1月1日のニュース<br>マレーシアサッカー2024年重大ニュース(2)

あけましておめでとうございます。拙いブログを読んでいただいている皆様には感謝しかありません。6年目となります2025年もマレーシアからサッカー関連のニュースをお届けしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。昨日のうちに書ききれなかった昨年2024年のマレーシアサッカー重大ニュースの続きをお届けしますが、年末に大きなニュースが多かったこともあり、今回は昨年11月までのニュースをまとめたものになります。昨年12月のニュースは明日以降に、改めて重大ニュース(3)としてお届けします。

ムルデカ大会:レバノンを下したマレーシアが11年ぶりに優勝

タイのキングズカップと並びアジア最古の招待大会の一つであるムルデカ大会は、昨年9月8日には第43回大会の決勝がクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われ、準決勝では2−1でフィリピンを破ったFIFA135位のマレーシア(当時)が、やはり準決勝で昨年のこの大会を制したタジキスタンを1-0で破った同117位のレバノンが対戦しています。試合はコロンビア出身の帰化選手ロメル・モラレスが挙げたゴールを守り切ったマレーシアがレバノンを1−0で下して優勝を果たしています。大会ホストのマレーシアが優勝したのは2011年以来11年ぶりと多くのメディアが伝えましたが、2013年の大会で優勝したのはA代表ではなくマU23代表でした。A代表がこのムルデカ大会に最後に優勝したのは1983年で、それから数えると実に41年ぶりの優勝ということになりました。

この大会は7月に17ヶ月の契約期間を残して辞任したキム・パンゴン氏に代わり、コーチから昇格したパウ・マルティ監督代行にとって初の試合となりました。1月のアジアカップ、3月と6月のW杯予選といずれも良い結果が得られなかったマレーシア代表にとっては、キム前監督辞任など良いニュースがありませんでした、ライバルと目していたインドネシアはW杯アジア3次予選に進み、後述する年代別代表も結果を出せないなど、サポーターの不満は高まり、この大会は代表サポーターの統括団体「ウルトラス・マラヤ」が応援ボイコットを呼びかけ、ゴール裏は至って静かな試合だったのも印象的な大会でした。

年代別代表はいずれも苦戦ーアジアの壁に跳ね返される
AFC U23アジアカップ-マレーシアは3戦全敗でグループステージ敗退

昨年4月に行われたAFC U23アジアカップでは、2018年、2022年に続き3度目の本大会出場となったマレーシアは、グループステージ初戦のウズベキスタン戦、2戦目のベトナム戦といずれも0−2で敗れ、3戦目はやはり2連敗中のクウェートと対戦しました。ハキミ・アジム(KLシティFC)がゴールを決めたものの、結局この試合は1−2で敗れ、0勝3敗1得点6失点という成績でグループステージ敗退となりました。そん中、このU23アジアカップに出場したU23代表のメンバーの中から、FWダリル・シャム、FWファーガス・ティアニー、FWナジムディン・アクマル(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC U23)、DFハリス・ハイカル(スランゴールFC)が今年、A代表デビューを果たすなど、光明も見えています。

AFC U20アジアカップ予選:マレーシアはスリランカとまさかの引き分けで本戦出場を逃す

9月下旬にタジキスタンで行われたAFC U20アジアカップ2025年大会予選E組で、マレーシアは最終戦でスリランカと対戦、終盤にゴールを許して1−1で引き分けた結果、予選で敗退しています。

初戦の相手オマーンを1−0で破り、2戦目の北朝鮮戦は0−0で引き分けといずれも格上相手に勝点を積み上げたマレーシア。続く第3戦のタジキスタン戦では、ロスタイムにタジキスタンにゴールを許して0-1と敗れ、最終戦を残して北朝鮮が勝点10で1位、タジキスタンが勝点6で2位、マレーシアが勝点4で3位、オマーンが勝点3で4位、スリランカが勝点0の5位となっていました。

マレーシアが最終戦でここまで未勝利のスリランカを破り、さらにオマーンがタジキスタンを破ることがあれば2位でのグループ突破の可能性が残る中、ここまで0勝3敗のスリランカは得点0失点12と、そのチャンスは十分にあるように思えました。

試合はマレーシアが1点リードで前半を終え、後半も残り5分を切ったところでまさかの事態がまっていました。87分に左サイドのからのクロスにスリランカのJ・ハリシュが頭で合わせて今予選でのチーム初ゴールとなる同点ゴールを決められてしまいます。その後は両チームとも得点ならず、試合は1−1に終わり、マレーシアは勝点5で予選を終えています。しかもこの試合の後に行われたオマーン対タジキスタン戦では、オマーンが3−1でタジキスタンを破っており、スリランカ戦で失点してなければU20 アジアカップ本戦出場となっていただけに悔いが残ります。

AFC U17アジアカップ予選:ラオスと引き分けたマレーシアは未勝利で予選敗退

10月下旬にラオスで行われたAFC U17アジアカップ2025年大会予選H組で、マレーシアはラオスと対戦して2−2で引き分け、通算成績を1分1敗とし、予選敗退となりました。

レバノンU16代表が出場を辞退し、アラブ首長国連邦(UAE)、マレーシア、ラオスの3ヵ国の対戦となったH組は、初戦でUAEがマレーシアを2−0で破り首位に立つと、続くラオス戦でも5−2と勝利して、早々と予選突破を決めていました。そしていずれも1敗同士の対戦となったマレーシア対ラオス戦は、各組の2位チームのうち、成績上位5チームに与えられる出場資格を賭けての争いとなるはずでした。

試合は11分にアラヤン・ハキーム(ジョホール・ダルル・タジムFC U19)のゴールでマレーシアが先制するも、21分、33分にそれぞれ失点して逆転されてしまいます。その後は66分にナキフ・フィルハド(モクタル・ダハリ・アカデミー)のゴールで追いつくのが精一杯でした。

*****

マレーシアの直近の年代別大会の予選および本選の結果をまとめると以下の通りです。 U23アジアカップ2024年大会:本大会出場もグループステージ敗退(0勝3敗) U20アジアカップ2025年大会:予選敗退(1勝2分1敗) U17アジアカップ2025年大会:予選敗退(0勝1分1敗) なお、同じ東南アジアサッカー連盟(AFF)所属のタイ、インドネシアは上記の3大会全てで本選に出場、ベトナムはU23とU17アジアカップに出場を決めています。マレーシアの各年代別代表がなかなか結果を出せない中で、A代表に帰化選手を増やして強化しようというFAMは、マレーシア以上に帰化選手でA代表を強化しているインドネシア代表が、実は年代別代表でも全て本選出場を果たしている事実から学ぶことが大いにありそうです。

ACLエリートにJDT、ACL2にスランゴールがそれぞれ出場も、喜熨斗勝史監督就任のスランゴールはグループステージ敗退

秋春制導入と共にAFCが新たに進めたのがACLの改変です。2024/25シーズンからは従来のACLはACLエリート(ACLE)に、AFCカップはACL2にそれぞれリブランディングされ、そし2014年に終了していたAFCプレジデンツカップを復活させて、やはりリブランディングしたAFCチャレンジカップの3層構造になりました。

今季はマレーシアからは2019年以来、ACLに出場しているジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)がACLEに本戦から出場しています。外国籍選手枠が撤廃されたことを活かすJDTは、マレーシア生まれの選手がピッチ上に1名となることもあるほど積極補強した外国籍選手を起用し、現在は6試合を終えて2勝2分2敗でグループA(東地区)の6位、首位の横浜Fマリノスとは勝点差5となっています。

ACL2には、昨季のリーグ2位のスランゴールFCが出場し、グループステージH組でムアントン・ユナイテッド(タイ)と引き分けて、セブFC(フィリピン)、そしてかつてのACL覇者の全北現代モーターズFC(韓国)に連勝して一時はグループ首位に立ちました。しかし、この大会中にニザム・ジャミル監督が突然辞任し、喜熨斗勝史新監督が就任するなどチーム内のゴタゴタもあり、喜熨斗新監督の初采配となったムアントン戦で敗れたスランゴールFCは、8年ぶりとなったアジアの舞台復帰でグループステージ敗退となっています。

12月31日のニュース<br>マレーシアサッカー2024年重大ニュース(1)

12月に入って愛用のPCが突然、動かなくなりました。そこから修理とデータ回復に手間取り、気がつけば今日は大晦日。マレーシアサッカーのブログを始めてからこれほど長く投稿しなかった期間はありませんでしたが、今日から再び記事を書いていきます。休載中はいろいろなニュースがありましたが、それも含めて今年最後の投稿は、複数回に分けて2024年のマレーシアサッカーを振り返る重大ニュースの第1回です。

秋春制以降期間となる今季の国内リーグは5月開幕、翌年4月閉幕と12ヶ月の長丁場に

マレーシア1部マレーシアスーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)がAFCの秋春制移行に合わせる形で、秋春制以降を発表したのは昨年2023年末でした。今季2024/25シーズンと来季2025/26シーズンの2シーズンをかけてこの移行を行うことを発表しており、従来の1月/2月開幕、11月閉幕と言う日程から、今季5月開幕(ただし当初は4月開幕予定でした)、翌年4月閉幕の12ヶ月となりました。

今年の年明け早々には予選突破での出場は43年ぶりとなったAFCアジアカップ2023年大会、3月にはFIFAワールドカップ2026アジア2次予選、4月中旬にはマレーシアU23代表も出場するAFC U23アジアカップ2024年大会などがあったこともシーズン開幕が5月となった理由です。

また、この新たな日程変更は思わぬところに影響を及ぼしました、今季からリブランディングされACL2となった昨季までのAFCカップでは、サバFCが東南アジアゾーングループステージを勝ち上がっていました。しかし東南アジアゾーンプレーオフ準決勝の日程はなんと2月。12月のシーズンオフから2か月空き、5月の国内リーグ開幕まで3ヶ月と言う時期の試合では調整も難しく、サバFCではマッカーサーFC(オーストラリア)に0−3で敗れて敗退しました。このマッカーサーFCは東南アジアゾーン決勝で同胞のセントラルコーストマリナーズFCに延長で敗れ、勝ったセントラルコーストマリナーズFCはそのまま一気にAFCカップに優勝し、今季のACLエリート出場権を獲得しています。MFLの日程変更がなければ、2月は開幕前後の仕上がっている状態だっただけにサバFCも違った結果を残していたのではないかと思うと残念です。

