9月11日のニュース・W杯アジア3次予選:韓国と引き分けたパレスチナをヨルダンが撃破しB組首位浮上

2026年W杯アジア3次予選がアジア各地で行われる中、B組のパレスチナ対ヨルダンがマレーシアのクアラ・ルンプールで行われました。試合は先制を許したパレスチナが一度は追いついたものの、最後は失点を重ねて1−3で敗れています。この結果、パレスチナは成績を1分1敗として勝点1でB組の5位となり、勝利したヨルダンは1勝1分で勝点4とし韓国、イランと並んだものの得失差などでB組首位に浮上しています。

今年1月のアジアカップ2023準優勝でFIFAランキング68位のヨルダンは、アジア3次予選の初戦では同136位のクウェートとホームで対戦しながら、ロスタイムに同点ゴールを許して1−1で引き分けるスタートを切っていた一方で、同96位パレスチナは、初戦ではアウェイの韓国戦(同23位)に引き分けていました。

イスラエルとの紛争で自国での試合開催が難しいパレスチナは、欧米各国がテロリストと非難するイスラム組織ハマスへの同情論が強く、パレスチナとの連帯を示す大規模集会が何度も行われたマレーシアを今回のW杯予選の合宿地とし、今月1日から初戦の韓国戦に向けて準備をしてきました。その甲斐もあってか(?)韓国戦にまさかの引き分けで勝点1を獲得すると、その勢いで第2節のヨルダン戦に臨みました。なおこの日の先発には、クランタン・ダルル・ナイムFCでプレーするMFオディ・クハルブが韓国戦に続いて先発しています。

一方、初戦をホームでこちらもまさかの引き分けでスタートしたヨルダンは、第3節ではアジアカップでの対戦では1勝1分の成績を残したとは言え、格上の韓国との対戦も控えており、この試合に勝利し、勝点3を積み上げたいところです。この日の先発には、マレーシアスーパーリーグのスランゴールFCでプレーするMFノー・アル=ラワブデの他、この予選後からやはりスランゴールFCに加入するFWアリ・オルワン、そして昨季までスランゴールFCに在籍し、シーズン終盤に判定に不服なことから審判を蹴ってマレーシアリーグから無期限出場停止処分を受けて退団したDFヤザン・アル=アラブ(現韓国1部FCソウル)などが揃い、初戦のクウェート戦からのメンバー変更は1人だけというほぼ不動の布陣です。

試合は開始からヨルダンが激しく攻め、5分にはエース、ヤザン・アル=ナイマトがセンターサークル付近からドリブルで一気に左サイドを駆け上がると、ペナルティエリア内ではパレスチナのDF陣を左右に交わしてから豪快にゴールを蹴り込んで、ヨルダンがあっさりと先制します。

その後もヨルダンは猛攻を続けますが、パレスチナGKバラ・カルーブのスーパーセーブやシュートがゴールポストに阻まれるなどで、追加点を奪うことができません。そこから徐々にカウンターを見せていたパレスチナは、41分に左サイドのカミロ・サルダナからのクロスを、それまでもヨルダンペナルティエリアに切り込んでいたウェッサム・アブ・アリがフリーになっており、落ち着いて頭で押し込み、同点に追いつきます。

1-1のスコアで前半を折り返すと、後半の開始5分にヨルダンが再びヤザン・アル=ナイマトのゴールで逆転すると、72分にはスランゴールFCでプレーするノー・アル=ラワブデが決定的となる3点目のゴールを決めて、アジア3次予選初勝利を挙げています。

FIFAW杯2026アジア3次予選
2024年9月10日@KLフットボール・スタジアム(クアラ・ルンプール)
観衆:3,012名
パレスチナ 1-3 ヨルダン
⚽️パレスチナ:ウェッサム・アブ・アリ(41分)
⚽️ヨルダン:ヤザン・アル=ナイマト2(5分、50分)、ノー・アル=ラワブデ(72分)
🟨パレスチナ(2)、🟨ヨルダン(0)
MOM:ヤザン・アル=ナイマト(ヨルダン)

この試合のハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeより。

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マレーシアとは全く関係がない試合でしたが、W杯3次予選を観戦する機会は貴重なので、午後10時のキックオフ時間にもめげずスタジアムに足を運びました。数日前にはムルデカ大会でマレーシアがレバノンを破って優勝した試合を見ましたが、正直なところ、試合の迫力はこの日の試合の方が桁違いに高かったです。攻守の切り替えの速さや、削れても簡単に倒れずに前を目指す姿など、言葉は悪いですが、勝利で得られるものがプライドでしかないムルデカ大会よりも遥かに大きいものが得られるW杯予選の意味を強く感じました。またこのレベルで、そしてこのプレッシャーのもとで試合を続けていけば、どんなチームでも強くなっていくだろうという印象でしたので、このレベルに残っている東南アジア勢唯一のインドネシアは、帰化選手頼りの補強方法はともかく、ベトナムやタイを抜いて東南アジアトップの実力をつけてしまいそうです。それは実際にサウジアラビアやオーストラリアとの引き分けにもその一端が見えるように思います。

またこの試合はパレスチナのホームゲームとして行われましたが、マレーシアにこんなにパレスチナ人がいるのか、と思うくらいの観衆がパレスチナ側のスタンドに陣取っていました。またこの試合のチケットは40リンギ(およそ1,300円)とされていましたが、どういうわけかスタジアムの前ではタダ券が配られていて、私もそれをもらって入場しました。(この日配られていたチケット。見にくいですが”complimentary”「無料」の文字が見えます。


下はパレスチナが同点に追いついた場面のスタンドの様子です。この他にも”Free Palestine”「パレスチナを解放せよ。」などの横断幕もスタンドでは見られました。

9月10日のニュース・ムルデカ大会:マレーシアがレバノンを下し優勝、3/4位決定戦はPK戦の末、タジキスタンが勝利・ムルデカ大会優勝のマレーシア代表に朗報ーオランダ1部クラブのキャプテンが代表入りへ

ムルデカ大会:マレーシアがレバノンを下し優勝

9月8日に第43回目となるムルデカ大会の決勝がクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われ、FIFA135位のマレーシアが同117位のレバノンを1−0で下して優勝を果たしています。大会ホストのマレーシアが優勝したのは2011年以来11年ぶりと多くのメディアが伝えていますが、2013年の大会はU23代表同士が対戦し、優勝したのがマレーシアU23でした。しかしA代表がこのムルデカ大会に最後に優勝したのは1983年で、それから数えると実に41年ぶりの優勝ということになりました。

この日の先発XIは以下の通り。初戦のフィリピン戦で先発したアリフ・アイマン、アフィク・ファザイル(ジョホール・ダルル・タジムFC、JDT)、アキヤ・ラシド(トレンガヌFC)、ダニエル・ティン(サバFC)に代わり、この試合ではシャフィク・アフマド(クダ・ダルル・アマンFC)、サファウィ・ラシド(トレンガヌFC)、ノーア・レイン(スランゴールFC)、ラヴェル・コービン=オング(JDT)の4名が入れ替わっています。特に、いずれもここ数年は飼い殺し状態だったJDTから期限付き移籍し、今季は出場時間を重ねているシャフィク・アフマドとサファウィ・ラシドが代表戦の先発XIに揃って名を連ねるのは本当に久しぶりでした。しかもこの2人にコロンビア出身の帰化選手ロメル・モラレス(JDT)が加わる攻撃陣が発表になると、試合前からワクワクが止まりませんでした。


今季の幕開けとなった1月のAFCアジアカップでは韓国と壮絶な戦いを演じ3-3と引き分けたものの、結局アジアカップは0勝1分2敗に終わりグループステージで敗退したマレーシアは、その後も3月と6月に行われた2026W杯予選では1勝1分2敗として勝点1差で3次予選進出を逃していました。さらに7月にキム・パンゴン監督が契約期間を17ヶ月残して退任しており、ここ数ヶ月の代表チームにはポジティブな要素が見当たりませんでした。しかも、隣国インドネシアの躍進に対して、キム前監督によるマレーシアサッカー協会(FAM)の支援が不十分だったといった発言や、各年代代表の伸び悩み、さらにファイサル・ハリムの酸攻撃など代表選手が続けて襲われた事件の進捗が見られないこともあり、サポーターの不満はFAMに向かい、その結果が今大会の代表選応援ボイコット呼びかけでした。

初戦となったフィリピン戦に続き、この試合もウルトラスによるボイコットは続き、ゴール裏はガラガラでした。しかしこの日の試合こそ、マレーシア代表の1番のサポーターであるウルトラスの面々にこそ見てもらいたい試合でした。パウ・マルティ監督代行がかつてバルセロナユースのコーチだったことを引き合いに出されて、スペインサッカーの片鱗すら感じられないと酷評された初戦のフィリピン戦は何だったのか、と感じさせるほど一人一人の選手が躍動し、その一方でチームが連動して動く、キックオフから全く別のチームを見せられているようでした。W杯予選やアジアカップと比べても、。段違いのパフォーマンスは単純に見ていて楽しく、初戦のタジキスタン戦ではフィジカルの強さも使い、ことごとく相手の守備を跳ね返していたレバノンを試合開始から完全に守勢に回らせる様は圧巻でした。

