2月5日のニュース
クダがサントスとの国際親善試合開催を否定
スランゴールが3日連続で新戦力の加入を発表
ジョホールには元イタリアU19代表や元ポルトガルU21代表が加入
W杯予選で対戦のオマーン代表新監督にチェコ出身のヤロスラフ・シルハヴィー氏が就任

いよいよ明日から準決勝が始まるアジアカップ2023。マレーシアがいたグループステージE組からはマレーシアを除く3チームがベスト16に進み、さらにヨルダンと韓国に至ってはベスト4まで進んでいます。マレーシア贔屓としては、今振り返ってみれば、実はこのE組がいわゆる「死の組」だったのではと思ってしまいます。なお、準決勝に残った4チームでは、スランゴールFCでプレーするノー・アル=ラワブデを筆頭にマレーシアスーパーリーグ経験者4名がいるヨルダンをボラセパマレーシアJPは応援します。

クダがサントスとの国際親善試合開催を否定

ペレやネイマールが在籍したこともあるブラジルの名門サントスFCがクラブ公式SNSで、マレーシアスーパーリーグのクダ・ダルル・アマンFCとの国際親善試合を2月17日に行うことを発表すると、リーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFCでも昨季2位の強豪スランゴールFCでもなく、なぜクダ?と驚きがマレーシアサッカーファンがざわつきましたが、その後クダが、この試合について何も合意されていないことを明らかにしています。

現在空席となっているクラブCEOの代行を務めるシャールル・サムスディン氏の名前で行われたクラブ公式SNSへの投稿では、今年初めにプロモーターから国際親善試合の開催を持ちかけられたものの、(スーパーリーグの5月開幕を控えて)チームとしての練習は始まっておらず、対戦する準備ができていないと回答したということです。

しかし先日、2月17日と試合開催日を含めたサントスFCの公式発表を知ったクダ側がプロモーターに連絡をとったところ、先方からは誤解があったこと謝罪するという回答を受け取ったと説明しており、サントスFC対クダの対戦は残念ながら実現しないということです。

スランゴールが3日連続で新戦力の加入を発表

昨季のスーパーリーグでは2位となり、今季から始まるACL2に出場するスランゴールFCは、カーボベルデ出身のウィング、アルヴィン・フォルテスの加入を公式SNSで発表しています。2022年にタイ1部のラーチャブリーFCに加入したフォルテス選手はその後、ノーンブワ・ピッチャヤFCへ期限付き移籍し、2023/24シーズンは再びラーチャブリーFCに復帰し、タイリーグでは通算で39試合に出場し11ゴールを挙げています。

スランゴールFCは前日には、昨季33試合で25ゴールを挙げながら「ホームシック」を理由に退団したリーグ得点王エイロン・デル・ヴァイエに代わる新たなストライカーとしてチリ出身のロニー・フェルナンデス(ボリビア1部クルブ・ボリバルから加入)の獲得を、さらにその前日にはアジアカップ2023でベスト4に残っているウズベキスタン代表のセンターバック、、ウマル・エシュムロドフの獲得をそれぞれ発表しており、3日続けての新戦力獲得の発表となりました。

ジョホールには元イタリアU19代表や元ポルトガルU21代表が加入

リーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFCは、イタリアU19代表としてUEFL U19選手権にも出場した経験を持つニコラオ・ドゥミトルをタイ1部ブリーラム・ユナイテッドから獲得したことをクラブ公式SNSで発表しています。英国のノッティンガム・フォレストや韓国1部の水原三星ブルーウィングズでもプレー経験があるドゥミトルは主に左ウィングでプレーし、Transfermarktによると今季、ブリーラムではリーグ戦やカップ戦、ACLなど合計9試合に出場して1ゴール挙げる記録を残しています。

ジョホールはアジアカップ2023開幕前には、この大会にシリア代表に初招集されたアルゼンチン出身のMFジャリル・エリアスをアルゼンチンのサン・ロレンソから獲得すると、その後はUAE1部のバニーヤースSCからポルトガルU18代表やU21代表でのプレー経験もあるMFフランシスコ・ジェラルデスを、そしてブラジル出身のMFムリロ・エンリケをフィンランド1部セイナヨエン・ヤルカパッロケルホからそれぞれ獲得しています。

ACLエリート(ACLE)参戦が決まっているジョホールは、この他、一旦退団を発表したFWフェルナンド・フォレスティエリとの契約更新も行なっています。

W杯予選で対戦のオマーン代表新監督にチェコ出身のヤロスラフ・シルハヴィー氏が就任

3月に再開するFIFAワールドカップ2026アジア2次予選でマレーシアと対戦するオマーンは、現在開催中のアジアカップ2023でグループステージ敗退が決まると直ちにブランコ・イヴァンコヴィッチ監督を解任しましたが、その後任として前チェコ代表監督のヤロスラフ・シルハヴィー氏が就任したことを英字紙タイムズオブオマーンが報じています。

62歳のシルハヴィー新監督は現役時代、ハードすぎる守備が有名なDFとしてならし、チェコリーグ史上最多レッドカード記録を持つ人物で、チェコ代表でのプレー経験もあります。その後は国内クラブのスラビア・プラハで監督を務めた後、2018年にチェコ代表監督に就任すると、2020年のUEFA欧州選手権ではベスト16でオランダを破りチームを準々決勝に導くなどの実績も残しており、昨年2023年までの56試合で指揮を取り、26勝10分20敗という成績を残しています。

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FIFAランキングではオマーンの74位に対し、同130位のマレーシアは、今回のアジアカップ2023のグループステージでは同87位のヨルダンに0-4、同86位のバーレーンには0-1で敗れています。しかしマレーシアはグループステージ最終戦となった韓国戦で3-3と引き分けるなど、最後はモチベーションが上がるような終わり方でしたが、オマーンは勝てばベスト16進出が決まる最終戦で格下のキルギスと引き分けてグループステージ敗退となっています。ここまでのアジア2次予選D組では2勝で首位に立つマレーシアは、3月21日にはマスカット、5日後の3月26日にはクアラ・ルンプールで1勝1敗の2位オマーンと対戦しますが、シルハヴィー新監督が2ヶ月弱でチームを掌握し切れなければ番狂わせもありそうです。

2月2日のニュース
スランゴールが昨季得点王アイロンやブレンダン・ガンなど6選手の退団を正式に発表
スランゴールがアジアカップ出場中のウズベキスタン代表DFの加入を発表
クダがあのサントスと対戦
AFL-クランタンは給料未払い問題の解決が3部リーグ参加の条件

シンガポール代表の新監督に元日本代表コーチで2023年シーズンは東京ヴェルディでヘッドコーチを務めた小倉勉氏が就任することをシンガポールサッカー協会(FAS)が発表しています。シンガポール代表は、2019年5月から監督を務めて21年12月に辞任した吉田達磨氏(現徳島ヴォルテス監督)、2022年4月から解任された今年1月29日まで監督を務めた西ヶ谷隆之氏に続き3人連続で日本人監督が指揮を取ることになります。なおシンガポールの英字紙ストレイトタイムズによると57歳の小倉新監督は2年契約、またA代表の監督の他にU23代表の指導にも関わっていくということです。W杯2026年大会アジア2次予選では、韓国とタイに敗れて0勝2敗と最悪のスタートを切ったシンガポール代表を小倉新監督がどう立て直していくのかに注目です。

スランゴールが昨季得点王やブレンダン・ガンなど6選手の退団を正式に発表

昨季スーパーリーグで2位となり、今季はACL2に出場するスランゴールFCが6選手の対談を発表しています。今回対談が発表された中には昨季、23ゴールを挙げてリーグ得点王となったエイロン・デル・ヴァイエ(ブラジル)や、現在開催中のアジアカップ2023のベスト16でイラク相手にゴールを挙げたヤザン・アル=アラブ(ヨルダン)、リッチモンド・ボアキエ(ガーナ)など外国籍選手の他、昨季はチームのキャプテンを務め、アジアカップ2023にも出場したブレンダン・ガンなども含まれています。

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昨日のこのブログでもその去就が不透明であることを伝えたブレンダン・ガンの退団が決定しました。国内の他のクラブに移るのか、生まれ育ったオーストラリアへ戻るのかなど全く不明ですが、3月に再開するW杯アジア2次予選には必要な選手であることはアジアカップ2023の韓国戦でのプレーぶりでも証明されており、国内移籍が望ましいところですが、果たしてどうなるのでしょうか。

