2025/26マレーシアスーパーリーグ第9節 試合結果とハイライト映像<br>・FAカップ準決勝の前哨戦はスランゴールが勝利<br>・クチンはロナルド・ンガのハットトリックなどで3位堅守<br>・イミグレセンが待望の1部昇格後初勝利

国籍偽装疑惑へのFIFAの処分に対して、7選手とマレーシアサッカー協会(FAM)が控訴を行いましたが、その最終判断が発表される予定だった10月30日から既に3日が経ちました。この間の報道によると、FIFAはこの件がマレーシアサッカー界だけでなく、今後世界中で帰化や資格問題がどのように扱われるかに関わる繊細な問題であることを理解しており、その規模と影響を考慮して、FIFAは慎重なアプローチを取り、最終判断を急いでいない、などと報じられています。

そんな状況下でもマレーシアスーパーリーグは平常運転。第9節の4試合が10月31日から11月1にかけて行われています。なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はマラッカFCの試合はありません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。


ジョホールは難敵トレンガヌを相手にジャイロのハットトリックなどで完勝

先日のFAカップ準々決勝ではクチン・シティに敗れて敗退が決まったトレンガヌ。そこから気持ちを切り替えて、という時に当たったのは絶好調のジョホールでした。

開始5分でベルグソン・ダ・シウバが自身の持つマレーシアスーパーリーグ最多ゴール記録を114に更新する先制ゴールを決めてジョホールがリードを奪います。しかしトレンガヌもケガから復帰し3試合ぶりの先発となった前ジョホールのアキヤ・ラシドを中心に反撃しますが、何度かあった同点機を逃します。そうする間にジョホールはコロンビア出身のマレーシア代表FWロメル・モラレスがゴールを決めてリードを広げ、前半を終了します。

後半に入ると途中出場のジャイロ・ダ・シルバが出場わずか3分でゴールを決めるとそこからトレンガヌのミスなどもあり出場からわずか16分でハットトリックを達成。大量点に守られたジョホールが完勝し、開幕から9連勝を飾っています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第9節
2025年10月31日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 0-5 ジョホール・ダルル・タジム
⚽️ジョホール;ベルグソン・ダ・シウバ(5分)、ロメル・モラレス(31分)、ジャイロ・ダ・シウバ3(64分、71分、77分)
MOM:ハイロ・ダ・シウバ(スランゴール)


FAカップ準決勝の前哨戦はスランゴールが勝利

奇しくも11月30日のFAカップ準決勝と同じカードとなったこの試合は、今季リーグ戦は未勝利のサバがホームにスランゴールを迎えての対戦となりました。

U23代表FWファーガス・ティアニーの移籍後初ゴールで先制したサバでしたが、前半終了間際にアルヴィン・フォルテスのゴールでスランゴールが追いつき、前半は1-1で終了します。

後半は両チームがせめぎ合う中、60分にスランゴールが逆転します。この試合がトップチーム初出場となったスランゴールU23キャプテン、ライミ・シャムスルが右サイドからペナルティエリアに侵入にし、ゴール前へ低いクロス。これはサバDFドミニク・タンがクリアしたものの、そのボールは左サイドを駆け上がったエース、ファイサル・ハリムの足元へ。このボールを落ち着いて蹴り込んだファイサルのゴールで挙げた1点を守り切り、スランゴールが遅まきながら今季初の連勝となりました。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第9節
2025年11月1日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
スランゴール 2-1 サバ
⚽️スランゴール;アルヴィン・フォルテス(45分)、ファイサル・ハリム(60分)
⚽️サバ:ファーガス・ティアニー(9分)
MOM:ファイサル・ハリム(スランゴール)


クアラルンプールは無敗記録を8に伸ばす

首位ジョホールを勝点差7で追う2位のクアラルンプールが、今季初の連勝を狙うクラン担と対戦。

昨季はわずか2勝で最下位に終わったクランタンは、今季は第8節を終えて既に3勝。さらにこの試合前までは6位と好調です。そんなクランタンを相手にクアラルンプールは無得点で前半を折り返します。

試合が動いたのは65分。チーム得点王のサファウィ・ラシドがドリブルでペナルティエリアにボールを持ち込むと、クランタンDFを引きつけてからカットバックでゴール前へパス。これをクパー・シャーマンが落ち着いて押し込み今季初ゴール。クアラルンプールが先制します。

さらに81分には交代出場のザフリ・ヤーヤが追加点を決めたクアラルンプールが、クランタンの反撃を1点に抑えて勝利。無敗記録を8に伸ばしています。

この試合で気になったのは、クランタンは今季ここまでの7試合でいずれも先発し、チームトップの4ゴールを挙げていたキャプテンのFWイフェダヨ・オルセグン、そして6試合先発のMFハビブ・ハルーンがなぜかベンチスタートだったこと。E・エラバラサン前監督の「休養」に伴い就任したアクマル監督はこの試合が2試合目の采配でした。が、「より熱心にトレーニングに取り組み、試合の戦術プランに合致する選手を地元選手、若手選手、外国人選手を問わず、起用していく。」と試合後の会見で説明しています。昨季はペナンの監督してスタートしながら「休養」となったアクマル監督ですが、チームの主力といえども容赦ない器用には賛否が分かれそうです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第9節
2025年11月1日@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
クアラルンプール・シティ 2-1 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズ
⚽️クアラルンプール;クパー・シャーマン(65分)、ザフリ・ヤーヤ(81分)
⚽️クランタン:シャフィク・イスマイル(90+2分)
MOM:ザフリ・ヤーヤ(クアラルンプール・シティ)


クチンはロナルド・ンガのハットトリックなどで3位堅守

過去2試合はいずれも下位のサバ、ペナンを相手に2試合で2ゴールのみのクチンは、2戦連続で無得点で敗れているPDRMと対戦。このためこの試合も僅差の試合が予想されました。

しかし、クチンは13分に谷川由来選手のヘディングシュートで早々と先制すると、そこからはエースのロナルド・ンガが38分までにハットトリックを決め、前半だけで4点をリードします。

この試合は現地観戦しましたが、前半は両チームともにチャンスはあり、それを確実に得点につなげたクチンとそれができなかったPDRMという展開でした。ただしボールの競り合いになるとクチンの選手が競り勝つ場面が多く、ボールへの執着はクチンが圧倒していました。また主審の判定も不安定で笛を吹くタイミングが悪く、PDRMに不利な判定に思える場面がいくつかありました。

クチン・シティの谷川由来選手は先発して今季初ゴールを決め、試合終了までプレーしています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第9節
2025年11月1日@MPSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM 0-5 クチン・シティ
⚽️クチン:谷川由来(13分)、ロナルド・ンガ3(20分、31分、38分)、ラマダン・サイフラー(54分PK)
MOM:ロナルド・ンガ(クチン・シティ)


ヌグリ・スンビランはPK2本を許して引き分けに

昨季は13チーム中12位だったヌグリ・スンビランは、シーズン当初はスランゴールを破るなど絶好調でしたが、シーズンが進むにつれてやや息切れ気味。10月に入るとFAカップは準々決勝でスランゴールに4失点で敗れ敗退、リーグ戦でも下位のペナンに今季初勝利を許すなど、不安定な試合が続いています。

そんな中でこの日は今季からマレーシアリーグに参入したDPMMと対戦。前節はジョホールに10失点の相手は今季ここまで1勝と苦しんでおり、この試合に勝って勢いをつけたいところでした。

前半を0−0で折り返した試合は、ヨヴァン・モティカのフリーキックをジョセフ・エッソが頭で合わせてヌグリ・スンビランが54分に先制します。しかし62分に今度はペナルティエリア手前でフリーキックをDPMMに与えると、ハキミ・ヤジド・サイードのFKがゴール前に作った壁にいたクザイミ・ピーの手に当たってしまいます。VARが入った結果、判定はハンド。これにより得たPKをジョーダン・マレーが決めて、DPMMは同点に追いつきます。

しかしヌグリ・スンビランはその4分後、ヨヴァン・モティカのゴールで再びリードを奪いますが、今度は81分にこの試合がマレーシアリーグ出場2試合目となったモンゴル代表DFフィリップ・アンダーソンがペナルティ・エリア内でハンド。この試合2度目のPKを得たDPMMは再びマレーが決めて、試合は引き分けに終わっています。

ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手はキャプテンとして先発してフル出場、常安澪選手は80分から交代出場し、試合終了までプレーしています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第9節
2025年11月2日@ハサナル・ボルキア国立競技場(ブルネイ)
DPMM 2-2 ヌグリ・スンビラン
⚽️DPMM:ジョーダン・マレー2(62分PK、81分PK)
⚽️ヌグリ・スンビラン:ジョセフ・エッソ(54分)、ヨヴァン・モティカ(66分)
MOM:ジョーダン・マレー(DPMM)


イミグレセンが待望の1部昇格後初勝利

クラブ史上初の1部昇格を果たしたイミグレセンFCは、マレーシア政府の出入国管理局(イミグレーション)が母体のクラブ。元々は出入国管理局がある行政首都のプトラ・ジャヤに本拠地を置くクラブですが、リーグ基準に合うスタジアムがないことから、1部昇格に伴い、今季はペナン州バトゥ・カワンにあるペナン州立スタジアムをホームとしています。

初の1部ということもあってか、イミグレセンは今季ここまで3分4敗と未だ勝利がなく、この試合前は最下位に低迷しています。同じペナン州を本拠地とするペナンFCと初の「ペナンダービー」となったこの試合は、前半は0-0で終了します。

今季1勝のペナンを相手に先手を取ったのは未勝利のイミグレセンでした。59分にファズルル・ダネルのシュートをペナンGKが弾いたところをヴィルマー・ホルダンが押し込んでリードを奪います。

両チームとも今季7試合通算得点がいずれも5得点ということもあってか、その後は共にゴールを奪うことができず、結果的にイミグレセンが逃げ切り、待望の1部初勝利を挙げています。またこの結果、イミグレセンは一気に8位まで順位を上げています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第9節
2025年11月2日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージタウン)
ペナン 0-1 イミグレセン
⚽️イミグレセン:ヴィルマー・ホルダン(59分)
MOM:ザリフ・イルファン(イミグレセン)


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第9節終了)

チーム勝点
1ジョホール99004834527
2クアラ・ルンプール86201641220
3クチン85211841417
4トレンガヌ84132014613
5スランゴール84131410413
6ヌグリ・スンビラン73221411311
7クランタン9324916-711
8イミグレセン8134617-116
9PDRM8134822-146
10ペナン8125516-115
11DPMM8125628-225
12サバ8044518-134
13マラッカ603339-63

2025/26マレーシアスーパーリーグ得点トップ10(第9節終了)

得点選手名所属
110ベルグソン・ダ・シウバジョホール
10ジャイロ・ダ・シウバジョホール
37アリフ・アイマンジョホール
7ロナルド・ンガクチン
56ヤン・マベラトレンガヌ
6ジョアン・フィゲイレドジョホール
6ヨヴァン・モティカヌグリ・スンビラン
85クリゴール・モラエススランゴール
5サファウィ・ラシドクアラルンプール
5ジョセフ・エッソヌグリ・スンビラン