クランタンFCは国内クラブライセンスを発給されず、今季のスーパーリーグは奇数の13チーム編成で実施

年が明けた1月にはマレーシアンフットボールリーグ(MFL)のクラブライセンス控訴委員会が会合を開き、今季のスーパーリーグ出場に必要となる国内クラブライセンス申請が却下されていたクランタンFCによる控訴を却下する決定したことを発表しました。クランタンFCはこれ以前に、給料未払い問題により国内クラブライセンスの発給を行う第一審機関(FIB)によってライセンス申請を却下されており、この決定を不服として控訴していました。

この決定によりクランタンFCの今季のスーパーリーグ出場資格が消失し、クランタンFCが離脱っしたことで、今季のスーパーリーグは奇数となる13チームで構成されることになりました。

クランタン州の州旗の色をとってレッドウォリアーズ「赤い戦士」の愛称で呼ばれるクランタンFCは、前身のクランタンFA時代の2012年にはリーグ、FAカップ、マレーシアカップを全て制して国内三冠を達成した他、2011年から13年にかけてはリーグ、FAカップ、マレーシアカップを合わせて6回という古豪です。しかし2018年にスーパーリーグで11位となり当時の2部プレミアリーグに降格、それまでの放漫経営の結果、毎年給料未払い問題を起こすクラブとなっていました。2020年シーズン終了後には未払い給料などの負債を背負う形で実業家のノリザム・トゥキマン氏が新たなオーナーになったものの、「金も出すが口も出す」タイプのノリザム氏が昨季2023年シーズンだけで3名の監督の首を飛ばすなど運営が混乱しました。さらに再び発生した給料未払い問題によりMFLからはトランスファーウィンドウ期間の新規選手獲得禁止処分を受け、また外国籍選手を含む主力選手をシーズン途中で契約解除したこともあり、2023年シーズンは26試合で2勝2分22敗の最下位となっただけでなく、リーグ新記録となる121失点を記録するなど散々でした。

なおクランタンFCは今季は下部リーグでもプレーせず、オーナーのノリザム氏も売却することを表明していますが、買い手がつかない状況です。

43年ぶり出場のアジアカップは韓国との死闘で勝点1も、結局は未勝利で終了

2007年のアジアカップは東南アジア4ヵ国(インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム)の共同開催で行われ、マレーシアは開催国枠で出場を果たしていますが、予選を経ての出場となると43年前の1980年大会以来となったマレーシア。初戦は一昨年はクダ・ダルル・アマンFCでプレーしたマフムード・アル=マルディに2ゴールを許すなど、ヨルダンに0−4で敗れています。2戦目はバーレーンにロスタイムに決勝ゴールを許して0−1で惜敗しましたが、この段階でグループステージ敗退が決定しました。グループステージE組の最終線では、FIFAランキング130位(当時)のマレーシアは同28位の韓国と対戦しています。二転三転した試合の最後は15分と長く取られたロスタイムに、ブラジル出身のパウロ・ジョズエ(KLシティFC)からのパスを受けたコロンビア出身のロメル・モラレス(当時KLシティFC、現在はジョホール・ダルル・タジムFC)の帰化選手コンビの連携で「執念」のゴールを挙げたマレーシアが引き分けに持ち込み、1980年大会以来43年ぶりの勝点1を挙げています。しかし最終成績は0勝1分2敗、得点3失点8という成績で大会を終えています。

2026北中米W杯アジア予選は好発進後に大失速してまたも2次予選の壁を破れず

昨年11月に始まった2026北中米W杯アジア2次予選でD組に入ったFIFランキング132位(当時)のマレーシアは初戦のキルギス、2戦目の台湾にいずれも勝利し、一気に首位に立ちました。今年に入って行われた第3戦の相手はD組で最もFIFAランキングが高い80位のオマーンが相手でした。オマーンは第2戦でキルギスに敗れており1勝1敗の成績で、3月21日、そして29日とアウェイとホームで対戦するうちのどちらかでマレーシアがあわよくば勝利、悪くても引き分けとすることで、2次予選突破の可能性が高くなります。しかし蓋を開けてみれば、ホーム、アウェイのいずれも0−2と敗れてしまいました。

それでも6月のキルギス戦(アウェイ)で勝てば予選突破の可能性が残りましたが、後述するファイサル・ハリム(スランゴールFC)の事件による欠場などもあり、マレーシアはキルギスと1−1で引き分けて自力突破の可能性を失うと、最終戦の台湾戦に勝利したものの、予選敗退となっています。D組2位で3次予選に進出したキルギスと勝点差1の10で3位に終わるなど、悔いの残る予選敗退となりました。

代表FWファイサル・ハリムは酸攻撃を受け、所属のスランゴールはその直後の開幕戦の延期を求めるも、リーグはこれを却下

今季開幕直前にはマレーシアサッカー界が衝撃を受ける事件が続きました、1月のアジアカップ、韓国戦でもゴールを決めてい代表FWファイサル・ハリム(スランゴールFC)が酸をかけられるアシッドアタック(酸攻撃)を受け、首から肩、さらに腕にかけての数カ所に火傷を追っています。

ファイサル選手は5月5日の午後、家族とスランゴール州内のショッピングモールを訪れてゴーカートを楽しんだ後で、このアシッドアタックを受け、直ちに近隣の病院で診断と治療を受けた結果、「皮膚の水膨れと真皮の表面的な破壊を引き起こす」火傷2度(Second degree burn)と診断されたということですが、命に別状はありませんでした。スランゴール州警察本部長は事件後に会見を開き、事件の経緯を説明した上で、犯人の捜索が続いているとしていますが、別の報道では犯人は2人組でファイサル選手にバイクで近づき、酸をかけた後そのまま逃走したということですが、CCTVに残った記録映像から割り出されたバイクのナンバーは偽造で、バイク自体も盗まれたものだと考えられているようです。

しかし、この事件の発生からすでに7ヶ月以上が経った現在、犯人が逮捕されるどころか、捜査の進捗状況も報じられておらず、警察の能力の低さが問われる一方で、何か「見えない力」が働いているのではないか、とすら言われています。この事件の直前にはジョホール・ダルル・タジムFCからトレンガヌFCに期限付き移籍中の代表FWアキヤ・ラシドも強盗被害に遭っていますが、このアキヤ選手の事件も実はファイサル選手襲撃の捜査を撹乱する目的だったのでは、などさまざまな憶測が飛び交っています。

なお被害を受けたファイサル選手は、その後、皮膚移植手術やリハビリを経て、今月初めて今季リーグ戦での先発出場を果たしています。

またこのファイサル選手の事件を受け、スランゴールFCは5月10日に予定されていた今季開幕戦兼スンバンシー・カップについて「安全上の問題」があるとして延期をリーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)に求めましたが、MFLは試合当日に警官を増員するなど安全が確保されているといて、これを却下。それを受けたスランゴールFCは、チームの講演者でもあるスランゴール州スルタン(州王)の同意を得て、最終的に出場辞退を決定しました。

前年のリーグ覇者とマレーシアカップチャンピオンが対戦するスンバンシーカップは、本家英国のチャリティーシールド(現コミュニティーシールド)を模して始まったカップ戦ですが、マレーシアではなぜか公式戦に組み込まれている上、ウェンブリースタジアムのような中立地で開催されるのではなく、前年のリーグ覇者のホームで開催される、なんとも奇妙なカップ戦です。

なおスランゴールが出場辞退した結果、対戦相手のジョホール・ダルル・タジム(JDT)が規定により3-0でこの試合の勝者とされ、スンバンシー・カップの8年連続優勝と、開幕戦の勝点3が与えられています。

キム・パンゴン代表監督が「個人的な事情」を理由に契約期間を1年以上残して辞任-その後は空席となっていた蔚山HD監督に就任しリーグ優勝に導く

7月にもマレーシアサッカー界に激震が走りました。マレーシア代表のキム・パンゴン(金判坤)監督が7月16日に「個人的な事情」を理由に、2025年12月末までの契約を全うすることなく、即時辞任しています。キム監督はおよそ1ヶ月前のW杯アジア2次予選台湾戦後、予選敗退が決まった後の会見では「できるだけ長く監督を務めたい」と話していただけに、この豹変ぶりは関係者だけでなく、国内サッカーファンも困惑しました。

また後任には、スペイン出身でバルセロナのユースのコーチを務めた他、アデレード・ユナイテッド(オーストラリア)やキッチーFC(香港)などで指導経験があるパウ・マルティ・ヴィンセント コーチが監督代行に就任、残るコーチ陣は全員残留しています。

不満は全くなかったとも述べたキム氏ですが、辞任理由の「個人的な事情」の詳しい内容を会見の席で問われると、全ては既にFAMのハミディン・アミン会長に説明済みだとして、メディアには詳細を明かすことはありませんでした。一部メディアは、キム氏は辞任する意向をこれまで何度か伝えてきたものの、ハミディン会長がこれを拒否していたとしており、直近では6月11日のW杯アジア2次予選の台湾戦直後にも辞任を申し出たと報じています。

在籍期間907日、監督として35試合を指揮し、20勝5分10敗の結果を残したキム氏は、監督就任以来61名の選手を代表に招集し、マレーシアのFIFAランキングを就任時の154位から、最高で130位まで引き上げています。

なおキム氏は、代表監督辞任からおよそ2週間後に洪明甫前監督が韓国代表の監督に就任したことにより空席となっていた韓国1部Kリーグの蔚山HDの監督に就任することが発表され、選手としてプレーした蔚山現代(当時)に監督として凱旋した形です。そしてキム氏が就任した蔚山HDは今季のKリーグで見事に優勝しています

11月29日のニュース<br>・ACL2: 喜熨斗新監督の初陣ならず-スランゴールはムアントンに逆転負けでグループ3位に転落<br>・11月のFIFAランキング発表:マレーシアは132位に上昇も、東南アジア3位のインドネシアとの差はさらに拡大

ACL2: 喜熨斗新監督の初陣ならず-スランゴールはムアントンに逆転負けでグループ3位に転落

ACL2の第5節が11月28日に行われ、H組2位のスランゴールFCは勝点差2で同3位のムアントン・ユナイテッド(タイ)をホームに迎えて対戦しましたが、1−2と逆転負けで敗れています。この結果、ムアントンがH組の2位に浮上し、スランゴールは3位に後退しています。