スランゴールがアジアカップ出場中のウズベキスタン代表DFの加入を発表

去る選手がいれば、来る選手もいるということで、スランゴールはクラブ公式SNSで、今季の初の新戦力獲得となるウズベキスタン代表のCBウマル・エシュムロドフ(前ウズベキスタン1部ナサフ・カルシFC)の加入を発表しています。

現在アジアカップ2023でベスト8に残っているウズベキスタン代表ですが、身長185cmのエシュムロドフ選手はここまでの4試合全てにセンターバックとしてフル出場しています。また前所属のナサフ・カルシFCではACL(現ACLエリート)に出場経験がある選手で、ウズベキスタン国外のクラブでプレーするのは今回が初めてということですが、その経験から今季ACL2に出場するスランゴールにとっては貴重な補強となりそうです。

クダがあのサントスと対戦

ペレやネイマール、そしてカズこと三浦知良選手も在籍したブラジルの名門クラブであるサントスFCは、マレーシアスーパーリーグで昨季4位のクダ・ダルル・アマンFと対戦することをクラブ公式SNSで発表しています。

サントスFCはカタールのドーハで昨日から開幕したイクォリティ(平等)カップに出場し、地元カタールのアル・ドゥハイルSC、中国1部の上海申花、そしてこの大会を主催するゼニト・サンクトベテルブルグFCと対戦した後、2月17日にクダと本拠地のダルル・アマン・スタジアムで対戦します。

AFL-クランタンは給料未払い問題の解決が3部リーグ参加の条件

昨季の給料未払い問題が未解決なことから、今季のクラブライセンスが発給されず、国内1部のスーパーリーグに出場できなくなったクランタンFCは、国内3部でセミプロリーグのM3リーグへの参加を表明していますが、M3リーグ出場にも給料未払い問題の解決が必要だと、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。

M3リーグを運営するアマチュアフットボールリーグAFLの理事会は声明を発表し、今季参入を目指すクランタンFCに対して、M3リーグでは給料未払い問題が起こることを予防するため、クランタンFCがあることを表明しています。AFLのサイド・ヤジド・オマル理事長は、セミプロリーグのM3リーグにも給料未払い問題を抱えるクラブが複数あることを認めた上で、これ以上リーグのイメージを悪化させないため、問題を抱えたクラブの参入を許可しない可能性があると述べています。

「M3リーグが『(スーパーリーグへの参加が認められない)問題を持ったクラブの溜まり場』となってしまうとリーグのイメージが悪化してしてしまうため、M3リーグに新規参入するクラブには、参入前に給料未払い問題の解決を求めたい。」

昨季はやはり給料未払い問題未解決を理由にマラッカ・ユナイテッドとサラワク・ユナイテッドがスーパーリーグでプレーするのに必要なクラブライセンスを発給されず、M3リーグでのプレーしています。(なお、マラッカ・ユナイテッドは未払い給料を抱えたままクラブを解散して、マラッカFCとしてM3リーグに参入しています-新規チームとして参加にもかかわらず下部リーグからではなく3部に加入したことは問題にもなりました。)

2月1日のニュース
スランゴールはファイサル・ハリムとの契約延長を発表も、ブレンダン・ガンの去就は未だ決まらず
ACL2出場のスランゴールは本拠地の客席増設もピッチの張り替えはなし
ディオン・コールズはマレーシアよりも日本や韓国への移籍を望む

今朝のイラン対シリア戦はPK戦にも連れ込む熱戦を経てイランが勝ち抜け、これでいよいよベスト8が全て決まったアジアカップ2023で。しかし既に敗退したチームは次の目標に向かって動き始めています。グループリーグで敗退したマレーシアは5月10日に開幕する2024/25シーズンを前に2月3日から今年1度目のトランスファーウィンドウが開き、選手の移籍が活発化しそうです。またお隣インドネシアからは代表を初めてアジアカップのベスト16へ導いた韓国出身のシン・テヨン(申台龍)監督が他国から代表監督就任のオファーを受けたことを明らかにして物議を醸しています。

スランゴールはファイサル・ハリムとの契約延長を発表も、ブレンダン・ガンの去就は未だ決まらず

スーパーリーグのスランゴールFCはクラブ公式SNSで、代表でもプレーするFWファイサル・ハリムと今季の契約を結んだことを発表しています。アジアカップを終えてカタールから帰国して間もないファイサル選手は、シンガポール代表のDFサフワン・バハルディン、マレーシアU23代表のムカイリ・アジマルらとともに今季もスランゴールでプレーすることになりました。ファイサル選手は昨季開幕前にトレンガヌからスランゴールに移籍し、スランゴールでの1年目は28試合に出場して13ゴール11アシストの成績を挙げ、2022年シーズンのリーグ5位から2位へと躍進した立役者の1人です。

アジアカップではグループステージで敗退したものの、韓国のイ・ガンイン(李康仁、パリサンジェルマン)、上田綺世(フェイエノールト)らとともに第3節のベストXIの1人にも選ばれるなど、今やマレーシア代表の顔とも言えるファイサル選手の残留が決まったことで、来季のスランゴールの布陣も徐々に明らかになっています。

しかしその一方で、同じ代表選手のMFブレンダン・ガンについては契約延長が発表されておらず、スランゴールサポーターをヤキモキさせています。昨季はスランゴールでキャプテンを務めたガン選手は、今季の契約はアジアカップ後に決めたいと自ら話していましたが、先日のアジアカップ韓国戦では大会初出場初先発ながら、後半ロスタイムに交代するまでプレーし、存在感を見せたことから、36歳のガン選手に対してスーパーリーグのサバFCやスリ・パハンFCが獲得に動いているという噂もあります。

昨季はリーグ2位にとなり、今季はACL2に出場するスランゴールFCは若い選手が多く、プレーだけでなく精神的支柱としてのガン選手の存在は欠かせません。2016年のAFCカップ以来8年ぶりとなるアジアでのプレーも踏まえて考えると、少なくとも今季はチームにいてもらいたい選手ではないでしょうか。

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ガン選手は2021年7月に初期の精巣がんと診断され、2022年シーズンの終盤に復帰するまで1年以上にわたりサッカーから離れて治療を受けるなど、紆余曲折がありながらのアジアカップ出場でした。大会後には自身のSNSに投稿し、闘病生活からアジアカップという舞台に立つにいたった自身の人生には忍耐力が不可欠だったと語り、不可能を可能をするには「夢を持ち続けることが鍵だ」 というメッセージを投稿しています。

ACL2出場のスランゴールは本拠地を改修して客席数を増員もピッチの張り替えはなし

今季から始まるACL2に出場するスランゴールFCは、本拠地であるMBPJスタジアムのを改修することを発表しています。スポーツ専門メディアのスタジアム・アストロによると、新たな座席を導入する他、ウルトラスのエリアに屋根がつけられ、ピッチの周りの陸上競技用トラックの部分は人工芝で覆われるということです。

しかしピッチに関しては、新たな排水システムを導入する一方で、同時にピッチの芝の張り替えを行うとプレシーズンに間に合わない可能性があることから、張り替えは行わないと、スランゴールFCのジョハン・カマルCEOは説明しています。

「芝を張り替えてからピッチが使用可能になるまでには6ヶ月から8ヶ月が必要で、5月に開幕する今季のスーパーリーグには間に合わない。今回導入する新たな排水システムにより、ピッチ上に水が貯まることもピッチが水田の様になる心配がなくなり、選手のケガも防ぐことができる考えている。」

またジョハンCEOは、マレーシア政府青年スポーツ省(KBS)が主導し、ジョホール州皇太子(ただし今月から父君のスルタン・イブラヒム殿下がマレーシア国王に就任したため、現在の正式な肩書きはジョホール州皇太子ではなくジョホール州摂政)のイスマイル殿下が一部の費用を負担するピッチ張り替え資金については、考慮はした結果、使用しないとも話しています。

スタジアムを所有するプタリン・ジャヤ市と協力して、既にメインスタンドの改修に加えて、音響や照明についても改修が終わっていると説明したジョハンCEOは、昨季は同じMBPJスタジアムを使用したPDRM FCが同じスランゴール州のスラヤンスタジアムに本拠地を移すことも明らかにした他、リーグ期間が今年5月から来年4月までと従来よりも5ヶ月長くなったことから、クラブの運用資金が30%ほど増額されたことも発表しています。