11月1日のニュース<br>・国籍偽装疑惑問題-アルゼンチンのニュースポータルがガルセス、マチュカ両選手の祖父母がマレーシア生まれでないと報道

国籍偽装が疑われるマレーシア代表のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名に対し、FIFAはマレーシアサッカー協会(FAM)に罰金、7選手に対しては罰金と12ヶ月に及ぶあらゆるサッカー活動への参加禁止処分を科したのが9月26日。これに対してFAMは10月14日にFIFA控訴委員会に正式な上訴書を提出して控訴を行いました。この控訴内容を審議し、FIFAが最終判断を下すのが10月30日と発表されていましたが、この記事の執筆時点ではFIFAからの発表はありません。

マレーシアのニュースポータルサイトであるスクープは、「事情に詳しい関係者」の話として、控訴委員会が控訴手続き中にFAMが提出した特定の祖先に関する文書について追加の説明を求めたと報じています。この関係者によると、この事件の規模と影響を考慮して、控訴委員会は慎重なアプローチを取っている、ということです。

さらにその関係者は「書類にはまだ矛盾点がいくつかあり、相互検証が必要だ。最終判決はどちらに転ぶか分からないが、完全な無罪判決が出る可能性は極めて低いだろう。」とも述べているということです。

またスクープは、控訴委員会に近い別の関係者の話として、FIFAはこの件がマレーシアサッカー界だけでなく、今後世界中で帰化や資格問題がどのように扱われるかに関わる繊細な問題であることを理解しており、裁定の正当性に影響を与えないよう徹底することに熱心であり、最終判断を急いでいない」と付け加えたということです。

国籍偽装疑惑問題-アルゼンチンメディアがガルセスとマチュカの祖父母がマレーシア生まれでないと報道

そんな中、アルゼンチンのニュースポータルサイトが自国出身のヘリテイジ帰化選手2名について、その祖父母の出身地がマレーシアではなくアルゼンチンであると報じています。

アルゼンチンのニュースポータルサイト(Capital de Noticias(CDN)を引用する形で、マレーシアの英字紙ニューストレイツタイムズが報じているのは、いずれも今年6月にマレーシア国籍を取得し、6月10日のAFCアジアカップ予選ベトナム戦に出場したDFファクンド・ガルセス(スペイン1部デポルティーボ・アラベス)、FWイマノル・マチュカ(アルゼンチン1部ベレス・サルスフィエルド)両選手の持つマレーシアのルーツについての情報です。

CDNはこの両選手の祖父母の出身地について新たな証拠を発見したと報じています。ガルセス選手の祖父は1930年5月29日にアルゼンチン北部のサンタフェ州の州都サンタフェ・デ・ラ・ベラクルスで生まれ、またマチュカ選手の祖母は同じサンタフェ州のロルダンという街で生まれたとし、記事には出生届の写真も掲載されています。

なおこのCDNの記事を引用しているニューストレイツタイムズは、この記事にその写真が記載されている出生届については公式文書であるかどうかについては確認が取れていないと注意書きも記載しています。

FAMがFIFAに提出した書類では、ガルセス選手の祖父、マチュカ選手の祖母にいずれもペナン生まれと記載されており、これが両選手の持つマレーシアのルーツとして、マレーシア代表としてベトナム戦に出場していました。

国籍偽装疑惑は、この両選手に加えてアルゼンチン出身のFWロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)、スペイン出身のDFガブリエル・パルメロ(スペイン3部ウニオニスタス・デ・サラマンカ)とDFジョン・イラザバル(ジョホール・ダルル・タジム)、ブラジル出身のFWジョアン・フィゲイレド(ジョホール・ダルル・タジム)、オランダ出身のMFエクトル・へヴェル(ジョホール・ダルル・タジム)の5選手も処分の対象となっています。


FIFAの最終判断が出る前に、今回の国籍偽装疑惑問題のこれまでの経緯を振り返ってみると以下のようになります。

2024年

  • 年末:マレーシアサッカー協会(FAM)がヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ選手)」の発掘を開始を発表。
  • 12月4日:ハミディン・アミンFAM会長が2025年1月の任期終了を前に再選を目指さないことを発表。
  • 12月16日:マレーシア代表監督にピーター・クラモフスキー氏就任。
  • 12月30日:マレーシア代表CEOにロブ・フレンド氏就任。

2025年

  • 1月11日:トゥンク・イスマイル殿下が6〜7人のヘリテイジ帰化選手候補を特定したことを発表。
  • 1月(時期不明):ヘリテイジ帰化選手たちのMyKad(マレーシア国民身分証)申請が開始される。
  • 2月15日:FAM会長にジョハリ・アユブ氏が就任。
  • 3月25日:ヘリテイジ帰化選手のヘクター・ヘベルがマレーシア代表デビュー(マレーシア対ネパール戦)。
  • 5月29日:ヘリテイジ帰化選手のガブリエル・パルメロがマレーシア代表デビュー(マレーシア対カーボベルデ戦)。
  • 6月10日:いずれもヘリテイジ帰化選手のファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、ジョン・イラサバル、ジョアン・フィゲイレード、イマノル・マチュカがマレーシア代表デビュー(マレーシア対ベトナム戦)。
  • 6月11日:ヘリテイジ帰化選手のマレーシア代表資格(国籍偽装)についてFIFAに正式な苦情が送付される。
  • 8月27日:ジョハリ・アユブFAM会長が病気を理由に辞任。
  • 9月26日:FIFAが制裁処分発表。FAMに罰金処分、7人の帰化選手には罰金と12ヶ月の出場停止処分が下される。
  • 9月27日:内務大臣が、7人のヘリテイジ帰化選手の国籍取得はマレーシア連邦憲法に基づくものであると説明。
  • 10月6日:FIFAが「決定理由通知書(Notification of ground of decision)」をFAMに送付。
  • 10月7日:FAMが控訴の意向を正式に表明。
  • 10月14日:FAMがFIFA控訴委員会に正式な上訴書を提出。
  • 10月17日:FAMがノー・アズマン事務総長の無期限停職処分を発表。
  • 10月25日:トゥンク・イスマイル殿下がヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑問題に関する記者会見を開催。
  • 10月27日:ラウス・シャリフ元最高裁長官がFAM設立の独立調査チームのトップに任命される。
  • 10月30日:FIFAがFAMの控訴に対する最終決定を発表する予定
    *しかし、11月1日午前10時現在(マレーシア時間)発表なし。

10月30日のニュース<br>・国籍偽装疑惑:パハン州皇太子が7人のヘリテイジ帰化選手をFAMに推薦したことを明かす<br>・イスマイル殿下が会見「FAMでの役職はない。ただ代表チームを支援したいだけ」<br>・FAMの独立調査委員会には元最高裁長官が就任<br>・FIFAアセアンカップ新設-ASEAN11カ国が参加へ

本日10月30日は、ここおよそ1ヶ月に渡ってマレーシアサッカーを揺るがしているヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の国籍偽装疑惑についてFIFAが最終判断を明らかにすることになっています。

9月26日にFIFAは国籍偽装に関わったとしてマレーシアサッカー協会(FAM)に対しては罰金を科し、国籍偽装が疑われる7名のヘリテイジ帰化選手にはそれぞれの罰金と12か月の出場停止処分を下しています。FAMはこの処分に対してFIFAに控訴しており、その最終判断が本日発表されることになっています。

国籍偽装疑惑:パハン州皇太子が7人のヘリテイジ帰化選手をFAMに推薦したことを明かす

パハン州皇太子で前国王のアブドラ国王の弟君でもあるトゥンク・ムダ・パハンことトゥンク・アブドル・ラーマン・スルタン・アフマド・シャー殿下は、FIFAから処分を受けた7名のヘリテージ帰化選手について、自身がマレーシアサッカー協会(FAM)に推薦した選手の中に含まれていたことを明らかにしています。

殿下は、自身の推薦はマレーシア代表を強化するための取り組みの一環だったと説明し、きっかけは昨年、数名の代理人から、評価を目的として複数の選手を紹介する連絡を受けたと話しています。

「私はその提案をFAMに送り、より詳細な評価を行うように求めた。これは彼らがヘリテイジ帰化選手として代表チームでプレーする資格を持つかどうかを判断するためだ」と、殿下は10月24日にメディアに向けた声明で明らかにしています。

さらに殿下は、7人の選手はいずれも政府の法的手続きに基づいて市民権を付与された、正真正銘のマレーシア国民であると強調した上で、選手の推薦はマレーシアにルーツを持つ選手たちが国のために貢献する機会を得られるようにという善意から行ったものだ」とも説明しています。

またこの声明の中でトゥンク・アブドル・ラーマン殿下は、ジョホール皇太子トゥンク・イスマイル殿下に対し、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)を通じて国内サッカーのレベル向上、クラブ運営のプロフェッショナリズム確立に尽力していることへの敬意を表しています。

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パハン州もこれまでに、ガンビア出身のFWモハマドゥ・スマレ(現在はジョホール所属)、アルゼンチン出身のMFエゼキエル・アグエロ(現在はタイ1部カーンチャナブリーパワーFC)、リー・タック(引退)といった選手のマレーシア国籍取得に関わり、マレーシア代表の強化に貢献してきたことについても、トゥンク・アブドル・ラーマン殿下は声明の中で述べていますが、上記の3選手はいずれもマレーシア国内で5年間正確したことで代表資格を得た帰化選手で、今回のヘリテイジ帰化選手とは別のケースです。

父君のアフマド・シャー殿下は1994年から2002年までAFCの会長を務め、FAMによる会長を1994年から2014年まで務めたこともあり、兄君のスルタン・アブドラ殿下もAFCの理事やFIFA評議会の委員を務めたことがあるなど、パハン州の王族は国内外でサッカーに関わってきたこともあり、選手の売り込みなどが集まってきやすい環境だったのかもしれません。しかし、FAMへ推薦した選手を売り込んできたのがどの代理人なのかは、トゥンク・アブドル・ラーマン殿下が口を開かない限りわからなくなってしまいました。

このブログでも取り上げてきたように、FIFAはFAMが提出した祖父母の出生証明書などの一部の補足書類に、選手の実際の出生国における公式記録と一致しない情報が含まれていたとして、マレーシアサッカー協会(FAM)および7名のヘリテイジ帰化選手に対する懲戒処分の詳細な理由書を公表した。なおFAMはすでに控訴を行っており、7人の選手の代表資格手続きに不正は一切なかったと主張、さらにFIFAに提出されたすべての書類は正式な手続きに従って取得されたものであると強調しています。


イスマイル殿下が会見「FAMでの役職はない。ただ代表チームを支援したいだけ」

10月25日にクアラルンプール郊外のホテルで、ジョホール州摂政でジョホール・ダルル・タジムFCのオーナーとしても知られているトゥンク・イスマイル殿下の記者会見が行われました。

