2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第10節の結果とハイライト映像・リーグ首位のジョホールが開幕から10連勝・KLシティは給料未払いによる主力選手出場ボイコットのクダに圧勝

マレーシアFAカップ決勝やFIFA国際マッチカレンダーなどで、およそ1ヶ月中断していたマレーシアスーパーリーグが再開されています。先月8月26日から開いている今季2度目のトランスファーウィンドウで加入した選手が早速、出場しているチームもあり、後半戦に向けてチーム強化や立て直しが行われています。なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成となっており、今節はクランタン・ダルル・ナイムFCの試合がありません。

リーグ首位のジョホールが開幕から10連勝

MSL2024/25 第10節
2024年9月12日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 5-0 ペナンFC
⚽️ジョホール:オスカル・アリバス(3分)、ホルヘ・オブレゴン2(41分、49分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(66分PK)、アリフ・アイマン(90+4分)
🟨ジョホール(0)、🟨ペナン(3)
MOM:ホルヘ・オブレゴン(ジョホール・ダルル・タジムFC)

9月18日にACLエリート2024/25の初戦となるアウェイの上海海港戦が控えるジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、現在開いているマレーシアリーグ今季2度目のトラランスファーウィンドウで加入したMFエンツォ・ロンバルド、MFイケル・ウンダバレナ、MFエディ・イスラフィロフ、FWホルヘ・オブレゴンと4名の新戦力を早速、先発で起用しています。

マレーシアリーグの登録はフィリピン国籍に基づく東南アジア枠にもかかわらず、先日のムルデカ大会に出場したフィリピン代表ではなぜかプレーしなかったオスカル・アリバスが開始3分でゴールを決めると、新戦力のホルヘ・オブレゴンが41分に加入後初ゴールを決めて、JDTが2点のリードで前半を終えます。

後半開始早々の49分にもオブレゴン選手がこの試合2点目のゴールを決めると、現在のリーグ得点王ながらベンチスタートとなったベルグソン・ダ・シルヴァが今季10得点目となるPKを決めると、ロスタイムにはアリフ・アイマンがダメ押しとなる5点目をやはりPKで決めています。

昨季は同じカードで0−8と大敗しているペナンは、前半は2点で凌いだものの、後半の二つのPKはなんとも微妙な判定に泣かされた結果でした。トランスファーウィンドウで加入したオーストラリア出身のFWディラン・ウェンゼル・ホールズが今後期待できそうなプレーを見せたのはせめてもの救いでしょうか。

2位スランゴールも新戦力の活躍でホーム6連勝

MSL2024/25 第10節
2024年9月13日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 4-0 クチンシティFC
⚽️スランゴール:ロニー・フェルナンデス(11分)、アリ・オルワン(67分)、ウマルベク・エシュムロドフ(75分)、アルヴィン・フォルテス(80分)
🟨スランゴール(1)、🟨クチンシティ(1)
MOM:ノー・アル=ラワブデ(スランゴールFC)

先日クアラ・ルンプールで開催されたW杯アジア3次予選のパレスチナ対ヨルダン戦で、ヨルダン代表のメンバーとしてマレーシアデビューを果たしていたスランゴールFCのアリ・オルワンがチームの先制ゴールをアシストしています。ロニー・フェルナンデスの先制ゴールは映像ではゴール前にフェルナンデス選手の手にも当たっているように見えますが、VARが入った結果、ゴールが認められています。

後半に入ると、1点目をアシストしたアリ選手が67分に自身でもゴールを決めています。サラに74分にウズベキスタン代表ウマルベク・エシュムロドフがスランゴールFC加入後初ゴールを決め、80分にはアルヴィン・フォルテスが4点目を決めるなど開所したスランゴールはこれでホーム6連勝となりました。

6試合負けなしだったクチンシティでしたが、スランゴールの前にリーグ戦では5月26日以来の負けを喫しています。

クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。

ヌグリスンビランは今季ホーム初勝利ならず

MSL2024/25 第10節
2024年9月14日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリスンビラン州パロイ)
ヌグリスンビランFC 0-1 ペラFC
⚽️ペラ:クレイトン(48分)
🟨ヌグリスンビラン(1)、🟨ペラ(2)
MOM:アキル・ラザク(ヌグリスンビランFC)

今季ここまで1勝のヌグリスンビランが、今季2勝のペラを迎えた試合は、ペラが開始から試合を優勢に進め、そのまま勝利しています。敗れたヌグリスンビランは、佐々木匠選手があわやゴールというフリーキックを止められ、また、この試合のMOMとなったGKアキル・ラザクが65分にPKを止めるなど好セーブを連発して奮闘しましたが、今季ホームでの初勝利はお預けとなりました。