そんな中、マレーシアの先制ゴールは33分でした。初戦はベンチながらこの試合は左サイドバックで先発したラヴェル・コービン=オングが得意のロングスローをゴール前にへ送ると、相手DFのクリアが小さくこれをサファウィ・ラシドが再びヘディングで戻すと、待ち構えていたエンドリック・ドス・サントスのシュートは阻まれたものの、そのこぼれ球をロメル・モラレスが押し込んでマレーシアが先制します。

マレーシア1点リードで後半に入ると、今度はギアを上げたレバノンに押し込まれ、自陣でプレーする時間が長くなったマレーシアですが、それでもシャマー・クティとノーア・レインの新しいボランチコンビがセンターバックなどとうまく連携し、決定機をほとんど与えませんでした。そしてレバノンが78分に2枚目のイエローで退場者を出し10人となった後も、最後まで集中を切らさなかったマレーシアが今季初の完封勝ちを挙げて、少ないながらも1万人を超えるファンの期待に応えました。そしてこの勝利は 対レバノン戦3試合目で初勝利であるとともに、中東のチームとの対戦でも2014年にアジアカップ予選でイエメンを2-1で破って以来の勝利でもありました。

第43回ムルデカ大会決勝
2024年9月8日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
マレーシア 1-0 レバノン
⚽️マレーシア:ロメル・モラレス(33分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
ムルデカ大会:3/4位決定戦はPK戦の末、タジキスタンが勝利

決勝に先立って行われた3/4位決定戦では、昨年のこの大会優勝チーム、タジキスタンがPK戦の末、フィリピンを破って3位になっています。初戦のレバノン戦に0−1で敗れたタジキスタンは、この試合でも90分間では0−0と得点がありませんでした。PK戦はフィリピンの1人目タビナス・ジェファーソン、2人目ハーヴェイ・ガヨソがいずれもゴールポストに当てて失敗してしまった一方で、タジキスタンは2人目のパルヴィジョン・ウマルバエフがフィリピンGKケヴィン・メンドーザに止められたものの、残り4名がPKを決めて、4-3で勝利しています。

昨年のムルデカ大会優勝時のペタル・セグルト前監督は、今年2月に契約満了で退任し、セグルト前監督時代にコーチを務めていたゲラ・シェキラゼ監督がしゅうにんしましたが、今大会を振り返ってシェキラゼ監督は、今大会が代表デビューとなった5選手を含めて、ベスト16に残ったアジアカップからも半数以上の選手が入れ替わっていると述べて、チーム状況が変わっていると説明し、さらに今月開幕するACL2に出場するFCイスティクロル・ドゥシャンベとラフシャン・クリャーブからは、今大会の代表チームには選手を招集しなかったことも述べています。

第43回ムルデカ大会3/4位決定戦
2024年9月8日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
フィリピン 0-0 タジキスタン(PK 3-4)

ムルデカ大会優勝のマレーシア代表に朗報ーオランダ1部クラブのキャプテンが代表入りも 

オランダ1部ゴーアヘッドイーグルズに所属する27歳のDFマッツ・デアイルが「マレーシア国籍取得の準備中」と自身のSNSに投稿したことを、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

オランダのフラールディング生まれのデアイル選手は、父方にマレーシア人の血が入っていることをこれまでも明らかにしていましたが、今回はマレーシア代表入りに関心があることを初めて明らかにしています。

マレーシアサッカー協会(FAM)に対して両親や祖父の出生証明書など自身の血筋を示す書類を用意している最中だと投稿したデアイル選手は、既にFAMからも接触されているとし、招集されることがあれば代表でプレーする意思も既に表明済みだとも述べています。「当初はマレーシア代表でプレーすることなど起こり得ないと思っていたが、FAMが積極的に関与してくれており、心配無用だとも言われているので、今では確信をもって代表入りについて話すことができる。」とも述べています。

FAM側もハミディン・アミン会長が代表入りの意思を表明すれば全力で支援する方針であることを明らかにしており、デアイル選手の代表入りは時間の問題のようです。

9月8日のニュース・ムルデカ大会:サファウィ・ラシドは決勝で最多ゴール記録更新を狙う・クダの選手が給料未払いに抗議し、3日連続で練習をボイコット・他のクラブでは給料未払いから家賃滞納で追い出される選手も・マレーシアリーグ王者がシンガポール代表に3発快勝

ムルデカ大会:サファウィ・ラシドは決勝で最多ゴール記録更新を狙う

第43回ムルデカ大会の決勝は、2013年以来、11年ぶりの優勝を目指すマレーシアと初優勝を狙うレバノンが対戦します。9月4日に行われた準決勝では、先制されながらもフィリピンを2-1で破って決勝進出を決めたマレーシアですが、決勝ゴールはFWサファウィ・ラシドのPKでした。

そのサファウィ・ラシドは現在、代表通算22ゴールで歴代8位につけていますが、本日行われるレバノンとの決勝で1点を挙げることがあれば、サフィー・サリらが持つ歴代通算6位タイの23ゴールに並びます。

マレーシアの歴代最多ゴールは、マレーシアサッカー史上最高の選手とされるモクタル・ダハリ(代表在籍期間は1972年〜1985年)が持つ89ゴールですが、それ以下の選手もほぼ全員がマレーシアが強かった1980年代かそれ以前の選手です。歴代10位までに入っている選手で、2000年代以降に活躍した選手では、クアラルンプールFA(現KLシティFC)やスランゴールFA(現スランゴールFC)、インドネシアのプリタ・ジャヤFC(現マドゥーラ・ユナイテッド)などでプレーしたサフィー・サリ(代表在籍期間は2006年〜2017年)とサファウィ・ラシドの2名しかいません。

2017年のAFCアジアカップ予選、北朝鮮戦で代表初ゴールを挙げたサファウィ選手は、2019年までには27試合出場で10ゴールを挙げると、新型コロナにより代表戦がなかった2020年を挟んで、2021年から2023年までは31試合出場で10ゴールを挙げ、通算20ゴールとして、通算ゴール歴代トップ10入りを果たしてます。

さらに今年に入ってからは、6月のW杯予選の台湾戦、そして先日のフィリピン戦でそれぞれゴールを挙げて、並んでいたN・タナバラン(代表在籍期間は1964年〜1969年)、ウォン・チューンワー(同1968年〜1977年)を抜いて単独8位に浮上しています。

まずは歴代通算8位を狙うサファウイ選手は、「フィリピン戦のゴールは自分のモチベーションを上げる材料となった。次は何としても通算ゴール歴代6位タイになりたい。そしてレバノン戦でゴールを挙げてそれを達成できれば申し分ない。」と話しており、記録更新に積極的な姿勢を見せています。そして今日の試合でサファウィ選手がゴールを挙げることができれば、マレーシアにも11年ぶりの優勝が見えてきます。

クダの選手が3日連続で練習をボイコットし給料未払いに抗議か

英字紙ニューストレイツタイムズは、クダ・ダルル・アマンFCの選手たちが3日連続で練習に姿を表していないと報じています。クダは給料未払い問題未解決を理由に、今季開幕前に勝点3を剥奪されており、給料未払いに選手が耐えられなくなった可能性が懸念されています。

チームの練習場となっているアブドル・ハリム・スタジアムに隣接するフィールドには、選手は誰1人おらず、ナフジ・ザイン監督とスタッフのみが姿を表したということですが、ナフジ監督はこの状況についての質問に対しては回答を拒んだと、ニューストレイツタイムズは伝えています。

この記事では関係者の話として、選手たちは給料が未払いとなっていることから様々な金銭的問題に直面しており、その不満が練習ボイコットにつながっているとしています。さらに給料未払い問題がもっと早く解決していれば、このような事態には陥らなかったと述べ、この状況が今後どの程度続くのかも予想できないとも述べているということです。

他のクラブでは給料未払いから家賃滞納で追い出される選手も

同じニューストレイツタイムズでは、東海岸に本拠地を持つクラブの選手とスタッフが家賃滞納により、借りていた家を追い出されたという事例も報じています。この家賃滞納は、やはり所属チームからの給料未払いが原因だということです。

これを報じた記事では、関係者の話としてこの選手が所属しているチームは4ヶ月近く、給料が支払われていないということですが、このチームの選手たちは前述のクダとは違い、選手たちは給料を支払われていなくとも練習には参加し続けているということです。

「選手一人一人は(給料未払いにより)苦しんでいるが、全員が自分の役割に取り組んでおり、プロ意識を持って日々の練習を続けている。その一方で現実は厳しく、家賃が払えず、家を立ち退かねばならない選手が複数いる。」と匿名を条件に語った選手は、チームの経営陣に対して義務を果たして給料を払ってもらえねば、家賃だけでなく様々な支払いができず、生活が危うくなりつつあると、窮状を訴えています。