会場にはマレーシアサッカー協会(FAM)のバナーとロゴが掲げられる一方で、壇上に設けられたのはトゥンク・イスマイル殿下の席一つと異例のセッティング。しかも報道によると、会長不在の現在、会長代行を務めるユソフ・マハディ副会長や、今年1月まで会長を務めたはアミディン・アミン名誉会長らFAMの幹部は壇上ではなく一般席に座っていたということです。

なぜかジョホール・ダルル・タジムFCの公式SNSでもライブ配信されたこの会見には、およそ30名ほどの報道関係者が集まり、イスマイル殿下は「何でも自由に質問してほしい」とメディアに呼びかけ、その言葉どおり率直に答えています。

メディアサイトのTwentytwo13から「FAMの代表ではないあなたが、どの立場でメディアに対応しているのか」と問われた殿下は以下のように答えています。

「数か月前、FAMから『代表チームプロジェクト』への関与を求められたからだ。
インフラ、人的ネットワーク、予算、必要なことなら何でも支援すると約束した。代表チームは我々にとって非常に大切な存在です。各州のサッカー協会を含むマレーシアの全てのサッカー関係者が、選手育成やリーグ運営、スポーツ施設の活用を通じて、代表を支える役割を果たすべきだと思います。」と答えてイスマイル殿下は、その一方で以下のような発言もしています。

「私はFAMでの役職は持っていない。しかし代表を支援したい。そのためにここに来ている。」

さらにイスマイル殿下は、代表チーム支援のためマレーシア政府に働きかけ、FAMが資金を確保できるよう助力したことも明かしています。その説明通り、2025年度予算の審議で、アンワル・イブラヒム首相は「代表強化のために」1,500万リンギ(およそ5億4300万円)を割り当てています。またこの件について、代表チームのロブ・フレンドCEOは、10月17日にFAC本部で開かれた記者会見で「このプロジェクトには3つの主体が関わっている」と述べ、トゥンク・イスマイル殿下、代表チーム、そしてFAMの名を挙げています。(ただしその直後すぐに「FAMが主導機関である」と補足していました。)

なおイスマイル殿下は、政府からの支援金の具体的な使用方法については把握しておらず、資金はFAMを通じて管理されており、代表チーム関係者もFAMに報告していると説明しました。

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さらにTwentytwo13から自らの役割を定義する正式文書があるかと問われた殿下の回答は以下のようなものでした。

「その必要はないと思っている。私は国内で最も充実したサッカー施設を持っており、この「業界」の一員である。代表チームが支援を必要とするなら、できる限りそれを行う。」

またジョホール・ダルル・タジムFCのオーナーという立場が利益相反になるのではとの指摘には、こう反論しています。

「利益相反だとは思っていない。FAMを支援するのはクラブも協会も立場は変わらない。私が代表チームに関わることで得られる『利益』などなく、むしろリスクの方が大きい。それは何か問題が起きれば責められるのは私自身だからだ。しかしそれでも私は善意でやっているのだ。」

また、かつて2017から2018年にかけて務めたFAM会長職への復帰の可能性を問われた際の回答は以下のようなものでした。

「(会長職は)もう経験済みだが、(2017年から2018年)当時も、FAMを常勤で運営できる人物に任せていた。(当時事務局長だった)ハミディン・アミン氏はとてもよくやってくれたと思っている。現在の私には多くの責務があり、再びFAMに戻るつもりはない。」

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さらにFIFAの規律委員会によって12ヶ月の出場停止処分を受けた7名のヘリテイジ帰化選手(ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘヴェル) に関して、イスマイル殿下は「約27人の候補を代理人から紹介された」と明かしています。そしてそのうち7名だけが国民登録局(NRD)の要件を満たし、市民権を得たと説明した上で、独立調査の結果を待つ間、FAMがノー・アズマン・ラーマン事務総長を無期限職務停止とした判断に異議を唱えています。

「このプロジェクトには、スカウト、採用担当、事務担当なお多くの人が関わってきた。今回の処分については、全員が責任を共有すべきであり、それはロブ・フレンドCEOも例外ではない。責任の押し付け合いの結果、事務総長だけを責めるのは間違いであり、今は問題解決に集中すべきだ。」

また、以前に自身のSNSに投稿した際に「ニューヨークから苦情があった」と述べた件についても説明し、実際は「6月10日のベトナム戦(4-0の勝利)に関する抗議は、ベトナム国内の第三者から出されたもので、ベトナムサッカー協会(VFF)からのものではなかった」と明らかにしています。
注)「ニューヨークから苦情があった」とは、殿下がFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長とインドネシアサッカー協会のエリク・トヒル会長が一緒に写っている写真と共に自身のSMGBに行った投稿を指しています。

さらにイスマイル殿下は、「マレーシア代表の立場は厳しいが、FAMは最後まで戦う姿勢を示していると述べ、代表チームのFIFAランキングはここ数か月で上昇している」と述べた上で、最後に皮肉を交えてこう締めくくった。

「私を責めることで、誰かが夜ぐっすり眠れるのなら、喜んでその役を引き受けるつもりだ。」


FAMの独立調査委員会には元最高裁長官が就任

マレーシアサッカー協会(FAM)は、12ヶ月の出場停止処分を受けた7名のヘリテイジ帰化選手に関する国籍偽装疑惑問題を調査するため、元最高裁長官ラウス・シャリフ氏を委員長とする独立調査委員会を設置したと発表しています。

この国籍偽装疑惑問題についてFAMは、7名のヘリテイジ帰化選手に関しての書類をFIFAに提出する際に、担当したFAMの職員が国民登録局(NRD)が発行した7名の正式な身分証明書ではなく、選手代理人から提出された書類を誤ってアップロードしてしまったという「事務的なミス」が原因だと説明しています。

この「誤った書類」を理由に、9月26日にFIFAは国籍偽装に関わったとしてFAMに対して35万スイスフラン(およそ6690万円)の罰金を科し、国籍偽装が疑われる7名のヘリテイジ帰化選手にはそれぞれ2,000スイスフラン(およそ38万円)の罰金と12か月の出場停止処分を下しています。

10月17日にFAM本部で開かれた記者会見でシヴァスンダラムFAM副会長は、公正かつ透明な調査を行うため、独立委員会にはFAMの関係者を一切含めないと発表していました。

ラウス氏は2017年にマレーシア最高裁判所の長官を務め、法曹界で数十年にわたる経験を持ち、数多くの要職を歴任してきた人物で、Fラウス氏および彼が指名する独立委員会のメンバーが、徹底的かつ専門的な調査を行うことが期待されています。

なおこの登録手続きを監督していたノー・アズマンFAM事務局長は、無期限の職務停止処分を受けており、FAMは既にFIFAに対し処分に対する正式な控訴を提出しており、最終的な判断は本日10月30日に下される見通しです。

FIFAアセアンカップ新設-ASEAN11カ国が参加へ

10月24日から26日かけてマレーシアのクアラルンプールで開催されていたASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)首脳会談。これに合わせてマレーシア入りしていたFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は「FIFAアセアンカップ」の創設を発表しています。これは今回のASEAN首脳会議でそれまでのオブザーバーというポジションから正式にASEAN加盟が認められた東ティモールを加えた加盟全11カ国が参加する地域サッカー大会となるということです。

インファンティーノFIFA会長は、この大会について「地域のサッカーに新たな命を吹き込み、世界で最も人気のあるスポーツを通じてASEANの団結を象徴するもの」と述べています。

インファンティーノFIFA会長とカオ・キム・ホーンASEAN事務局長による、FIFAとASEANのサッカー発展に関する覚書(MoU)署名式後の記者会見では、この大会が、FIFAの国際マッチカレンダー内で開催されることも明らかにし、域内の最高の選手たちが競うことでサッカーを大きく発展させ、地域にとどまらず世界に輝きを放つことを目指すとし、このFIFAアセアンカップは、この地域で大成功を収めるだろうとも述べています。

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今回発表された「FIFAアセアンカップ」ですが、この新大会の具体的な詳細については何も明らかにされませんでした。この地域には1996年の第1回大会から続いてる「アセアン選手権」があり、これまで「スズキカップ」、「三菱電機カップ」そして2026年からは現代自動車が冠スポンサーとなり「現代カップ」に改称されるこの大会との関係については一切説明ありませんでした。このアセアン選手権は例年、年末から年始にかけて行われ、FIFA国際マッチカレンダー外で行われることから、代表の主力選手が集まるジョホール・ダルル・タジムFCは選手の招集にほぼ応じず、マレーシア代表はベストメンバーを組めずに大会に参加しています。FIFAアセアンカップは国際マッチカレンダー内での開催ということで、クラブが選手の招集を拒否することはできなくなるという点では本当の代表チーム同士の対戦になりますが、そうなるとアセアン選手権が今後も続く意味がなくなり、消滅してしまう可能性もあります。

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またこのMoU署名式後の会見では、同じイスラム教国としてマレーシアと国交があるパレスチナ問題に関連する形で、マレーシアメディアからFIFAがロシアを出場停止とする一方でイスラエルのワールドカップ予選参加を許可している「二重基準」について質問を受けたインファンティーノ会長は、「サッカーは政治的または地政学的な問題に影響されるべきではなく、あくまで人々を結びつける力であるべきだ」となんとも答えにならない返答をしていました。

またこの日の署名式には10月17日に国籍偽装疑惑問題で「事務的なミス」の責任を取らされる形でFAMから無期限の職務停止処分を受けているノー・アズマン元FAM事務局長の姿も目撃されています。

その後FAMの声明を発表し、ノー・アズマン元FAM事務局長はこのイベントに公務ではなく、「個人の立場」で参加していたことを明らかにしています。

ユソフ・マハディFAM会長代行は、メディアに掲載された写真は、FAMやFIFAの公式行事や式典とは関係のない場で撮影されたものだと説明し、10月17日の停職処分以降、ノー・アズマン元FAM事務局長はFAMの公式活動、会議、またはプログラムには一切関与していないとも説明しています。

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またFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長とジョホール・ダルル・タジムFCオーナーのトゥンク・イスマイル殿下が会談する様子を写した写真がインターネット上で拡散し、インファンティーノ会長のクアラルンプール訪問が制裁問題と関係しているのではとの臆測が報じられました。両者は10月26日に会談し、マレーシアサッカーの発展と将来の方向性について協議したと報じられています。

なおイスマイル殿下は前述の通り、前日10月25日に自身が開いた会見の中で、FAM内に自分の役職はなく、単に代表チームを支援している「一個人」いう立場を説明していました。

またこの会談がFIFAによるマレーシアサッカー協会(FAM)への制裁問題に関連しているのではないかという憶測がSNSなどで広がると、イスマイル殿下は「責任の押し付け合いをするために集まったのではなく。解決策を見つけ、マレーシアのサッカーのために強固な基盤を築くため」の会談であったと説明しています。