開幕直前に就任したアズミ・アジズ監督が1勝1分6敗という成績を残すと、FIFA国際マッチデーによるリーグ中断を待たず、8月15日にアズミ氏をテクニカル・ディレクターに「昇格」させ、N・ナンタクマル コーチを監督に据えたヌグリスンビランでしたが、1ヶ月の中断期間では大きな変化をもたらすことはできなかったようです。あまりに成績が悪いことから、給料未払いも疑われた(汗)ヌグリスンビランですが、現在はそういった問題が起こっていないと答えたN・ナンタクマル監督ですが、には現在開いているトランスファーウィンドウで2名の新外国籍選手加入の噂もあり、それがカンフル剤になることを期待したいところです。

ヌグリスンビランの佐々木匠選手は先発してフル出場しています。

KLシティは給料未払いによる主力選手出場ボイコットのクダに圧勝

MSL2024/25 第10節
2024年9月14日@KLフットボール・スタジアム(クアラ・ルンプール)
KLシティFC 5-0 クダ・ダルル・アマンFC
⚽️KLシティ:ヨヴァン・モティカ(14分)、ハズリ・バルキエフ(23分OG)、ザフリ・ヤーヤ(26分)、パウロ・ジョズエ2(49分、58分)
🟨KLシティ(2)、🟨クダ(1)
MOM:パウロ・ジョズエ(KLシティFC)

パウロ・ジョズエがクラブ最多ゴール記録となるパウロ・ジョズエのゴールなどで5点を挙げたKLシティが、ほぼ全員がリザーブチームのメンバーで構成されたクダ・ダルル・アマンを破り、連敗を2で止めています。

給料未払い問題に加え、クラブによる所得税未払いなども発覚したことから勝点3を剥奪されたKLシティに対し、同様の給料未払い問題を数ヶ月にわたり抱えているクダは、主力選手が練習を1週間以上ボイコットしており、ナフジ・ザイン監督は窮余の一策として、リザーブチームのU23とU20の選手をかき集めてこの試合のメンバーを編成しています。しかし、トップリーグ初出場の選手が大半のチームはKLシティに翻弄され、しかも試合のペースにもついていけませんでした。

この試合ではあわやハットトリック達成かという活躍をしたパウロ・ジョズエはクラブ最多ゴールとなる68ゴール目と、自身の記録を更新する69ゴール目を記録し、それまで記録を持っていた現スリ・パハンFC監督でシンガポールのレジェンド、ファンディ・アフマドの記録を抜いています。

*****

一方、KLシティに完敗したクダは、マレーシア代表でもプレーするGKカラムラー・アル=ハフィズと双方合意による契約解除を発表しています。2022年シーズン終了後に当時のPJシティFC(現在は解散)から移籍したカラムラー選手は、クダの正GKとしてリーグ戦とカップ戦合わせて36試合に出場し、46失点とクリーンシート14試合を記録しています。このカラムラー選手の退団を皮切りに、クダは今後も主力選手の退団が予想されます。

3位トレンガヌと5位サバの対戦は引き分けに

MSL2024/25 第10節
2024年9月15日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバFC 1-1 トレンガヌFC
⚽️サバ:ジョアン・ペドロ(11分)
⚽️トレンガヌ:イスマイル・アキナデ(45+1分)
🟨サバ(1)、🟨トレンガヌ(1)
MOM:スハイミ・フシン(トレンガヌFC)

現在開いているトランスファーウィンドウで、リーグ5位サバはベトナム1部のベトテルFCで12試合出場2ゴールという成績を残した24歳のジョアン・ペドロを、また同3位のトレンガヌはタイ1部スコータイFCからエルサルバドル代表キャプテンで32歳のネルソン・ボニーヤと、いずれもFWを補強しています。

いずれもこの試合がマレーシアリーグデビューとなった両選手ですが、最初にゴールを挙げたのはトレンガヌのジョアン・ペドロでした。試合開始から11分、サバGKダミアン・リムからのロングフィードがトレンガヌDFの裏へ出るとこれを受けたキャプテンのパク・テスが低いクロスをゴール前へ。これにジョアン・ペドロが足で合わせ、ホームのサバがあっさりと先制します。しかしトレンガヌも、前半ロスタイムにゴール前の混戦から出たボールをイスマイル・アキナデが押し込んで、トレンガヌが同点に追いつきます。 

後半に入ると、両チームともに好機は作るものの、互いにゴールを破流ことができず、結局、1-1で引き分けています。

スリ・パハンが今季最多の5得点でPDRMに圧勝

MSL2024/25 第10節
2024年9月15日@MPTスタジアム(パハン州テメルロー)
スリ・パハンFC 5-1 PDRM FC
⚽️スリ・クパー・シャーマン2(17分、47分)、ステファノ・ブルンド2(25分、34分)、マヌエル・イダルゴ(27分)
⚽️PDRM:鈴木ブルーノ(73分)
🟨スリ・パハン(2)、🟨PDRM(2)
MOM:クパー・シャーマン(スリ・パハンFC)