この試合に勝てばACL2ノックアウトステージ進出が決まる試合は、5日前にスランゴールFC監督就任が発表された喜熨斗勝史新監督の初陣でもありました。注目されたスランゴールFCの先発XIですが、5日前のマレーシアカップ1回戦スリ・パハン戦で先発したFWファイサル・ハリムとMFムカイリ・アジマルがベンチスタートとなる代わりに、FWアルヴィン・フォルテスとDFウマル・エシュムラドフが入った以外は大きな顔ぶれの変化もなく、チーム合流からわずか3日では喜熨斗監督の独自性も見られませんでした。

試合前から激しく降る雨でピッチが緩む中、スランゴールは開始5分で先制します。ヨハンドリ・オロスコの放ったシュートはムアントンDFに跳ね返されますが、そのこぼれ球をクエンティン・チェンが落ち着いて決め、ホームのスランゴールが幸先よくリードします。その後もスランゴールは守備陣が相手にチャンスを与えない一方で、攻撃陣は得点機でシュートが枠を捉えられないなど追加点を奪えず、前半はスランゴールが1点のリードのまま折り返します。

後半に入ると同時に2枚の交代カードを切ったムアントンが積極的に攻め、これが53分に実ります。左コーナーキックからのボールをムアントンのアボス・オタホノフと競ったDFハリス・ハイカルが痛恨のクリアミスでゴール前に落としてしまうと、これをフェリシオ・ブラウン・フォルベスが押し込んで、ムアントンが同点に追いつきます。

このゴールでスランゴールもペースを上げ、その後は猛攻に転じますが、少なくとも3本のシュートがゴールポストに当たるなどチャンスを生かせず試合が進むと、76分には右コーナーキックからポラメット・アルジビライが直接ゴールを狙いますが、これはスランゴールのジクリ・カリリがブロック。しかしそのこぼれ球を再びポラメット・アルジビライが豪快に蹴り込んで、ついにムアントンが逆転します。

そこからスランゴールは再び同点を狙いますが、ここでもシュートがゴールポストに弾かれるなどそれまでと同様の展開が続き、結局このままタイムアップ。シュート数25本と相手の3倍以上のシュートを放ちながら、枠内わずか3本とその制度を書いたスランゴールは、前節の全北現代モーターズFC戦に続き2試合で3つのコーナーキックから失点し、ACL2で2連敗となり3位に後退しています。この試合の前にダイナミック・ハーブ・セブFC(フィリピン)を破った全北現代モーターズFCは既にH組の首位突破を決めていますが、ノックアウトステージへの残り1枠は、次節で全北限代と対戦するムアントンが引き分け以上ならムアントンが、またムアントンが敗れてスランゴールがセブを破った場合にはスランゴールがH組2位となりノックアウトステージに進出します。

*****

新監督就任後初の試合にもかかわらず、今シーズンのスランゴールを象徴するようなフラストレーションの溜まる試合でした。ゴールを決めたら罰ゲームなの?と思わせるようにペナルティエリア内でパスを回し、結局シュートを打てないうちにクリアされる。ゴールが見えてもシュートが枠に行かない。ニザム・ジャミル前監督の時から何も改善されていないのは監督ではなく、選手のメンタルの問題のようにも思えました。試合後はスランゴールのウルトラス「ウルトラセル」がこれまで同様「6シーズンで5人の監督(喜熨斗監督は6人目です)。次は?」というメッセージの書かれた横断幕を掲げると、その後は全員が大合唱。”CEO Bangsat”と言っていたそうですが、Bangsatは知らないマレーシア語の単語だったので、近くの方に聞いてみると「クソッタレ」のような意味でした。

また喜熨斗監督については、流石に数日でチームに変化もたらすことはできず、その評価はまだできないでしょう。明後日12月1日には第1戦を1−1で引き分けているマレーシアカップ1回戦スリ・パハン戦の第2戦がホームで、そして12月5日にはACL2グループステージ最終戦となるダイナミック・ハーブ・セブFC戦がアウェイでありますが、いずれも勝利が求められる試合です。万が一、この2試合のどちらかで敗れることがあれば、今度は喜熨斗監督の手腕に対して批判の矛先が向う可能性もあります。

ACL2 H組第5節
2024年11月28日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 1-2 ムアントン・ユナイテッド
⚽️スランゴール:クエンティン・チェン(5分)
⚽️ムアントン:ェリシオ・ブラウン・フォルベス(53分)、ポラメット・アルジビライ(76分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

H組のもう1試合は、全北限代がセブに快勝し、H組1位を確定させています。

ACL2 H組第5節
2024年11月28日@全州W杯スタジアム(韓国北特別自治道全州市)
全北現代モーターズFC 4-0 ダイナミック・ハーブ・セブFC
⚽️全北現代:イ・スンウ(6分)、チョン・ビュンクワン(29分)、チョン・ジンウ(52分)、ソン・ミンギュ(73分)

ACL2 H組順位表(第5節終了)

勝点
1全北現代54011631312
2ムアントンU5221151058
3スランゴール52125507
4DHセブ5014422-181
11月のFIFAランキング発表:マレーシアは132位に上昇も、東南アジア3位のインドネシアとの差はさらに拡大

最新のFIFAランキングが発表され、マレーシアは前回の133位から1つ順位を上げて132位となっています。

10月のランキング発表後、マレーシアは11月14日にラオスと対戦し3−1で勝利し、11月18日にはインドと1−1で引き分けていました。

現在はパウ・マルティ監督代行が指揮を取るマレーシア代表は、ランキングポイントが1,117.35を積み上げて132位となっています。なお前後には130位キプロス、131位マラウィ、133位ニカラグア、134位クウェートと言った国々があります。

東南アジアではタイが1ランク下げたものの97位で域内1位を守り、以下ベトナム(3ランク上昇で同115位)、インドネシア(5ランク上昇で同125位)と続いています。特に2026W杯アジア3次予選に東南アジア勢として唯一残っているインドネシアは前回10月の発表の130位から125位と躍進、昨年11月はマレーシアより下の146位だったことを考えると1年間で20位近くランキングを上げたことになります。

東南アジアの他国のランキングは、フィリピン149位(↓4位)、シンガポール161位(↑1位)、ミャンマー167位(↓2位)、カンボジア180位(↑1位)、ブルネイ184位(±0)、ラオス186位(↑1位)、東ティモール196位(±0)となっています。

11月28日のニュース<br>・ACLエリート第5節:ジョホールは山東泰山に惜敗で5位に後退<br>・東南アジアサッカー連盟女子選手権開幕:マレーシアは初戦でインドネシアに敗れる<br>・サバFC退団のオン前監督はインドネシア1部プルシル・ソロの監督に就任<br>・スランゴールFCがマレーシア1部2人目の日本人指導者となる喜熨斗勝史氏の監督就任を発表

喜熨斗勝史スランゴールFC新監督にとっての初戦となるACL2のムアントン・ユナイテッド戦が本日行われます。今日の試合のわずか5日前に慌ただしく発表された喜熨斗監督就任ですが、トランスファーマルクトによると監督経験がない上、フィットネスコーチなどの肩書きなどを理由に、スランゴールサポーターからは両手を上げて歓迎という空気は伝わってきません。リーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)とはフィジカル面でも大きく差をつけられているのは事実で、そこを強化しなければいけないことは理解はできるという声が上がる一方で、今のチームに監督経験がない人物を据えることにはチームOBやサポーターからも疑問の声が上がっています。今季最も重要な試合の一つと考えられる今日のムアントン戦は「勝たなければいけない」試合であり、この試合で勝てばスランゴールサポーターが全面的に支持に回るでしょうが、万が一負けてしまうと、必要以上にサポーターから攻撃されてしまう可能性があります。実際に合流からわずか数日でチームを変えることはできないのは自明の理ですし、強雨の1試合だけで評価が決まるのは筋違いではありますが、それだけ喜熨斗監督が期待されているのも事実なので、なんとしてでも今日の試合では勝利して欲しいです。もちろん私もスタンドから応援します。

ACLエリート第5節:ジョホールは山東泰山に惜敗で5位に後退

ACLエリート(ACLE)第5節が11月26日に行われ、マレーシアから出場のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)はアウェイで山東泰山と対戦し、0-1で敗れて通算成績を2勝1分2敗として、勝ち点7で5位に後退しています。

山東泰山に向けてはロングボール対策が重要と話していたJDTは、前節の3-0で勝利した蔚山HD戦と全く同じ11名が先発しています。’

ACLEではここまでの4試合で1勝のみ、しかも3日前の中国FAカップでは、JDTがACLE第1節で対戦し2-2で引き分けている上海海港と対戦して1−3と敗れていた山東泰山に対し、JDTは試合開始とともに積極に攻めると4分にはアリフ・アイマンがドリブルで相手ペナルティエリアに持ち込むなど、好機を作ります。互いに好機を作るもJDTがやや有利に試合を進める中、山東泰山GKワン・ダレイ(王大雷)が再三、攻守を見せた前半は0−0で折り返します。

後半に入ると、JDTのエクトル・ビドリオ監督は国内リーグで好調のベルグソン・ダ・シルヴァを投入しますが、ベルグソン選手も絶好機を逃すなど、JDTが押し気味に試合を進める中で、山東泰山は68分、中央でボールを得たクリゾンからJDTのバックライン裏にボールを出すと、これを受けたゼカがDFエディ・イスラフィロフ、GKアンドニ・スビアウレをかわしてゴールに押し込み、いずれも途中出場のブラジルコンビの連携で山東泰山がついに先制します。

この後も好機を得ながら追いつくことができなかったJDTは両チーム合わせてイエロー10枚が出された試合にこの1失点で敗れ、いずれもアウェイマッチとなる今季のACLE2敗目を喫し、通算成績を2勝1分2敗としています。なおJDTの次節第7節は12月3日にホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムでブリーラム・ユナイテッドFC(タイ)と対戦します。

ACLエリート東地区第5節
2024年11月26日@済南オリンピック・スタジアム(中国山東省済南市)
山東泰山 1-0 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️山東泰山:ゼカ(68分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
東南アジアサッカー連盟女子選手権開幕:マレーシアは初戦でインドネシアに敗れる

東南アジアサッカー連盟(AFF)女子選手権「アセアン女子カップ」がラオスのヴィエンチャンで開幕し、マレーシアはインドネシアに0−1で敗れ、黒星スタートとなっています。