またFIFAも公式サイト上で声明を発表し、インファンティーノ会長の訪問は制裁問題とは無関係であり、公式業務出張の一環であったと明言しています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第8節 試合結果とハイライト映像<br>・ジョホールがベルグソンの4発を含む今季最多の10ゴールでブルネイDPMMを粉砕<br>・昨季最下位のクランタンが快勝で6位浮上<br>・クチン・シティは5戦負けなしも上位との差を詰められず<br>・クラン渓谷ダービーはスコアレスドロー

10月24日から26日にかけて行われていたアセアン(東南アジア諸国連合)首脳会談のせいで、クアラ・ルンプール市内ではあちこちで交通規制が引かれ、市民にとっては不便な週末でした。高市新首相(忙しい日程の中で当地の日本人墓地の慰霊碑で献花をされたことも報じられています)やトランプ大統領もマレーシアを訪れるなど世間の注目を集めた中で、サッカー関連でいえば、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長のマレーシア訪問、そしてインファンティーノ会長が発表したFIFA アセアンカップの開催がニュースと言えそうです。特にFIFAアセアンカップに対しては、1996年から行われてる東南アジア選手権(かつてのスズキカップ、三菱電機カップで、次回大会からは現代自動車が冠スポンサーとなるため現代カップに名称変更)との兼ね合いなど、不明な点が残ったままの発表でした。

さて本題。前節からは3週間以上開いた2025/26年シーズンのマレーシアスーパーリーグ第8節は、6試合が10月24日から26日にかけて行われています。なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はトレンガヌFCの試合がありません。

また前回、マレーシアサッカー協会(FAM)の公式記録サイトがハッキングの被害にあっているニュースを取り上げましたが、その後、FAMの新たなサイトを立ち上げ、これまでの試合結果などを見ることができるようになっています。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。


昨季最下位のクランタンが快勝で6位浮上

昨季は24試合でわずか2勝、しかも12位とは勝点差9と圧倒的な最下位13位に終わったクランタン。それを払拭するかのように今季はチーム名やロゴを変更するなどリブランディングを行いました。しかし外見だけでなく中身も変わったようで、今季は第6節までに2勝を挙げるなど、昨季の勝ち数に並んでいます。

そんなクランタンが今季1部初昇格を果たしたマラッカをホームに迎えた試合は、この時期のマレー半島東海岸特有のモンスーンの時期もあり、雨中の対戦となりました。今季ここまで未勝利のマラッカは、アウェイながらクランタン相手に接戦を演じますが、ゴール前へのクロスをクリアしようとしたマラッカのCBマイケル・オゾルがクリアミスからオウンゴールし、クランタンが先制します。

前半を1-0で折り返したクランタンですが、その後は追加点を奪えず、逆にマラッカが果敢に責めますが、クランタンGKダミヤン・ダミヤノフが好セーブを連発して失点を防ぎます。そして終了間際にはダニアル・ハキムが勝利を決定づけるゴールを決めたクランタンがマラッカの反撃を1点に抑えて逃げ切り、アクマル・リザル新監督に初勝利をプレゼントするとともに、早くも昨季の勝ち星を上回っています。

公式発表はないものの、クランタンは今季開幕から指揮をとっていたE・エラヴァラサン監督を「休養」させる一方で、この試合では昨季はペナンFCの監督を務めたアクマル・リザル氏がベンチで指揮をとる様子が見られました。初勝利を挙げたアクマル新監督ですが、昨季はペナンFC U21監督からトップチームの監督に就任していました。しかし自身初となるスーパーリーグでの監督成績は19試合で3勝8分8敗(18得点37失点)で、シーズン途中に解任されています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第8節
2025年10月24日@スルタン・ムハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC 2-1 マラッカFC
⚽️クランタン:マイケル・オゾル(37分OG)、ダニアル・ハキム(89分)
⚽️マラッカ:フアン・ドゥグラス(90+12分PK)
MOM:ダニアル・ハキム(クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC)


クチン・シティは5戦負けなしも上位との差を詰められず

過去4試合を2勝2分のクチン・シティは、2位のクアラ・ルンプール・シティとは勝点差3の3位につけています。しかも今季のホームゲームはジョホールに敗れた試合以外は全てクリーンシートでの勝利と無類の強さを発揮しています。一方のペナンは前節第7節で今季初勝利を挙げています。

そんな両チームの対戦は、昨季はクチン・シティで25試合に出場し5ゴール7アシストを記録したチェチェ・キプレが、ディラン・ウェンゼル=ホールズのクロスに頭で合わせ、2試合連続ゴールを決めて、ペナンが先制します。しかし、クチン・シティも前半終了間際にフライデー・オビロルのハンドで得たPKをロナルド・ンガが決めて、前半は1−1で終了します。

後半に入っても互いに好機を活かせず、試合はこのまま終了。上位を狙うクチン・シティにとっては痛い引き分け、またペナンにとっては貴重な勝ち点1となりました。

クチン・シティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。またペナンの鈴木ブルーノ選手は90+3分から出場して、最後までプレーしています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第8節
2025年10月25日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチン・シティFC 1-1 ペナンFC
⚽️クチン・シティ:ロナルド・ンガ(45+7分)
⚽️ペナン:チェチェ・キプレ(14分)
MOM:ハジク・ナズリ(クチン・シティFC)


ジョホールがベルグソンの4発を含む今季最多の10ゴールでブルネイDPMMを粉砕

10月21日に今季のACLエリートで初勝利を挙げたジョホールがその勢いのまま、今季新規参入組のブルネイDMFを今季最多となる10ゴールで粉砕しています。ジョホールはこれで開幕から8連勝隣、2位との勝点差を今季最大となる7に広げています。

この日の主役は昨季のリーグ得点王で、マレーシアリーグ通算最多ゴール記録も持つベルグソンでした。前半3ゴール、後半1ゴールを挙げ、今季通算得点を5から9に伸ばして、一気に得点王争いの1位に浮上しています。これだけゴールを挙げても、ACLエリートでは3試合で通算82分という出場時間しか与えられていない鬱憤を晴らすような活躍でした。

一方のDPMMは前節では同じ初昇格組のマラッカ相手に今季初勝利を挙げていましたが、ジョホールが相手では連勝とはなりませんでした。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第8節
2025年10月25日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
ジョホール・ダルル・タジムFC 10-0 DPMM FC
⚽️ジョホール:ベルグソン・ダ・シウバ4(9分、35分、37分、73分)、オスカル・アリバス(45+1分)、マヌエル・イダルゴ(57分)、ユラ・インデラ・プテラ(63分OG)、アリフ・アイマン(68分)、ハイロ・ダ・シウバ(82分)、ロメル・モラレス(88分)
MOM:ベルグソン・ダ・シウバ(ジョホール・ダルル・タジムFC)


ヌグリ・スンビランは連敗ストップで5位浮上

リーグ戦ではペナンに1−2、そしてFAカップ準々決勝1stレグではスランゴールに0-4と大敗するなど、10月に入って勝星がなかったヌグリ・スンビラン。特に連敗中は、それまで無敗だったホームで敗れ、また新エースのジョヴァン・モティカも不発とチームはどん底でした。

しかしこの試合ではそのモティカがゴールを挙げるなど、前節にジョホール相手に7失点と大敗していたPDRMを相手に連敗をストップ。順位も一つ挙げて5位に浮上しています。

ヌグリ・スンビランFCの佐々木匠選手は先発して65分に交代しています。また常安澪選手は佐々木選手と交代で出場し、試合終了までプレーしています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第8節
2025年10月25日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ)
ヌグリ・スンビランFC 2-0 PDRM FC
⚽️ヌグリ・スンビラン:ジョセフ・エッソ(53分)、ジョヴァン・モティカ(59分)
MOM:ジョセフ・エッソ(ヌグリ・スンビランFC)


12位対13位の対戦は引き分けに

ともに今季まだ勝ち星のない両チームの対戦は引き分けに終わっています。しかしDPMMがジョホールに10失点と大敗したため、得失差でDMFに並んだサバが12位から10位に浮上しています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第8節
2025年10月26日@ペナン州立スタジアム(ペナン州バトゥ・カワン)
イミグレセンFC 2-2 サバFC
⚽️イミグレセン:ジョアン・ペドロ(27分)、エドゥアルド・ソーサ(79分)
⚽️サバ:スチュアート・ウィルキン(50分)、ミゲル・シフエンテス(53分)
MOM:ザリフ・イルファン(イミグレセンFC)


クラン渓谷ダービーはスコアレスドロー

クラン川沿いにあるスランゴール州とそれに囲まれるように位置するクアラルンプールをそれぞれ本拠地にするスランゴールFC対クアラルンプール・シティFCの対戦は「クランヴァリー(クラン渓谷)ダービーとして知られています。

この「ダービー」前まで5勝1分で現在リーグ2位のクアラルンプール・シティは、FAカップでもすでに敗れており、9月27日のトレンガヌ戦以来、ほぼ1ヶ月ぶりの試合でした。一方のスランゴールは3勝3敗で5位ながら、10月18日にはFAカップ準々決勝、10月23日にはACL2でプルシブ・バンドン(インドネシア)とのアウェイゲームを戦うなど8日間で3試合という過密な試合日程とも戦っています。

この試合は現地観戦しましたが、スランゴールは喜熨斗勝史監督解任後、それまでの5バックから4バックへと変更したシステムが素人目ながらまだ馴染めているようには見えず、この試合でも後ろを取られるのが怖いのか、両SBの攻撃参加も少なく、また今季初出場となったAMFのシャヒール・バシャーがあまり機能しないなど、試合終了間際を除けば、チャンスらしいチャンスもない展開でした。一方で守備陣はサファウィ・ラシド、クパー・シャーマンらクアラルンプールのFW陣に仕事をさせず、スコアレスドローは順当な結果のように見えました。

この結果、クアラルンプールは2位を堅持、一方のスランゴールは7位へと順位を下げています。

スラヤにとって痛いのは、試合後に発表された「アフロ」の愛称でサポーターからの人気も高いシャルール・ナジームが試合中のケガが左膝ACL損傷だったこと。10月29日にはFAカップ準々決勝2ndレグが控えるチームにとって、大きな損失です。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第8節
2025年10月26日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 0-0 クアラルンプール・シティFC
MOM:ファイサル・ハリム(スランゴールFC)


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第8節終了)

チーム勝点
1ジョホール88004334024
2クアラ・ルンプール75201431117
3クチン7421134914
4トレンガヌ74122091113
5ヌグリ・スンビラン73221411311
6クランタン8323814-611
7スランゴール7313129310
8PDRM7133817-96
9ペナン7124515-105
10サバ7043416-134
11DPMM71154216-224
12マラッカ603339-63
13イミグレセン7034517-123

2025/26マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第8節終了)

