マレー半島西海岸側が雨季に入っており悪天候下での試合が心配だといった意見が見られます。しかしそれとは別にそもそもチケットの値段が高額すぎるからではないかという指摘が出ています。本日のキルギス代表戦は最も安いバックスタンドが子ども5リンギ(およそ160円)、大人40リンギ(およそ1,300円)、メインスタンドが60リンギ(およそ1,900円)、そして最も高額のプレミアム席が80リンギ(およそ2,600円)となっています。またFAMはこのチケット1枚につき、パレスチナ支援基金に2リンギ(およそ62円)を、また代表チームの愛称がハリマウ・マラヤ「マラヤの虎」であることから、絶滅危惧種となっているマレー虎の保存基金へも1リンギを寄付することも発表しています。

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イスラム教国として、イスラエルを支援するアメリカ大使館前でデモをしたり、イスラエルを支援しているとしてスターバックス、マクドナルド、ネッスルといった企業に対する不買運動を熱心に呼びかけるいるのが現在のマレーシアです。今回の代表戦チケットを購入すれば、代表戦を見られる上に、自分の購入したチケット代の一部でパレスチナ支援もできる一石二鳥だと思うのですが、そう考えるサッカーファンは多くはないようです。

食料品を中心に多くの商品価格が上昇し、リンギ安が進んでいる点は日本と変わらないマレーシアでは、政府主導で「慈悲価格」と呼ばれる質を落とした廉価な商品やサービスの提供が求められています。例えばマクドナルドでは、チーズバーガーあるいはチキンバーガーとアイスレモンティーのセットが5リンギ(およそ160円)、ケンタッキーではチキン1ピース、パン、ミネラルウォーターのセットがやはり5リンギで提供されています。こういった価格に慣れてしまった人々には40リンギのチケットは高額に映るのかも知れません。こういった声を受けてか、数日前にはマレーシア政府青年スポーツ省のハンナ・ヨー大臣が価格を下げた「慈悲価格」のチケットを販売して、できるだけ多くのサポーターを集めるべきだと、といった提言をFAMに行っています。

ただしSNS上ではこの40リンギというチケットの価格を巡っては、来年2月にクアラ・ルンプールでコンサートを行うことを発表している英国人歌手のエド・シーランの公演チケットが最も安い席で198リンギ(およそ6,300円)であることを引き合いに出して、その半分の100リンギにすらなっていない代表選チケットの価格設定が公正であることを主張するものや、昔のファンは食事を減らしてでもチケット代を貯めて代表戦を応援していたといったものがある一方で、客席をサポーターで埋めたいのであればチケット価格を下げるべきといったものまで様々です。果たし、今日の試合にはどのくらいの観衆が集まるのでしょうか。

まだピッチに不安?ワールドカップ予選で対戦のマレーシア、キルギス両代表チームは試合会場での前日練習が不許可に

本日のFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選で対戦するマレーシア、キルギス両代表が試合前日練習を試合会場で行うことが許可されなかったと、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

この練習不許可については、ピッチの状態を最前に保つことが目的とニューストレイトタイムズの記事では説明されていますが、先月10月に行われたムルデカ大会では、新装なったブキ・ジャリル競技場に新たに敷かれた高麗芝の一種、ゼオン・ゾイシアが十分に根付いておらず、ピッチのあちこちでぽっかりと芝が剥がれたり、表面の芝の塊が滑って選手がバランスを失うなどの場面も見られ、大会に参加したインド代表やタジキスタン代表だけでなく、マレーシア代表サポーターから不満や批判の声が出ていました。

マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長は、「数週間前に(ブキ・ジャリル国立競技場の)ピッチを視察した際には、最高の状況ではなかったものこれまでよりは改善されており、試合で使用することができると判断した。その一方で試合前日練習はブキ・ジャリル国立競技場では行うべきでないこともそこで決定した。」と述べ、ブキ・ジャリル国立競技場を管理するマレーシア・スタジアム社がピッチの状況を整えようと全力で取り組んでいると説明しています。

試合前日会見-マレーシア代表のキム監督はD組で勝点12を目指すと表明

一方マレーシア代表のキム・パンゴン監督は、本日対戦するキルギス、次戦となる1111月21日に対戦する台湾、そして中東の強豪オマーンが同居するグループステージD組で勝点12を獲得する目標を明らかにしています。そして勝点3を獲得するべき試合の一つとして、本日のキルギス代表戦を挙げています。