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2年間かけて秋春制へ移行する過程にある今季のマレーシアスーパーリーグは、5月開幕、来年4月閉幕の長丁場となっています。日本の様な四季はないマレーシアですが、季節は大きく乾季と雨季に分かれ、従来はリーグ戦が行われていなかった12月から2月はマレー半島では雨季にあたります。雨季以外でも集中豪雨が起これば、排水システムが機能していないピッチでは、その上に水溜りができ、ボールが止まってしまうため、ピッチの排水システムはどのクラブにとっても最重要です。しかしACL2に出るクラブであれば、マレーシアで一般的なカウグラス(アカツメクサ)からKBSが張り替えを奨励している高麗芝の一種ゼオン・ゾイシア芝への張り替えも同時に行って欲しかったところです。

ディオン・コールズはマレーシアよりも日本や韓国への移籍を望む

アジアカップ2023に出場したマレーシア代表のメンバーでは、ジュニオール・エルドストール(インドネシア1部デワ・ユナイテッド)とともに「海外組」の1人だったディオン・コールズ。所属するタイ1部ブリーラム・ユナイテッドでは昨季の国内三冠に貢献する活躍を見せていますが、マレーシアメディアの取材に対して、マレーシアクラブへの移籍については、現在は考えていないと答えています。

サラワク州クチン生まれながら、父親の母国であるベルギーで育ったコールズ選手は28歳で、ベルギーU18、U19、U21代表など年代別代表でのプレー経験があり、ベルギー1部のクラブ・ブルッヘ、デンマーク1部のFCミッティランなどでプレーした後、昨季途中にブリーラム・ユナイテッドへ移籍しています。欧州クラブからタイのクラブへ移籍したことで、次はマレーシアへの移籍の可能性を問われたコールズ選手は、「まだマレーシアリーグでプレーするときではない」と話す一方で、JリーグやKリーグへの移籍を希望していると、スポーツ専門メディアのスタジアム・アストロの取材に答えています。既に秋春制に移行しているタイリーグは今年の6月に2023/24シーズンが終了しますが、今季終了後についてはまだ何も決まっていないと話しています。

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ヨーロッパからタイへの移籍は、リーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFCの代表選手コレクションに加わる布石ではないかといった憶測もある中での発言ということで注目を浴びています。個人的にはACLに出場する日本や韓国のクラブが獲得に動いてくれると面白いと思うのですが、どうなるでしょうか。

1月31日のニュース(2)
MFLが2024/25シーズンの変更点を発表
当初の予定より1週間遅れて今季は5月10日に開幕
外国籍選手枠は1増で4+1+1と6人同時にピッチ上でプレーが可能に
19年ぶり復活のアセアンクラブチャンピオンシップは昨季リーグ3位のサバと4位のクダに出場権

マレーシアスーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、春秋制から秋春制への移行第1段階となる2024/25シーズンについて、新たな変更点を公式サイト上で発表しています。

今季の開幕が当初の予定より1週間遅れて5月10日に

今季からスーパーリーグにいよいよビデオ・アシスタント・レフリー(VAR)が導入されることは既に発表されていましたが、2月に国際サッカー連盟(FIFA)が予定していたVARシステムの査察日が、2ヶ月遅れて4月16日から21日に変更されたことを受け、MFLは今季の開幕第1節を5月3日〜5日から1週間遅い5月10日〜12日とすると発表しています。

今回の発表によると、2024年4月22日〜5月5日まで開催されるマレーシアスーパーリーグのクラブが参加する一連のVARテストマッチは、マレーシアサッカー協会(FAM)がFIFAによる査察後に承認を得た後、実施されるということです。

「今季のマレーシアリーグで使用されるVARシステムはVARカーのコンセプトに基づいており、一連のテストマッチはMFLにとってVARカーの安定性、堅牢性、耐久性をテストするために重要である。」

「さらに試合会場までのVARカーの移動、放送管理、関係者やチームへの周知、さらには試合会場設備の準備レベルをテストするためにも重要である。」

またMFLは現在、一連のVARテストマッチに関して各クラブと協議を行っており、詳細が決まり次第発表されるとしています。

外国籍枠は1枠増えて4+1+1と6人同時にピッチ上でプレーが可能に

AFCは2024/25シーズンから主催するACLなどクラブ大会で外国人選手枠を撤廃することを発表していますが、MFLはAFCの外国籍選手枠完全撤廃には追従しないことを発表しています。その代わりとして、MFLは昨季同様、各クラブに最大で9名の外国籍選手の登録を認め、ACLエリート、ACL2のAFCクラブ大会および東南アジアサッカー連盟AFFのアセアンクラブチャンピオンシップに出場するクラブにのみ、さらに追加で1名の外国籍選手の登録を許可することも発表しています。

さらに国内リーグやカップ戦の出場選手枠について「いくつかのMFLクラブからの要請を受け、他のMFLクラブからの承認を得た結果」、今季は同時にピッチ上に立つことができる外国籍選手を6名(国籍を問わない外国籍選手4+アジア枠1+東南アジア枠1)とし、さらに外国籍選手もう1名がベンチ入り可能になることも明らかにしています 。

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資金力のあるクラブはより多くの外国籍選手と契約できる今回の変更で、クラブ間格差がより広がり、マレーシア人選手の出場機会がより少なくなるのは明らかですが、さらにより多くのクラブが「ハイブリッド帰化選手」(マレーシア国外で生まれ育ちながら、祖父母や父母がマレーシア人であることからマレーシア国籍を取得する帰化選手)の獲得により積極的に動く可能性もあり、マレーシアで生まれ育った選手にとって今季はこれまで以上に出場機会を得るのが難しくなりそうです。

また身の丈に合わない経営で外国籍選手を補強して給料未払い問題を起こしたクランタンFCの様なクラブが今季こそは出ないことを祈りたいです。

FAカップは準々決勝と準決勝のみホームアンドアウェイで開催

今季は5月開幕、来年4月閉幕と試合可能な期間が延びたことにより、MFLは国内カップ戦の一つ、FAカップについてベスト16は1発勝負、準々決勝と準決勝はホームアンドアウェイ、そして決勝は従来通り一発勝負とすることも発表しています。

注)なおMFLは、今季のFAカップについてスーパーリーグのクラブと3部にあたるM3リーグの2チームが出場すると発表していますが、給料未払い問題が未解決であることからクランタンFCは今季のスーパーリーグ出場資格を失っており、現在、スーパーリーグは13チームとなっています。スーパーリーグの14番目のチームをM3リーグのクラブの中から審査のみで昇格させる話は出ていますが、今のところ具体的な進展はありません。

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カップ戦の醍醐味は何といっても「ジャイキリ」。国内で無敵を誇るジョホールでも、一発勝負なら足元を救われる可能性があります。観客動員や入場料収入を考えればホームアンドアウェイ方式を採用したいのも理解はできますが、ここは本家のFAカップ同様に完全一発勝負方式にして盛り上げれば良いのになぁ。またかつては4部のクラブにも門戸が開かれていましたが、コロナ禍を理由にスタジアムを持たないクラブの参加ができなくなったFAカップですが、こちらも本家同様、国内のクラブに全てに大会を開放し、MFLクラブだけでなく、M3リーグが所属するアマチュアフットボールリーグAFLのクラブにも門戸を開いて欲しかった。

U23チームによるMFLカップは1リーグ方式に変更

2部プレミアリーグを改変する形で昨季から始まったU23チームのリーグ戦、MFLカップは、昨季の2リーグ方式から、1リーグ方式に変更することもMFLは発表しています。この変更は、選手により多くの出場機会を提供し、U23やそれ以下の年代の選手のトップリーグへの準備と露出を増やすというクラブの要望にMFLが応えたものだとしています。

さらにMFLカップの競争力と強度を高めるため、オーバーエイジ選手と外国人選手の出場枠も変更され、外国人選手は最大3名まで出場可能となる他、同時にピッチ上に2人のオーバーエイジ選手の出場が可能になるということです。

19年ぶり復活のアセアンクラブチャンピオンシップは昨季リーグ3位のサバと4位のクダに出場権

シンガポールのタンピネス・ローヴァーズFCとパハンFA(当時、現スリ・パハンFC)による決勝戦が行われた第2回大会となった2005年大会を最後に開催されていなかったAFFアセアンクラブチャンピオンシップは、2022年、翌2023年と開催の話が上がったものの実現していませんでした。なお、MFLはサバFCとクダ・ダルル・アマンFCに出場権を与えることをAFFに通知済みということですが、AFFからはまだ回答を受け取っていないということです。