今年3月にびわこ成蹊スポーツ大総監督から転身した望月聡監督率いるインドネシアは、カンボジアとともに予選B組に入るマレーシアは、11月26日に首都ヴィエンチャンにある新ラオス国立競技場でインドネシアと対戦し、ド15歳のクラウディア・シュエネマンに79分にゴールを決められて敗れています。クラウディア選手はこのゴールが代表通算5ゴール目ということです。

昨年の女子W杯に出場したフィリピンやベトナム、前回2022年大会準優勝のタイなどが参加していない今大会には6チームが参加し、予選A、B両組の2位までが準決勝に進出します。B組ではインドネシアは11月23日に行われた初戦のカンボジア戦で0-0と引き分けて勝点4でB組の首位となっており、この日の敗戦で勝点0のマレーシアが準決勝に進出するためには、明日11月29日のカンボジア戦での勝利が必要となります。なおこの大会でのマレーシアの最高成績は2007年のベスト4進出となっています。

サバFC退団のオン前監督はインドネシア1部プルシル・ソロの監督に就任

現在マレーシアスーパーリーグ3位のサバFCとの契約が11月30日で切れ、クラブからの契約延長オファーを断り退団したオン・キムスウィ氏が、インドネシア1部のプルシブ・ソロの新監督に就任したことをクラブの公式SNSが伝えています。

2007年にマレーシア人指導者としては初めてラジャ・イサことラジャ・イサ・ラジャ・アクラム・シャー氏がプルシプラ・ジャヤプラの監督に就任して以来となる、オン氏のプルシス・ソロ監督就任は、2024/25シーズンの第11節を終えたインドネシア1部で現在、2勝1分8敗で18チーム中16位に低迷するプルシスからの熱烈なオファーによるものとされています。

オン氏は2022年途中にサバFC監督に就任すると、2022年、2023年と2季連続で3位でシーズンを終え、今季2024/25シーズンもサバFCはジョホール・ダルル・タジムFC、スランゴールFCに次ぐ3位となっています。また昨季はAFCカップ(現ACL2)のアセアン地区準決勝まで進出しており、このアセアン地区準決勝もグループステージから2ヶ月後のマレーシアリーグが完全シーズンオフの時期に行われており、シーズン中に行われていたら…と悔いの残るシーズンでした。

ムハマド・ハナフィン前監督に代わりオン新監督を迎えるプルシス・ソロは中部ジャワ州のスラカルタに本拠地を持つクラブで、ジョコ・ウィドド前インドネシア大統領の次男で28歳の実業家でユーチューバー(!)のカエサン・パンガレップ氏と、インドネシアサッカー協会会長で、先月10月にプラボウォ・スビアント大統領の新内閣で国営企業相に再任されたエリック・トヒル氏が共同オーナーとなっています。両氏がオーナーになった2021年は2部のクラブでしたがその年に2部優勝を果たし、2022年からは14年ぶりとなる1部に復帰しています。

マレーシアU23代表監督として東南アジアのオリンピック、東南アジア競技大会で優勝1回、準優勝1回を経験するなど若手位の育成で定評があるオン新監督は、「プルシスには多くの有望な若い選手がいると聞いているが、トップリーグで他のチームと争うには若手だけでなく経験のある選手もチームには必要である。どのポジションでもバランスよくチームを編成して、若手とベテランが融合するチームを作りたい’」と話し、そのためには、まずは選手や他のコーチ、スタッフらと積極的に対話をしてチームを知ることを優先し、まずはチームを降格圏から安全な順位に引き上げることを優先したいと話しているということです。

スランゴールFCがマレーシア1部2人目の日本人指導者となる喜熨斗勝史氏の監督就任を発表

マレーシアスーパーリーグ1部で現在2位のスランゴールFCは、辞任したニザム・ジャミル前監督の後任としてセルビア代表でコーチを務めていた喜熨斗勝史氏の新監督就任を発表しています。マレーシアリーグの日本人指導者としては、かつてはクランタン・ユナイテッドFC(現クランタン・ダルル・ナイムFC)監督で、現在はスランゴールFCユースコーチの東山晃氏に次ぐ2人目となります。

60歳の喜熨斗氏の経歴は日本のメディア報道を参考にさせていただくと、J1名古屋などでドラガン・ストイコビッチ監督の「右腕」として、2021年からはセルビア代表となったストイコビッチ監督の要請で同国代表コーチに就任、現在に至るということのようです。

11月25日にチーム合流から3日で迎える本日のACL2のH組第5節ムアントン・ユナイテッド戦前の公式会見では、サポーターに対して良い試合を期待して欲しいと話しています。「先週はセルビア代表のコーチとしてデンマークやスイスと対戦したが、現在は(スランゴールFCのホームがある)プタリン・ジャヤにいる。そして今回の挑戦を自分はとても楽しみにしている。これまで2度チーム練習を行ったが、選手たちはムアントン戦に向けて準備ができている。」と話しています。

会見でどのようなシステムでムアントンに臨むかを問われた喜熨斗監督は、特にシステムについては気にしていないと話し、積極的なプレーと諦めない姿勢で臨みたいと答え、勝点差2でスランゴールに迫るムアントンとの試合では、ノックアウトステージ進出が近づく勝点3を取りに行くつもりだと話しています。

11月22日のニュース・リーグ3位のサバFC監督が契約延長拒否で退団-「11月30日問題」の影響も・下部リーグまで広がる給料未払い問題-3部では9人で試合に臨むチームまで登場・3部首位のマラッカFCはマレーシアカップを前に2名の外国籍選手が加入

リーグ3位のサバFC監督が契約延長拒否で退団-「11月30日問題」の影響も

現在8勝2分4敗でリーグ3位のサバFCは、オン・キムスイ監督の退任を発表しています。この公式声明によると、オン監督が指揮を取るのは明日11月23日のマレーシアカップ1回戦の対PTアスレチックFC戦が最後になるということです。

この声明の中でオン監督は、サバ州のハジジ・ノー州首相、サバ州サッカー協会のシャヘルミ・ヤーヤ会長、そしてサバFCの経営陣やスタッフにこれまでの支援を感謝しています。

さらにオン監督は「サバFCを率いた36ヶ月という期間は素晴らしい時間だった。この優れたクラブを指揮することができたことを嬉しく思う。ピッチの内外で責任を果たし、プロ意識をみ見せてくれた選手を誇りであると同時に、一緒にプレーできたことを光栄に思う。」とも述べています。またオン監督はサポーターにもこれまでの応援に対する感謝の意を表し、自身は退団してもサバFCのサポーターの1人としてその成長を見守りたいとも述べています。

オン監督がサバFC監督に就任したのは2021年シーズン途中でした。このときはインドネシアのレジェンドで前任のクルニアワン・ドウィ・ユリアン監督が2021年8月に成績不振で事実上の解任となり、サバFCがその後任として、当時マレーシアサッカー協会(FAM)のテクニカル・ディレクター(TD)だったオン氏に監督就任を要請し、オン氏もFAMのTDを辞して監督に就任しています。シーズン途中の就任となった2021年は9位に終わったものの、オン監督が開幕から指揮を取った2022年、昨季2023年はいずれもリーグ3位で、AFCカップ(現ACL2)にも出場、今季もここまでリーグ3位とサバFCでは安定した成績を残しています。

オン監督の契約は今月11月30日までとなっており、オン監督自身は契約延長を希望するという発言を行なっていました。11月5日にはサバ州サッカー協会とサバFCが今季2024/25シーズンが終了する来年4月末までの契約延長をオファーしたと報じられていましたが、今回、オン監督はこのオファーを断って退団を選択したことになります。オン監督は退団を選んだ理由などは明らかにしていませんが、現在、マレーシアサッカー協会(FAM)が創設を進めているとされる代表チーム運営の特別部署に関わるのではという噂などが出ています。

*****

とここまで読んで、そもそもなぜオン監督の契約が11月30日までというシーズン途中の中途半端な時期までの契約になっていたのかを疑問に思う方がいるかも知れません。これがこの記事のタイトルにある「11月30日問題」に関わることなのです。従来、春秋制で行われてきたマレーシアスーパーリーグ(MSL)は、1月下旬か2月に開幕し、11月末までに全日程が終了するという年間予定で長らく運営されていました。しかし、AFCの年間予定変更に沿う形で、MSLは今季2024/25シーズンと2025/26シーズンの2シーズンをかけて秋春制への以降を進めることになりました。そのため、今季は従来と大きく異なる5月開幕、来年4月閉幕という12ヶ月に及ぶ長期スケジュールが組まれました。しかしその一方で、各チームと選手や監督、コーチさらにスタッフとの契約は大半が、今回のオン監督のような従来通りの11月30日までとなっていることが明らかになると、これが「11月30日問題」としてクローズアップされることになりました。

この11月30日問題は、チーム側の立場で言えば、前半戦を終わって不要と判断した選手の契約をこの11月30日に満了として終了させることが可能です。契約延長を行わない判断の理由は選手の能力の他、これまでこのブログでも何度も取り上げている(そしてこの記事の下でも取り上げる)給料未払い問題に代表されるチームの経営悪化も考えられます。さらに再契約となっても待遇を下げられるケースも考えられます。前述のオン監督で言えば、サバFCは今季給料未払い問題を抱えていた時期があり、金銭面での待遇譲歩を求められた可能性もあります。

しかし選手側の立場では、チームへの貢献度が高ければ好条件を引き出しての再契約も考えられます。さらにここで気になるのは海外移籍の可能性です。マレーシア国内のトランスファーウィンドウは開いていないので、契約延長を拒否しても、国内の他のクラブへの移籍は不可能ですが、隣国のトランスファーウィンドウを見てみると、インドネシアは12月19日から来年2025年1月15日まで、またタイのは12月2日から来年1月10日となっており、11月30日に再契約しなくともこの両国リーグへは移籍が可能です。さらにカンボジア、フィリピン、シンガポールなども12月から来年1月にかけてトランファーウィンドウが開いています。またタイリーグでは、同時にピッチ上でプレーできる外国籍選手枠を無制限4枠に加えて、アセアン(東南アジア)枠を1名から2名に増やし、さらにアセアン出身選手については無制限に登録可能とルール変更されるという話を伝わってきており、給料未払い問題を抱えるチームが多いマレーシアに愛想をつかして国外移籍する選手が出てくることも十分考えられます。

そもそもリーグやサッカー協会が事前に手を打っておけば問題化すらしなかったこの「11月30日問題」がこれから数週間は話題となりそうです。

下部リーグまで広がる給料未払い問題-9人で試合に臨むクラブまで登場
  The nine PIB FC players who started Saturday’s A1 Semi Pro League match against Manjung FC at USIM Stadium, Nilai. — PIC FROM PIB FC FB
11月16日のマンジュン・シティFC戦前の集合写真でポーズを取るPIB FCの先発9名の選手(写真はPIB FCのSNSより)