「(D組の)6試合で勝点12が獲得できれば(3次予選進出には)十分である。勝点13となれば言うことはない。」と述べたキム監督は、今日のFIFAランキング97位のキルギス代表戦は「負けられない一戦」であり、これに勝利すればFIFAランキング137位のマレーシア代表が3次予選に進出するという目標へのモチベーションになるとし、またチームにはその力があると話しています。

その上でキム監督は「チームが3次予選に進むためにはサポーターの声援が必要である。チケットの売り上げ枚数に問題があることも承知しているが、ホームという地の利がありながら1万人では不十分である。キルギス代表を震え上がらせるほどの大観衆でスタジアムを埋めて欲しい。」と訴えて、サポーターが大挙してブキ・ジャリル国立競技場へやってくることを求めています。

近年マレーシア代表はFIFAワールドカップ予選でアジア2次予選を突破することができていません。アジア枠が8.5に増えた今回のFIFAワールドカップ予選ですが、3次予選には各組の上位2チームが進出することから、順当ならD組をトップ通過するであるFIFAランキング72位のオマーンに次ぐD組2位の座をマレーシアはキルギスと争うことになりそうです。

試合前日会見-キルギス代表監督はマレーシア代表の情報は収集済みと自信をのぞかせる

本日のFIFAワールドカップ2026年大会アジア2次予選兼AFCアジアカップ2027年大会予選で対戦するマレーシア、キルギス両代表の監督が試合前日会見を行い、キルギス代表のシュテファン・タルコヴィッチ監督は、マレーシアにいる「知人」を通じてマレーシア代表の情報は収集済みと述べ、試合に向けての自信を示していると、英字紙ニューストレイトタイムズが報じています。

スロバキア出身で自国代表監督などを経て今年4月に就任した50歳のタルコヴィッチ監督は、マレーシアには数名の「個人的な知り合い」がおり、前述のブキ・ジャリル国立競技場のピッチの状態についても把握していると、述べた他、マレーシア代表との対戦に向けて9月のFIFAカレンダーではアラブ首長国連邦のドバイで、10月にはバーレーンへ遠征を行い、熱帯の気候に備えてきたとも話しています。

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今回のキルギス代表メンバーには、2018年にPKNS FC(既にリーグ撤退)でプレーしたDFタミルラン・ゴズバエフ(現香港1部イースタンSC)と、今季途中までクランタン・ユナイテッドでプレーし、11試合で0ゴールの成績を残して途中退団したFWエルニスト・バトゥルカノフ(現キルギス1部FCアブディシュ・アタ・カント)のマレーシアリーグ経験者もいます。


11月15日のニュース
「民営化」の流れに逆行?-スランゴール州政府がスランゴールFCに3億円超の資金供与
KLシティのモラレスはマレーシア国籍取得間近か
MFLカップの初代王者はトレンガヌU23に決定

「民営化」の流れに逆行?-スランゴール州政府がスランゴールFCに3億円の資金供与

英字紙ニューストレイトタイムズは、スランゴール州のアミルディン・シャリ州首相が、スランゴール州を本拠地とするスランゴールFCへ1000万マレーシアリンギ(およそ3億2000万円)を供与することを発表したと報じています。

スランゴールFCのジョハン・カマル・ハミドンCEOはこの援助に感謝の意を表すると共に、この援助をスランゴールFCが運営する女子チームやU23、U20、U18など年代別チーム、さらにはその下の年代の育成プログラムにも使いたいと話していると、この記事は結んでいます。

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そのチームカラーから「赤い巨人」の愛称を持つスランゴールFCは、マレーシアカップ優勝33回を誇るかつての強豪ですが、近年は今季リーグ10連覇を果たしたジョホール・ダルル・タジムFCの影に隠れ、2010年を最後にリーグ優勝しておらず、国内タイトル獲得も2015年のマレーシアカップ優勝が最後となっています。また今季はリーグ2位ながら王者ジョホールとは勝点差15で早々と優勝を許しただけでなく、直接対決でもリーグ戦ではホームで0-4、アウェイでは2-0と敗れている他、FAカップ準決勝で0-4と全て完封で敗れるなど、過去の栄光の面影すらありません。