またMFLは、2005年以来の19年ぶりに開催される東南アジアサッカー連盟AFFアセアンクラブチャンピオンシップの出場権を、昨季3位のサバFCと4位のクダ・ダルル・アマンFCに与えることも発表しています。

1月31日のニュース
3月のW杯予選でマレーシアと対戦するオマーンが監督解任
元U16代表監督-帰化プログラムは終了するべき
インドネシア代表落選のサディル・ラムダニがイメチェンしてサバFCのトレーニングに復帰
代表監督の采配を批判した女子代表選手を協会が事情聴取

昨日のアジアカップ2023ベスト16では、東南アジアのチームとして最後まで残っていたタイがウズベキスタンに敗れて、東南アジア勢はベスト8へコマを進めることができませんでした。マレーシアのナズミ・ナサルディン氏が主審を務めたこの試合は、石井正忠監督率いるタイが先制を許すものの一時はスパチョーク・サラチャートの素晴らしいゴールで追いつきますが、再び逆転を許して敗れています。

また日本人監督といえば、シンガポール代表の西ケ谷隆之監督の解任をシンガポールサッカー協会(FAS)が1月29日に発表しました。同じ日本人の吉田達磨監督(現Jリーグ徳島監督)を引き継ぐ形で2022年4月に就任した西ケ谷監督は、8勝5分8敗の成績を残していますが、韓国、中国、タイと同組のFIFAワールドカップ2026年大会予選では、韓国に0-5、タイに1-3と敗れています。FASは解任の理由として「代表チームの最近のパフォーマンスと結果は期待を下回っている」ことを挙げています。突然とも家のこの時期の発表で宇賀、自国が0-5で敗れた韓国が、シンガポールのライバルであるマレーシアと3-3で引き分けたことも影響しているかも知れません。

3月のW杯予選でマレーシアと対戦するオマーンが監督解任

AFCアジアカップ2023ではサウジアラビア、タイ、キルギスと同じF組に入り3位となったものの、ベスト16入りを逃したオマーン。これを受けてオマーンサッカー連盟がクロアチア出身のブランコ・イワンコヴィッチ監督を解任することを公式SNSで発表しています。

2020年1月に4年契約を結んでいた69歳のイワンコヴィッチ監督は、中国1部の山東泰山やイラン1部ペルセポリスFC、サウジアラビア1部のアル・アハリFCなどの監督を歴任、またイラン代表監督の経験もある他、オマーン代表監督としては昨年2023年に開催されたガルフカップで2大会ぶりにチームを決勝に導いています。この解任を報じたオマーンの英語メディアであるタイムズオブオマーンによるとイワンコヴィッチ監督はオマーン監督としての戦績は、46試合で22勝10分14敗ということです。

今回のアジアカップでは、オマーンはタイとは0-0、キルギスとは1-1でそれぞれ引き分け、サウジアラビアには1-2と敗れ、ベスト16に進めませんでした。特に最終第3節ではFIFAランキング74位のオマーンは同98位のキルギスに勝てば自力でのベスト16進出を決めることができるチャンスがあったにもかかわらず80分に同点とされ、そのまま引き分けています。

マレーシアは3月に再開されるFIFAワールドカップ2026大会アジア2次予選で、3月21日にはアウェイで、また3月26日にはホームでオマーンと対戦しますが、この監督交代が

元U16代表監督-帰化プログラムは終了するべき

マレーシア代表のアジアカップ2023最終戦となった韓国戦では、パウロ・ジョズエからのパスを受けたロメル・モラレスが同点ゴールを決めて引き分けに持ち込む活躍を見せました。いずれもKLシティFCでプレーするジョズエ選手はブラジル出身、モラレス選手はコロンビア出身で、ともにマレーシアリーグで5年連続でプレーしたことにより、マレーシア国籍を取得して代表入りした選手です。

しかし国家サッカー選手育成プログラム(NFDP)の元テクニカルディレクターで、元U16代表監督も務めたリム・テオンキム氏は、帰化選手プログラムを中止するべきと主張しています。

スポーツ専門サイトのアストロ・アリーナとのインタビューで、リム氏は、このプログラムによってマレーシア人選手が国際舞台で活躍する機会が失われていると述べています。「マレーシアサッカーにとってこのプログラムは良い方策とは思えない。」と述べて、ドイツやイタリアなど欧州各国代表チームの状況を見ればそれが一目瞭然だとしています。

「ドイツ代表は現在、欧州の代表チームの中で低迷している。かつてはワールドカップで優勝しているのに、なぜこの様な深刻な問題に直面しているのか。」バイエルン・ミュンヘンのユースチームのコーチを10年以上務めたリム氏によれば、その理由はドイツサッカー界でプレーする地元選手の不足が原因だとしています。

一方、マレーシア代表として180試合に出場、78ゴールを挙げているマレーシアサッカー界のレジェンド、ザイナル・アビディン・ハッサン氏は、外国籍選手に依存するのではなく、育成プログラムにより力を入れる時期だと述べています。

「今回のアジアカップでは、帰化選手とマレーシア人選手の融合が成果をもたらしたのは事実だが、今後も質の高い帰化選手を獲得できるかどうかは分からない。」と述べ、今こそが草の根からの育成プログラムを強化して、より多くのマレーシア人選手を育てる時期だと主張しています。

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このブログでも何度か取り上げましたが、今回のアジアカップに出場したマレーシア代表26名中、ジョズエ、モラレス両選手の他にも同様の帰化選手としてブラジル出身のMFエンドリック・ドス・サントス(ジョホール)、ガンビア出身のMFモハマドゥ・スマレ(ジョホール)がおり、いわゆる「ルーツを持たない」帰化選手は全員で4名となっています。また国外で生まれ育ちながらマレーシア人の親や祖父母を持つことからマレーシア国籍を得た「ルーツを持つ」選手(マレーシア国内ではハイブリッド帰化選手あるいはレガシー帰化選手と呼ばれています)も10名おり。初戦のヨルダン戦では幾何選手とハイブリッド帰化選手合わせて7名が、2戦目のバーレーン戦では6名が、そして最終戦となった韓国戦では7名が先発XIに名を連ねており、今やマレーシア代表は帰化選手なしでは成り立たない状況になっています。

インドネシア代表落選のサディル・ラムダニがイメチェンしてサバFCのトレーニングに復帰

アジアカップでは、チーム史上初となるベスト16進出を果たしたものの、オーストラリアに0-4で敗れたインドネシア代表。その大会直前に代表落ちしたサディル・ラムダニが所属するマレーシアスーパーリーグのサバFCの練習に復帰したと、スポーツ専門サイトのスタジアム・アストロが伝えています。

銀髪に染めて短く刈り込んだ新しい髪型で現れたサディル選手は、2月13日にAFCカップ東南アジア地区準決勝でオーストラリアのマッカーサーFCとの対戦を控えたサバFCのトレーニングのため、サバ州のコタ・キナバルに戻っています。(左が昨シーズン、右が現在のサディル選手)

サディル選手はアジアカップ直前に行われたシリアやイランとの練習試合のも出場していましたが、大会直前で代表から外れただけでなく、代わりに召集されたのが昨年は代表戦出場がなかった選手だったこともあり物議を醸していました。さらにその後、インドネシア代表のシン・テヨン監督がパフォーマンス、態度、規律の側面を重視した結果、サディル選手が落選した、と代表チームのマネジャーが発言していました。

代表監督の采配を批判した女子代表選手を協会が事情聴取

マレーシアサッカー協会(FAM)は女子代表でプレーするインタン・サラー選手(写真下)の事情聴取を行うと、マレーシア語紙ブリタ・ハリアンが報じています。

インタン選手はアジアカップ2023のグループステージE組第3節の韓国対マレーシア戦で、キム・パンゴン監督が後半28分にダレン・ロックに代えてパウロ・ジョズエを起用した際と、ロスタイムにブレンダン・ガンに代えてロメル・モラレスを投入した際にそれぞれ「馬鹿げた選手起用だ」「再び馬鹿げた後退だ。サファウィ・ラシドを出すべきだ」などと選手交代を非難する内容を自身のSNSに投稿しましたが、それが拡散した結果、批判を受けていました。

FAMのノー・アズマン・ラーマン事務局長は、女子マレーシア代表選手としてその様な投稿をSNSに行うべきではなかったとして、本人から事情を聞いた上で、場合によっては処分が下される可能性があることを明らかにしています。

北米のアマチュアリーグ、女子プレミアサッカーリーグのニューヨークダッチライオンズFCでプレーする23歳のインタン選手は、昨年の東南アジア競技大会通称シーゲームズにマレーシア女子代表として出場し、ミャンマー戦ではゴールを決めています。