得点選手名所属
19ベルグソン・ダ・シウバジョホール
27ジャイロ・ダ・シウバジョホール
7アリフ・アイマンジョホール
46ヤン・マベラトレンガヌ
6ジョアン・フィゲイレドジョホール
65クリゴール・モラエススランゴール
5サファウィ・ラシドクアラルンプール
5ジョヴァン・モティカヌグリ・スンビラン
94ジョン・イラザバルジョホール
4ヘンリ・ドゥンビアPDRM
4イフェダヨ・オルセグンクランタン
4ロナルド・ンガクチン
133ダニアル・アスリら6名クチン

2025/26ACL試合結果とハイライト映像<br>・ACLエリート リーグステージ第3節:ジョホールは今季初勝利-アウェイで成都蓉城に快勝<br>・ACL2 グループステージ第3節:スランゴールはインドネシア王者に敗れて3連敗

ACLエリート リーグステージ第3節:ジョホールは今季初勝利-アウェイで成都蓉城に快勝

2025/26シーズンのACLエリート(ACLE)は今節がリーグステージ第3節。第1節でブリーラム・ユナイテッド(タイ)に敗れ、第2節ではACLE初出場の町田ゼルビア相手にホームでスコアレスドローと、今季ここまで勝ち星がないジョホール・ダルル・タジムFC。第3節ではここまで1勝1敗、そして現在は国内リーグ2位の成都蓉城とアウェイで対戦しています。

以下はこの試合の両チームの先発XI。ジョホールは前節ACLE初出場を果たしたマレーシア代表GKシーハン・ハズミがベンチスタートとなり、これまでACLEでジョホールゴールを守ってきたアンドニ・ズビアウレが先発復帰しています。この他はFWジャイロがFWベルグソンに代わっていますが、残る9名は町田戦から変わっていません。

一方韓国出身のソ・ジョンウォン監督率いる成都蓉城は、年代別ポルトガル代表の経験がある中国帰化選手ペドロ・デルガド、英国生まれの元台湾代表ティム・チャウ、そして年代別スイス代表の経験があるミン・ヤンヤンやウェイ・シハオ、ハン・ペンフェイら中国代表選手が先発する一方で、チーム得点王のフェリペ・シウバが先発から外れています。

今季ACLエリート未勝利のジョホールですが、この試合では開始から試合をコントロールし、早くも5分にはオスカル・アリバスのゴールで先制します。中盤でハイロからのヒールパスを受けると、そのまま一気にボールをペナルティエリアまで持ち込みます。そしてGKリウ・ディアンズオの横を抜いてゴール隅にシュート。ジョホールがあっさり先制します。

その後もアヘル・アケチェ、アリフ・アイマン、ハイロらがシュートを放ちますが、追加点はならず、前半はジョホールが1点のリードで折り返します。

後半に入ってもジョホールは優勢に試合を進めルト、追加点が生まれます。62分には左サイドで成都のDF陣を振り切ったホナタン・シウバのクロスをナチョ・メンデスがボレーで蹴り込み、ジョホールはリードを広げると、成都の反撃を抑えてそのまま逃げ切り、今季のACLE初勝利を挙げています。

ジョホールは11月5日の次節第4節では、今節FCソウルに勝利してやはり今季初勝利を挙げた上海申花をホームに迎えます。

2025/26ACLエリート リーグステージ第3節
2025年10月22日@鳳凰山体育公園フットボールスタジアム(四川省成都市)
成都蓉城 0-2 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️ジョホール:オスカル・アリバス(5分)、ナチョ・メンデス(62分)


ACL2 グループステージ第3節:スランゴールはインドネシア王者に敗れて3連敗

今季のACL2でスランゴールが入るG組は、日中韓のチーム不在で、4チームいずれも東南アジアのチームです。そんな中で前節第2節のライオン・シティ・セイラーズ(シンガポール)戦では、Jリーグ横浜F・マリノスから移籍したアンデルソン・ロペスにまさかの4ゴールを許して敗れたスランゴール。第1節のバンコク・ユナイテッド戦でも同じく4失点と守備が崩壊し、ここまで0勝2敗です。さらにこの間、喜熨斗勝史監督が解任され、前スリ・パハンFC監督のクリストファー・ギャメル氏が監督代行に就任しています。そして迎えた10月23日の第3節では、インドネシアリーグ2連覇中のプルシブ・バンドンとアウェイで対戦しています。

そのプルシブ・バンドンを率いるのは、マレーシアのサッカーを熟知するボダン・ホヤック監督です。クランタンとジョホール・ダルル・タジムではリーグ優勝を、クアラ・ルンプールではマレーシアカップ優勝と、3つのクラブで合わせて6つの国内タイトルタイトルを獲得しています。さらにU19代表監督としてAFC U19アジア杯出場、さらに東南アジアサッカー連盟(AFF)U19選手権優勝などマレーシアでは名将の誉も高い指導者です。

またこの試合のプルシブの先発XIには昨季までペラ(既に解散)でプレーしていたルシアーノ・ゴイコチェア(リバプールの10番MFアレクシス・マック・アリスターの従兄弟としても知られています)の名前があります。またベンチにはやはり昨季までサバで4シーズンプレーした元インドネシア代表WGサディル・ラムダニも入っています。

一方のスランゴールは、今月のFIFAデイズで2ゴールを挙げるなど調子を上げてきた代表WGファイサル・ハリムを筆頭にDFクエンティン・チェン、MFノーア・ライネ、DFハリス・ハイカル、GKシーク・イズハンと各ポジションにマレーシア代表を配する布陣です。

試合はホームのプルシブ・バンドンが開始から優勢に進めます。国内リーグでは7試合で5ゴール、ACL2ではバンコク・ユナイテッド戦でもゴールを決めているウィリアム・バロスが攻撃を牽引し、スランゴールはGKシーク・イズハンが好セーブを見せるなど耐える試合展開が続きます。

試合が動いたのは29分でした。スランゴールが得たコーナーキックのクリアボールからプルシブが一気に高速カウンターを仕掛けます。マーク・クロックから前線のアダム・アリスへとボールが渡ると、アダム選手は背後のザック・クラフをあっさりかわし、1対1となったGKシーク・イズハンもかわすと落ち着いてシュート。これが決まってプルシブ・バンドンが先制し、前半はこのまま終了します。

後半に入ると、アルヴィン・フォルテス、クリゴール・モラエスらがシュートを放ちますが、プルシブGKテジャ・パク・アラムがこれを防ぎ、ゴールを許しません。

すると66分にプルシブが追加点を挙げます。それまで何度も崩されていた左サイドでボールを持つフェデリコ・バルバをハリス・ハイカルが押し倒してPKを与えてしまいます。スローの映像を見るとハリス選手がバルバ選手の足につまづいて倒れ込んでしまったようですがファウルはファウル。このPKをアンドリュー・ユングが決めてプルシブがリードを広げます。

降り頻る雨の中でこのまま試合は動かず、スランゴールはACL2で3連敗。11月6日の次節第4節では、スランゴールはプルシブをホームに迎えますが、この試合の結果次第ではスランゴールのACL2 敗退が決まってしまう可能性もあります。

2025/26ACL2 グループステージ第3節
2025年10月23日@ゲロラ・バンドン・ラウタン・ アピ・スタジアム(バンドン、インドネシア)
プルシブ・バンドン 2-0 スランゴールFC
⚽️バンドン:アダム・アリス(29分)、アンドリュー・ユング(66分PK)

この試合のハイライト映像。インドネシアのテレビ局RCTIのYouTubeチャンネルより

2025/26 ACL2 グループステージG組順位表(第3節終了)

クラブ勝点
ペルシブ・バンドン32105147
バンコク・ユナイテッド32015416
ライオン・シティ・セーラーズ31115454
セランゴール3003410-60

10月23日のニュース<br>・東南アジア競技大会のサッカー組み合わせ決定-マレーシアはベトナム・ラオスと同組に<br>・インファンティーノFIFA会長がマレーシア訪問へ

東南アジア競技大会のサッカー組み合わせ決定-マレーシアはベトナム・ラオスと同組に

東南アジア競技大会、通称シーゲームズ(SEA Games)は、東南アジア版のオリンピックとも言える総合スポーツ大会。アセアン(ASEAN、東南アジア諸国連合)の各国が持ち回りで2年ごとに開催されます。今年2025年に開催される第33回大会の開催国はタイで、男子サッカーは、開会式の12月9日に先立って12月3日より開幕します。

U22代表が対戦する男子サッカーはシーゲームズの目玉競技で、今大会は東南アジアサッカー連盟(AFF)加盟国中、ブルネイを除く10カ国が出場することが発表されています。AからCまでの3組に分かれて行う予選を経て、準決勝進出4チームを決定しますが、その予選組み合わせ抽選が10月19日に行われ、マレーシアはベトナム、ラオスと共にB組に入ることが決まりました。以下が決定した予選の組み合わせです。

A組:タイ・カンボジア・東ティモール
B組:ベトナム・マレーシア・ラオス
C組:インドネシア・フィリピン・シンガポール・ミャンマー

A組は開催国タイ、カンボジア、東ティモールの3カ国。この組は明らかにタイが頭一つ抜けています。7月の軍事衝突から双方合わせて40名以上の死者を出している国境紛争を抱えていたタイとカンボジアが同組なのは運命の悪戯ですが、数日前には両国が和平協定に合意したことが発表されています。また2002年にインドネシアから独立した東ティモールは、アセアンのメンバーではなく、これまでは「オブザーバー」という位置付けでしたが、今週末10月26日にクアラ・ルンプールで開幕するアセアン首脳会議で、正式加盟国となることが発表されています。

B組はベトナム、マレーシア、ラオスの3カ国。この組は現在、大会4連覇中のベトナムの1位通過間違いなし。なおこの組み合わせは奇しくも、現在行われているアジア杯2027年大会3次予選の組み合わせと同じです。アジア杯予選ではマレーシアがここまでベトナムに1勝、ラオスに2勝していますが、このブログでも取り上げているようにマレーシアのベトナム戦勝利は、国籍偽装疑惑が持たれているヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名の活躍のおかげです。

なおU23代表はA代表と違い、帰化選手による補強を行っていませんが、そのせいなのか今年7月に行われたアセアンU23選手権、そしてU23アジア杯予選の両大会でいずれも予選敗退しています。7月のアセアンU23選手権では、フィリピンに●0-2、インドネシアとは△0-0、ブルネイには⚪︎7-0としたものの、グループ3位で予選敗退しています。なおこのアセアンU23選手権ではベトナムが優勝しています。

また先月9月のU23アジア杯2026年大会予選では、レバノンに●0-1、タイにも●1-2、モンゴルには⚪︎7-0の結果で、やはりグループ3位で3大会連続出場がかかっていた本大会出場を逃しています。

今年1月に就任したナフジ・ザイン監督が指揮を取るU23代表は、U23アジア杯予選前にはシンガポールに0-1、クウェートは2試合を行いいずれも0-1で敗れています。A代表が今年は6勝1分、FIFAランキングも今年2月の132位から、今週10月25日発表予定の最新ランキングでは20年ぶりとなる118位になることが予想されていますが、これは年代別代表の教科ではなく、外国育ちの帰化選手に依存したA代表のいびつな補強を示しています。