今回の3億円は、宿敵とも言えるこのジョホールに対抗するための強化費用も含まれる州政府からの巨額の支援ですが、この「公的資金投入」は、がFIFAの指導のもとでマレーシア国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグMFLが各チームクラブの「民営化」に取り組んでいる最中であることを考えると、その流れに逆行するように見えます。もともと各州の対抗戦のカップ戦として始まったマレーシアサッカーは1994年のプロ化後も、各州政府からこのプロクラブを運営する州サッカー協会へ公的資金が注ぎ込まれる形で運営されてきました。日本で言えば知事にあたる州首相が州サッカー協会会長も兼ねることも多く、マレー系に人気のあるサッカーに公的資金を投入してチームを強くすれば、それが州首相自身や所属政党の集票につながるといった図式もありました。「民営化」はその状況を改善すると考えられていましたが、州政府以外のスポンサー獲得に苦しむチームでは、国内有力選手や外国籍選手の獲得など身の丈に合わない経営が行われた結果、このブログでも取り上げることが多い、選手や関係者への給料未払いという形で現れています。

3400万人近い人口のマレーシアで、720万人と国内最大の人口を抱えるスランゴール州は、2位で人口410万人のジョホール州を人口で大きく上回るだけでなく、経済規模も国内No. 1であり、そういった背景があるスランゴール州政府には、他の州政府では考えられない3億円という巨額支援が可能になっているかと思います。なおこのニューストレイトタイムズの記事でも見出しは「スランゴールFCがタイトル獲得のための資金獲得」と能天気なものになっており、公的資金投入への批判めいたものはなく、結局誰も民営化を望んでいないのか、或いはそんな話があったことを忘れてしまっているのかも知れません。

KLシティのモラレスはマレーシア国籍取得間近か

コロンビア出身のストライカー、ロメル・モラレスは、2018年にスーパーリーグのPKNS FC(既にリーグ撤退)に加入以来、2020年のマラッカ・ユナイテッドFC(既にリーグ撤退)でのプレーを経て2021年からKLシティFCでプレーし、KLシティではこれまでに58試合で18ゴールを挙げています。このモラレス選手について、英字紙ニュースとレイトタイムズが、国籍取得が近いのではないかと報じています。

マレーシア国内リーグで5年間以上継続してプレーしているモラレス選手は、FIFAが設ける規定によりマレーシア国籍を取得すればマレーシア代表でのプレーが可能となっていることから、国籍取得を行っていることはこのブログでも何度か取り上げています

先月にはマレーシア内務省が国籍取得のためのセキュリティ審査にかかる日数をこれまでの73日から14日に短縮することも発表しており、モラレス選手が順調にマレーシア国籍を取得することができれば、マレーシア初の帰化代表選手となったガンビア出身のモハマドゥ・スマレ(ジョホール・ダルル・タジムFC)の24歳に次ぐ、史上2位の26歳で国籍取得となります。

記事の中でKLシティのスタンリー・バーナードCEOは、(セキュリティ審査には)相当な配慮が必要であり時間がかかることは承知していると話す一方で、この審査が終われば国籍取得までのタイムラインが明確になるだろうと話しています。

現在マレーシアにはブラジル出身のギリエルメ・デ・パウラ(37歳、現所属3部マラッカFC)、パウロ・ジョズエ(34歳、KLシティ)、エンドリック・ドス・サントス(28歳、ジョホール)、コソボ出身のリリドン・クラスニキ(31歳、トレンガヌFC)、アルゼンチン出身のエゼキエル・アグエロ(29歳、スリ・パハンFC)、そして今季途中にクダ・ダルル・アマンFCを退団して出身の英国へ帰国したリー・タック(35歳)と新旧合わせて7名の帰化代表選手がいますが、今週11月16日に開幕するFIFAワールドカップ2026年大会予選に出場する代表チームに招集されているのは、エンドリック・ドス・サントス、パウロ・ジョズエ、モハマドゥ・スマレの3名だけです。

MFLカップの初代王者はトレンガヌU23に決定

今季から新設されたマレーシアスーパーリーグのU23チームのリーグ戦MFLカップの決勝が行われ、トレンガヌFCのU23チーム、トレンガヌFC IIがジョホール・ダルル・タジムFCのU23チーム、ジョホール・ダルル・タジムFC IIを1-0の僅差で破って初代王者に輝いています。