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この記事では「東海岸に本拠地を持つクラブ」と書かれていますが、該当するのはスリ・パハンFC、トレンガヌFC、クランタン・ダルル・ナイムFCの3チームです。この中では、スリ・パハンFCは以前も今季の給料遅配が報じられたこともあるため、この記事の東海岸に本拠地を持つクラブとはスリ・パハンFCの可能性が濃厚です。

マレーシアリーグ王者がシンガポール代表に3発快勝

マレーシア国内リーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、9月7日にシンガポール代表と練習試合を行い、3−0で快勝しています。シンガポールのカラン・フットボール・ハブで行われた試合では、JDTはムルデカ大会出場のマレーシア代表にマレーシア人主力選手が招集されていることもあり、現在開いているトランスファーウィンドウで加入した新戦力を起用したようです。(下はこの試合の先発XI)

いずれもスペイン出身のGKアンドニ・スビアウレ(スペイン2部CDエルデンセから加入)、DMFイケル・ウンダバレナ(スペイン2部CDレガネスから加入)、コロンビア出身のFWジョルジ・オブレゴン(クロアチア1部HNKリエカから加入)、フランス出身のMFエンゾ・ロンバルド(スペイン2部SDウエスカから加入)、韓国出身のDFパク・ジュンホン(タイ1部ラーチャブリーFCから加入)らが起用された試合は、前半31分にJDTがナズミ・ファイズのゴールで先制すると、後半の58分には新加入のジョルジ・オブレゴンが2点目を、そして90分にはFWモハマドゥ・スマレが3点目を決め、3−0でJDTがシンガポール代表に勝利しています。

9月7日のニュース・ムルデカ大会:ウルトラスが観戦ボイコットの中、マレーシアはフィリピンに辛勝・レバノンが前回優勝のタジキスタンに勝利し、マレーシアと決勝で対戦

第1節から波乱のスタートとなった2026W杯アジア3次予選。日本や中国、オーストラリアが入るC組では、東南アジア勢として唯一、3次予選に残ったインドネシアがアウェイでサウジアラビアと1-1で引き分けています。帰化選手による補強が大当たりのインドネシアは、さらにCBミーズ・ヒルハース(23歳、FCトゥエンテ所属)、RBエリアノ・ラインデルス(23歳、FCズヴォレ所属)が加わるという噂もあり、C組の台風の眼になりそうです。

またB組ではイスラエルとの戦闘状態により、マレーシアで合宿を行っていたパレスチナが韓国を相手にやはり敵地で0-0と引き分けています。そのパレスチナは、クウェートにロスタイムのゴールで追いつかれてやはり初戦を1−1で引き分けたヨルダンと、マレーシアで9月10日の第2節で対戦します。初戦に出場したノー・アル=ラワブデ、アリ・オルワン、レジク・バニハニの3選手がスランゴールFCでプレーするヨルダンと、やはり初戦に出場したオディ・ハロウブがクランタン・ダルル・ナイムFCでプレーするパレスチナの対戦は、マレーシアサッカーとも縁があり、国内サッカーファンの関心を集めそうです。

ムルデカ大会:ウルトラスが観戦ボイコットの中、マレーシアはフィリピンに辛勝

試合からは3日経ってしまいましたが、第43回となるムルデカ大会が9月4日に開幕し、フィリピンと対戦したマレーシアは2−1と逆転で勝利し、9月8日の決勝に駒を進めています。

マレーシアサッカー協会(FAM)の運営に不満を持つ最大のサポーターグループ「ウルトラス・マラヤ」が観戦ボイコットを呼びかけたことで、大会2日前になっても1,000枚程度しかチケットが売れていないことが報じられました。国際試合の前にはFAMも公式SNSで売上枚数を明らかにしていましたが、今大会については全く音沙汰なしだったことで、事態の深刻さがより明らかになりました。(下は見事なくらい誰もいなかったマレーシア戦ハーフタイムのゴール裏)

収容人数85,000人のブキ・ジャリル国立競技場は、1階部分はそれなりに観客がいたもののおそらくは全体で15,000人前後、という印象でした。なおマレーシア代表はキム・パンゴン前監督が今年7月に突然辞任し(その後は韓国1部リーグ蔚山HDの監督に就任)、この試合はコーチから昇格したパウ・マルティ監督代行にとっての初めての試合でしたが、そんな時こそサポーターの声援が必要だと思うのですが、ウルトラスにはそうした発想はなかったようでした。

パレスチナのハマスを承認しているマレーシアでは、イスラエルに関連するとされるアメリカ系企業をボイコットする運動も起こり、結果として国内で100店以上のケンタッキーフライドチキンの店舗を閉店させたマレーシア人の行動は、それがそこで働く多くのマレーシア人従業員の職を奪うといった思慮がないまま行われたのと、現場の選手や監督、コーチにはなんら罪がない今回のボイコット騒動は似ていると感じました。

監督代行といえば、この試合でマレーシアが対戦したフィリピンもノーマン・フェジデロ監督代行が指揮を取っていました。フィリピンは今年2月に就任したばかりのベルギー出身のトム・セイントフィート監督がやはり先月8月末に辞任しています。ガンビアやトーゴ、さらにマルタなどで代表監督を務めた経験があるセントフィート氏は、契約条件の中に含まれていた「より大きなチームで監督機会があれば契約を解除できる」という条項を使って、アフリカのマリ代表監督に就任しています。

いずれも監督代行が指揮を取るチーム同士のこの試合の先発XIは以下の通りです。

マレーシアの先発XIは、現在国内リーグ1位のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)から6名の他は、サバFCから1名、トレンガヌFCから1名、ペナンFCから1名、KLシティFCから1名、そしてタイ1部のブリーラム・ユナイテッドから1名となっています。ただし、サバのダニエル・ティン、トレンガヌのアキヤ・ラシドと、ペナンのシャマー・クティはいずれも今季はJDTからローンされている選手なので、実質はJDTからは9名が先発メンバーに名を連ねていることになります。

一方、フィリピンの先発XIには、神奈川県の桐光学園出身で、ガンバ大阪U23を経てJ2の水戸から今季はタイ1部で3連覇中のブリーラム・ユナイテッドに移籍したDFタビナス・ジェファーソンの名前があります。ちなみにマレーシア代表のキャプテン、ディオン・コールズも同じブリーラム・ユナイテッドの選手なので、同チーム対決となります。またこの先発XIにはKLシティFCでプレーするFWパトリック・ライヒェルト、ペラFCでプレーするDFイエスペル・ニホルムの名前も見える他、先発XIではDFアマニ・アギナルド、MFジャスティン・バース、控えではGKケヴィン・メンドーザ、DFクリスチャン・ロンティーニにもマレーシアリーグでのプレー経験があります。

前置きが長くなりましたが、FIFAランキング134位のマレーシアと同147位のフィリピンとの対戦では、先制したのはフィリピンでした。開始からペースが上がらない試合は、27分にゴール前の混戦から左サイドに流れたボールをタビナス・ジェファーソンがシュートすると、そのボールがシュートコースに飛び込んだDFフェロズ・バハルディンに当たって角度が変わり、最初のシュートコースをカバーしていたGKシーハン・ハズミが反応できずそのままゴールイン。これがジェファーソン選手の代表戦16試合目にしての初ゴールとなり、フィリピンが1点をリードします。

この1点でマレーシアもギアを上げますが、フィリピンDF陣を破ることができず、このまま前半終了かと思われた43分にマレーシアは右コーナーキックを得ます。このキックをファーポストのマシュー・ディヴィーズが頭で落とし、それをフェロズ・バハルディンがペナルティーエリアの外へ流すと、それをシャマー・クティが豪快に蹴り込んで、マレーシアが同点に追いつきます。

後半に入ると両チームともやや引き気味な布陣となる中、73分にフィリピンDFマシュー・ボルディシモがアリフ・アイマンをペナルティーエリア内で倒してしまいます。この日はいくつもの疑惑の判定があり、マレーシアに「親切」だったインドネシアのユディ・ヌルチャヤ主審は迷わずPKと判定します。。これを途中出場のサファウィ・ラシドが落ち着いて決めます。そこからはフィリピンが攻勢に転じ、マレーシアは自陣に釘付けとなりますが、結局、サファウィ選手のゴールがが決勝点となり、マレーシアが逆転でフィリピンに勝利し、前回大会に続き決勝進出を決めています。

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この試合はスタジアムで観戦しました。いつもの試合であれば、試合後にはゴール裏へ向かってウルトラスからのエールを受ける流れですが、この日は観戦ボイコットでウルトラス不在ということもあり、選手が思い思いにスタンドに手を振ったり、出場がなかった選手がスプリントを繰り返してひと汗かくなど、いつもとは違う試合後の雰囲気でした。また試合中もメディアが煽り立てるほど静かというわけではなく、自然発生的な形で応援が起こり、統制されてはいないもののあちこちから声がかかり、スタンド全体はマレーシアを応援している雰囲気を感じました。