この試合前までは8試合で7得点と得点力不足に悩んでいたスリ・パハンが前半だけで4ゴールを挙げる圧勝で、開幕戦以来となる2勝目を挙げています。昨季は12ゴールを挙げエースのクパー・シャーマンと同じく10ゴールを挙げていたチームゴール数1位と2位の2人が今季はここまでいずれも2ゴールと苦しんでいましたが、この両選手がこの試合ではそれぞれ2ゴールを挙げて、チームを勝利に導いています。

一方のPDRMは鈴木ブルーノ、イフェダヨ・オルセグン、シャーレル・フィクリのFW3名が揃って先発するも、0-5となった後に鈴木ブルーノが今季3点目となるゴールを決めたのみに終わり、連勝も2でストップしています。

PDRMの鈴木ブルーノ選手は先発してフル出場しています。

2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第10節終了)
順位チーム勝点
1JDT92581033429
2SEL102271220812
3TRE91644114104
4SAB9144231314-1
5KCH10143521314-1
6PDRM9113241015-5
7SRP9102431213-1
8PEN910243913-4
9PRK893051113-2
10#KLC9842315105
11*KDA98324817-9
12NSE94117820-12
13KDN93108419-15
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは勝点3剥奪処分を受けています
#KLシティFCは勝点6剥奪処分を受けています。
2024/25マレーシアスーパーリーグ得点ランキング(第10節終了)
氏名所属ゴール
1ベルグソン・ダ・シルヴァJDT10
2ロニー・フェルナンデスSEL7
3パウロ・ジョズエKLC6
4ジョーダン・ミンターKCH5
5ヘベルチ・フェルナンデスJDT4
イフェダヨ・オルセグンPDRM4
クパー・シャーマンSRP4
ステファノ・SRP4
6チェチェ・キプレ他10名KCH3
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
KLC-KLシティFC、KCH-クチンシティFC、SRP-スリ・パハン

9月13日のニュース・クダ州サッカー協会会長-給料未払い問題が起こるのはリーグの仕組みに問題がある・移籍情報:前岡山のハディ・ファイヤッドがPDRMにローン移籍・インドネシアとマレーシアの間で帰化選手候補の争奪戦勃発!?

クダ州サッカー協会会長-給料未払い問題が起こるのはリーグの仕組みに問題がある

給料未払い問題が続いていることで、ついに主力選手が練習をボイコットしているクダ・ダルル・アマンFCの本拠地があるクダ州のサッカー協会会長が、問題の根源はリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が導入している仕組みにあり、特定のクラブにのみ有利な仕組みになっていると批判しています。

クダ州サッカー協会会長で、クダ州首相でもあるムハマド・サヌシ氏は、トップリーグに参加しているクラブがリザーブチームや年代別の州代表チームを全て運営するという仕組みは既に破綻しているとし、給料未払い問題の原因とも言えるこの仕組みの運用を直ちに止め、新たな仕組みを考える必要があると述べています。

「トップリーグでプレーする各州のプロクラブが全ての年代別州代表チームまでを運営するという現行の仕組みは破綻しており、一部は州サッカー協会が運営できるような仕組みにするべきだ。現行の仕組みが明らかに機能していないのに、なぜMFLに参加する全てのクラブが同じ仕組みで運営されるべきだと考えているのか。もし多くのクラブが経営難に陥り、一握りのクラブだけが生き残ったら、その数クラブだけでリーグを行うことが果たして可能なのだろうか。」と述べたサヌシ州サッカー協会会長は、直ちに現行の仕組みをやめるべきだと主張しています。

また州首相としては、給料未払い問題を抱えるクダ・ダルル・アマンFCについては既に民営化されたクラブであり、州の公金で支援する義務はないと述べています。

「クダ・ダルル・タジムFCは民営化されているが、それでもクダ州政府は、ラブライセンス取得への支援として、今年だけで既に200万リンギ(およそ6500万円)を運営資金として提供している。」と述べたサヌシ州首相は、過度に高給となっている選手の給料の見直しを中心にクラブの経営方針を見直す必要があるとも話しています。

「(民営化前にクラブに対して)クダ州政府系企業のクダ州開発公社が6000リンギや7000リンギといった給料しか払っていなかったにもかかわらず、マレーシアカップで優勝を果たしている。現在は何万リンギも給料をもらっている選手がいるクラブがこれほど低迷しているのはなぜか。それは現行のクラブ運営の仕組みに欠陥があるからで、各クラブがそれぞれの資金にあった運営方法で運営されるべきだ。」と述べ、クダだけでなく他の州のクラブも財政問題に直面している事態を理解するべきだとも話しています。