昨季までの2部プレミアリーグは、ジョホール・ダルル・タジムFCやスランゴールFC、トレンガヌFCなどのセカンドチームと他のクラブのトップチームが混在する編成になっていましたが、今季開幕前の大規模なリーグ再編成により、1部スーパーリーグと2部プレミアリーグのトップチームを集めて新たなスーパーリーグを編成する一方で、プレミアリーグは一時的に休止となっています。そして新たに導入されたのがこのMFLカップです。

日本で言えばJエリートリーグに当たるこのリーグは、スーパーリーグ全14クラブのU23チームと、マレーシアサッカー協会(FAM)とマレーシア政府青年スポーツ省傘下の国家スポーツ評議会(MSN)が共同で運営するFAM-MSNプロジェクトチームの15チームが出場するリーグです。このリーグでは各チームに外国籍選手3名を含むオーバーエージ選手5名が出場可能です。

MFLカップのフォーマットは、全15チームが2つのグループに分けれた2回戦総当たりで試合を行い、それぞれのグループの上位4チームずつが今度は1回戦総当たりのチャンピオンズリーグに進み、その上位2チームが決勝に進んでチャンピオンを決定します。

今年3月に開幕した初年度のMFLカップは、A組からはトレンガヌ、ジョホール、PDRM、クダの4チームが、B組からはスランゴール、KLシティ、スリ・パハン、ペラがそれぞれチャンピオンズリーグに進出し、この中から5勝2敗で首位となったトレンガヌと4勝3敗で2位となったジョホールが決勝に進出していました。

11月11日にクアラ・ルンプールのKLフットボールスタジアムで行われた決勝では、U23代表で主力として活躍するナジムディン・アクマル、ファーガス・ティエニーの両MFを有するジョホールが、A代表でも主力のMFエンドリック・ドス・サントスやトップチームのACLの試合にも先発しているDFシェーン・ローリー、さらにフィリピン代表DFオスカル・アリバスを起用してなりふり構わず勝ちにきました。しかし試合は88分にジョホールGKズルヒルミ・シャラニからのゴールキックをDFアイサル・ハディが受け損ねたところを、トレンガヌのFWイサ・ラマンが蹴り込み、これが決勝点となり、ジョホールはたった一度のミスでトップチームとのアベック優勝を逃しています。なおこの試合のMVPはU23代表でもプレーし、トップチームのトレンガヌFCでもプレーするMFウバイドラー・シャムスルが選ばれています。

MFLカップ2023決勝
2023年11月11日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
観衆:3,055名
トレンガヌFC II 1-0 ジョホール・ダルル・タジムFC II
⚽️トレンガヌ:イサ・ラマン(88分)
🟨トレンガヌ(2) :ヌル・アズファル・フィクリ、シャフィク・ダニアル
🟨ジョホール(2):ナザルディン・ジャジ、アイサル・ハディ
MVP:ウバイドラー・シャムスル(トレンガヌFC)

試合のハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグMFLの公式

2023マレーシアスーパーリーグ第20節結果とハイライト映像(3)-鈴木ブルーノの2ゴールで勝利のPDRMが7位に上昇

未消化となっていたマレーシアスーパーリーグ第20節の1試合が行われ、PDRM FCが鈴木ブルーノや元Jリーグ岡山のハディ・ファイヤッドらの活躍で4位のスリ・パハンに逆転勝ちを収めています。
(試合のハイライト映像はマレーシアンスーパーリーグMFLの公式YouTubeチャンネルより

2023年11月8日@ダルル・マクモルスタジアム(パハン州クアンタン)
観衆: 149人
スリ・パハンFC 2-3 PDRM FC
⚽️スリ・パハン:クパー・シャーマン(8分)、ステファノ・ブルンド(67分PK)
⚽️ PDRM:鈴木ブルーノ2(35分PK、45+1分)、ズルファーミ・ハディ(42分)
🟨スリ・パハン(4):ラファエル・ダ・シルヴァ、アズリフ・ナスルハク、ザリフ・イルファン、ファドリ・シャス
🟨PDRM(1) :サフィー・アフマド、チョー・ミン・ウー、マーカス・マコーリー、ウチェ・アグバ、ジェイムズ・オクゥオサ
MOM:鈴木ブルーノ(PDRM FC)
この試合の2ゴールで今季リーグ通算7ゴールとしたPDRMの鈴木ブルーノ選手は、先発して77分に交代しています。