現在2部プレミアリーグが休止中のマレーシアリーグは、3部のA1セミプロリーグ(スポンサー名からMBSB銀行チャンピオンシップが正式名称)が実質的な2部にあたります。このA1セミプロリーグにも、トップリーグのマレーシアスーパーリーグ(MSL)同様、給料未払いが発生しており、先日の試合ではついに先発の11名が揃わず、9名で試合に臨むチームが現れたと、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。

スランゴール州シャー・アラムを本拠地とするPIB FCは2022年には3部優勝を果たすなど実績のあるチームですが、今季第19節11月16日のマンジュン・シティFC戦では、試合開始時に選手9名しか揃いませんでした。後半開始にもう1人が遅れて到着し、最後は10名となったものの、交代要員もいないPIB FCはこの試合でマンジュン・シティFCに0−4で敗れています。

試合後、PIB FCのアズリン・モハメド監督は、給料未払いにより多くの選手が練習や試合に参加できなくなっていると説明する一方で、生活費を稼ぐための仕事を理由に練習や試合に来ることができない選手を責めることができないと話しています。また試合のための移動などもチームからの支給はなく、選手自らが負担しており、アウェイの試合に参加できない選手もいるということです。

現在は15チーム編成のセミプロA1リーグで7勝4分8敗で7位に位置するPIB FCですが、試合前の数日に全体練習を行うだけで、チームとしても生活費を稼ぐ仕事を優先することを選手に認めており、全員に練習参加を強制することは難しいともアズリン監督は話しています。

「このチームは本来、(リーグの上位チームが出場する)マレーシアカップ出場を目指すチームで、リーグの殴られ役になるべきチームではない。しかし未払い給料問題の性で選手のやる気もチームの勢いも全て失ってしまった。」と話したアズリン監督は、チームの運営陣は未払い給料の早期解決を約束しているものの、現在の状況が続けば、今季終了まで試合ができるだけの選手がチームに所属しているかどうかすら、現在は疑わしいと話しています。

3部首位のマラッカFCはマレーシアカップを前に2名の外国籍選手が加入

第19節を終えた3部のA1セミプロリーグ(スポンサー名からMBSB銀行チャンピオンシップが正式名称)で首位のマラッカFCは、3部の上位3チームに出場枠があるマレーシアカップに出場しますが、初戦となる1回戦の11月23日のトレンガヌFC戦を前に、2名の外国籍選手の加入を発表しています。

3部のセミプロA1リーグは、外国籍選手の登録は21歳以下の選手に限り2名が可能となっており、今季のマラッカFCには既にナイジェリア出身で20歳のMFミカエル・オゾルとガーナ出身で19歳のFWフセイニ・イサーが所属しています。オゾル、イサー両選手はチーム19試合中18試合に出場し、特にイサー選手は11ゴールを挙げて得点王争いの3位につけています。

この両選手に加え、マラッカFCはフランス生まれでコンゴ国籍を持つCBロドリゲ・ナニテラミオ、そしてギニア出身のストライカー、オウマル・バンガウラを獲得しています。この2選手は、マレーシアカップに出場するA1セミプロリーグのチームに限り特例として認められた追加の外国籍選手2名の枠での登録となり、マレーシアカップのみの出場が認められます。なおマレーシアカップに出場するトップリーグ、マレーシアスーパーリーグ(MSL)のチームは、ベンチ入り6名(アジア枠1名、アセアン東南アジア枠1名を含む)、同時出場5名が可能となっています。

28歳のナニテラミオ選手は195cmの長身センターバックで、グジャ・ユナイテッド(マルタ1部)、ドラヴァ・プトゥイ(スロバキア2部)、OFKすパルタク(ブルガリア2部)やサイゴンFC(ベトナム1部)でのプレー経験があります。また20歳のバンガウラ選手については、マラッカFCからは「プレーメーカー(司令塔)」ということ以外の情報開示はなく、また調べたところTransfermarktにもデータが見つかりませんでした。

昨季はMSLのヌグリスンビランFCで監督を務めたK・ディヴァン監督が率いるマラッカFCは、明日11月23日にマラッカFCのホーム、ハン・ジェバ・スタジアムで行われるマレーシアカップ1回戦のトレンガヌFCと対戦します。

11月21日のニュース<br>・マレーシアはインドと1−1で引き分けて11月のFIFAデイズを終える<br>・Y.S.C.C.横浜へローン移籍中のルクマン・ハキムは契約期間終了で退団へ

マレーシアはインドと1−1で引き分けて11月のFIFAデイズを終える

だいぶ時間が空いてしまいましたが、マレーシア代表は11月18日にインド代表と国際親善試合を行い、1-1で引き分けて、今月のFIFA国際マッチカレンダーを終えています。

なおこの試合の直前に11月14日のラオス戦に出場していたMFアリフ・アイマン、DFマシュー・デイヴィーズ、DFフェロズ・バハルディン(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC、JDT)が、ACLエリートに出場する所属チームからの要望で代表から離脱し、この試合には23名で臨んでいます。

この日の先発は以下の通り、14日のラオス戦からはGKシーハン・ハズミ(JDT)、MFノーア・ライネ(スランゴールFC)、DFディオン・コールズの3選手が連続出場し、アイフ・アイマンに代わりハキミ・アジム(KLシティFC)、マシュー・デイヴィーズに代わりアザム・アズミ(トレンガヌFC)が入っています。なお個人的には、リーグ戦と重なるためJDT、スランゴールFC、KLシティFCの選手が招集できない12月8日の三菱電機カップ初戦のカンボジア代表戦前の最後の試合でもあったので、この試合を想定して、GKハジク・ナズリ(ペラFC)、右ウイングにはサファウィ・ラシド(トレンガヌFC)、センターフォワードにシャフィク・アフマド(クダ・ダルル・アマンFC)、ボランチにはシャミー・クティ(ペナンFC)などを起用しても良かったのでは、と感じました。(なお、ザフリ・ヤーヤ(KLシティFC)とシャミー・クティはいずれも体調不良でこの試合に出場不可だったことが報じられました。)

試合は開始から両チームが好機を作る中、マレーシアが思わぬ形で先制します。19分にアザム・アズミがロングフィードをインドDFラインの裏側へ蹴ると、GKガープリート・シン・サンドゥボール(インド1部ベンガルールFC)が反応良くペナルティエリアの外に飛び出してヘディングでクリアしようとしますが、これがピッチにバウンドするとなんと頭の上を超える高さで跳ね上がります。GKを超えて転がるボールを、そこへ走り込んでいたパウロ・ジョズエ(KLシティFC)が落ち着いて無人のゴールに蹴り込んで、相手GKの失策からマレーシアが先制します。

しかしインドも38分にブランドン・フェルナンデス(インド1部ムンバイシティFC)の右コーナーキックをラーフル・ベーケ(ベンガルールFC)が頭で合わせてゴールを決め、同点に追いつきます。ゴール前ではノーア・レイン(スランゴールFC)が相手選手にファウルを受けたようにも見えましたが、そのままゴールは認められています。

1-1で前半を折り返すと、後半は両チームが共にペースを上げてより激しくせめぎあいますが、シュートがゴールポストに阻まれたり、両チームのGKの好守などもあり、結局、双方ともに追加点を奪えず、試合は1-1のまま終了しています。FIFAランキング125位のインドと引き分けたことで同133位のマレーシアは貴重なランキングポイントを獲得するとともに、昨年のムルデカ大会でマレーシアに2−4で敗れたインドのリベンジを許しませんでした。なお今年6月にW杯予選敗退を受けてクロアチア出身のイゴール・シュティマツ監督を解任し、現在はスペイン出身のマノロ・マルケス監督が指揮を取るインドは、2024年の通算成績を2006年以来のシーズン未勝利となる0勝8分7敗(マルケス監督就任以降は0勝3分1)としています。

一方、パウ・マルティ暫定監督就任後の成績を1勝1分1敗としたマレーシア代表の次の試合は12月8日に開幕するアセアン三菱電機カップ(旧称は東南アジアサッカー連盟AFF選手権)のカンボジア代表戦(プノンペン開催)となります

国際親善試合
2024年11月18日@GMCバラヨギ・スタジアム(インド、テランガーナ州ハイデラバード)
インド代表 1-1 マレーシア代表
⚽️インド:ラーフル・ベーケ(38分)
⚽️マレーシア:パウロ・ジョズエ(19分)

Y.S.C.C横浜へローン移籍中のルクマン・ハキムは契約期間終了で退団へ

ベルギー1部KVコルトレイクからJ3のY.S.C.C,横浜へローン移籍中のルクマン・ハキムは、来月12月末でローン移籍期間が終了しますが、マレーシアのサッカー専門メディアのマカンボラによると、ルクマン選手はローン期間を延長することなく、そのまま退団するようです。

マレーシアU23代表でもプレーする22歳のルクマン選手は、今年1月からY.S.C.C.横浜へローン移籍していましたが、ここまでリーグ戦8試合、YBCルヴァンカップ1試合に出場し、最後の試合出場は10月12日のFC今治戦、そして今季の通算出場出場時間は134分となっています。

J3リーグが行われている中、今月初めには出身地のクランタン州コタ・バルに戻って、1人でトレーニングをしているというルクマン選手とのインタビューを掲載したマカンボラの記事では、KVコルトレイクとの5年契約も満了する来年5月以降については、現時点では未定であると話しています。

昨シーズンのルクマン選手はアイスランド2部のUMFニャルズヴィークへやはりローン移籍していましたが、そこでも通算14試合に出場し、試合出場時間は320分と十分な出場機会を得られていませんでした。

ルクマン選手は、2018年にマレーシアで開催されたAFC U16選手権(現AFC U17アジアカップ)では、マレーシアはグループステージで敗れたものの5ゴールを挙げ、この大会で優勝した日本U16代表の唐山翔自(現在はJ2ロアッソ熊本)、ベスト4進出のオーストラリアU16代表ノア・ボティック(現在はオーストラリア1部ウエスタン・ユナイテッドFC)と並んで大会得点王に輝きました。その後、スランゴールFCU23を経て、マレーシアの実業家ヴィンセント・タン氏が所有するKVコルトレイクと5年契約を結んでいます。