C組はインドネシア、フィリピン、シンガポール、ミャンマーの4カ国。予選3組の中では最も力が拮抗している、いわゆる「死の組」です。インドネシアは前回2023年シーゲームズの優勝チーム。しかも自国開催となった7月のアセアンU23選手権で、ベトナムに0-1で敗れ2年連続の準優勝と一歩リードですが、フィリピンは同じアセアンU23選手権でベスト4、ミャンマーは前回のシーゲームズでやはりベスト4の成績を残し、決して侮れません。

予選では各組の1位3チームと2位チーム中最も成績の良い1チームが準決勝へ進出します。なおA組の試合はタイ南部のソンクラにあるティンスラーノン・スタジアムで、B組とC組の試合は北部チェンマイにある700周年記念スタジアムで試合が行われ、準決勝以降はバンコクのラジャマンガラ国立競技場が試合会場となります。


なおU22代表の対戦となった2017年大会以降の成績は以下のとおりです。ちなみマレーシアが最後に優勝したのは2011年のインドネシア大会が最後です。

開催年開催国優勝準優勝3位4位
2017マレーシアタイマレーシアインドネシアミャンマー
2019フィリピンベトナムインドネシアミャンマーカンボジア
2021ベトナムベトナムタイインドネシアマレーシア
2023カンボジアインドネシアタイベトナムミャンマー

また、同時に行われる女子サッカーは8チームが出場し、予選組み合わせではマレーシアはいずれもW杯出場経験があるベトナム、フィリピンの両国、そしてミャンマーと同じB組に入っています。A組にはタイ、インドネシア、シンガポール、カンボジアが入っています。


インファンティーノFIFA会長がマレーシア訪問へ

国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長が今週10月26日にマレーシアのクアラ・ルンプールで開幕する第47回アセアン(東南アジア諸国連合)首脳会議に合わせてマレーシアを公式訪問する予定だと、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

マレーシアサッカー協会(FAM)の関係者によると、今回の訪問の目的のひとつは、東南アジアサッカー発展協定の署名式に立ち会うことだということです。なおこの協定は「東南アジアにおけるサッカーのエコシステムを強化する上で重要な一歩」だと、そのFAM関係者は説明しています。

インファンティーノ会長は公式行事への出席に加え、クアラ・ルンプールから35kmほど南下したプトラジャヤで建設中のナショナルトレーニングセンター(NTC)も訪問する予定だということです。

インファンティーノFIFA会長がマレーシアを訪れるのは今回が2度目であり、前回2019年4月の来訪時は、当時のマハティール・モハマド首相を表敬訪問するため、各国のサッカー指導者を率いていました。

今回のアセアン首脳会議は、10月26日から28日までクアラ・ルンプールで開催され、アセアン加盟10か国の首脳に加え、中国、日本、インドなど主要な対話パートナー国の首脳も出席する見込みで、アメリカのドナルド・トランプ大統領も出席するとみられています。


FIFAは、マレーシア代表としてアジア杯予選に出場しながら国籍偽装が疑われているヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名に出場停止や罰金の処分を下しています。マレーシアサッカー協会(FAM)は、この処分について、FIFAへ控訴を行っていますが、この件について、FAMとインファンティーノ会長の間で会談が行われるのかにも注目が集まっています。

10月22日のニュース:マレーシア代表7選手の国籍偽装疑惑-サッカー協会による会見が新たな波紋

10月17日発表の最新FIFAランキングで、マレーシアはインドネシアを抜き東南アジア3位に浮上。5つ順位を上げ、2005年11月以来約20年ぶりの118位を記録しました。しかし、このニュースを霞ませる記者会見が10月18日、マレーシアサッカー協会(FAM)本部で開催されました。

FAMは前日10月17日には緊急記者会見を行うことを発表し、会見当日は50名を超える記者が集まりました。そして午後3時から行われた記者会見では、FAMの事務方トップに当たるノー・アズマン・ラーマン事務局長に無期限の停職処分が科されたことが発表されています。この処分は、マレーシアサッカー界を揺るがしているヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名に対する国籍偽装疑惑に関連しています。

今回国籍偽装が疑われているのは、以下の7選手です。
FWジョアン・フィゲイレド
MFエクトル・へヴェル
DFジョン・イラザバル(以上ジョホール・ダルル・タジム)
FWロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)
FWイマノル・マチュカ(アルゼンチン1部ベレス・サルスフィエルド)
DFファクンド・ガルセス(スペイン1部アラべス)
DFガブリエル・パルメロ(スペイン3部ウニオニスタス・デ・サラマンカ)

この7選手全員が、6月10日に行われたアジア杯2027年大会予選ベトナム戦に出場。試合ではフィゲイレド、オルガド両選手がゴールを挙げるなど4-0で勝利し、11年ぶりのベトナム撃破に貢献しています。

しかし9月26日にFIFAの規律委員会は、ベトナム戦にこの帰化選手7名を出場させることを目的に捏造書類を提出したとして裁定を下しています。その内容は、FAMには35万スイスフラン(およそ6600万円)、7選手にはそれぞれ罰金2000スイスフラン(およそ38万円)と12カ月間の出場停止処分という重い処分でした。

さらに10月6日にFIFAの規律委員会は「決定の根拠に関する通知」と題された公式報告書を発表。その中でFIFAが入手した7選手の実際の出生証明書がFAMが提出した書類と一致しないと説明しています。そして「公式文書の偽造および改ざんに関するFIFA懲戒規定第22条違反」に抵触しているとしました。

この処分に対してFAMは、当初提出した書類には事務手続き上の「軽微なミス」があったことは認めています。その上で、10月14日にFIFAに対して正式に控訴を行いました。この控訴結果は10月30日にFIFAから発表される予定となっています。

10月18日に行われた会見では、FAMが任命した法律顧問でジュネーブを拠点とするスポーツ弁護士セルジュ・ヴィットーズ氏が説明を行いました。ヴィットーズ氏は「FAMや選手による偽造は一切ない」と主張する一方で、仮に不正があったとしても、それは「問題の当事者」によるものだと述べたものの。その人物の名指しは避けています。

また同じくこの会見には、マレーシア代表チーム運営部門のロブ・フレンド最高経営責任者(CEO)も出席しました。フレンドCEOは運営部門の役割を以下のように説明しました。

「私とピーター・クラモフスキー代表監督は、選手を技術的な観点からのみ評価し、選手登録の書類作成や管理は一切行っていない。なぜならそれはFAMと関係政府機関の管轄だからだ。」

なおクラモフスキー監督は10月9日のアジア杯予選ラオス戦後会見で以下のように話しています。

「トゥンク・イスマイル殿下には多くの否定的な意見が出ているが、それは公平ではない。殿下は先見の明があるリーダーであり、殿下がいなければ、マレーシアサッカーはとうの昔にだめになっていただろう。」

「マレーシアの(アンワル・イブラヒム)首相から資金提供を引き出したり、政府からの支援を引き出したの一体誰なのか。イスマイル殿下その人であり、マレーシアサッカー協会ではない。国内サッカーのレベルを上げてきたのは誰なのか、代表戦のためにチャーター便で快適に移動できるような仕組みを持ち込んだのは誰なのか。それもイスマイル殿下である。」

「殿下の支援により、代表チームは最善の環境が提供され、代表チームはプロの集団によって機能するようになっている。これは全て殿下の功績である。」

「FIFAとの間で生じている全ての混乱の原因はマレーシアサッカー協会であり、イスマイル殿下ではない。私はマレーシア国民に明確なメッセージを送りたい。殿下なしではこの国のサッカーは『終わってしまう』」

雄弁なクラモフスキー監督に対し、フレンドCEOが公に発言したのは、国籍偽装疑惑が明らかになった9月28日以来初めてでした。しかしこの後、衝撃の発言が飛び出します。

フレンドCEOは、7選手の身元を確認してから国籍取得までさせるプロジェクトを主導したのは、トゥンク・イスマイル殿下であることを公表しています。

フレンドCEOはクラモフスキー同様、イスマイル殿下を「先見の明を持つ」と称賛。さらに殿下はこの帰化選手プログラムに関与しているものの、その運用には直接、関わっていない点を強調しています。また殿下はあくまでもプログラムの「方向性」と「モチベーション」を示し、7選手は「殿下のためにプレーしたいと思っている」とも発言しています。


しかしこの会見後、さまざまなメディアで、国籍偽装疑惑についての謎がより深まった、といった調子の記事が出ています。

オンラインメディアのScoopは、イスマイル殿下が1月11日にSNSに投稿した記事を紹介しています。その投稿でイスマイル殿下は「6から7人のヘリテイジ帰化選手の身元を確認した。FAM、(FAMを統括する)マレーシア政府青年スポーツ省、そしてアンワル・イブラヒム首相には書類手続きを迅速に進めるよう促した。」と投稿しています。殿下はフレンドCEOと共に映った写真を添えていますが、これによりイスマイル殿下が直接関わっていないとするフレンドCEOの発言の信憑性が揺らいでいます。

さらにフレンドCEOの発言により、マレーシアサッカーを運営しているのは誰で、説明責任があるのは誰なのかという議論が再燃していると報じ、特に代表チームとイスマイル殿下が摂政を務めているジョホール州のサッカーを取り巻くエコシステムとの境界線が曖昧になっていると指摘しています。

なおイスマイル殿下自身は今回の国籍偽装疑惑について、マレーシアへの制裁を科したFIFAの決定を疑問視する投稿をした以外は沈黙を守っています。

また別のオンラインメディアTwenty Two13は、フレンドCEOが、FIFAによる調査を8月22日には既に把握していたという発言に注目しています。FIFAが処分を公表したのは前述のとおり9月26日なので、問題が公になる1ヶ月以上前の時点でフレンドCEOはこの問題を知っていたことになります。

またTwenty Two13の記事は、フレンドCEOとクラモフスキー監督がイスマイル殿下への賛辞を繰り返せば繰り返すほど、疑問が深まると指摘し、現在はFAMとは無関係のイスマイル殿下がFAMの意思決定にどれほど関わっているのかに疑問を呈しています。(なおイスマイル殿下は2017年3月から5年の任期でFAM会長に就任しましたが、就任から1年後の2018年3月に辞任しています。その際には、就任期間中の代表戦が0勝3分7敗でFIFAランキング166位から178位に下がり批判を受け、その責任を取ると説明していました。)

さらに記事では、国内リーグでプレーするジョホール・ダルル・タクジムFCのオーナーでもあるイスマイル殿下の関与が適切かどうかを問うています。さらにフレンドCEOとクラモフスキー代表監督の両者ともに、殿下がアンワル・イブラヒム首相を説得してマレーシア代表チームへの資金提供を実現させたと明かしましたが、この発言からは、「殿下は他にどのような政府決定にも影響を与えているのか」という新たな疑問が生じているとしています。