リーグ7位のPDRM FCが同4位のスリ・パハンFCをアウェイで破って、無敗記録を6に伸ばすと共に順位を1つ上げています。

チャレンジカップ決勝進出を決め、リーグ戦では上位のKLシティFCを破るなど好調が続いているPDRMは、11月5日のチャレンジカップ準決勝セカンドレグでは先発を外れた鈴木ブルーノ、ハディ・ファイヤッドの両選手がこの試合では先発に戻っています。試合はホームのスリ・パハンが2連勝中の勢いそのままに、カウンターからエースのクパー・シャーマンのゴールで開始8分であっさりと先制します。さらにその後もスリ・パハンが同じような展開からゴールを狙いますが、PDRMはチョー・ミン・ウーとジェイムズ・オクゥオサが率いるDF陣が追加点を許しません。

直近の5試合を3勝2分と好調のPDRMも、ハディ・ファイヤッドとのパス交換からゴール前でボールを得た鈴木ブルーノがスリ・パハンゴールを脅かすなど徐々に反撃に転じます。そして35分にはスリ・パハンDFケヴィン・イングレッソが自陣ペナルティエリア内でハンドの反則を犯し、これで得たPKを鈴木ブルーノ選手が決めて、PDRMは同点に追いつきます。

さらにPDRMは42分、再び右サイドを上がったハディ選手からファーサイドの鈴木選手へパスが渡り、さらに鈴木選手はそこから折り返してゴール前に走り込んできたDFズルファーミ・ハディへパス。これをズルファーミ選手がタップインして、3月18日以来の自身今季2ゴール目でPDRMが逆転に成功します。そこから4分後の45+1分には、この試合のMOMとなった鈴木選手が左サイドから強烈なミドルシュートを決めて、前半でPDRMが3ー1とリードを広げます。

スリ・パハンも後半の67分には、PDRMペナルティエリア内でズハイル・アイザットが倒されて得たPKをステファノ・ブルンドが決めて1点差まで迫りますが、PDRMが逃げ切っています。この試合の勝利で6戦連続で無敗となったPDRMは、KLシティに代わってリーグ7位に浮上すると共に、11月29日のチャレンジカップ決勝ファーストレグに向けてさらに勢いがつきました。

2023マレーシアスーパーリーグ順位表(第23節終了)

順位チーム勝点
1JDT2322108878167
2SEL23171564214352
3KDA23162546252150
4SRP23135542281444
5SAB23134650331743
6TRE23106741291236
7PDRM2310492730-334
8KLC238783837131
9PRK2364132547-2222
10NSE2349102645-2121
11PEN2355132539-1420
12KLU2335152356-3314
13KCH2316161845-279
14KEL2323182495-719
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC

2023マレーシアスーパーリーグ 得点ランキング(第23節終了-記録はMFL公式サイトを参照)

順位選手名(所属チーム)枠内/シュートアシスト
1エイロン・デル・ヴァイエ(SEL)2137/59423
2フェルナンド・フォレスティエリ(JDT)1934/70718
3ベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)1733/90419
4アブ・カマラ(KCH)1219/43121
クパー・シャーマン(SRP)1223/43722
6ファイサル・ハリム(SEL)1126/38720
7イヴァン・マムート(TRE)1025/54118
ステファノ・ブルンド(SRP)1020/42021
9ロメル・モラレス(KLC)817/33219
パウロ・ジョズエ(KLC)825/50420
アリフ・アイマン(JDT)818/431122
フアン・ムニス(JDT)820/42420
イフェダヨ・オルセグン(KDA)815/3118
ウィリアン・リラ(KDA)811/36214
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、TRE-トレンガヌFC、SAB-サバFC、NSE-ヌグリスンビランFC、SEL-スランゴールFC、KLC-KLシティFC、SRP-スリ・パハンFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC、KEL-クランタンFC、KCH-クチンシティFC、KLU-クランタン・ユナイテッドFC、PDRM-PDRM FC、PRK-ペラFC