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インタン選手が批判したジョズエ選手からモラレス選手へパスが渡って同点ゴールを決めると、今度は「キム監督は賢い。だから自分は代表監督でないんだ。」と手のひらを返す様な投稿をした結果、炎上に油を注ぐ様な形になり、それらの投稿は現在は削除されています。

さらにインタン選手は、アジアカップから代表チームとともにマレーシアに戻ったキム監督に詫びるためにクアラルンプール国際空港へ足を運び、直接キム監督に謝罪し、キム監督とのツーショットを自身のSNSにもアップしています。

1月30日のニュース-アジアカップ2023関連3題
グループステージ敗退の代表に政府が1億6000万円支給
代表チーム総支出は2億2000万円
韓国戦後の記者会見でキム監督がメディアのこれまでの対応を非難

アジアカップ2023は、マレーシアとベトナムがグループステージで敗退した一方でインドネシアとタイがベスト16に進出。しかしベスト16初進出となったインドネシアはオーストラリアに敗れ、本日、ウズベキスタンと対戦するタイが東南アジア勢最後の砦となりました。2000年代に入ってからはベトナムが2度(2019年、2007年)ベスト8進出した以外は東南アジアのチームはベスト8に残っておらず、強豪ウズベキスタン相手とは言え、頑張って欲しいところです。

政府がアジアカップ韓国戦の健闘を讃えてサッカー協会に1億6000万の報奨金

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、マレーシアサッカー協会(FAM)にアジアカップでの検討をたたえて報奨金500万リンギ(およそ1億6000万円)を与えることを発表しています。

「我々よりはるかに優れたチームを相手にしたマレーシア人選手たちの素晴らしい戦いを見た。最初の2試合で負けたにもかかわらず、彼らは最後の試合で実際に個性と強さを示した」と語ったアンワル首相は、ハンナ・ヨー青年スポーツ相の要請に基づき、政府としてFAMに対し代表チーム運営を目的として報奨金500万リンギを与えることを明らかにしています。

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しかしこの後、韓国と引き分けとは言え、0勝1分2敗という成績でグループステージ敗退の代表チームに「報奨金」を与えることに批判が噴出し、この「報奨金」がいつの間にか代表強化費という表現になったというのが次の記事です。

今回のアジアカップ2023出場の代表チームの総支出は2億2000万円

1月25日にアジアカップ2023が開催されていたカタールからクアラルンプール国際空港に帰国したマレーシア代表を出迎えたハンナ・ヨー青年スポーツ相は、今回の大会に出場するための費やした総支出が700万リンギ(およそ2億2000万円)だったことを明らかにしています。

ヨー青年スポーツ相は、この金額が同じグループステージE組の他国と比べると少額だったと説明し、同じE組の韓国は9400万リンギ(およそ30億円)、ヨルダンは2350万リンギ(およそ7億4000万円)、そしてバーレーンは2820万リンギ(およそ8億9000万円)を費やしたとも述べています。

さらにアンワル・イブラヒム首相が発表したマレーシアサッカー協会(FAM)への500万リンギの報奨金については「この500万リンギはFAMが必要とする資金の一部にすぎず、実際にFAMはその以上の資金を必要としている。我々はマレーシア代表が他国の代表チームと同じようにトレーニングを行える環境を確保する必要がある。」と述べて、政府による代表強化資金であること、そしてこれが代表チームに与えられることに理解を求めています。

アジアカップ2023を終えてカタールから帰国したマレーシア代表チームをクアラルンプール国際空港(KLIA)に出迎えヨー青年スポーツ相は、FAMのノー・アズマン・ラーマン事務局長にこの500万リンギの目録を手渡したと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

帰化選手モラレス「韓国戦で同点ゴールで夢が叶った」

アジアカップ2023のグループステージ最終戦となった韓国戦で、ロスタイム15分に劇的な同点ゴールを決めたコロンビア出身の帰化選手ロメル・モラレスは、土壇場で決めた同点ゴールを「夢のようだった」と振り返っています。

昨年12月にマレーシア国籍を取得したばかりのモラレス選手は、今回のアジアカップ2023で初めて代表に選出されています。代表戦デビューとなったヨルダン戦では少ない好機を生かせなかったこともあり、厳しく批判されることもありました。しかし韓国戦の同点ゴールとなった代表初ゴールで、韓国と引き分けに貢献しています。

「カタール入りしたときから、チーム内での競争が非常に厳しいものになることは分かっていた。チームに早く適応する必要があったので、ただ出場してベストを尽くし、チャンスを待っていた」と語ったモラレス選手は、さらに「チャンスを与えてくれたキム・パンゴン監督に感謝しており、最後の瞬間までマレーシアのために何かできると信じていた。ゴールを決めた瞬間は夢のようだった。」とマレーシアの英字紙スターの取材に答えています。

最後にモラレス選手は「私は人々がマレーシア代表チームを誇りに思ってくれることを願っている。私たちは全力で試合に臨み、多くのワールドカップに出場しているチームと対等に勝負できたと人々に伝えることができる」と締めくくっています。

韓国戦後の記者会見でキム監督がメディアのこれまでの対応を非難

アジアカップ2023では初戦のヨルダン戦を0-4、続くバーレーン戦は0-1で敗れた間マレーシア代表ですが、この結果について多くの批評家がキム・パンゴン監督の先発XIの選択と戦術を疑問視する発言をしていました。さらに2025年まで契約が残るキム監督がアジアカップ以降も代表チームを率いるのにふさわしいかどうかを疑う声をあげる解説者もいましたが、韓国戦の引き分けという結果を残したことで、キム監督の怒りが韓国戦後の記者会見で爆発したと、英字紙スターが報じています。

韓国戦後の記者会見で報道陣と対峙したキム監督は、2連敗からどの様に選手のモチベーションを上げたのかを尋ねた記者に対し「あなたたちは私を退場させたいのに、私がどのようにして選手たちをやる気にさせたかを尋ねているのです」と回答した上で、「チームの結束は私たちが常に意識してきたことです。我々は言わば家族のようなものです。」

「私は常に言い続けてきましたが、私たちは選手たちに最高の環境を提供する必要があり、それが私たちの仕事なのです。私たちは選手たちのモチベーションを高めることで選手たちに試合で実力を発揮してもらいたいと思っています。」

「しかし、あなた方(メディア)はそういった側面を決して見ることはなかった。私をチームから追い出したいと思っているあなた方は、私を(言葉で)殴っていたにもかかわらず、今日になって突然、私のこと称賛している。」と文字通り手のひらを返す対応をした報道陣に対してキム監督は怒気を含みながら答えたということです。

アジアカップ2023グループステージE組
執念の同点ゴールでマレーシアは43年ぶりの勝点1
ロスタイムの失点で引き分けた韓国は2位通過で日本戦回避
バーレーンが2連勝で逆転1位通過

アジアカップ2023のグループステージE組の最終第3節が行われ、既にグループステージ敗退が決まっているFIFAランキング130位のマレーシアは同28位の韓国と対戦しています。そして二転三転した試合の最後は15分と長く取られたロスタイムに「執念」のゴールを挙げたマレーシアが引き分けに持ち込み、1980年大会以来43年ぶりの勝点1を挙げています。

母国韓国との対戦となったマレーシア代表のキム・パンゴン監督は、前線の3名は初戦のヨルダン戦と同じファイサル・ハリム(スランゴールFC)、ダレン・ロック(サバFC)、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジムFC)、3バックのDF陣はバーレーン戦と同じシャールル・サアド(ジョホール・ダルル・タジムFC)、ディオン・コールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)、ドミニク・タン(サバFC)を起用しましたが、中盤はここまで2試合に出場していたマシュー・ディヴィーズがベンチ外となり、左からラヴェル・コービン=オング(ジョホール・ダルル・タジムFC)、スチュアート・ウィルキン(サバFC)、そして今大会初出場が初先発となったブレンダン・ガン(スランゴールFC)そして右サイドハーフはダニエル・ティン(サバFC)がディヴィーズ選手に代わって先発しています。一方の韓国はこの試合引き分け以上でベスト16進出が決まっていることから、韓国代表のユルゲン・クリンスマン監督は主力を温存するのではとも言われていましたが、ソン・フンミン(孫興民、トットナム)、イ・ガンイン(李康仁、パリ・サンジェルマン)、キム・ミンジェ(金玟哉、バイエルン)ら主力を起用しています。(以下は両チームの先発XI)