さらに両氏はイスマイル殿下を称賛する中で、FAM自身がチームにまともな宿泊施設もチャーター機も提供できていないことまで示唆しています。こうなるとFAMがマレーシア代表チームにこれまで何をしてきたのかという疑問も湧いてくると同時に、代表チームの取り巻き対FAMという対立構造すら浮かんできます。そこには、順調なときは、代表チーム取り巻きの手柄、問題が起きればFAMのせい、といった構図が透けて見えるとTwenty Two13の記事では指摘されています。

またFIFAの規律委員会が「決定の根拠に関する通知」を明らかにしてから3週間もメディア対応を避けていたFAMが、今年1月まで会長を務めていたハミディン・アミン名誉会長、今年8月に健康上の理由からジョハリ・アヨブ会長が在任わずか6ヶ月で辞任したのち、会長代理を名乗るユソフ・マハディ副会長、そして前述のとおり職務停止処分を科されたノー・アズマン事務総長のいずれも不在の中、なぜ突然、会見を開き、まるでS・シヴァスンドラム副会長ひとりにメディア対応の責任を押し付けたように見える点についても、Twenty Two13の記事では非常に不可思議だとしています。


このほか、今回の会見で明らかになった情報のいくつかは、さらに驚く内容でした。

1)国籍偽装疑惑を持たれている7名のヘリテイジ帰化選手のマイカード(MyKad=マレーシア国民身分証)の申請は2025年1月に行われ、およそ4ヶ月という短期間を経て5月には発行された。

2)今回の一件をFIFAに告発した人物について会見で問われたS・シヴァスンドラム副会長は「ベトナムの個人」であると述べましたが、後に記者からそれが事実か推測かを問われると、「ベトナム出身であると“考えられている”」と訂正した。

3)FAMが未だにこの7選手の「血統(ヘリテイジ)」を証明する書類を提示していない理由について質問が出たものの、これに対しては明確な回答はなかった。

4)シヴァスンドラム副会長は「事務手続き上の『軽微なミス』」と発表されている事案を調査するための「独立委員会」設置を明らかにしたが、そのメンバーの名前は明かされなかった。

5)FIFAによる調査開始の通達をFAMが受け取ったのは8月22日で、処分が公表される1か月以上も前のことだったことをマレーシア代表チームのロブ・フレンドCEOは明らかにしているが、なぜその時点でFAMまたはフレンドCEO本人が公に説明を行わなかったのかの説明はなかった。

6)フレンドCEOもシヴァスンドラムFAM副会長も、国籍偽装疑惑を持たれている7選手を最初に特定した代理人や関係者の名前を明らかにしなかった。

7)FAMが任命したスポーツ弁護士セルジュ・ヴィットーズ氏は、「マレーシアには労働ビザで来ているのか、観光ビザなのか」と会見の席で問われると、それには答えず、「助言を行うために来ている」とだけ答えた。


自分でもうまくまとめきれていない文なのはわかっていますが、できるだけ多くの記事に目を通してから書こうと思い、結果として時間がかかってしまいました。また上には書きませんでしたが、個人的に気になるのは1点だけ。国籍偽装疑惑により処分を受けた7選手の誰1人として、自身がマレーシア国籍を取得したことの正当性を主張していないことです。こういった場合、自身に降りかかる火の粉を払うためにも記者会見を開き、自身が清廉潔白であることを世間に訴えるのが通常ではないかと思うのですが、その気配すらないのが不思議でたまりません。12ヶ月の出場停止という自身のサッカー人生に大きな影響を及ぼす処分を受けながらも、そういったことができない理由があるのでしょうか。

2025/26マレーシアFAカップ準々決勝1stレグ試合結果とハイライト映像<br>・ジョホール、サバ、クチン、スランゴールといずれもアウェイチームが先勝

10月17日から18日にかけて、2025/26マレーシアFAカップの準々決勝1stレグの4試合が行われ、1stレグでは、勝利したのはいずれもアウェイチームというハプニングが起きています。またこの4試合中、日本人選手4名が3試合に出場しています。なお2ndレグは10月28日と29日に予定されています。

試合のハイライト映像はいずれもマレーシアンフットボールリーグのYouTubeチャンネルより。


ジョホールはペナン相手に辛勝

FAカップ4連覇がかかるジョホールは、1回戦では3部のマレーシア大学相手に3失点を喫するなど「らしくない」試合を経て準々決勝に進出しています。この試合でもリーグ戦では今季1勝のペナンに一度は同点とされるなど、ジョホールにとっては「らしくない」試合展開でしたが、AFCアウォーズに出席したアリフ・アイマンを欠く中、MFアヘル・アケチェのFAカップ初ゴールで逆転して逃げ切っています。

この試合では、今季はケガで出遅れていたマシュー・ディヴィーズが今季初出場を果たしています。昨季はジョホールで29試合、マレーシア代表でも6試合に出場したディヴィーズ選手は、6月のアジア杯予選ベトナム戦を最後に試合出場がなく、8月に開幕した今季リーグ戦でもこれまで出場がありませんでした。しかしこの試合では先発してフル出場するなど完全復活を果たしています。

ペナンFCの鈴木ブルーノ選手は90+3分に交代出場し、試合終了までプレーしています。

2025/26マレーシアFAカップ準々決勝1stレグ
2025年10月17日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ペナンFC 1-2 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️ペナン:アディブ・ラオプ(36分)
⚽️ジョホール:オスカー・アリバス(6分)、アヘル・アケチェ(55分)
MOM:アヘル・アケチェ(ジョホール・ダルル・タジムFC)


今季未勝利のサバが先勝

過去3シーズン連続3位のサバは、リーグ戦では6試合を終えて3分3敗の12位と絶不調。いずれもマレーシア代表選手のFWダレン・ロック、DFドミニク・タンを筆頭に主力選手がケガによる長期離脱しており苦しいシーズンが続いています。一方のクランタンは昨季は最下位ながら、今季は既に昨季の勝星と同じ2勝を挙げて7位につけ、勢いづいています。

しかしこの試合では代表DFダニエル・ティンが8月以来となる先発に復帰したサバが、この試合のMOMに輝いたGKダミエン・リムの好セーブを連発して僅差の試合に勝利しています。

2025/26マレーシアFAカップ準々決勝1stレグ
2025年10月17日@スルタン・ムハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC 1-2 サバFC
⚽️クランタン:アブドゥル・シセイ(18分)
⚽️サバ:ジェフリ・フィルダウス・チュウ(13分)、アイディン・ムヤギッチ(45分)
MOM:ダミエン・リム(サバFC)


スランゴールが今季ホーム無敗のヌグリ・スンビランを撃破

今季のリーグ戦では常安澪選手の2発でスランゴールに逆転勝ちするなど、ホームでは3勝1分と今季無敗のヌグリ・スンビラン。チームの好調は観客動員にも現れており、この試合もほぼ満員の2万5000人を集めています。

これに対し、今季の監督解任リーグ第1号となる喜熨斗勝史監督を9月下旬に解任し、クリストフ・ギャメル氏を暫定監督に据えたスランゴールは、リーグ上位6チームの中では、唯一、既に3敗を記録するなど不安定な戦いが続いています。

そんな両チームの対戦は、10月9日のアジア杯予選ラオス戦では、ピーター・クラモフスキー監督就任以来初となるゴールを挙げ、続く10月14日の同じくアジア杯ラオス戦でも2試合連続ゴールを挙げたファイサル・ハリムがその勢いのまま、この試合でも躍動、2ゴールを挙げる活躍を見せ、スランゴールを勝利に導いています。

ヌグリ・スンビランFCの佐々木匠選手は先発してフル出場しています。また常安澪選手は60分から出場し、試合終了までプレーしています。

2025/26マレーシアFAカップ準々決勝1stレグ
2025年10月18日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ
ヌグリ・スンビランFC 0-4 スランゴールFC
⚽️スランゴール:ファイサル・ハリム2(34分、63分)、クリゴール・モラエス(46分)、ザック・クラフ(56分)
MOM:ファイサル・ハリム(スランゴールFC)


ロナルド・ンガの2発などでクチン・シティが快勝

リーグ戦3位のトレンガヌと同4位クチン・シティは、この試合が今季初顔合わせ。好調チーム同士の対戦ということもあり、接戦が予想されましたが思いの外大差がついてしまいました。

ホームのトレンガヌは好機は作るもののシュートまで結びつけることができず、逆にクチン・シティは少ないチャンスを生かし、また相手のミスにも乗じて得点を重ねました。クチン・シティは、エースのロナルド・ンガはPKを含む2ゴール、また前所属のスランゴールでは5シーズンで5ゴールのダニアル・アスリが、この日のゴールで今季通算6ゴールと覚醒しています。

クチン・シティFCの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

2025/26マレーシアFAカップ準々決勝1stレグ
2025年10月182日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 1-4 クチン・シティFC
⚽️トレンガヌ:ヤン・マベラ(68分PK)
⚽️クチン:ロナルド・ンガ3(9分、13分PK、53分)、ヤン・マベラ(82分OG)
MOM:ロナルド・ンガ(クチン・シティ FC)

10月17日のニュース:<br>・マレーシアサッカー協会が出場停止処分のヘリテイジ帰化選手7名についてFIFAに正式控訴<br>国籍偽装疑惑関連-ネパールがアジア杯マレーシア戦の無効化をFIFAに要請<br>・国籍偽装疑惑関連-かつて東南アジアを揺るがした「東ティモール事件」との類似点<br>・クラモフスキー監督の協会批判発言を巡り処分の可能性が浮上

マレーシアサッカー協会が出場停止処分のヘリテイジ帰化選手7名についてFIFAに正式控訴

マレーシアサッカー協会(FAM)は、7人のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に関する書類問題について、FIFAに正式な控訴手続きに必要な書類をを提出したことを明らかにしています。

FAMのユソフ・マハディ会長代行によると、FAMの法務部門が提出した書類はFAMが任命したマレーシア国外の弁護士らによる「専門家チーム」によって作成されたということです。

「マレーシア代表チームの運営陣はプロフェッショナルな組織であり、世界的なレベルでサッカーに関する規定に詳しい国際的な弁護士ともつながりを持っている。経験豊富な法律専門家のネットワークが、FAMの控訴手続きを支援してくれている。控訴については慎重かつ丁寧に準備を進めている。拙速に進めたわけでも、圧力の下で行ったわけでもなく、我々は有利な判断を得るために万全を期しています」と述べています。

今回の控訴手続きは、10月6日にFIFAがその処分決定理由を公表した、FAMおよび7人のヘリテイジ帰化選手に対する懲戒処分に関するものです。FIFAの規律委員会は9月26日に、ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘヴェルの7選手に対し、公式文書の偽造および改ざんに関する規定(FIFA規律規定第22条)違反で処分を科したことを発表し、FAMに35万スイスフラン(およそ6600万円)の罰金を、7選手にはそれぞれ2,000スイスフラン(およそ38万円)の罰金と、12か月間に及ぶサッカーに関連するあらゆる活動の禁止処分を命じています。