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各州代表チーム対抗のカップ戦「マラヤカップ」(現在のマレーシアカップ)から始まったマレーシアのサッカーは、長らく各州のサッカー協会がプロクラブを運営していたという歴史があります。2019年以前の記録では、例えばクダならばクダFAがクラブ名になっていますが、これはクダ州サッカー協会(クダFA)が運営するクラブだったからです。この2019年以前は、大半のクラブが州政府による州サッカー協会への支援や、州政府系期間がスポンサーになるという形で公金、つまり税金がクラブ運営に使われ、選手の給料なども州政府からの資金で支払われていました。

しかし2020年からFIFAの指導を受けたMFLはクラブの「民営化」、つまり各州サッカー協会はプロクラブを手放し、クラブは新たにオーナーを探すことが義務付けられるようになりました。この結果、州政府からの直接支援を失った各プロクラブの中には、新たなオーナーやスポンサーを見つけられないにもかかわらず、それまでと同じような経営を続け、さらに2020年は新型コロナ禍で無観客試合でリーグが行われた結果、入場料収入も無くなり、財政が悪化したクラブがいくつもありました。

さらにMFLは各クラブに対してU23選手主体のリザーブチームやU21、U19など年代チームの保持を義務付けましたが、これが前述のサヌシ氏が指摘していたことでした。従来は各州のサッカー協会が運営していた年代別チームをプロクラブの管理下に置いたことで、その運営費用は一気に増出する一方で、前述の通り運営資金獲得が難しくなったクラブの中には、この年代別代表チームの選手への給料支払いが滞る事態も起こっています。

移籍情報:前岡山のハディ・ファイヤドがPDRMにローン移籍

マレーシア王立警察が運営するPDRM FCは現在、マレーシアスーパーリーグで現在6位ですが、現在開いているトランスファーウィンドウで、かつてファジアーノ岡山やアスルクラロ沼津に在籍していたFWハディ・ファイヤッドを同じスーパーリーグのペラFCから期限付きで移籍で獲得したことを発表しています。ローン期間は今季2024/25シーズンいっぱいということです。

日本出身の鈴木ブルーノ選手も在籍するPDRM FCにローン移籍したハディ選手は、昨季も同じPDRM FCにやはりローン移籍しており、このときはリーグ戦とマレーシアカップを合わせて11試合に出場し、マレーシアカップのスランゴール戦で挙げたゴールが唯一のゴールでした。

24歳のハディ選手はジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のセカンドチームJDT IIに在籍していた2018年に17歳ながらマレーシアU23代表入りし、同年1月の韓国U23代表戦で代表デビューを果たすと、さらにアジア競技大会、AFC U23アジアカップ予選でもプレーしました。2019年にはマレーシア人選手として初めてJ2のクラブに移籍しましたが、移籍した岡山では出場機会を得ることができず、2021年には出場機会を求めてJ3のアスルクラロ沼津に期限付き移籍しました。しかし沼津へ移籍からわずか1ヶ月で右膝前十字靭帯(ACL)断裂の重傷を負い、このシーズンを棒に振ったものの、ケガから復帰した2022年シーズンは4月21日のヴァンラーレ八戸戦に84分から出場し、待望のJリーグデビューを果たしたものの、出場時間は合計43分、また出場した試合も含めベンチ入りは5試合の記録を残し、昨季は出身地でもあるペラ州のペラFCへ移籍し、マレーシアリーグに復帰すると、昨季途中にPDRM FCにローン移籍しました。

昨季末にローン期間を終えてペラFCに復帰したハディ選手ですが、今季はトップチームでは出場機会がなく、2シーズン連続でのPDRM FCへのローン移籍となりました。なお今季のPDRM FCには、今季の4ゴールも含めてリーグ通算74ゴールを挙げているイフェダヨ・オルセグンの他、2017年シーズンにはマレーシア人選手得点王に輝いたシャーレル・フィクリと鈴木ブルーノ選手もそれぞれ既に今季2ゴールを挙げており、昨季よりもFW陣の層が厚くなっており、そこへ割って入ることができるかどうかが注目されています。

インドネシアとマレーシアの間で帰化選手候補の争奪戦勃発!?