前日のD組の試合の結果、日本が2位となったことで、試合開始前の段階では勝点でヨルダンと並びながら得失差で2位の韓国がE組を首位で突破するとベスト16でいきなり日本との対戦となることから、どの様な試合運びをするのかが注目されましたが、試合は開始から韓国がマレーシアを圧倒する展開となります。15分にはソン選手の強烈なシュートをGKシーハン・ハズミ(ジョホール・ダルル・タジムFC)がなんとか弾いて先制点を許しません。しかしその6分後にはイ・ガンインの左コーナーキックにチョン・ウヨン(鄭優営、シュツットガルト)が頭で合わせてシュートを放ちます。シーハン選手はこれをうまく掻き出した様にも見えましたが、VARが入った結果、これがゴールと認められて韓国が先制します。その後も韓国が攻め続ける展開が続いたものの、マレーシアはなんとか踏みとどまり、前半は韓国1点のリードで終了します。

後半に入ると、前半押し込まれ続けながらも耐えていた選手たちを信用してか、マレーシアのキム監督は今大会初めて後半開始早々に交代カードを切りませんでしたが、これが功を奏します。51分にダレン・ロックがペナルティエリア近くでファン・インボム(黄仁範、レッドスター・ベオグラード)からボールを奪うとそこからアリフ・アイマンへボールが渡ります。アリフ選手のシュートはキム・ミンジェに阻まれたものの、そのこぼれ球を拾ったファイサル・ハリムがペナルティエリア左の角度のないところから反転してシュート!ここでもVARが入ったもののこれがゴールと認められマレーシアが後半開始早々同点に追いつきます。

さらに62分には、左サイドを突破したファイサル・ハリムからゴール前のアリフ・アイマンにクロスを送りますが、そこでソル・ヨンウ(薛永佑、蔚山現代)に倒されてしまいます。サウジアラビアのカレド・アル=トゥライス主審は一旦はノーファウルの判定を下したものの、ここでもVARが入り、ファウルが認められたマレーシアはPKを得ます。アリフ選手自身が蹴ったPKは左に飛んだGKチョ・ヒョヌ(趙賢祐、蔚山現代)と逆の右サイドへ。アリフ選手が代表戦8得点目となるゴールを決めて、マレーシアがついに韓国相手にリードを奪います。さらに66分には再び、このコンビが韓国ゴールに詰め寄ります。センターライン付近からアリフ選手が一気にドリブルで駆け上がり、左サイドのファイサル選手へパス。しかしコースを狙ったファイサル選手のシュートは枠を捉えることができません。

すると再びギアを上げた韓国が猛攻を見せます。75分には右サイドからソン・フンミンがドリブルで持ち込み、追い越してきたイ・ジェソン(李在成、マインツ)に流し、イ選手はこのボールをゴール前へ。これをオ・ヒョンギュ(呉賢揆、セルティック)と競り合いながらドミニク・タンがクリアするなど、ピンチの連続の後、韓国がまず同点に追いつきます。83分にパウロ・ジョズエのチャージで倒れたイ・ガンインがゴール正面やや右寄りでフリーキックを得ると、イ選手自ら蹴ったフリーキックはゴール右上隅へ飛びます。シーハン・ハズミはこれに上手く反応するも、ゴールポストに跳ね返ったボールがシーハン選手に当たってオウンゴールとなり、試合は2-2の振り出しに戻ります。

90分を過ぎ、ロスタイムが15分と残る中、ロスタイムの2分にマレーシアペナルティーエリア内でジュニオール・エルドストールがオ・ヒョンギュと交錯して倒してしまうと、再びVARが入った結果、韓国にPKがあたえられ、これをソン・フンミンが左サイドに決め、わずか10分で2ゴールを許したマレーシアが逆転を許します。

しかしロスタイムはまだ10分以上残っています。韓国がこの1点で守りに入ったと見るや、格上相手に怯まずに同点を狙うマレーシアはロスタイム終了間際の15分、中央のスチュアート・ウィルキンからパウロ・ジョズエへボールが渡ると、ジョズエ選手からのパスはゴール前のロメル・モラレス(KLシティFC)へ。このボール躊躇なく振り抜いたモラレス選手のシュートが韓国ゴール右隅に決まり、文字通り土壇場でマレーシアが再び同点とします。

いずれもKLシティFCでプレーするブラジル出身のジョズエ選手とコロンビア出身のモラレス選手のコンビの活躍で3-3としたままま、試合は終了し、ドラマチックという言葉よりも「執念の」と形容したい同点ゴールでマレーシアが1980年大会以来となる43年ぶりの勝点を挙げています。

初戦からの2連敗でグループステージ敗退が決まっていたマレーシアでしたが、ボール保持率が韓国の81%に対して19%と冗談の様な数字の中、この引き分けでマレーシアサポーターは溜飲を下げ、また日本や韓国など他国のサポーターにはベスト16の組み合わせが目まぐるしく変わる楽しみが提供できたのではないでしょうか。

この敗戦でマレーシアの次の目標はFIFAワールドカップ2026アジア2次予選、3月21日と26日のオマーン戦(21日がアウェイ、26日がホーム)となりました。ケガなどの問題がなければおそらく2、3名を入れ替える程度で代表チームの顔ぶれが大きく変わることはないでしょう。韓国戦を経て成長したマレーシアには、初となるアジア3次予選進出の期待が膨らみます。

アジアカップ2023 グループステージE組第3節
2024年1月25日@アル・ジャヌーブ・スタジアム(アル=ワクラ、カタール)
観衆:30,117人
韓国 3-3 マレーシア
⚽️韓国:チョン・ウヨン(鄭優営)(21分)、シーハン・ハズミ(83分OG)、ソン・フンミン(孫興民)(90+4分PK)
⚽️マレーシア:ファイサル・ハリム(51分)、アリフ・アイマン(62分PK)、ロメル・モラレス(90+15分)
🟨韓国(1):イ・ジェソン(李在成) 
🟨マレーシア(0)

この試合のハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeチャンネルより

E組のもう一試合は、ここまで1勝1敗だったバーレーン(FIFAランキング86位)がヨルダン(同87位)を1-0で下し、E組の1位となっています。

この試合の前には初戦の韓国戦、第2戦のマレーシア戦いずれにも先発していたバーレーンDFハザ・アリがドーピング検査違反の疑いからAFCが活動停止処分を下すなど、逆風の中での勝利でした。

この結果、マレーシアを除く3チームがベスト16へ進出し、バーレーンは日本と、韓国はサウジアラビアと、そしてヨルダンはイラクと対戦することが決定しています。

アジアカップ2023 グループステージE組第3節
2024年1月25日@ハリファ国際スタジアム(ドーハ、カタール)
観衆:39,650人
ヨルダン 0-1 バーレーン
⚽️バーレーン:アブドゥラー・ユスフ・ヘラル(34分)
🟨ヨルダン(2):サレム・アル=アジャリン、アリ・アルワン
🟨バーレーン(0)

上はこの試合の両チームの先発XI

ヨルダン対バーレーンのハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeチャンネルより

AFCアジアカップ2023 グループステージE組最終順位(第3節終了)

勝点
1バーレーン32013306
2韓国31208625
3ヨルダン31116334
4マレーシア301238-51

1月25日のニュース
批判が集まるナチョ・インサを同じ帰化選手のリリドン・クラスニキが擁護
ルクマン・ハキムはJ1クラブからのオファーを蹴って横浜YSCC入りしたことを明かす

今日1月25日はマレーシアはタイプーサムというヒンドゥー教の祝日です。あまりにも過激なため本国インドでは禁止されているというこのタイプーサムは、自身の身体を傷つける苦行を行う世界でも有数の奇祭の一つです。興味のある方は是非、上のリンクからどのような祝祭なのかを知ってみて下さい。(ただし、閲覧には注意して下さい。)

閑話休題。カタールで開催中のアジアカップ2023は、今日がグループステージE組の第3節。既にこの大会敗退が決まっているマレーシアは、現在ヨルダンに次ぐ2位の韓国と対戦します。韓国は今日の試合で引き分け以上ならば自力でのベスト16進出決定となりますが、昨日の試合でインドネシアに勝利した日本がD組2位となったことから、今日のマレーシア戦に韓国がどのようにアプローチするのかに興味が集まります。マレーシア戦に勝利してE組2位のままグループステージを終えればベスト16ではいきなり日本との対戦となり、日本を避けてE組を1位で突破するためには、ヨルダン対バーレーンの試合結果にもよりますが、得失差2をつけられているE組1位のヨルダンを上回る大量得点が必要になります。マレーシア戦では韓国のこの辺りの駆け引きが見られると思いますが、マレーシアもここまで2連敗、しかも2試合で無得点(5失点)ながらプライドのためにも「ジャイキリ」とまではいかなくとも、キム・パンゴン監督の母国でもある韓国に冷や汗くらいはかかせるような試合をしてもらいたいところです。