ウルトラスの声援は確かに代表チームを後押しする力になるでしょうが、それがな勝ったから勝てなかったと言われないよう、この日の試合はチームの全員が意地を見せ多様に私の目には映りました。そして試合後は、勝利に終わったことで安堵しているような和やかな空気も感じました。今日のフィリピンはそれでもなんとか勝利しましたが、日曜日の決勝レバノン戦では、ウルトラスの皆さんには不満もプライドも全て一旦収めていただき、まずはゴール裏へ足を運んで、2013年以来11年ぶりの優勝を目指す「マラヤの虎」に向かって全力で声援して欲しいです。

第43回ムルデカ大会
2024年9月4日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
マレーシア 2-1 フィリピン
⚽️マレーシア:シャマー・クティ(43分)、サファウィ・ラシド(73分PK)
⚽️フィリピン:タビナス・ジェファーソン(27分)
🟨マレーシア(0)、🟨フィリピン(4)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
ムルデカ大会:レバノンが前回優勝のタジキスタンに勝利し、マレーシアと決勝で対戦

同じ9月4日の第1試合は、FIFAランキング116位のレバノンが、同103位のタジキスタン相手に1−0で逃げ切り、9月9日の決勝進出を決めています。昨年のこの大会では決勝でマレーシアを2−0で破り優勝していたタジキスタンは、連覇の機会を逃しています。また、この両チームは今年1月AFCアジアカップのグループステージでは同じA組で、最終戦では勝った方がノックアウトステージ進出が決まるという中、タジキスタンが2−1でレバノンを破っており、この日の勝利は試合後にレバノンのミオドラグ・ラドゥロヴィッチ監督が口にしたように「リベンジ達成」といった意味合いもあったようです。

水曜日の午後4時30分キックオフということもあり、スタンドは明らかにガラガラで、公式発表では観衆が460名となっており、国際Aマッチとしては寂しいものでした。また心配された雨は降らなかったものの、その代わりの暑さに加え、ほとんど風が吹かないスタジアムで、私自身は汗びっしょりになりながら観戦しました。

試合はレバノンの組織だった守備の強さが目立ちました。前半はタジキスタンが両ウイングを使ってボールを進めようとするも、レバノンの両サイドバックがすぐに寄り付いて、前へのボールを出させません。中央に待ち構えるセンターバックとともに、タジキスタンにシュートの機会すら与えませんでした。

試合は13分にコーナーキックからジハド・アヨウブがヘディングシュートを決めてレバノンが先制すると、残る時間帯はその堅固な守備でタジキスタンFW陣にほぼチャンスを与えず完封勝利を収めています。

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決勝でレバノンと対戦するマレーシアは、その守備力に苦しまされそうです。そうでなくとも、今季ここまでマレーシアは10試合(3勝3分4敗)で得点16失点18と、1試合あたり得失点ともに2点を下回っています。となれば、先行逃げ切りの試合展開を目指し、硬い守備のレバノン相手にはコーナーキック、或いはフリーキックでゴールを挙げられるかどうかが勝敗を握る鍵になりそうです。

第43回ムルデカ大会
2024年9月4日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
レバノン 1-0 タジキスタン
⚽️レバノン:ジハド・アヨウブ(13分)
🟨レバノン(4)、🟨タジキスタン(2)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

9月3日のニュース・ムルデカ大会開幕3日前でチケット売り上げは1000枚足らず-サポーターは本当にボイコットするのか・マレーシア政府は代表チームに総額5億円超の割り当てを発表・パク前ベトナム監督代理人はFAMからの接触がないことを明言

ムルデカ大会開幕3日前でチケット売り上げは1000枚足らず-サポーターは本当にボイコットするのか

明日9月4日に開幕するムルデカ大会を前にチケットの売り上げが伸び悩んでいると、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。1957年に第1回大会が開催されたムルデカ大会は、タイのキングズカップと並んでアジア最古の国際招待大会ですが、今回はFAMの運営に不満を明らかにしている代表チームのサポーター団体「ウルトラス・マラヤ」が呼びかけた観戦ボイコットにより、その歴史の重みに反して淋しい大会になる可能性が浮上しています。

マレーシアサッカー協会(FAM)の公式SNSでは、国際大会の前にはチケットの売り上げ状況などが頻繁に投稿されますが、今回のムルデカ大会ではそう言った情報が何も投稿されていないことから、事態は予想された以上に深刻なのかも知れません。なおニューストレイツタイムズは、9月1日の時点でチケットの売り上げは1000枚に達していないとも報じています。

今回のムルデカ大会では明日9月4日には、第1試合で昨年大会の覇者タジキスタンがレバノンと対戦し、第2試合ではマレーシアがフィリピンと対戦します。そして9月8日には、第1試合で9月4日の試合の敗者同士が3位決定戦を、勝者同士が決勝を戦います。

昨年は10月に行われた前回大会では、今回と同じクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場にマレーシアの初戦となったインド戦は4万6000人、決勝のマレーシア対タジキスタン戦は3万7000人の観衆が集まりました。

この状況についてFAMのフィルダウス・モハメド競技委員会委員長は、チケット売り上げ状況に失望しているとともに、蓋を開けてみても観衆が集まらなければ、来年以降のムルデカ大会での代表チームを大会に招待する際に支障が出る可能性があると懸念しています。

マレーシア政府は代表チームに総額5億円超の割り当てを発表

これも政治絡みの人気取りムーブなのか。

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、代表チームに対して総額1500万リンギ(およそ5億円)の金銭的支援を政府が行うことを発表しています。

アンワル首相は9月3日の金融省都の月例会議の席上で「多くのマレーシア人はサッカーを愛しており、マレーシア代表を全力で応援している。そこで代表チーム強化のために、この支援を行うことを決めた。」と発言しています。

さらにアンワル首相は、代表チームが成功するには選手、監督やコーチの福利が安心したものであることが重要であり、そうすることで全員が練習に集中できると述べています。また満足いく練習施設も必要であるとも述べ、今回の支援によって精神的にも物理的にも満足できる練習が行えるだろうとも述べ、近いうちにマレーシアサッカー協会(FAM)にこの割り当てを伝えたいとしています。

自分はマレーシアが安定した経済成長を続けることを望んでいるだけでなく、国の名を世界に広める素晴らしい代表チームを持つことも同時に望んでいるとも話しています。

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アンワル首相がいつからマレーシアのサッカーに関心を持ち始めたのかはわかりませんが、現場の福利厚生を考えるという発想は、以前自身が元マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン氏と話した際に学んだことだと説明しています。

なおアンワル首相は同時に、金融省からFAMの経営状況を監視するための担当者も派遣することを検討していると話していますが、もしかすると、これがこのニュースの最も重要なポイントからも知れません。5億円を受け取ることを条件に、FAM内部に金融省から人間を送り込んで、色々と疑惑があるとされるFAMの運営の調査に着手するのだとすれば、むしろ賢いアプローチと言えそうです。

パク前ベトナム監督代理人はFAMからの接触がないことを明言

8月30日のこのブログでは、マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長が、現在空席となっているマレーシア代表監督の候補の1人として前ベトナム代表監督のパク・ハンソ氏を検討しているというニュースを取り上げましたが、パク氏の代理人はFAMとは何の交渉も行っていないことを明らかにしています。

これを報じて英字紙ニューストレイツタイムズは、その一方で、代理人のイ・ドンジュン氏は、FAMがパク氏を実際に候補として考えているのであれば、まずは代理人のイ氏を通じて監督就任オファーを出すべきだと、韓国メディアに述べています。

これまでにハミディンFAM会長と話し合いを持ったことはあると話したイ氏は、パク氏への監督就任についてはその席では話題に上がらなかったと述べ、FAMからの監督就任オファーも、また一部メディアで取り上げられているようなパク氏が逆に監督就任をFAMに持ちかけたこともないと明言しています。

キム・パンゴン前マレーシア監督は、今年7月に1年5ヶ月の契約期間を残して辞任し、その後は韓国1部の昨季王者、蔚山HDの監督に就任しています。この結果、現在はパウ・マルティ代表チームコーチが監督代行として、明日から始まるムルデカ大会、そして年末の東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電機カップ」で指揮を取ることになっています。マルティ監督代行については、年内の2大会の結果次第では、来年2025年に行われるAFCアジアカップ2027予選でも指揮を取る可能性があることをハミディンFAM会長を明言しています。

9月1日のニュース・成田恵理、中山未咲両選手加入のサバFAが女子ACL本戦出場を決める・ジョホールがACLEに向けてさらに新戦力獲得-今度は前コロンビアU20MF・外国籍選手枠渋滞中のジョホールがフランシコ・ジェラルディスをスペインクラブへローン・今季不振のクダサポーターがナフジ監督に退任を求める