かつてはセリエAのインテルのオーナーでもあったリック・トーヒル氏が2023年にインドネシアサッカー協会(PSSI)会長に就任以降、インドネシアの血を引く選手を次々と帰化させる積極的な補強策によって強化されたインドネシア代表は、現在、東南アジア勢として唯一、2026W杯アジア3次予選に進出しています。

7月に発表された直近のFIFAランキングではマレーシアより一つ上の133位ながら、アジア3次予選では同56位のサウジアラビアとはアウェイで、さらに同24位のオーストラリアとはホームでそれぞれ引き分けるなど、強豪国に引けを取ることなく存在感を示しています。

このインドネシア代表は、先日のサウジアラビア戦を例にとれば先発XIの内、インドネシア生まれの選手は2名で、残りはオランダ生まれ8名、ベルギー生まれ1名と、かつての宗主国オランダ出身の選手たちを中心に帰化選手を揃えた強化策が功を奏していることから、東南アジア各国は同様の強化方針を進めており、マレーシアも例外ではありません。

マレーシアも先日終了したムルデカ大会に出場したメンバーを見ると、7名がマレーシア国外で生まれた選手ですが、そのうち2名はマレーシア人の血を引かない、国内リーグで5年間プレーしたことでマレーシア代表の資格を得た選手です。しかも、インドネシアの帰化選手と大きく異なるのは、外国生まれの選手7名のうち、マレーシア国外でプレーしているのはタイ1部のブリーラム・ユナイテッドでプレーするディオン・コールズと、ベトナム1部のホーチミンシティFCにローン移籍中のエンドリック・ドス・サントスだけで、残りはマレーシア国内リーグでプレーする選手です。オランダやベルギーの1部リーグでプレーするインドネシアの帰化選手たちに比べると、その辺りも物足りないところです。

マレーシアサッカー協会(FAM)は、近年、マレーシアの血を引く選手の発掘にも積極的で、このブログでも取り上げた通り、オランダ1部ゴーアヘッドイーグルズでキャプテンを務める27歳のDFマッツ・デアイルに接触していることが明らかになっています。

そんな中でインドネシアのメディアが、やはりマレーシアの帰化選手候補となっているオランダ出身のFWフェルディ・ドゥルイフがインドネシア代表でプレーに興味を持っていると伝えています。

これを伝えているのはインドネシア最大のメディアグループ傘下のトリビューン・ニュースで、同メディアはオーストリア1部SKラピード・ウイーン所属のドゥルイフ選手がが、インドネシア国籍を取得して代表入りする予定のAMFエリアノ・レインダースのSNSにコメントを残したことが、ドゥルイフ選手がインドネシア代表でプレーすることへの関心の現れだとかなり恣意的に報じています。なおドゥルイフ、レインダースの両選手は昨季はオランダ1部PECズヴォレでチームメートでした。

ドゥルイフ選手は自身がマレーシアと関係があるという噂がSNSを通じて広まった後、「マレーシアのためにプレーしたいという気持ちはずっとあった。現在は、祖母が実際にマレーシア生まれであることを証明する書類を準備中だ」と述べています。

身長190cmで26歳のドゥルイフ選手は、AZアルクマールのアカデミー出身で、オランダU17、U18、U20など年代別代表でもプレーし、SKラピード・ウイーンに移籍する前にはNECナイメーヘンやKVメヘレンなどオランダとベルギーの複数のクラブでプレーしており、トランスファーマルクトの統計によると、キャリア通算では266試合に出場し112ゴールを記録しています。

またこのドゥルイフ選手の他、英国2部バーンリーFCのキャプテンである28歳のMFジョシュ・ブラウンヒルが、将来的のマレーシア代表入りに向けてマレーシア国籍を取得する用意に向けて、現在、マレーシアサッカー協会(FAM)と連絡を取り合っていることも明らかになっています。さらにPSVアイントホーフェンU21に所属するである19歳のFWイギー・フーベンもクアラ・ルンプール出身の祖母がおり、機会があればマレーシア代表入りしたいという発言も報じられています。

9月12日のニュース・ブキ・ジャリル国立競技場の劣悪ピッチに批判が集まる・給料未払いによる練習ボイコット発生中のクダは今週末の試合にU23チームの選手を起用か・移籍情報:スランゴールのレジク・バニハニは出場機会を求めて母国ヨルダンのACL2出場クラブに移籍

中国サッカー協会(CFA)主催の4ヵ国対抗大会に出場していたマレーシアU19代表は、最終戦となったベトナムU22代表との試合では大会初ゴールを挙げたものの、1−2で敗れています。この大会では初戦のウズベキスタンU21代表には0−2で、続く中国U21には0−1で敗れており、3戦全敗の最下位で大会を終えています。

ブキ・ジャリル国立競技場の劣悪ピッチに批判が集まる

またマレーシアが11年ぶりに優勝して幕を閉じたムルデカ大会ですが、その一方で、試合会場となったブキ・ジャリル国立競技場では芝が剥がれたり、根付いていない芝に足を取られて選手がバランスを失う場面が見られ、そのピッチ状態の悪さが目についた大会でもありました。マレーシアの初戦となったフィリピン戦ではアフィク・ファザイル(ジョホール・ダルル・タジムFC)が途中で膝を痛めて途中交代を余儀なくされ、その後はMCL(内側側副靭帯損傷)で完治までおよそ6週間と診断されています。また決勝のマレーシア対レバノン戦では、ドミニク・タンが芝に足を引っ掛けて倒れ、背中を痛めて担架で退場する場面もありました。