批判が集まるナチョ・インサを同じ帰化選手のリリドン・クラスニキが擁護

1月20日のバーレーン戦では試合終了間際にロスタイムの失点で0-1とバーレーンに敗れたマレーシアですが、その戦犯扱いされているのがナチョ・インサです。所属するジョホール・ダルル・タジムFCでは、ケガがちだった事に加え、ホン・ワンことナサニエル・シオの成長もあり昨季のリーグ戦では出場7試合、出場時間も140分弱と短く、さらに今大会出場選手中、5番目に高年齢の38歳ということもあり、2018年以来となった代表選出の是非についてはメディアやSNS上で議論になっていました。

今大会初戦のヨルダン戦はベンチ外だったインサ選手は、バーレーン戦では後半から出場しました。交代したのはクラブではチームメートでもあるシャマー・クティでしたが、前半でイエローを出されていたこともありましたが、好守の切り替えの中心として中盤で機能していたシャマー選手に代えてインサ選手を投入した采配は裏目に出て、目立った活躍を見せることもなかったどころか、むしろバーレーンに押し込まれる場面が増えてしまいました。結果として0-1の敗戦となり、マレーシアのアジアカップ敗退が決まりました。そして試合後はキム・パンゴン代表監督の采配に疑問の声が上がっただけでなく、インサ選手にも厳しい言葉が投げかけられています。

そんな中、英字紙ニューストレイトタイムズは、インサ選手を擁護する帰化選手のリリドン・クラスニキのコメントを取り上げています。コソボ出身でマレーシア代表でプレーした2人目の帰化選手として7試合に出場しているクラスニキ選手は、自身のSNSに「我々もマレーシアもこのような素晴らしい選手がいることを誇りに思うべき。あなたは最も偉大な友人だ。」といコメントにインサ選手の写真をつけて投稿しています。さらに続けて「憎しみしか見えないが、愛はどこへいった?」と投稿しています。\

スペイン生まれながら祖母がマレーシア人であることからマレーシア国籍を取得した「ハイブリッド帰化選手」のインサ選手を擁護したクラスニキ選手にも思うところがあったのかもしれません。クラスニキ選手自身も、マレーシア国内リーグで5年連続プレーした後、2021年にマレーシア国籍を取得して帰化選手となりましたが、2021年は出場4試合で0ゴール、またキム監督就任後初の代表戦となったシンガポールとの対戦では自身唯一となる代表戦ゴールを挙げましたが、試合は1−2で敗れたことから、マレーシア人選手を押し退けて出場している帰化選手にも関わらずチームの役に立っていないとして激しい批判を受けた経歴を持っています。

ルクマン・ハキムはJ1クラブからのオファーを蹴って横浜YSCC入りしたことを明かす

J3のY.S.C.C.横浜へ加入したU23代表FWルクマン・ハキムは、J1のクラブからもオファーを受けていたと、スポーツ専門サイトのスタジアム・アストロが伝えています。

マレーシアサッカー協会FAMとスポーツ青年省参加の国家スポーツ評議会NSCが共同で運営する国家サッカー選手育成プログラム(NFDP)を卒業し、スランゴールFCのセカンドチームを経、ベルギー1部KVコルトレイクから期限付移籍しているルクマン選手は、アストロ・アリーナとの独占インタビューに応じ、自身のキャリアを強化するために今回の移籍を選択したと述べています。

「自分がレンタル移籍を希望したとき、ヨーロッパの移籍市場はまだ開いておらず、(移籍先として)選択できるのは日本だけだった。そしてY.S.C.C.横浜は、契約にサインする前にクラブの試合を観戦するようにと招待してくれていました。」

「そして自分は強度の高いプレーとプロフェッショナルな姿勢という特徴に興味を持ち、このチームへ加入することを決めた。」とルクマン選手は語っています。

またルクマン選手は、KVコルトレイク在籍時には、日本から来たチームメイトがおり、彼らのプレーを見たことも日本に移籍したいと思った理由の一つだとも話しています。

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チームメートのDF吉野裕太郎選手は自身のSNSに、横浜にあるインド料理屋でマレーシアでもよく食べられているビリヤニライスを堪能する姿を投稿しており、チームメートとも上手くいっているようです。またJ1クラブに召集されても、インドネシア代表のプラタマ・アルハンの様にSNSフォロワー増加以外のなんの利点もないまま契約解除となる可能性もあることを考えれば、J3クラブとの契約は正しい選択に思います。とは言えJ3クラブだからすぐに試合に出場出来る確約はない上、4月に開幕するAFC U23アジアカップ2024に出場するマレーシアU23代表に召集されれば、ルクマン選手はチームを離れることになります。それまでにチームメートの信頼を得ながら、しっかりと自己アピールをしておくことができるのか。それがルクマン選手の直近の目標となりそうです。

アジアカップ2023-グループステージE組
ロスタイムの失点で敗れたマレーシアは敗退決定
韓国はロスタイムの同点弾で敗戦を逃れる

AFCアジアカップ2023のグループステージE組の第2節が行われ、第1節でヨルダン代表に0-4で敗れているマレーシア代表は、同じく第1節で韓国に敗れているバーレーン代表と対戦し、終了間際に失点したマレーシア代表が0-1で敗れ、2連敗となるとともにグループステージ敗退が決まっています。

この前の試合で韓国とヨルダンが引き分けていたこともあり、この試合に勝てば2位以内に入る可能性が残ったマレーシアのキム・パンゴン代表監督は、ヨルダン戦からは4名の選手を入れ替えています。センターフォワードにはロメル・モラレスに代えてパウロ・ジョズエ(いずれもKLシティFC)を、インサイドハーフにはアフィク・ファザイルに代えてシャマー・クティ(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC)を、そして最終ラインにはヨルダン代表戦の左からディオン・コールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)、ジュニオール・エルドストール(インドネシア1部デワ・ユナイテッド)、マシュー・ディヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジムFC)から、ディヴィーズ選手を右サイドハーフに上げ、ドミニク・タン(サバFC)、ディオン・クールズ、シャールル・サアド(ジョホール・ダルル・タジムFC)に変更しています。DFが1人増えたことで、初戦ではモラレス選手とともに前線でプレーしたダレン・ロック(サバFC)はベンチスタートとなりました。

またバーレーンの先発XIでは、13番のMFモーゼス・アトーデがマレーシアリーグのクダ・ダルル・アマンFCでプレーしています。

初戦のヨルダン戦では、12分と18分に失点し、開始20分も経たないうちに劣勢に回ったマレーシアでしたが、この試合では初戦の様に最終ラインを高く設定することもなく、無難に試合に入ります。そんな中で最初のチャンスは15分でした。ペナルティエリア内でアリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジムFC)がフリーでシュートを放つも、ボールはバーレーンGKエブラヒム・ルトファラーの正面に飛び、これをパンチングで逃れられてしまします。また30分にはGKエブラヒムからのロングフィードがマレーシアDFラインの裏手に出ると、それを受けたコミル・アル=アスワドのドリブルをディオン・クールズがクリアしようとしますが、ボールはゴール前へ。しかしゴール手前でドミニク・タンがこれを弾き出してことなきを得ます。

前半を両チームo-0で折り返すと、後半開始とともにキム監督は、19分にイエローをもらっていたシャマー・クティに代えてチーム最年長37歳のナチョ・インサ(ジョホール・ダルル・タジム)を投入します。これが2018年3月以来となる代表戦出場となったベテランのインサ選手が入ったことで、後半は前掛かり気味だったチームは落ち着き、さらにギアを上げてきたバーレーンの猛攻に耐えることはできましたが、相手にボールを持たせてラインを下げる戦術となり、後半だけ見るとボールの保持率はマレーシア34%、バーレーン66%、シュート数はマレーシアの4本(枠内1本)に対して、バーレーンは13本(枠内4本)でした。