成田恵理、中山未咲両選手加入のサバFAが女子ACL本戦出場を決める

AFC女子チャンピオンズリーグ(女子ACL)予選C組の最終戦が行われ、MF成田恵理(前WEリーグ長野パルセイロレディース)、MF中山未咲(前なでしこリーグ2部大和シルフィード)両選手が加入したサバFAは、PFCナサフ(ウズベキスタン)を2-1で破っています。この結果、予選C組はサバFAが1勝1分で勝点4、PFCナサフは1勝1敗で勝点3、APF FC(ネパール)は2敗で勝点0となり、サバFAが予選C組1位となっています。これによりサバFAは女子ACL2024/25本選への出場が決定し、中国が開催地となるグループステージA組で武漢江漢大学(中国)、仁川現代製鉄レッドエンジェルズ(韓国)、そして予選A組1位のと同組となることも決定しています。

この女子ACLでは6名の外国籍枠があり、昨季のマレーシア国内女子リーグチャンピオンとして出場するサバFAは、マレーシア女子代表のキャプテンDFシュテフィ・サルジ・カウル、同じく代表のFWインタン・セラーとGKヌルル・アズリン・マズランの加入に加えて、ミャンマー女子代表FWウィン・テインギ・トゥン(ヤンゴン・ユナイテッドFCから加入)、そして成田恵理、中山未咲両選手を獲得しています。

予選の初戦となった8月28日のAPF FCとの対戦では0−0と引き分けているサバFAは、同じ相手に1−0と勝利していたPFCナサフとの対戦となったこの試合では、勝利以外にこの予選C組突破の道はありませんでした。

サバFAのジャスティン・ガナイ監督は、引き分けたAPF FC戦からはジャシア・ジュミリスとウスリザ・ビンティ・ウスマンに代わりハインディー・マスローとヘンリエッタ・ジャスティンを先発XIに起用しています。

前半からPFCナサフが優勢で試合が進む中、GKヌルル・アズリンは何度も好セーブを連発して得点を許さず、両チーム無得点の状況が続きますが、32分に試合が動きます。ミャンマー代表のウィン・テインギ・トゥンが相手DFをかわし、GKの逆をつく先制ゴールを決めて、ついにサバFAがリードを奪います。さらに44分にはシュテフィ・サルジ・カウルのフリーキックをゴール前で捕球し損ねたPFCナサフGKと、このボールに詰めたヘンリエッタ・ジャスティンが交錯、サバFAはPKを得ます。成田恵理選手が蹴ったPKは相手GKにはじかれたものの、このボールに詰めていたウィン・テインギ・トゥンがこれを押し込んでこの試合2点目を決め、サバFAはリードを広げて前半を終了します。

後半に入るとPFCナサフが好機を作り、サバFAが自陣に押し込まれる場面が多くなりますが、GKヌルル・アズリンを中心に粘り強く守り、失点を許しません。しかし残り10分辺りからはPFCナサフの猛攻が続き、88分にはコーナーキックからアルヴィン・エマ・ンゴンジャにヘディングシュートを決められて2-1とサバFAのリードは1点となります。

この試合が引き分けならば1位突破となるPFCナサフはさらに激しく攻めますが、全員でゴール前を固めたサバFAの守備を崩すことができないまま試合が終了し、最高のパフォーマンスを見せたサバFAが、マレーシアの女子チームとしては初めてアジアの舞台に立つことになりました。

この試合のフル試合映像。マレーシアサッカー協会(FAM)のYouTubeより
サバFA対APF FC(ネパール)のフル試合映像。マレーシアサッカー協会(FAM)のYouTubeより
ジョホールがACLEに向けてさらに新戦力獲得-今度は前コロンビアU20MFが加入

今月18日から始まるACLエリート(ACLE)に向けて、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が更なる戦力補強を発表しています。今回は前コロンビアU20代表のホルヘ・ブレゴンをクロアチア1部のHNKリエカから獲得しています。クラブ公式SNSで加入が発表された27歳のオブレゴン選手は、2021年からの3シーズンをHNKリエカでプレーし、今季のUEFAヨーロッパリーグ予選にも出場しています。

8月26日から開いている今季2度目のトランスファーウィンドウで、JDTは既に韓国出身のセンターバック、パク・ジュンホン(タイ1部ラーチャブリーFCから加入)、スペイン出身でマレーシア人の血を引くGKクリスチャン・アバド(スペイン2部エルチェCF U19から加入)、フランス出身のMFエンゾ・ロンバルド(スペイン2部SDウェスカから加入)、アゼルバイジャン代表MFエディ・イスラフィロフ(アゼルバイジャン1部ネフチ・バクー)を既に獲得しており、このブレゴン選手が5人目の新戦力となっています。

外国籍選手枠渋滞中のジョホールがフランシコ・ジェラルディスをスペインクラブへローン

上のニュースでも取り上げたように、ACLエリートに向けて現在開いているトランスファーウィンドウで積極的な補強を行っているジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、今季開幕前に獲得したAMFフランシスコ・「チコ」・ジェラルディスがスペイン2部のCDエルデンセへローン移籍することを発表しています。

ポルトガル年代別代表でもプレーしたジェラルディス選手は今季開幕前にアラブ首長国連邦(UAE)1部のバニーヤースSCから加入しましたが、昨季からJDTでプレーするフアン・ムニスが絶好調なこともあり、今季のマレーシアスーパーリーグ第9節を終えて5試合に出場(先発4試合)し、0ゴール1アシストの記録を残しましたが、ポジション争いに敗れた結果、新戦力のために外国籍選手枠を空けるための移籍となりました。

JDTは既に、アルゼンチン生まれのシリア代表MFジャリル・エリアスをアルゼンチン1部のCAベレス・サルスフィエルドへローン移籍させている他、過去3シーズンで40試合に出場し34ゴールを挙げたFWフェルナンド・フォレスティエリの退団も発表しています。またフォレスティエリ選手とイタリア年代別代表でともにプレー経験があるFWニコラオ・ドゥミトルに至っては、タイ1部ブリーラム・ユナイテッドから移籍しながら、トップチームでは一度も出場することなく、先月からインドネシア1部のPSSスレマンにy針ローン移籍となっています。

FAカップでは4ゴールを挙げるなど、シーズン前の高い評判の片鱗は見せたジェラルディス選手ですが、同じAMFフアン・ムニスがここまでリーグ戦、カップ戦全てに先発し12試合で6ゴール7アシストと絶好調なこともあり、半年も経たずに移籍となってしまいました。

今季不振のクダサポーターがナフジ監督に退任を求める

FIFA国際マッチカレンダーにより、第9節を終えて現在中断しているマレーシアスーパーリーグですが、リーグ8位のクダ・ダルル・アマンFCはインドネシア1部のマルク・ウタラ・ユナイテッド(マルト・ユナイテッド)を招いて「ヌサンタラ・チャレンジ2024」と称する親善試合を行っています。

試合はマルト・ユナイテッドが19分にG大阪ジュニアユース出身で今季からマルト・ユナイテッドでプレーする永松達郎選手がゴールを決めて先制しますが、クダもミロシュ・ゴルディッチが40分にゴールを決めておいつきます。しかし後半には、米国年代別代表の経験を持つビクター・マンサレーとディエゴ・マキシモ・マルティネスの両FWがゴールを決めたマルト・ユナイテッドが3-1と勝利を収めています。

この試合結果を伝えたマレーシア語紙のマジョリティーによれば、試合後はクダのナフジ・ザイン監督に対して退任を求めるチャントなども聞かれた他、試合後のチーム公式メディアでも同様の投稿が見られたと伝えています。

今季はここまで3勝2分3敗ながら、選手に対する給料未払い問題の解決が遅れたことで開幕前に勝点3を剥奪されているクダは、開幕後も給料遅配が怒っているとも言われており、今季の不安定な戦いぶりをナフジ監督1人の責任とするのは違うような気がしますが、貴重な戦力だった司令塔MFハビブ・ハルーンが現在開いているトランスファー・ウインドウで退団するなど、チーム状況は今後、さらに厳しくなりそうで、それに伴いサポーターからの風当たりも強くなりそうです。

8月30日のニュース・サッカー協会会長-前ベトナム代表監督のパク氏も代表監督の候補者・いまさら何を?キム前代表監督の突然の辞任をサッカー協会会長が批判・W杯予選を「中立地」マレーシアで行うパレスチナ代表が合宿入り・マレーシア代表の医療チームに元バルサのチームドクターと理学療法士が加わる

サッカー協会会長-前ベトナム代表監督のパク氏も代表監督の候補者

マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長は、前ベトナム代表監督のパク・ハンソ氏が、現在空席となっているマレーシア代表の監督候補の1人であると述べています。

FAMの本部で行われた記者会見の席上で、1年5ヶ月の契約期間を残しながら先月7月に辞任したキム・パンゴン前代表監督の後任として、メディアなどでも報じれていたパク前ベトナム代表監督も候補者の1人であると、メディアの質問に答える形で認めています。

来月9月4日に開幕するムルデカ大会では、マレーシア代表はパウ・パルディ代表チームコーチを監督代行に大会に臨みますが、ハミディン会長は「キム前監督に勝る」後任を探すために全力を注いでいる最中だと説明し、その中で出てきたのがパク前ベトナム代表監督の名前でした。