これについてタン選手が所属するサバFCのオン・キムスイ監督は自チームの主力選手がプレーする代表チームがケガの恐れがあるピッチで試合を行うことに疑問を呈しています。タン選手の他に代表に召集されたダニエル・ティンとダレン・ロックは、今週末に再開するマレーシアスーパーリーグの第10節トレンガヌFC戦に備えて、チームに合流していますが、タン選手についてはケガの診断結果を待っているところだということです。

「当たられたり、削られたりしてのケガは試合の一部なので理解できるが、ピッチの状態が悪いことによるケガを望んでいる選手などおらず、しかもそれが(ブキ・ジャリル)国立競技場で起こったことは見過ごすことはできない。どのコーチも自チームの選手がケガをすれば、チームの戦術を見直さねばらならない。もしそのようなひどいピッチしか用意できないのならば、マレーシアサッカー協会(FAM)はブキ・ジャリル国立競技場以外のスタジアムで国際試合を開催することも真剣に検討するべきだ。」

「選手の能力を引き出すためにも安全は最優先されるべきで、さらにブキ・ジャリル国立競技場の劣悪なピッチの問題は昨年から話題になっているにもかかわらず 、何も解決されていない。」としてブキ・ジャリル国立競技場の運営者であるマレーシア・スタジアム社を非難しています。

またこれに関して、マレーシアサッカー協会(FAM)のフィルダウス・モハメド競技委員長もブキ・ジャリル国立競技場を管理するマレーシア・スタジアム社(MSC社)から大会前にはピッチ状況は良好という説明を受けていたとして、

「ブキ・ジャリル国立競技場のピッチ状態が悪いのではないかということを我々(FAM)も心配していたが、MSC社からは大会には問題ないという話を聞かされていたが、結局、ケガをする選手が出てしまい、所属するクラブに迷惑をかけることになった。」

「MSC社は外部の専門家による評価を受けた上で、ピッチ状態が問題ないという保国すべきだった。もしピッチ状態が試合に適していなければ、それを真摯に伝えるべきだったが、残念ながらそれがなされなかった。」とやはりMSC社を批判するコメントをしています。

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これらの批判に対してMSC社のイリヤス・ジャミルCEOは、同じブキ・ジャリル国立競技次で8月24日に行われたマレーシアFAカップ決勝はその前日練習も含め、出場したジョホール・ダルル・タジムFC、スランゴールFCからも特に不満が聞かれなかったと説明しています。その一方でムルデカ大会は、前日練習に加え、中3日で2試合ずつという「過密日程」により、ピッチ状態が回復するのに十分な時間がなかったと説明しています。

またイリヤスCEOは、今年11月と12月に予定されている東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電機カップ」までには、ブキ・ジャリル国立競技場のピッチは回復させられると胸を張っています。

給料未払いによる練習ボイコット発生中のクダは今週末の試合にU23チームの選手を起用か

9月の国際マッチデー期間が終わり、明後日9月13日からはマレーシアスーパーリーグが再開します。そんな中、給料未払いにより先週から主力選手の練習ボイコットが起こっているクダ・ダルル・アマンFCは、9月14日のKLシティFC戦にリザーブチームであるU23チームの選手を出場させて急場を凌ぐようだと、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。

昨季の給料未払い問題が未解決であることから、クダは今季開幕前に既に勝点3剥奪処分を受けていましたが、今季が始まっても状況はあまり完全していないようで、複数の選手がSNS上で不満をぶちまける事態が続いたのち、今月に入ってからは、このブログでも貴方の通り主力選手による練習ボイコットが始まっています。

ここ数日の練習の様子を伝えるクラブ公式SNSでも、リザーブチームのU23チームの選手が映った写真のみがアップロードされていることから、ナフジ・ザイン監督はこの若い選手たちをKLシティ戦で起用する可能性が高いとブリタハリアンは伝えています。

移籍情報:スランゴールのレジク・バニハニは出場機会を求めて母国ヨルダンのACL2出場クラブに移籍

スランゴールFCは、今季開幕直前に加入したヨルダンU23代表FWレジク・バニハニがわずか5ヶ月で退団し、母国ヨルダンのアル・フセイン・イルビドSCに完全移籍することをクラブ公式SNSで発表しています。アル・フセイン・イルビドSCは昨季のヨルダン1部リーグ優勝チームで、ACL2に出場する強豪です。