11月18日のニュース<br>・前代未聞!?ジョホールの3選手がACL出場を理由に代表離脱<br>・Mリーグのコーチにも来季からAFCプロライセンス取得が義務付けられる<br>・FAMは元オーストラリア代表のティム・ケーヒルと接触も詳細は明かさず

11月15日のインドネシア代表対日本代表の試合は、2026年W杯アジア3次予選に東南アジアから唯一残っているインドネシアが、オーストラリア戦の引き分けはあったものの、ここまで圧倒的な強さを誇ってきた日本にどのくらい太刀打ちできるのかに注目しました。しかし結果は4-0、しかも内容はスコア以上の完敗でした。この試合では、改めて日本代表の強さを知らされたと同時に、次々と外国生まれの選手を帰化させて強化を図り、東南アジアではその地位を上昇させているたインドネシア代表の限界を見せつけられたような気がします。サウジアラビアやオーストラリアと引き分けた際には、予選C組の台風の目になるかと思いましたが、各チームとの対戦を一通り終えた前半戦は3分2敗で6チーム中最下位となっています。明日11月19日のホーム、サウジアラビア戦で勝てばプレーオフへ向けて首の皮一枚で可能性を残しますが、果たしてどうなるでしょう。

前代未聞!?ジョホールの3選手がACL出場を理由に代表離脱

今月のFIFA国際マッチカレンダーでマレーシア代表はラオス、インド両代表との試合を組んでいます。ラオス代表とは既に11月14日に対戦し、3−0で勝利を収めており、次戦は本日11月18日にインドのハイデラバードでインド代表と対戦します。

しかし、このインド戦を前に驚くようなニュースが流れました。マレーシアサッカー協会(FAM)は、ラオス代表戦が行われたバンコクからハイデラボードへ移動するのは26名中23名で、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)に所属するMFアリフ・アイマン、DFフェロズ・バハルディン、DFマシュー・デイヴィーズはインドへ移動せずマレーシアへ帰国することを発表しました。

その後、JDTからは公式声明が出されています。これによると、11月26日に行われるACLエリート東地区第5節の山東泰山対JDT戦に向けて、JDTは11月21日に試合が開催される中国山東省の済南市入りする予定ということです。その一方で今日のインド代表戦を終えたマレーシア代表は11月20日に帰国予定となっていることから、帰国から中国出発までの時間がないことから、FAMやマレーシア代表のパウ・マルティ監督の同意を得た上で、JDTの3選手はインド代表戦に先だって帰国が可能となったと説明ししています。

また今回のインド代表戦にはJDTからはGKシーハン・ハズミも選ばれていますが、今季のACLエリートでは、JDTは全試合でスペイン出身のアンドニ・スビアウレが先発GKと起用されていることから、シーハン選手は3選手とは別に代表チームに帯同してインド入りするということです。

さらにこの声明では、JDTがACLエリートに向けて多額の投資を行なっていることや、JDTがACLエリートで好成績を収めることはクラブだけの利益ではなく、AFCクラブランキングの押し上げにもつながり、その結果、国内の他のクラブにも恩恵があると説明しています。また声明では、FAMとマルティ監督に対して今回の3選手の早期帰国を認めたことを感謝し、さらにJDTとして2027アジアカップ予選については協力を惜しまないとも述べています。

なんともスッキリしないJDTの声明発表ですが、実はJDTの発表の前にはFAMも声明を発表しており、そこではJDTの3選手の早期帰国については11月20日に行われるマレーシアカップ1回戦KLローヴァーズ対JDTに3選手が出場するために早期帰国を求める要望があったことを明らかにし、これに応じるかたちて帰国を認めるとしていました。しかしJDTの声明はこのFAMの発表とは異なることから、国内サッカーファンからは様々な反応が出ています。

さらにFAMのノー・アズマン事務局長は、FAM、マルティ監督、JDTの間で意見の相違があったのではというメディアからの問いに対しては、それを否定する一方で、これが他のMリーグクラブにも適用される前例とはならないと苦しい弁明を行なっています。

代表選手がクラブの試合を優先し、さらに代表を運営するサッカー協会がこれを認めて代表チーム離脱を許可するという異常な事態は、国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)による日程の発表が遅れたことも原因の一つとなっています。11月1日から3日にかけて行われた今季第15節から2週間近く空いた11月13日になって発表された第16節以降のリーグ日程と今月から始まるマレーシアカップの1回戦日程により、第15節と第16節の間が3週間近く空いた一方で、12月から始まる東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電気カップ」ど同時期に国内リーグを行うという謎の過密日程になってしまいました。

前述したようにノー・アズマンFAM事務局長は、今回のJDTの要求を受け入れたことは前例とはならないと述べていますが、変則のホームアンドアウェイ方式で行われる三菱電機カップでは、グループステージ初戦となる12月8日のアウェイのカンボジア代表戦と同じ日にマレーシアスーパーリーグ第16節の12月8日にはジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)対KLシティFC、翌9日にはヌグリスンビランFC対スランゴールFCが組まれており、さすがにこの4チームの選手はカンボジア戦出場は不可能でしょう。なお11月14日のラオス代表戦先発XIには、JDT3名、KLシティ2名、スランゴール2名の計7名がいました。

またグループステージ最大のライバルであるタイとの試合の前後にはマレーシアカップ準々決勝1stレグが組まれています。国内リーグの上位8チームが順当にベスト8に進めば、今回の代表メンバー全26名中、18名がこの上位8チームのいずれかに所属しており、マレーシアカップを理由に各クラブが所属選手の代表招集を拒めば、東南アジアでFIFAランキングがトップのタイ代表との試合にベストメンバーが揃わないという事態も起こり得ます。(以下は12月のマレーシア代表戦、国内戦、マレーシアのクラブが出場するACLの日程)

12月三菱電機カップマレーシアカップリーグ戦ACLEACL2
1日1回戦2ndレグ
2日
3日ブリーラムU
4日第16節
5日セブFC
6日
7日
8日カンボジア(A)*第16節
9日*第16節
10日
11日東ティモール(H)
12日準々決勝1stレグ
13日準々決勝1stレグ
14日タイ(A)
15日準々決勝1stレグ
16日
17日第17節
18日第17節
19日
20日シンガポール(H)
21日準々決勝2ndレグ

*****

今回はJDT3選手の離脱が注目されていますが、側から見ているとFAMとMFLの対応の遅さやまずさ、準備不足が招いた「事故」のように思えます。例えばFAMで言えば、インド代表戦終了後、FAM自らがこの3選手を直接、中国へ移動させる航空券の手配をすれば、マレーシアから移動するチーム本体よりも先に中国入りすることができ、日程を理由に代表離脱を求めたJDTの要求を突っぱねることもできたはず。さらに言えば、FAMが今月のFIFAデイズは代表戦を行わないことを決め、MFLが国内リーグ開催を優先し、第16節と第17節、さらにはマレーシアカップの準々決勝までを11月中に終える日程を作成していれば、そもそもJDTからの無謀な要求も出なかったでしょうし、三菱電機カップ中にリーグ戦やカップ戦を行う必要もなかったでしょう。

なおFAMは今回のFIFAデイズに向けて26名の代表メンバーを発表していましたが、代表に召集されていたいずれもJDTのMFナチョ・インサとFWロメル・モラレス両選手も「ケガ」のため代表招集を辞退していました。しかし11月17日にJDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行われたシンガポール1部ライオン・シティ・セイラーズとの練習試合で、インサ選手はキャプテンとして先発しています。この試合にはモラレス選手も出場しており、両選手の「突然の回復」に対してそもそもの代表辞退を疑問視する声や、ACLエリートに間に合ってよかった、と言った賛否の声がSNS上に上がっています。

Mリーグのコーチにも来季からAFCプロライセンス取得が義務付けられる

現在はマレーシア1部スーパーリーグの監督にのみ取得が義務付けられているプロAライセンス(AFCプロライセンス相当)について、来季2025/26シーズンより監督だけでなくコーチにもその取得が義務付けられることになると、マレーシアの通信社ブルナマが報じています。

サバFC監督でマレーシアプロサッカー指導者協会(FCAM)会長でスーパーリーグのサバFC監督でもあるオン・キムスイ会長は、マレーシアサッカー協会(FAM)の技術委員会とプロAライセンス取得義務化について協議を行なったことを明らかにし、次のFAM理事会で決定される見通しだということです。この決定が下されると、スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が規約を改正して、Mリーグの試合でベンチ入りするコーチにもプロAライセンスの所持が義務付けられることになります。なおマレーシア国内リーグでは、2020年以降、チームの監督にのみプロAライセンスの所持が義務付けられています。

この記事によると現在、FCAMにはプロAライセンスを持つ62名の指導者が登録しているということです。

なおこれらの発言は、11月15日から16ににかけてFCAMが開催した国際コーチングセミナー開会時の会見でなされたものです。このセミナーには、FAMのテクニカル・ディレクター(TD)のスコット・オドネル氏や、国内エリートアカデミーのモクタル・ダハリ・アカデミーのオスカル・ゴンザレスTDの他、日本サッカー協会(JFA)の影山雅永技術委員長も参加しています。

FAMは元オーストラリア代表のティム・ケーヒルと接触も詳細は明かさず

マレーシア政府から1500万リンギ(およそ5億2000万円)の支援を受けることが発表されたマレーシアサッカー協会(FAM)は、その支援の条件となっている代表チーム強化のための特別部署を設立することを発表していますが、その部署の責任者の候補の1人として、元オーストラリア代表で、現在はカタールサッカー協会のテクニカル・ディレクター(TD)と接触したことが明らかになっています。

年代別代表も含めカタール代表を多く輩出するアスパイア・アカデミーのCSO(チーフ・スポーツ・オフィサー)も務めるカーヒル氏は、FAMとの会談を前に、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)で、オーナーでジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下や、同じオーストラリア出身のアリスター・エドワーズCEO、そしてアンワル・イブラヒム首相とも会談したことを、イスマイル殿下が自身のSNSで明らかにしています。

マレーシア代表チーム改革を唱える先鋒でもあるイスマイル殿下とも会談したことで、カーヒル氏がFAMが新設を予定してる代表とU23代表の運営部署に関わる可能性が噂さていますが、FAMのノー・アズマン事務局長は、これについての問い合わせに回答せず、新たな部署については12月に入ってから発表するとしています。