そしてこのまま引き分けかと思われたロスタイムに、それまでもたびたびマレーシアゴールを脅かしていたアリ・マダンの放ったシュートは、ゴール前にいた選手たちが死角に入ったことでマレーシアGKシーハン・ハズミ(ジョホール・ダルル・タジム)の反応が遅れ、触れられることなくそのままゴールへと転がり込みました。土壇場でのゴールが決まったバーレーンが勝利を掴み、マレーシアは前の目標に挙げていたベスト16へ進むことはできませんでした。

E組最後の試合となる第3節では、マレーシアは1月25日に韓国と、初戦と同じアル・ジャノブ・スタジアムで対戦します。

AFCアジアカップ2023 グループステージE組第2節
2024年1月20日@ジャシム・ビン・ハマド・スタジアム(ドーハ、カタール)
観衆:10,366人
バーレーン 1-0 マレーシア
⚽️バーレーン:アリ・マダン(90+5分)
🟨バーレーン(1):コミル・アル=アスワド
🟨マレーシア(2):シャマー・クティ、シャールル・サアド

この試合のハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeチャンネルより。

またこの試合の前に行われたE組のもう一試合、ヨルダン対韓国戦は、ソン・フンミン(孫興慜、英国1部トットナム)のPKで韓国が先制するも、37分にパク・ヨンウ(朴鎔宇、UAE1部アル・アインFC)のオウンゴールでヨルダンが追いつくと、さらに前半ロスタイムにはヤザン・アル=ナイマトのゴールで逆転します。前日の日本対イラク戦に続き、東アジアの雄が中東のチームに敗れるかと思われましたが、韓国が11分と長いロスタイムに同点弾を決めてなんとか引き分けに持ち込んでいます。(下はこの試合の両チームの先発XI)


2024年1月15日@アル・トゥマーマ・スタジアム(ドーハ、カタール)
観衆:36,627人
ヨルダン 2-2 韓国
⚽️ヨルダン:パク・ヨンウ(朴鎔宇)(37分OG)、ヤザン・アル=ナイマット(45+6分)
⚽️韓国:ソン・フンミン(孫興慜)(9分PK)、ヤザン・アル=アラブ(90+1分OG)
🟨ヨルダン(3):エーサン・ハダット、ムーサ・アル=タマリ、ヤザン・アル=アラブ
🟨韓国(2):ファン・インボム(黄仁範)、オ・ヒュンギュ(呉賢揆)

ヨルダン対韓国戦のハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeちゃんねるより

AFCアジアカップ2023 グループステージE組順位(第2節終了)

勝点
1ヨルダン21106244
2韓国21105324
3バーレーン210123-13
4マレーシア200205-50

1月19日のニュース
MFLはリーグ参加クラブ数合わせのため3部クラブに「特別ライセンス」申請を許可
アジアカップ2023-今日は東南アジア対決のベトナム対インドネシア戦

アジアではAFCアジアカップ2023がたけなわですが、アフリカでは同様にアフリカ選手権ネイションズカップ2024が開催されています。そしてアジアカップではFIFAランキング113位のタイが同98位と格上のキルギスを破る波乱がありましたが、ネイションズカップでは昨年のW杯にも出場したFIFAランキング28位のチュニジアを同115位のナミビアが破る「ジャイキリ」も起きています。そんな大金星を上げたナミビア代表には、マレーシアリーグでプレーする唯一のネイションズカップ出場選手であるMFペトルス・シテムビ(クチンシティFC)が在籍しており、この試合でも先発して62分までプレーしています。

MFLはリーグ参加クラブ数合わせのため3部クラブに「特別ライセンス」申請を許可

マレーシア1部スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、3部リーグに当たるM3リーグのクラブに対して今季2024/25シーズンのスーパーリーグに参加するための特別ライセンス申請を受け付けることを発表しています。

昨日のこのブログでも取り上げた通り昨季2023年シーズンに最下位となったクランタンFCは給料未払い問題が未解決であることを理由に今季のクラブライセンス発給が見送られ、来季は13チーム編成となることが決まっていました。

しかしMFLは、クランタンFCのクラブライセンス申請を却下した第一審機関(FIB)とMFLクラブライセンス控訴委員会(AB)の決定を考慮した結果、スーパーリーグの14番目の枠を埋めるために、アマチュアフットボールリーグ(AFL)が運営するM3リーグのクラブから特別ライセンス申請を受け付けることを発表しています。(注:2023年に1部スーパーリーグと2部プレミアリーグが合併する形で新たなスーパーリーグが発足したため、現在マレーシア国内には2部リーグが存在しません。)

「クランタンFCの欠場により、今シーズンのスーパーリーグ戦の14番目の枠が空いた。したがって、MFLは、関心のあるすべてのM3クラブに対し、この臨時ライセンス申請書を2024年1月18日まてに提出し、すべての書類を提出するプロセスを提出するよう要請する」 という公式声明を発表したMFLは、設備、人件、運営、法務、財務、実務の6つの項目についてMFLが設けている基準を満たすクラブのみを選択するということです。

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MFLは昨年11月には一度、M3リーグの国内クラブライセンス申請を受け付けていましたが、昨季M3リーグで優勝を果たしたイミグレセン(入国管理局)FC、準優勝のKLローヴァーズを含め申請した7クラブ全てが、ライセンス取得の条件を満たしていないとして不交付とすることを発表していました。ライセンス不交付となったクラブの中には、2022年シーズンまでスーパーリーグでプレーしながら、昨季は国内ライセンスを交付されずにセミプロリーグのM3リーグに降格したサラワク・ユナイテッドFCとマラッカFCも含まれています。

クラブの数が奇数では運営に支障が出るとはいえ、既にクラブライセンス不交付となったクラブに「特別ライセンス」を与えるのであれば、単なる数合わせに過ぎないだけでなく、新たな給料未払いクラブを生み出すことにもなりかねませんが、マレーシアではよくある規則の曲解➡︎なし崩しに実施という図式がここでも起こりそうです。

アジアカップ2023-今日は東南アジア対決のベトナム対インドネシア戦

アジアカップ2023はグループステージ第2節に入り、A組のカタール、B組のオーストラリアがいずれも開幕2連勝で早々とノックアウトステージ進出を決めています。今日1月19日はD組の第2節が行われますが、個人的に注目なのは東南アジアのチーム同士の対戦となるベトナム対インドネシア戦です。日本に冷や汗をかかせたベトナムと、一時はイラクに追いついたインドネシアの対戦は、順当に行けばベトナムの勝利となるでしょうが、同じ東南アジアのチーム相手ということでインドネシアも試合開始からギアを上げてくることも考えられ、面白い試合になってくれるのではないでしょうか。

マレーシアサッカーファン的な視点では、インドネシア代表にDFジョルディ・アマト(ジョホール・ダルル・タジムFC)がいることから、インドネシアに肩入れしそうですが、このインドネシア代表にはもう1人マレーシアスーパーリーグでプレーする選手がいましたが、それがサバFCでプレーする25歳のMFサディル・ラムダニです。このサディル選手は昨年のインドネシア代表戦9試合全てに出場し、このアジアカップ直前に行われた親善試合3試合にも全て出場していますが、大会直前になってインドネシア代表のシン・テヨン(申台龍)監督は、このラムダニ選手を代表から外し、それまで代表候補に入っていなかった30歳のMFアダム・アリスを代表に招集しています。

しかし2023年の代表戦には2試合、今年も1試合出場というアダム選手が入り、ラムダに選手が外れたことが発表されると、その理由をめぐってインドネシアサッカーファンの間で大きな議論が起こり、最後はインドネシアサッカー協会(PSSI)の代表チーム委員会のスマルジ会長が公式声明を出し、シン監督が選手の「パフォーマンス」、「規律」、そして「姿勢」に基づき決定したものだと説明しています。

しかしこの説明がなされると、サディル選手は「規律」という点で代表漏れしたのではという意見がSNSなどにあふれましたが、スマルジ会長は具体的なコメントはしないとし、代表漏れしたラムダニ選手は直ちにインドネシアに戻ることも発表しています。

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その一方でサディル選手がをインドネシア代表から外れたという決定に喜んだのがサバFCのサポーターでした。というのもサバFCはAFCカップ2023/24の東南アジア地区グループステージを突破しており、来月2月13日には同地区準決勝となるマッカーサーFC(オーストラリア)戦が控えているからです。インドネシア代表を外れたサディル選手に対しては同情する一方で、アジアカップでのケガの心配もない上、大会終了を待たずにサバFCに合流できることを多くのサポーターは歓迎していると、マレーシア語サイトのマジョリティが報じています。