22歳のレジク選手は、今季開幕前にやはりヨルダンのアンマンを本拠地と知るアル・ファイサリーSCから加入しています。スランゴールではリーグ戦7試合(先発2試合)、FAカップ3試合(先発0試合)の計10試合に出場し、2ゴール1アシストという記録を残している一方で、出場時間は343分でした。

レジク選手は今月から始まった2026W杯アジア3次予選に出場しているヨルダン代表にも選ばれており、9月6日のクウェート戦では89分に交代出場し、A代表デビューを果たしています。また9月10日にクアラ・ルンプールで行われたパレスチナ戦では出場がありませんでしたが、この試合がレジク選手のマレーシアでの最後の試合となりました。

なおこのレジク選手には移籍の噂なども出ておらず、いわば電撃移籍なのですが、マレーシア語紙のマジョリティは、出場機会を求めての移籍だったのではと分析しています。スランゴールにはこのレジク選手の他、やはりヨルダン代表のMFノー・アル=ラワブデが在籍していますが、現在開いている今年2度目のトランスファーウィンドウでこちらもヨルダン代表のセンターフォワード、24歳のアル・オルワンを獲得しており、同じセンターフォワードながら、スランゴールのニザム・ジャミル監督のもとでは左ウィングでの起用が多かったレジク選手は、同じヨルダン代表のチームメートとセンターフォワードを争えば、今季同様出場機会が増えないことを懸念して、オルワン選手加入が引き金となった移籍ではないかと分析しています。

9月11日のニュース・W杯アジア3次予選:韓国と引き分けたパレスチナをヨルダンが撃破しB組首位浮上

2026年W杯アジア3次予選がアジア各地で行われる中、B組のパレスチナ対ヨルダンがマレーシアのクアラ・ルンプールで行われました。試合は先制を許したパレスチナが一度は追いついたものの、最後は失点を重ねて1−3で敗れています。この結果、パレスチナは成績を1分1敗として勝点1でB組の5位となり、勝利したヨルダンは1勝1分で勝点4とし韓国、イランと並んだものの得失差などでB組首位に浮上しています。

今年1月のアジアカップ2023準優勝でFIFAランキング68位のヨルダンは、アジア3次予選の初戦では同136位のクウェートとホームで対戦しながら、ロスタイムに同点ゴールを許して1−1で引き分けるスタートを切っていた一方で、同96位パレスチナは、初戦ではアウェイの韓国戦(同23位)に引き分けていました。

イスラエルとの紛争で自国での試合開催が難しいパレスチナは、欧米各国がテロリストと非難するイスラム組織ハマスへの同情論が強く、パレスチナとの連帯を示す大規模集会が何度も行われたマレーシアを今回のW杯予選の合宿地とし、今月1日から初戦の韓国戦に向けて準備をしてきました。その甲斐もあってか(?)韓国戦にまさかの引き分けで勝点1を獲得すると、その勢いで第2節のヨルダン戦に臨みました。なおこの日の先発には、クランタン・ダルル・ナイムFCでプレーするMFオディ・クハルブが韓国戦に続いて先発しています。

一方、初戦をホームでこちらもまさかの引き分けでスタートしたヨルダンは、第3節ではアジアカップでの対戦では1勝1分の成績を残したとは言え、格上の韓国との対戦も控えており、この試合に勝利し、勝点3を積み上げたいところです。この日の先発には、マレーシアスーパーリーグのスランゴールFCでプレーするMFノー・アル=ラワブデの他、この予選後からやはりスランゴールFCに加入するFWアリ・オルワン、そして昨季までスランゴールFCに在籍し、シーズン終盤に判定に不服なことから審判を蹴ってマレーシアリーグから無期限出場停止処分を受けて退団したDFヤザン・アル=アラブ(現韓国1部FCソウル)などが揃い、初戦のクウェート戦からのメンバー変更は1人だけというほぼ不動の布陣です。

試合は開始からヨルダンが激しく攻め、5分にはエース、ヤザン・アル=ナイマトがセンターサークル付近からドリブルで一気に左サイドを駆け上がると、ペナルティエリア内ではパレスチナのDF陣を左右に交わしてから豪快にゴールを蹴り込んで、ヨルダンがあっさりと先制します。

その後もヨルダンは猛攻を続けますが、パレスチナGKバラ・カルーブのスーパーセーブやシュートがゴールポストに阻まれるなどで、追加点を奪うことができません。そこから徐々にカウンターを見せていたパレスチナは、41分に左サイドのカミロ・サルダナからのクロスを、それまでもヨルダンペナルティエリアに切り込んでいたウェッサム・アブ・アリがフリーになっており、落ち着いて頭で押し込み、同点に追いつきます。