ハミディン会長は、FAMが代表監督に求めるものとして代表選手の「質」を理解していることに加え、マレーシア代表がW杯予選やアジアカップ予選で対戦する東南アジアを含むアジア各国の対戦相手の「質」も正しく理解していることであると話しています。

その上でFAMは複数の候補者の中から、現在絞り込みを行なっている最中だと説明しています。

いまさら何を?キム前代表監督の突然の辞任をサッカー協会会長が批判

マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長は、先月、突然辞任し、その後は蔚山HDの監督に就任したキム・パンゴン前代表監督の姿勢を「プロフェッショナルでない」とFAM本部で開かれた記者会見という公の場で批判しています。

マレーシア代表サッカーチームが出場しないにもかかわらず、パリオリンピックに出場したマレーシア選手団の団長を務めていたハミディン氏は、ほぼ1ヶ月近くマレーシアを離れていました。オリンピックも終わりひと段落といったとこのなのか、いまさらになってキム前監督の話を蒸し返し、その辞任の状況を明らかにしています。

ハミディン会長は、キム前監督が辞任する数日前まで、家族の問題を理由に代表チームを離れたいと何度も主張していたとのことです。しかし、その一方でハミディン会長が知らぬ間に、キム前監督は韓国の蔚山HD FCと交渉し、監督就任に合意していたことが明らかになりました。

「私が失望したのは、キム前監督が記者会見を開き、様々な辞任理由の一つとして、代表選手の招集が自身の望むようにできなかったことを挙げたことだ。私はキム前監督がそれを辞任する好機と捉えたのではないかと考えている。結果的に蔚山HD FCと交渉していたわけで、私はこの行為にはプロ意識が欠落していると感じている。」

「FAMはキム前監督の辞任による被害者である。キム前監督は(蔚山HDから)良いオファーを受けたことにより代表監督を辞任したにもかかわらず、、事実とは異なる辞任理由を述べた。FAMはキム前監督の要望にできる限り応じていたため、そういった(辞任理由として挙げた)非難には当たらない。」と述べて、ハミディンFAM会長はキム前監督を批判をしています。

その一方でさらにコメントを求められたハミディン会長は、FAMがキム前監督に対して法的措置を取らなかったのは、在任中の代表チームへの貢献を評価してのことだと説明しました。

「我々は彼の貢献を評価しており、(残りの契約期間の)1年半分の補償を求めることができたが、それはあえて行わなかった。私が唯一失望しているのは、彼が真実を明かさなかったことだ、そこは正直に話して欲しかったと思っている。と述べた、ハミディン会長は、わずか数ヶ月前まではキム前監督が監督としての契約を2025年末まで守ると誓っていたことも明らかにしています。

先月、キム前監督は個人的な理由を挙げて、マレーシア代表監督を2年4ヶ月務めた後に辞任し、その後わずか2週間足らずで、蔚山HD FCの監督に就任しました。

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パリオリンピック選手団の団長となったことで、本当にキム前監督の動向を把握できていたのか、と正直、疑問が残ります。キム前監督への蔚山HDからの監督オファーは、前任者の洪明甫氏が韓国代表監督に就任したことで監督不在となったことによるもので、そういった事態はハミディン会長がFAMのトップとしてサッカーのことだけを考えていれば、何か手を打てたのではないかと思ってしまいます。サッカーがパリオリンピックに出場しないにもかかわらずハミディン会長に選手団団長就任を要請したマレーシアオリンピック協会もなんですが、それを受けたハミディン会長に対しても、それが自身のやるべき仕事だったのかと感じてしまいます。

W杯予選を「中立地」マレーシアで行うパレスチナ代表が合宿入り

「パレスチナ代表を受け入れてくれたマレーシアに心から感謝している。」

2026年W杯アジア3次予選に残っているパレスチナ代表は、第1節では韓国代表とアウェイで、そして続く第2節ではホームでヨルダン代表と対戦します。パレスチナとイスラエルとの紛争が続く中で、現在、パレスチナ代表は韓国戦に向けての合宿をマレーシアで行っています。第2節のヨルダン代表戦を中立地のマレーシアで行うこともあり、マレーシアが合宿地に選ばれたわけですが、冒頭の言葉は、マレーシアでの合宿に参加しているパレスチナ代表のMFモハメド・バシム・アハメド・ラシド(インドネシア1部プルセバヤ・スラバヤ)によるものです。

W杯初出場を目指すパレスチナ代表は、8月27日からKLフットボールスタジアムを使用した合宿を行っていますが、9月5日にソウルのW杯スタジアムで行われる韓国代表戦後には、マレーシアに戻って9月10日にヨルダン代表とこのKLフットボールスタジアムで対戦します。

イスラム教徒が多いマレーシアはパレスチナ支援の姿勢を表明し、アンワル・イブラヒム首相は先月末にイスラエルにより訪問先のイランのテヘランで暗殺されたイスラム組織ハマスのハニヤ最高指導者とも会談しています。また国内ではイスラエルを支援しているとされる欧米企業に対する不買運動も起こっており、その影響を受けたケンタッキーフライドチキン(KFC)は100店舗以上を一時的に閉鎖、また数日前にはスターバックスのフランチャイズを運営する企業が今年6月までの通年決済では9000万リンギ(およそ30億円)の赤字に転落したことを発表、さらにマレーシア政府は対イスラエル直接投資を全会一致で閣議決定するなど徹底しています。

そういった親パレスチナの姿勢からFAMはパレスチナ代表に合宿に必要な施設の提供を申し出ていました。

マレーシアの隣国インドネシアのリーグでプレーする代表戦46試合出場経験があるモハメド・バシム選手は、マレーシア国内でパレスチナの人々との連帯を示す姿勢をこれまで何度も見てきたと話し、マレーシアは単なる「中立地」ではなく、多くのマレーシア人がパレスチナを支援していることから、マレーシアを「ホーム」としてW杯3次予選に臨みたいと、ニューストレイツタイムズの取材に対して話しています。

さらに29歳のモハメド・バシム選手は、チームとして初となるW杯アジア最終予選出場については様々な制約がある中でも周りを驚かせるような結果を出したいとも話しています。

パレスチナは、韓国、ヨルダン、イラク、オマーン、クウェートと同じ予選B組に入っています。今回の予選ではA組からC組までの上位2チームがアメリカ、カナダ、メキシコが共同開催する2026年W杯の出場権を獲得し、各組3位と4地のチームは残る2枠をかけて4次予選で対戦します。

マレーシア代表の医療チームに元バルサのチームドクターと理学療法士が加わる

マレーシア代表の医療チームに元FCバルセロナのスタッフが加わったことをマレーシアの通信社ブルナマが報じています。

今日のニュースでも取り上げたように、先月7月にキム・パンゴン代表監督が辞任し、その後任にはパウ・マルティ コーチが監督代行に就任し、来月9月4日に開幕するムルデカ大会では指揮を取ることになっています。

そんな中、かつてはFCバルセロナのU18のコーチでもあったマルティ監督代行との縁があったのかも知れませんが、マレーシアサッカー協会(FAM)は、バルセロナのトップチームで豊富な経験を持つザビエル・バジェ医師と、エドゥ・マルティネス理学療法士が医療チームに参加することを発表しています。

2021/22シーズンから昨季2023/24シーズンまでバルセロナのトップチームの医師を務めたバジェ氏は、マレーシア代表のコンサルティングドクターとして、代表チームの医療スタッフと密接に協力し、専門知識や指導を提供するということです。。

また、バルセロナででは過去12年間にわたり理学療法士として勤務し、2022年12月から2024年6月までトップチームの理学療法士を務めたマルティネスも既にマレーシア入りしており、代表チームでの仕事に取り掛かっているということです。

8月29日のニュース・ACLとの衝突を避けるために年末のアセアン選手権の日程が変更に・代表とクラブがマッチアップ:シンガポール代表は9月のFIFAデイズでマレーシア王者ジョホールなどと対戦・FAカップ決勝でジョホールに削られ続けたアギャルカワが長期離脱へ・AFC女子チャンピオンズリーグ:サバは初戦引き分け

ACLとの衝突を避けるために年末のアセアン選手権の日程が変更に

東南アジアサッカー連盟(AFF)は、今年11月に開幕予定だった東南アジアサッカー連盟選手権「三菱電機カップ」について、その日程を一部変更することを発表しています。AFF選手権は隔年で開催される東南アジアNo. 1を決める大会で、当初は11月23日から12月21日の決勝までの日程が発表されていました。

AFFは声明の中で、「複数の加盟協会からの提案を受け、大会での各国代表チームの最適な強さとパフォーマンスを確保するため」として、大会本戦の日程が11月23日から12月21日ではなく、12月8日から1月5日に変更されることを発表ししています。

当初発表された日程がアジアサッカー連盟(AFC)主催のACLエリートとACL2のいずれも第5節と第6節と重なっていたため、ACLを優先し、この大会に東南アジア各国代表の主力選手が揃わないことが心配されていました。