11月16日のニュース<br>・3選手の代表デビュー以外にラオス戦勝利で得たものはなし<br>・MFLが12月以降の日程発表:三菱電機カップ開催中もリーグ戦継続

11月10に行われたペラFC対ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)の試合中、接触プレーからあわや乱闘となりかけたペラのトミー・マワトとJDTのアリフ・アイマン。お互いに掴みかかるなど、両選手ともに1発レッドで退場かという場面でしたが、結局はそれぞれにイエローカードが出されて終わりました。しかし試合後に両チームサポーターやメディアなどからは、ラズラン・ジョフリ主審、そして今季からマレーシアリーグに導入されたVARとしてこの試合を担当したアフマド・ズハディ審判に批判の声が上がりました。

これに対してはマレーシアサッカー協会(FAM)審判委員会の委員長でもあるS・シヴァスンダラムFAM副会長が「追加の処分や更なる措置が取られる可能性がある」と批判の火消しを図るコメントを出していましたが、結局、ラズラン・ジョフリ主審とアフマド・ズハディVAR審判に対して、FAMは2試合の「休養」処分を科すことを発表しています。

JDT以外のサポーターからは、国内リーグでの審判の判定はJDTに有利であるという主張はこれまで何度も繰り返されており、今回も先に手を出したアリフ・アイマンには口頭注意となる一方で、トミー・マワトには出場停止と罰金処分となるだろうと揶揄するSNS投稿が多くみられます。またマレーシアの先住民族でもあるマワト選手に対しては、人種差別的な内容のSNSが投稿されたことも報じられており、JDTサポーター対残る12クラブのサポーターという図式が明らかになった格好になりました。

マレーシアスーパーリーグの審判がJDTに「甘い」ことは、特定クラブのサポーター以外のサッカーファンも感じていることであり、時間がある時にこれについても詳しく取り上げる予定です。

3選手の代表デビュー以外にラオス戦勝利で得たものはなし

11月のFIFA国際マッチカレンダーでマレーシア代表の初戦となったラオス代表戦が一昨日11月14日にタイのバンコクで行われました。ラオス代表は11月17日にタイ代表と対戦予定であることから、ラオス代表の主催試合という形でおこなわました。

下はこの試合の先発XI。これまで代表に呼ばれてはいたものの出場機会がなかったMFザフリ・ヤーヤ(KLシティFC)が待望の代表デビューを飾っています。またFWシャフィク・アフマド(クダ・ダルル・アマンFC)の先発は2022年9月26日のキングズカップ(タイ)のタジキスタン代表戦以来となりました。

試合前から降る雨でピッチには水溜りができている状態で強行されたこの試合は、開始から何度か得点のチャンスを作っていたマレーシアが先制します。6分に左コーナーキックからDFハリス・ハイカル(スランゴールFC)が頭で合わせてゴール!代表戦出場2戦目となる22歳が代表初ゴールを決めて、マレーシアがリードを奪います。その後も追加点のチャンスは得るものの、ゴールには至らないマレーシアに対しラオスが同点に追いつきます。33分に自陣に蹴り込まれたロングボールに対してクリアに行ったDFマシュー・デイヴィーズ(JDT)が足を滑らせたところに走り込んできたキダボン・スワニー (ラオス1部ヤングエレファントFC)に奪われると、そのまま落ち着いてゴールを決められ、前半は1−1で折り返します。

後半に入り、ピッチの状況が徐々に改善すると、マレーシアが優勢となり、ラオスのペナルティエリア内までボールが持ち込まれるようになります。64分には途中交代のMFスチュアート・ウィルキン(サバFC)が、83分にはMFエセキエル・アグエロ(スリ・パハンFC)がいずれもペナルティエリア内で倒されて得たPKを決めたマレーシアが3−1でラオスを振り切って勝利しています。

対ラオス戦8連勝となったマレーシアは、11月18日にインドのハイデラバードで行われるインド代表戦に向けてインドへ移動します。

2024年11月14日@PATスタジアム(タイ、バンコク)
ラオス 1-3 マレーシア
⚽️マレーシア:ハリス・ハイカル(8分)、スチュアート・ウィルキン(64分)、エセキエル・アグエロ(83分)
⚽️ラオス:キダボン・スワニー (33分)

リーグが12月以降の日程発表:三菱電機カップ開催中もリーグ戦継続

国内リーグのマレーシアスーパーリーグ(MSL)とカップ戦のマレーシアカップを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は第16節以降の日程を発表しています。これによると、MSLとマレーシアカップの試合は、来月12月8日に開幕する東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電機カップ」開幕後も継続して行われることが明らかになっています。

東南アジアチャンピオンを決める域内最大の大会の横で国内リーグが進行する試合日程には疑問しかありませんが、MFLによると、各クラブの選手との契約が来年4月末までとなっており、国内試合日程がこの4月末までに全て終了するためにはやむを得ない措置であると説明しています。

またMFLは、マレーシアサッカー協会(FAM)とも協議を行い、マレーシア代表の三菱電機カップに向けた準備の妨げにならないよう配慮した結果であるとも説明しています。また今季はFIFA国際マッチカレンダーの他にも、ACLエリート、ACL2、アセアン(東南アジア)クラブカップ「ショッピーカップ」などの日程も考慮せざるを得ない中での試合日程作成となっているとも述べています。

また年末にかけては複数のスタジアムで改修工事が行われることも決まっており、PDRM FCのホーム、MPSスタジアムは11月から12月まで、クランタン・ダルル・ナイムFCのホーム、スルタン・ムハマド4世スタジアムは9月から12月まで、ペラFCのホーム、ペラ・スタジアムは11月から来年5月まで、そしてサバFCが使用するリカス・スタジアムは11月から12月と使用できない期間があることも今回の日程作成に影響を及ぼしたとしています。

以下は12月1日から3週間の試合日程です。三菱電機カップのグループステージ初戦のカンボジア戦と同時期に行われるMSL第16節は、ACLエリート出場中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)とACL2に出場中のスランゴールFCに配慮し、12月8日にはジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)対KLシティFC、翌9日にはヌグリスンビランFC対スランゴールFCが行われます。この4チームの選手はカンボジア戦出場は不可能だと考えられますが、ちなみに一昨日のラオス戦に先発した11名の内、この4チームに所属している選手はJDT3名、KLシティ2名、スランゴール2名の計7名もいます。

またグループステージ最大のライバルであるタイとの試合の前後にはマレーシアカップ準々決勝1stレグが組まれています。1回戦で3部セミプロA1リーグのKLローヴァーズと対戦するJDTは当然ベスト8に進出するでしょうし、同じ3部のPTアスレティックFCやマラッカFCと対戦するサバFCやトレンガヌFCも準々決勝に駒を進めることが予想されます。となればラオス戦のメンバー26名中、サバFC所属の3名、トレンガヌFC所属の5名も代表に招集されない可能性があります。この結果JDTやスランゴールの選手も含めると、ラオス戦に招集された全26名中、18名について所属クラブが国内戦を理由に代表への招集を拒む事態も考えられます。

そうでなくともFIFAデイズ外での開催となる三菱電機カップは、これまでもJDTのオーナーで現在はジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下が自チームの選手の招集を拒否したこともあり、せめてこの大会期間中はタイのようにリーグ中断という決断を下してもよかったように思います。前述したようにMFLは日程消化に不安を抱えていることを理由としていますが、その一方で5月10日に開幕した今季のMSLは、5月に3節、6月に1節、7月に3節、8月に2節、9月に3節、10月に2節、そして11月はここまで1節とスカスカな日程で進んできています。11月から1月にかけてモンスーンシーズンを迎えることなども考えると6月には1節のみ、8月も2節のみの開催というのは明らかに計画不足な印象です。

12月三菱電機カップマレーシアカップリーグ戦ACLEACL2
1日1回戦2ndレグ
2日
3日ブリーラムU
4日第16節
5日セブFC
6日
7日
8日カンボジア(A)*第16節
9日*第16節
10日
11日東ティモール(H)
12日準々決勝1stレグ
13日準々決勝1stレグ
14日タイ(A)
15日準々決勝1stレグ
16日
17日第17節
18日第17節
19日
20日シンガポール(H)
21日準々決勝2ndレグ

この日程が発表されたのはラオス戦の前でしたが、ここで気になるのがパウ・マルティ監督代行の考えです。監督代行として三菱電機カップまでチームの指揮を取ることは決まっていますが、それ以降についてはFAMは、三菱電機カップまでのチーム状況を見て判断する方針を明らかにしており、もしマルティ氏が正式監督就任を望むのであれば、この三菱電機カップでグループステージ2位以上となり準決勝進出が最低ラインになることが予想されます。しかしラオス戦の先発XIは三菱電機カップでは、前述した通り大会には招集できなそうな選手を中心に起用しています。

リーグの考えも監督代行の考えも全く不明ですが、そもそも三菱電機カップ自体に勝つことに意義を見出していないのだとしたら、全て腑に落ちます。さらに今月のFIFAデイズは、来年から始まる2027年アジアカップ予選につながるような選手としてファーガス・ティエニー(タイ2部チョンブリーFC)やファズルル・アミル(クランタン・ダルル・ナイムFC)といった新顔を今回招集したことの筋は通りそうです。

11月14日のニュース<br>・今日はラオスとの代表戦-ファーガス・ティアニーやザフリ・ヤーヤが代表デビューを果たすか<br>・ペナンFCの新監督にKLシティFCコーチのワン・ロハイミ氏が就任へ

今日はラオスとの代表戦-ファーガス・ティアニーやザフリ・ヤーヤが代表デビューを果たすか

今月のFIFA国際マッチカレンダー(FIFAデイズ)では、ラオス、インドの両代表との対戦が控えるマレーシアは、本日11月14日にタイのバンコクにあるPATスタジアムでまずラオスと対戦します。来月から始まる東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電機カップ』までは指揮を取ることが決まっているパウ・マルティ暫定監督は、今月の代表戦に向けて26名を招集しましたが、そこからはケガなどを理由にMFムカイリ・アジマル(スランゴールFC)、MFナチョ・インサ、FWロメル・モラレス(いずれもジョホール・ダルル・タジムFC、JDT)の3名が辞退し、代わりにMFザフリ・ヤーヤ(KLシティFC)、FWファズルル・アミル(クランタン・ダルル・ナイムFC)、FWファーガス・ティアニー(タイ2部チョンブリーFC)の3名が加わっています。また先月10月のニュージーランド代表戦には「家庭の事情」で出場しなかったキャプテンのDFディオン・コールズ(タイ1部ブリーラム・ユナイテッド)も復帰しています。