FAMはこれまで、登録時の書類不備は、FIFAに書類を提出した事務職員による「軽微なミス」によるもので、意図的な改ざんではないと主張しています。


国籍偽装疑惑関連-ネパールがアジア杯マレーシア戦の無効化をFIFAに要請

ネパールサッカー協会(ANFA)は、対戦相手が資格のない選手を起用したとして、今年3月25日に行われたアジア杯2027年大会3次予選でマレーシアに0対2で敗れた試合を無効にするようFIFAに正式に要請したというニュースを、AFP通信社が配信しています。

AFP通信社配信の記事によると、マレーシアのジョホールで行われたこの試合では、国籍偽装疑惑で処分を受けた7名のヘリテイジ帰化選手の一人、MFエクトル・ヘヴェルがマレーシア代表としてプレーし、しかも先制ゴールを決めており、マレーシア代表としての出場資格を持たないへヴェル選手が出場したことをネパールサッカー協会が問題視した結果だということです。

「試合に出場資格のない選手が出場していた件についてFIFAに連絡を取った。したがって、結果は覆される必要がある」と、ネパールサッカー協会のインドラ・マン・トゥラダールCEOと発言しています。

FAMは故意に不正行為をしたことを否定していますが、FIFAはその調査の結果として、7選手誰一人ともその親や祖父母がマレーシア出身でないと発表しています。

ネパールは現在、アジア杯予選F組第4節を終えて勝点0で最下位となっています。


国籍偽装疑惑関連-かつて東南アジアを揺るがした「東ティモール事件」との類似点

マレーシアのヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑問題は、東南アジアサッカー界でかつて起こった、いわゆる「東ティモール事件」との類似が指摘されています。

この「東ティモール事件」の発端は、2015年10月8日に行われたW杯2015年大会アジア2次予選のパレスチナ戦で、かつてはボルトガルの植民地だった東ティモールの先発11人のうち7人が同じポルトガルの植民地だったブラジル出身のヘリテイジ帰化選手(東ティモールにルーツを持つ帰化選手)だったことでした。

この試合後、パレスチナサッカー協会はFIFAに対し、この試合に出場した東ティモールのヘリテイジ帰化選手が代表戦に出場する資格がないとして不服申し立てをおこないました。これを受けたアジアサッカー連盟(AFC)が調査を行った結果、ブラジル出身の12名のヘリテイジ帰化選手が偽造された東ティモールの出生証明書または洗礼証明書で登録されていたことが判明しました。「不正選手の出場に対してはゼロ容認政策を取る」ことを明言していたAFCは、W杯2015年大会予選での不正選手が出場した東ティモールの全29試合の結果を無効にするとともに、アジア杯2023年大会予選からの追放も発表しました。

東ティモールサッカー協会は当初、この処分に反発しましたが、最終的にAFCとFIFAの処分を受け入れ、東ティモールサッカー連盟には2万米ドルの罰金とのアマンディオ・サルメント事務局長(当時)は9000米ドルの罰金と3年間のサッカー活動関与停止処分を受けました。


今回のマレーシアの国籍偽装疑惑については、マレーシアサッカー協会(FAM)も同様の試練に直面しています。ユソフ・マハディFAM会長代行はFIFAへの控訴を行った際には、「FIFAの決定には驚いたが、国内法のもとで帰化が認められた選手であり、控訴で誤解が解かれると信じている」と述べています。なお、東ティモールの例では制裁確定までに2年近くを要した上、その後、長期間に渡り国際大会から遠ざかることになり、信頼回復に数年を要したことを考えると、FAMの控訴の行方が気になります。


クラモフスキー監督の協会批判発言を巡り処分の可能性が浮上

マレーシアサッカー協会(FAM)は、ピーター・クラモフスキー監督の最近の発言が協会への批判と見なされたことを受け、FAMの懲戒委員会に対応を委ねると発表しています。

クラモフスキー監督本人から謝罪を受け入れたと述べたユソフ・マハディFAM会長代行は、「クラモフスキー監督は、もしかしたら、口を滑らせたか、あるいは意図しないミスだったのかも知れない。しかしFAMは明確な規約のもとで運営されており、全員がそれを尊重すべきだ」と強調し、適正な手続きを踏む必要があるとして、懲戒委員会に審議と決定を委ねると述べています。

クラモフスキー監督は10月9日にラオスのヴィエンチャンで行われたアジア杯2027年大会3次予選ラオス対マレーシア戦の試合後、「FIFAで起こっている全ての混乱は事務的なミスが原因であり、それは全てFAMのせいだ」と述べて、今回のヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑の根源をFAMと非難していました。

しかし10月14日のアジア杯3次予選マレーシア対ラオス戦の試合前の会見では、FAMを軽視する意図は全くなかったと述べて、自身の発言で不快感を与えたことを謝罪していました。

ユソフ・マハディFAM会長代行は、「「クラモフスキー監督の発言後、迅速な対応を求める声もあったが、FAMは代表チームの利益を何よりも優先しました。(ラオスとの)試合が控えており、監督や選手たちに不必要な緊張や不快感を与えず、チームの調和を保ち、準備がスムーズに進むようにしたいと考えていた」とも述べて、FAMがクラモフスキー監督の非難に直ちに反応しなかったのは、代表チームの集中を優先したと説明しています。

アジア杯予選2027予選:ラオスに逆転勝ちのマレーシアは連勝記録を4に伸ばす

10月14日にAFCアジア杯2027年大会3次予選F組の第4節が行われています。なお10月9日に行われた前節第3節では、主力選手のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ選手)7名が国籍詐称疑惑でFIFAから12ヶ月間の出場停止処分を受けてから初の試合でしたが、苦しみながらもホームのラオスを3-1で破って予選3試合全勝としています。

マレーシアのピーター・クラモフスキー監督は、前節のラオス戦の先発XIからナズミ・ファイズ(ジョホール・ダルル・タジム)に代えてファイサル・ハリム(スランゴール)を左WGに起用した以外は変化なし。なおファイサル・ハリムはクラモフスキー監督就任以来、初の先発となっています。以下がこの試合の先発XIですが、一緒に写っているファイサル選手は前回のアジア杯本大会の韓国戦では引き分けとなる同点ゴールを決めるなど、代表の主力として活躍していましたが、昨年5月に顔や手足に酸攻撃を受け、皮膚の移植手術を受けて以来の先発復帰となっています。

7名のヘリテイジ帰化選手に対する出場停止処分発表後、初のホーム開催となったこの試合は私も現地観戦しましたが、試合会場となったブキ・ジャリル競技場のあるクアラ・ルンプール市内が豪雨に見舞われたためか客足も悪く、試合開始時点ではスタンドの半分どころか三分の一程度しか埋まっていませんでした。

この試合も5日前の試合同様、開始からマレーシアが優勢に試合を進めますが、ラオスは全員が自陣に戻る守備的な布陣で応じます。ボールを保持しながら、シュートまでには至らないマレーシアは、前の試合でも先発しながら無得点に終わったロメル・モラレス(ジョホール・ダルル・タジム)が数少ない好機ではなったシュートがいずれも枠外となるなど嫌な雰囲気となります。所属するジョホールでは今季出場2試合、出場時間37分のモラレスを先発起用しなければならない現在の代表チーム状況は、まさにヘリテイジ帰化選手の出場停止処分の影響が出ています。

そうする内に、チャンターウィサイ・クトーンフォンが放ったミドルシュートが、それをクリアしようとしたDFシャールル・サアドの頭に当たって角度が変わり、意表をつかれる形になったGKシーハン・ハズミが反応できずゴール。ラオスがチャンターウィサイ・クトーンフォンの代表初ゴールでリードします。

まさかの後手に回る形になったマレーシアは26分にはアリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)のコーナーからラヴェル・コービン=オング(ジョホール・ダルル・タジム)がヘディングシュートを放つもラオスGKコブ・ロックパティフの正面となり、さらに前半終了間際にはモラレスがGKと1対1となるもシュートはまたも枠外に外れ、前半はラオスが1点リードで終了します。

後半に入ってもクラモフスキー監督は動かず、ラオス側ハーフで進むも得点が取れないまま試合が進む中、59分にマレーシアはラオスペナルティエリアのすぐ外でファイサル・ハリムが倒されてフリーキックを得ます。これをファイサル選手自身が直接決めて、ついにマレーシアが追いつきます。そしてその6分後にはペナルティエリア内でアリフ・アイマンとのパス交換からロメル・モラレスが身体を反転させてシュート。モラレスの2024年9月以来となる代表戦8試合ぶりのゴールでついにマレーシアがラオスを逆転します。

さらに70分には、アリフ・アイマンのコーナーキックをディオン・クールズ(セレッソ大阪)が落としたボールを再びモラレス選手が押し込み、さらにリードを広げると、79分にはゴール前に上がったボールをラオスの17歳DFカムナン・タンパスットがクリアしようとしたボールがオウンゴールとなってしまいます。

その後はファイサル選手と交代で出場のパウロ・ジョズエ(クアラ・ルンプール)がゴール前のこぼれ球を押し込んでダメ押しの5点目を決めるなど、この日の試合は終わってみれば大勝、F組で唯一全勝を守ったマレーシアが首位を守っています。


AFCアジア杯3次予選F組第4節
2025年10月14日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
マレーシア 5-1 ラオス
⚽️マレーシア: ファイサル・ハリム(59分)、ロメル・モラレス2(65分、70分)、 カムナン・タンパスット(79分OG)、パウロ・ジョズエPaulo Josue
⚽️ラオス:チャンターウィサイ・クトーンフォン(19分)


なおF組のもう一試合はベトナムのホーチミンで行われ、ベトナムとネパールが対戦しています。悪天候により試合開始が30分ほど遅れて始まった試合は、開始5分にネパールDFスマン・シュレスタのオウンゴールでベトナムがリードすると、結局これが決勝点となり、ベトナムがそのまま逃げ切っています。

なおこの試合はネパールのホームマッチですが、ネパールが試合の開催を予定していたダサラス・スタジアムがAFCの求める国際試合開催開催基準に合わないことから、ベトナムでの開催となっています。

AFCアジア杯3次予選F組第4節
2025年10月14日@トンニャット・スタジアム(ホーチミン、ベトナム)
ネパール 0-1 ベトナム
⚽️ベトナム:スマン・シュレスタ(5分オウンゴール)

F組の次節第5節は11月18日に行われ、マレーシアはネパールとブキ・ジャリル国立競技場で(ただし前述のベトナム戦同様ネパールのホームゲームとして開催)、またベトナムはラオスとのアウェイマッチでそれぞれ対戦します。

アジア杯2027年大会3次予選F組順位(第4節終了)

順位チーム勝点
1マレーシア44001411312
2ベトナム43019549
3ラオス4103314-123
4ネパール400428-60