11月26日から27日に第5節が、12月3日から4日に第6節が行われるACLエリートには、東南アジアからはマレーシアスーパーリーグの優勝チーム、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)と、タイリーグ1のチャンピオン、ブリーラム・ユナイテッドが出場します。

また11月26日から28日に第5節、12月3日から5日に第6節が開催されるACL2には、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールのクラブが出場します。

なお三菱電機カップに出場する各国の内、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ、東ティモールのクラブはAFCが今季新設したACL3番目のリーグであるAFCチャレンジリーグに出場しますが、その日程は三菱電機カップとは重ならないため、ブルネイと東ティモールが出場する10月5日から15日までの本戦出場をかけた予選の日程は変更されません。

その一方で、この三菱電機カップが開催される期間はFIFA国際マッチカレンダー外となっていることから、各国のクラブは選手をこの大会に出場する代表の招集に応じる義務はなく、今回の日程調整を行ってもなお、各国代表チームの主力選手が出場しない可能性も残ります。実際に前回2022年の大会では、マレーシアでは、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が主力選手の代表招集を拒否しています。

また、12月8日の開幕戦直前に代表チームが合宿を行う場合も、ACLエリートやACL2の第6節と重なるため、ここでも代表選手の招集に問題が生じる可能性があります。さらにAFFが今季から新設したのASEANクラブ選手権「ショッピーカップ」のグループステージの第3節は、三菱電機カップ決勝の3日後である1月8日に予定されており、AFF自身が生み出した過密日程による影響が現れる可能性もあります。

代表とクラブがマッチアップ:シンガポール代表は9月のFIFAデイズでマレーシア王者ジョホールなどと対戦

シンガポールの英字紙ストレイツタイムズによると、9月2日から10日にかけてのFIFA国際マッチカレンダー(FIFAデイズ)で、シンガポール代表はマレーシアリーグの昨季王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)と自然試合を行うということです。

日本代表のコーチやJリーグ大宮や千葉、川崎などのコーチなども務めた小倉勉氏が今年2月1日に監督に就任したシンガポール代表は、適切な対戦相手が見つからなかったことなどを理由に、9月のFIFAデイズでは国際試合を行わないことになりました。

その代わりに、9月6日と7日にマレーシアスーパーリーグ(MSL)で昨季まで10連覇中のJDT、そしてシンガポール1部のプレミアリーグのBGタンピネス・ローバーズと対戦し、さらに10月のFIFAデイズ(10月7日から15日まで)では日本に遠征し、J1リーグのチームと3試合の親善試合を行うということです。なお、9月の親善試合はいずれも非公開で行われるということです。

また今年年末に開催される東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電機カップ」に向けては、11月のFIFAデイズでは11月15日にミャンマーと、11月19日には台湾といずれもシンガポール代表のホーム、シンガポール国立競技場で対戦することも発表されています。

9月と10月のFIFAデイズでは国際親善試合を行わないことが発表された席上にいた小倉シンガポール代表監督は、9月には新しい選手を招集して試し、10月には日本での試合間の移動の厳しさに慣れさせ、11月には国際親善試合を行って、これら3回のFIFAデイズを使ってチームのプレー強度を徐々に高めていくと述べています。なお、2月に就任した小倉監督はW杯予選では0勝3敗1引分という記録を残しています。

なおシンガポールが国際親善試合を行わない9月のFIFAデイズで、マレーシアは、フィリピン、タジキスタン、レバノンを招いてムルデカ大会を、またベトナムはタイとロシアを招いて3カ国対抗戦を行います。

FAカップ決勝でジョホールに削られ続けたアギャルカワが長期離脱へ

8月24日に行われたマレーシアFAカップ決勝では、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)に何度も削られて倒れる場面があったスランゴールFCのMFアレクサンダー・アギャルカワは、前半終了間際の44分という異例の時間帯に交代していましたが、精密検査の結果、ケガの状況は深刻さから数ヶ月間はチームを離脱することが明らかになっています。

スランゴールFCのジョハン・カマル・ハミドンCEOが明らかにしたところによると、ガーナ出身のアギャルカワ選手は、ケガの完治のために安静1ヶ月、さらリハビリと試合出場のためのフィットネスレベルに戻すため少なくとも2ヶ月は必要になるだろうということです。

アギャルカワ選手は試合後に診察を受け、その際のレントゲン写真を自身のSNSに写真のみを投稿しましたが、そこには骨の一部に明らかな亀裂が写っていたことから亀裂骨折、あるいは骨折の疑いが浮上し、サポーターからは心配する声が上がっていました。

FAカップ決勝ではボランチとして出場したアギャルカワ選手が0-2のビハインドとなった前半で退くと、アギャルカワ選手に代えてFWのレジク・バニハニを起用したニザム・ジャミル監督の采配も疑問ではありましたが、後半はスランゴールの連携は明らかに悪くなり、結果的に後半だけでJDTに4失点し、最終的には1−6で敗れています。

来月には8年ぶりのアジアの舞台となるACL2でムアントン・ユナイテッド(タイ)との対戦も控えるスランゴールにとって、今季開幕前の酸攻撃で欠場していたファイサル・ハリムが復帰しチームに勢いがついていた中で、アギャルカワ選手の長期離脱は大きな痛手になりそうです。

AFC女子チャンピオンズリーグ予選:サバは初戦引き分け

第1回となるAFC女子チャンピオンズリーグ(AWCL)の予選ステージのC組がマレーシアのサバ州で開幕し、マレーシアから出場するサバFAは初戦でネパールのAPF FCと0-0の引き分けに終わっています。

2019年にAFC女子クラブ選手権として始まったこの大会は、今季2024/25シーズンからAFC女子チャンピオンズリーグと改編されています。今季から秋春制となったこの大会は、今季から2027/28シーズンまでの4季は、AFCに22加盟協会(FA)にそれぞれ1つの出場枠が与えられることになっています。また2028/29シーズンからは、大会出場国の決定はAFC女子クラブ競技ランキングに基づいて行われます。

今大会は今年3月のFIFA女子ランキングに基づいて上位8位までのFA(*実際にはランキング2位の北朝鮮が出場辞退したため、1位の日本以下、オーストラリア、中国、韓国、ベトナム、フィリピン、台湾、タイ)のクラブがグループステージに出場し、残る13FAのクラブはまず予選に出場し、そこからグループステージの残り4枠が決定されます。

予選ステージC組の集中開催地となったマレーシアからは2023年国内リーグで優勝したサバFAが出場し、PFCナサフ(ウズベキスタン)、APF FCとともにグループ1位に与えられる本戦出場枠を争います。

APF FCは、8月25日に行われたPFCナサフとの対戦で0−1と敗れており、敗退が決定しています。8月31日の最終戦で対戦するPFCナサフとサバFAは、その結果が引き分け以上であればPFCナサフがグループ1位となり、サバFAが予選を突破するためには勝利が必要となります。

2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第9節の結果とハイライト映像(2)・最下位のクランタンを破ったクチンシティが今季初の4位浮上

8月17日にクランタン・ダルル・ナイムFCのホーム、クランタン州コタ・バルのスルタン・ムハマド4世スタジアムで開催予定だったマレーシアスーパーリーグ第9節のクランタン・ダルル・ナイムFC対クチンシティFCの試合は、現在このスタジアムで排水設備の改修工事が行われていることから延期となり、この日クチンシティFCのホーム、サラワク州立スタジアムでの開催となりました。なおマレーシアスーパーリーグ(MSL)は今季から2シーズンかけて秋春制へ以降しますが、従来の春秋制ではシーズンオフとなっていた11月から2月にかけては、クランタン州を含むマレー半島東海岸がモンスーンの季節です。この時期のマレー半島東海岸は平均降水量が400mmから440mmとなり、豪雨や洪水のリスクが高まります。またレダン島やティオマン島と言った東海岸にある有名なリゾートの島へフェリーが運休、ホテルが閉鎖されることもあります。10月終了予定となっているクランタン・ダルル・ナイムFCのホームでの大規模な改修工事はこの時期の豪雨に備えてものとなっています。

最下位のクランタンを破ったクチンシティが今季初の4位浮上

MSL2024/25 第9節
2024年8月26日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチンシティFC 1-0 クランタン・ダルル・ナイムFC
⚽️クチンシティ:ジョーダン・ミンター(37分)
🟨サバ(0)、🟨スランゴール(2)
MOM:カトゥル・アヌアル(クランタン・ダルル・ナイムFC)

この日の試合は5位クチンシティと最下位13位のクランタンの対戦でした。雨でピッチの状態が悪い中、試合開始から主導権を握りながらも得点がなかったクチンシティですが、37分に左サイドを上がったアミル・アムリ・サレーが相手DFをかわしてクロスを上げると、これをエースのジョーダン・ミンターがゴール正面で頭で合わせてゴール!ついにクチンシティが先制します。その後もクチンシティは好機を作るものの、クランタンのGKカトゥル・アヌアルが好セーブを連発して、前半は1−0で終了します。