マレーシア代表は今年に入ってから、12月に行われるAFCアジアカップ2027年大会の予選組み合わせ抽選で強豪との対戦を避けるため、予選参加上位8チームが入るポット1入りを目指してきましたが、マレーシアサッカー協会(FAM)のマッチメークの手際の悪さや、当の代表チームが思うような成績を上げることができず、結局、ポット2で抽選を迎えることになりました。

また来月12月8日に開幕する三菱電機カップが開催されるのはFIFAデイズではない上、12月3日にはACLエリートでJDTがブリーラム・ユナイテッドと、12月5日にはACL2でスランゴールFCがダイナミック・ハーブ・セブFC(フィリピン)とそれぞれ対戦するため、両チームが三菱電機カップへの選手招集を拒否する可能性が高いと考えられています。

そういった状況下でパウ・マルティ暫定監督が、その結果次第で正式に監督となれるのか否かが決まる三菱電機カップにどのように望むのかに注目してみたいと思います。先月のFIFAデイズではFIFAランキング91位と格上のニュージーランド代表に0−4で敗れている同133位のマレーシア代表が今日のラオス戦にどのような布陣で臨むかがですが、ラオスのFIFAランキングが187位ということもあり、代表でのプレー経験が少ない選手が多く起用される可能性があります。先月のニュージーランド戦では、ディオン・コールズ不在だったこともありますが、22歳のDFハリス・ハイカル(スランゴールFC)が代表デビューを果たすとともに先発してフル出場しており、マルティ監督はラオス戦で、今回が代表初招集となったファーガス・ティアニーやファズルル・アミル、そしてこれまで何度か招集されながら未だ出場機会のないザフリ・ヤーヤ起用起用する可能性が高そうです。

個人的な期待を込めて、一列目には21歳のファーガス・ティアニー、同じく21歳のハキミ・アジム(KLシティFC)、そしてマレーシアの至宝、22歳のアリフ・アイマン(JDT)の時代を担うトリオが揃って先発するのを見てみたいです。中盤はアディブ・ラオプ(ペナンFC)とザフリ・ヤーヤを左右のサイドハーフ、中央にはスチュアート・ウィルキン(サバFC)と久しぶりに代表復帰のエセキエル・アグエロ(スリ・パハンFC)、そして左右のサイドバックにはダニエル・ティン(サバFC)と今季成長著しいクエンティン・チェン(スランゴールFC)、センターバックにはハリス・ハイカルと20歳のウバイドラー・シャムスル(トレンガヌFC)といった選手たちを起用し、過去8戦8勝と相性の良いラオスを相手に連勝記録を伸ばすことができれば、三菱電機カップにも備えた布陣となると思うのでしょうが、果たしてどうなるか。ラオス戦はマレーシア時間で午後8時30分キックオフとなっています。

ペナンFCの新監督にKLシティFCコーチのワン・ロハイミ氏が就任へ

ペナンFCは、新監督として今季は同じマレーシアスーパーリーグのKLシティFCでコーチを務めていたワン・ロハイミ氏の監督就任が濃厚だと、スポーツメディアのスタジアム・アストロが伝えています。

今季のペナンFCは、昨季までU23チームの監督を務めた元マレーシア代表FWのアクマル・リザル氏がトップチームの新監督に就任しました。開幕から3試合連続で引き分けて今季をスタートしましたが、第14節を終えて2勝5分6敗の11位に低迷すると、アクマル監督の「休養」が発表されました。

第15節はテクニカル・ディレクターで、かつてはペナンFCサポーターから「グレート・メルズ」と呼ばれて愛されたモロッコ出身のアブデラザク・メルザグア氏が監督代行で指揮を取っています。その後ペナンFCは新監督の候補者をリストアップ中という発表がありましたが、最終的にはワン・ロハイミ氏に決まったようです。

ワン・ロハイミ氏は2021年から2022年の途中まではPDRM FCの監督を務めた経験もあり、2021年には2部プレミアリーグで8位、翌2022年にはプレミアリーグ6位とチームの成績を改善しましたが、シーズン終了後には契約が延長されず、昨シーズンはKLシティFCのU23チームを指揮し、今季からトップチームのコーチに就任していました。

11月13日のニュース<br>・マレーシアカップ第98回大会の1回戦組み合わせが決定<br>・開幕から就労ビザなしでプレーし続けた韓国選手らの代理人がクラブをFIFAに提訴

マレーシアカップ第98回大会の1回戦組み合わせが決定

1921年(大正10年)に第1回大会が行われたマレーシアカップ(当時はマラヤカップ)は、今季が第98回大会の伝統ある大会で、同じ1921年から続く天皇杯全日本サッカー選手権大会とともにアジア最古のカップ戦の一つです。そのマレーシアカップの1回戦組み合わせ抽選が行われています。なお今大会はマレーシアの通信事業企業のUnifi(ユニファイ)が冠スポンサーとなり「ユニファイ・マレーシアカップ」という名称になっています。

マレーシアカップはこれまでトップリーグの16チームにのみ開かれた大会でしたが、1部リーグにあたるマレーシアスーパーリーグが今季は13チーム編成となっていることから、今大会は3部にあたるセミプロA1リーグからの3チームを加えた計16チームが、今月11月20日から始まる1回戦をホームアンドアウェイ方式で戦います。

大会2連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、1回戦では3部セミプロA1リーグのKLローヴァーズとの対戦となっており、ベスト8進出は問題ないでしょう。また2021年大会優勝のKLシティFCの1回戦の相手は過去5回優勝のクダ・ダルル・アマンFCで、この試合の勝者がベスト8でJDTと対戦します。

また大会最多の33回優勝を誇るスランゴールFCは、過去4回優勝のスリ・パハンFCと、またスランゴールFCに次ぐ優勝回数8回のペラFCは、クランタン・ダルル・ナイムFCとそれぞれ1回戦で対戦します。

また過去3回優勝のヌグリスンビランFCはPDRM FCと対戦しますが、この1回戦では佐々木匠選手と鈴木ブルーノ選手の対決でもあります。また谷川由来選手が所属するクチンシティFCは、1回戦では過去4回優勝のペナンFCとの対戦が決まっています。

セミプロA1リーグから参加する他の2チームでは、現在セミプロA1リーグ首位のマラッカFCは過去1回優勝のトレンガヌFCと、また同3位のPTアントラーFCは、過去3回優勝のサバFCと対戦します。

マレーシアカップは、11月20日から始まる1回戦から準々決勝、そして準決勝までは全てがホームアンドアウェイ方式で行われ、来年2025年4月に予定されている決勝戦のみが一発勝負となります。また1回戦で敗退した8チームは、この8チームのためのミニカップ戦であるMFLチャレンジカップに回ります。

開幕から就労ビザなしでプレーし続けた韓国人選手の代理人が所属クラブをFIFAに提訴

国外で居住や就職する場合には滞在国のビザの取得が最優先事項ですが、マレーシアスーパーリーグで今年5月の開幕から現在までプレーする韓国出身の選手やコーチが就労ビザなしの、言わば「不法就労」状態が続いているとして、彼らの代理人が所属チームを国際サッカー連盟FIFAに正式に提訴したことが明らかになっています。

韓国出身の代理人のチョン・ミョンホ氏は、現在リーグ12位のクランタン・ダルル・ナイムFCが雇用主として就労ビザ取得の努力を怠ったまま、自身が代理人を務める韓国出身のコーチにチームの指揮を取らせ、韓国出身の選手を試合に起用し続けたとして、クランタン・ダルル・ナイムFCをFIFAに提訴したと、スポーツメディアのアストロ・アリーナが報じています。なおこの記事では、就労ビザの問題に加え、3ヶ月分の給料の未払いとなっていることも併せてFIFAに通報されたとしています。

チョン氏はこれまでクラブと何度か話し合いを重ね、ビザ取得や給料未払いの問題解決のために時間的な猶予を与えたと説明し、クラブ側は速やかな対応を約束する一方で、その後も状況が一向に変わらないことに業を煮やした結果、FIFAへの提訴となったとしています。

チョン氏は既に韓国出身のMFジャン・ビョンジュとボリビア出身のFWダビド・リベラの両選手が「不法就労者」として国外退去処分を受け、マレーシアに再入国できなくなっていることも明らかにしています。

クランタン・ダルル・ナイムFCに対しては、チョン氏はこれまでもSNSなどを通じて自身が代理人を務めている、元韓国代表のパク・ジェホン監督や、FWベ・キョンワン、MFク・アオイ、DFキム・リグァンの就労ビザ取得を求め続けていることを明らかにしていた他、今季途中から加入したミャンマー代表MFのアウン・カウン・マンについても同様の状況にあるしています。またビザ問題に加えて、過去3ヶ月分の給料が未払いになっている他、契約に盛り込まれている住居や自動車の手当ても支払われておらず、当初住んでいた家から退去させられる事態になっていることも今回の提訴の理由の一つであると説明しています。

さらにチョン氏は就労ビザがないため、同じマレーシア国内ながら外国人の場合は空港でパスポートの提示が求められるボルネオ島のサバ州やサラワク州へは移動できないことも明らかにしています。なお、今季のクランタン・ダルル・ナイムFCはサバ州に本拠地を持つサバFC、サラワク州に本拠地を持つクチンシティFCとはいずれもアウェイで対戦しましたが、チョン氏の主張を裏付けるように上記の韓国籍3選手やアウン・カウン・マン選手については両試合ともベンチ入りもしていません。

このチョン氏の提訴についてクランタン・ダルル・ナイムFC会長でクランタン州議会議員でもあるロジ・モハマド氏は、この問題を認識しているとした上で、就労ビザ取得が遅れていることについては、クラブが直面している「技術的な問題と申請手続き」についてチョン氏に誤解があるとして、近々解決する見通しであると説明しています。

*****

私自身もマレーシアでは外国人であることからビザの重要性はよく理解しています。現在のマレーシアの就労ビザ(正式にはemployment pass、就労許可証)は、入国前に申請を行い、申請が認められてビザ発給が決まった段階で入国する仕組みになっているるはずです。我々一般人であれば6ヶ月間もビザなし就労、つまり違法就労すれば間違いなく国外退去処分となり、雇用主にも罰金処分が下るはずですが、それを隠すことなく堂々と選手を試合に出場させ続けたクラブに対しては、マレーシア政府の入国管理局だけでなく、マレーシアリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)からも重い処分が下されることになりそうです。