後半はクランタンもペースを上げ、両チームが激しくせめぎあいますが、両チームのGKの奮闘もあり、いずれも得点を挙げることができず、試合はこのまま終了しています。敗れたクランタンのGKカトゥル・アヌアルがこの試合のMOMに選ばれていますが、彼の好セーブがなければ、クランタンの失点は1点では済まなかったでしょう。

今季2度目のトランスファーウィンドウが開いたこの日、クランタンはこの試合でもキャプテンを務めたパレスチナ代表MFオディ・ハロウブの兄でやはり代表でのプレー経験がある33歳のFWレイス・カロウブをシャバブ・アル=ダヒリヤ SC(パレスチナ)が加入し、早速、この試合でも先発しましたが、MSLのデビュー戦を飾ることはできませんでした。

この日の勝利で、クチンシティは今季3勝目を挙げるとともに、第9節を終えて無敗記録を6にまで伸ばしています。一方のクランタンはこの日の敗戦で5連敗となり、今季通算で8敗目となりました。

クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。


2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第9節途中)
順位チーム勝点
1JDT82271028424
2SEL9196121688
3TRE8154311394
4KCH91435113103
5SAB8134131213-1
6PDRM811323910-1
7PEN810242981
8*KDA88323812-4
9SRP87143712-5
10PRK762051013-3
11#KLC8532310100
12NSE84116819-11
13KDN93108419-15
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第9節途中)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT9
2ロニー・フェルナンデスSEL6
3ジョーダン・ミンターKCH5
4ヘベルチ・フェルナンデスJDT4
パウロ・ジョズエKLC4
イフェダヨ・オルセグンPDRM4
6チェチェ・キプレ他4名KCH3
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC

マレーシアFAカップ2024/25決勝-王者ジョホールがスランゴールを粉砕して大会3連覇達成-国内三冠へ向けてまず一冠

5月10日の今季開幕戦で対戦する予定だったジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)とスランゴールFCは、5月5日に代表でもプレーするスランゴールFWファイサル・サリムが酸をかけられる事件が発生し、スランゴールが試合延期を求めるもリーグを主催するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)これを認めず、JDTの不戦勝となりました。このため、このFAカップ決勝が両チームの今季初対戦となりました。今季2024/25シーズンの第9節を終えて首位を独走するJDTと2位のスランゴールの対決は、JDT有利の下馬評でしたが、蓋を開けてみれば予想を遥かに超える強さを見せたJDTがスランゴールを完膚なきまでに叩き、全身のジョホールFA時代を含め、3季連続、通算5度目の優勝を果たしています。

2024年8月24日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
ジョホール・ダルル・タジムFC 6-1 セランゴールFC
⚽️ジョホール:フアン・ムニス3(26分、67分、90分)、アリフ・アイマン(42分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(62分)、ヘベルチ・フェルナンデス(76分)
⚽️スランゴール:アルヴィン・フォルテス(59分)
🟨ジョホール(2)、🟨スランゴール(4)
MOM:フアン・ムニス(ジョホール・ダルル・タジムFC)

大会3連覇を狙うジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)とスランゴールFCの顔合わせとなったFAカップ決勝は、試合前日の記者会見から国内サッカーファンをざわつかせました。ニザム・ジャミル監督とキャプテンのサフワン・バハルディンが出席したスランゴールに対して、JDTからはエクトル・ビドリオ監督の代理としてホセ・ロペス コーチ、そしてキャプテンのジョルディ・アマトの代理として控え選手のジュニオール・エルドストールが出席しました。(実際の試合ではロペス コーチ、エルドストール選手ともベンチ入りはしませんでした。)

その記者会見でJDTのロペス コーチはメディアの質問に対して”I don’t know.”「私にはわからない」、”No comment”「何も話すことはない」を繰り返し、一方のエルドストール選手は試合に向けたチームの準備の状況を聞かれると、一言”Good”と答えた以外は、やはり”No comment”を繰り返すなどの「塩対応」を続けた結果、JDTの記者会見はわずか2分で終了し、終始和やかなムードで行われたスランゴールの記者会見とは対照的でした。JDTの記者会見については、「あまりにも礼を欠いている」、「もう二度と記者会見に来るな」と言った批判もSNS上に多く上がりました。

この試合の両チームの先発XIは以下の通り。JDTではキャプテンのインドネシア代表のキャプテン、ジョルディ・アマトやマレーシア代表DFラヴェル・コービン=オングがベンチ外、スランゴールは控えGKカイルルアズハン・カリドに代わり、今季ここまで公式戦出場がないGKアジム・アル=アミンをベンチ入りさせています。

しかし、ピッチ外で何を言われようと、ピッチ上での決着が全て、とばかりにJDTは試合開始からスランゴールに襲いかかります。そして試合が動いたのは26分でした。ジョホールがペナルティエリアの外、正面やや右でPKを得ると、フアン・ムニスの蹴ったボールはゴール右のポストとスランゴールGKサミュエル・サマーヴィルの間の狭いスペースを通ってゴールインし、JDTが1点をリードします。その後はアリフ・アイマンのヘディングシュートが決まり、2-0としてJDTは前半をリードして折り返します。

後半に入ると59分にアルヴィン・フォルテスがゴールを決めたスランゴールが1点差に迫り、試合が一気に白熱するかと思われた試合ですが、ここからJDTが一気にギアを上げてわずか3分後にベルグソン・ダ・シルヴァがゴールを決めると、試合は一気に一方的なものになってしまいます。67分にはこの試合2ゴール目をフアン・ムニスが決めると、76分にはヘベルチ・フェルナンデス、そしてとどめは90分にフアン・ムニスがハットトリック達成となるゴールを決めたJDTが大会最多ゴール新記録となる6ゴールを挙げてスランゴールに圧勝し、国内初となる3季連続の三冠達成に向けてまず一つ目のタイトルを獲得しています。

試合後の会見に応じたJDTのエクトル・ビドリオ監督は、一人一人の選手の技量の高さと、ディフェンスではリスクを冒しても積極的にボールを奪いにいく戦術が功を奏したと述べています。

「チームの哲学でもある攻撃的な姿勢を維持するためにはリスクを冒す必要があった。チームがボールを保持するため、守備では選手が1対1となる場面が多くなったが、日々の練習にしっかり取り組んでくれたおかげで個々の選手の技術が高まり、守備については「個」ではなくチームとして機能することができた。」と選手を称賛しています。

一方、大差で敗れた事に失望していると話したスランゴールのニザム・ジャミル監督は、この惨敗が多くのサポーターも失望させたことは理解していると話した上で、この試合で露呈した弱点を改善するためにさらに必要な努力をし、次の試合に繋げたいと話しています。

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

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この試合はストリーミングで観戦しました。前半ではJDTの執拗なまでのセランゴールDMFアレクサンダー・アギャルカワ潰しが非常に効果的でした。豊富な運動量であちこちに姿を表し、中盤では相手の攻撃のリズムを遮り、またボールを持つとプレーを落ち着け、さらに攻撃の起点にもなれる役割が持ち味のアギャルカワ選手に対し、JDTは露骨なまでのファウルやファウルスレスレのプレーを仕掛け、アギャルカワ選手は何度も倒される場面がありましたが、結局、前半で交代しています。スランゴールのニザム・ジャミル監督もアギャルカワ選手の交代によって、チームの攻撃のリズムが崩れたことを認めています。

試合開始から高い位置でプレスをかけるJDTにとって、アギャルカワ選手は嫌な選手でしたが、そのアギャルカワ選手を徹底的に削ることで、前半の終盤からはJDTの攻撃の自由度が遥かに良くなりました。しかも後半に交代で入ったレジク・バニハニはFWでもあり、前線ではゴールに絡むプレーは見せたものの、スランゴールは自陣に押し込まれる場面が明らかに増えました。

またもう一つ気になったのは68分のGKサミュエル・サマーヴィルの交代でした。1-4と劣勢の中、ケガをしたわけでもないGKを貴重な交代カードを1枚切ってまで交代させたニザム監督の判断は、画面を見ながら「なぜ?」と思いました。そして、これについても当然、試合後の記者会見で質問が挙がりました。これについてジャミル監督はGKコーチとも相談した結果、サマヴィル選手に何かが起こり、その結果、集中力を失っていると判断し、サマヴィル選手を「守る」ために交代させたと説明しています。

JDTが3点目を入れた時点で交代を考えたと話したジャミル監督でしたが、リーグ戦での控えGKであるカイルルアズハン・カリドはベンチ外で、残っていたのはU23代表ながら、今季リーグ戦では出場が一度もない22歳のアジム・アル=アミンでした。アジム選手は20分の出場でさらに2失点を喫しました。

今シーズンをかけて、スランゴールがニザム監督を「育てる」覚悟ならそれも良いですが、今後のリーグ戦や来月開幕するACL2で結果を残すことを考えるのであれば、マレーシアリーグで経験のある監督を新たに採用するという選択肢もアリという気がした試合観戦でした。