1-1のスコアで前半を折り返すと、後半の開始5分にヨルダンが再びヤザン・アル=ナイマトのゴールで逆転すると、72分にはスランゴールFCでプレーするノー・アル=ラワブデが決定的となる3点目のゴールを決めて、アジア3次予選初勝利を挙げています。

FIFAW杯2026アジア3次予選
2024年9月10日@KLフットボール・スタジアム(クアラ・ルンプール)
観衆:3,012名
パレスチナ 1-3 ヨルダン
⚽️パレスチナ:ウェッサム・アブ・アリ(41分)
⚽️ヨルダン:ヤザン・アル=ナイマト2(5分、50分)、ノー・アル=ラワブデ(72分)
🟨パレスチナ(2)、🟨ヨルダン(0)
MOM:ヤザン・アル=ナイマト(ヨルダン)

この試合のハイライト映像。スタジアム・アストロのYouTubeより。

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マレーシアとは全く関係がない試合でしたが、W杯3次予選を観戦する機会は貴重なので、午後10時のキックオフ時間にもめげずスタジアムに足を運びました。数日前にはムルデカ大会でマレーシアがレバノンを破って優勝した試合を見ましたが、正直なところ、試合の迫力はこの日の試合の方が桁違いに高かったです。攻守の切り替えの速さや、削れても簡単に倒れずに前を目指す姿など、言葉は悪いですが、勝利で得られるものがプライドでしかないムルデカ大会よりも遥かに大きいものが得られるW杯予選の意味を強く感じました。またこのレベルで、そしてこのプレッシャーのもとで試合を続けていけば、どんなチームでも強くなっていくだろうという印象でしたので、このレベルに残っている東南アジア勢唯一のインドネシアは、帰化選手頼りの補強方法はともかく、ベトナムやタイを抜いて東南アジアトップの実力をつけてしまいそうです。それは実際にサウジアラビアやオーストラリアとの引き分けにもその一端が見えるように思います。

またこの試合はパレスチナのホームゲームとして行われましたが、マレーシアにこんなにパレスチナ人がいるのか、と思うくらいの観衆がパレスチナ側のスタンドに陣取っていました。またこの試合のチケットは40リンギ(およそ1,300円)とされていましたが、どういうわけかスタジアムの前ではタダ券が配られていて、私もそれをもらって入場しました。(この日配られていたチケット。見にくいですが”complimentary”「無料」の文字が見えます。


下はパレスチナが同点に追いついた場面のスタンドの様子です。この他にも”Free Palestine”「パレスチナを解放せよ。」などの横断幕もスタンドでは見られました。

9月10日のニュース・ムルデカ大会:マレーシアがレバノンを下し優勝、3/4位決定戦はPK戦の末、タジキスタンが勝利・ムルデカ大会優勝のマレーシア代表に朗報ーオランダ1部クラブのキャプテンが代表入りへ

ムルデカ大会:マレーシアがレバノンを下し優勝

9月8日に第43回目となるムルデカ大会の決勝がクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われ、FIFA135位のマレーシアが同117位のレバノンを1−0で下して優勝を果たしています。大会ホストのマレーシアが優勝したのは2011年以来11年ぶりと多くのメディアが伝えていますが、2013年の大会はU23代表同士が対戦し、優勝したのがマレーシアU23でした。しかしA代表がこのムルデカ大会に最後に優勝したのは1983年で、それから数えると実に41年ぶりの優勝ということになりました。

この日の先発XIは以下の通り。初戦のフィリピン戦で先発したアリフ・アイマン、アフィク・ファザイル(ジョホール・ダルル・タジムFC、JDT)、アキヤ・ラシド(トレンガヌFC)、ダニエル・ティン(サバFC)に代わり、この試合ではシャフィク・アフマド(クダ・ダルル・アマンFC)、サファウィ・ラシド(トレンガヌFC)、ノーア・レイン(スランゴールFC)、ラヴェル・コービン=オング(JDT)の4名が入れ替わっています。特に、いずれもここ数年は飼い殺し状態だったJDTから期限付き移籍し、今季は出場時間を重ねているシャフィク・アフマドとサファウィ・ラシドが代表戦の先発XIに揃って名を連ねるのは本当に久しぶりでした。しかもこの2人にコロンビア出身の帰化選手ロメル・モラレス(JDT)が加わる攻撃陣が発表になると、試合前からワクワクが止まりませんでした。


今季の幕開けとなった1月のAFCアジアカップでは韓国と壮絶な戦いを演じ3-3と引き分けたものの、結局アジアカップは0勝1分2敗に終わりグループステージで敗退したマレーシアは、その後も3月と6月に行われた2026W杯予選では1勝1分2敗として勝点1差で3次予選進出を逃していました。さらに7月にキム・パンゴン監督が契約期間を17ヶ月残して退任しており、ここ数ヶ月の代表チームにはポジティブな要素が見当たりませんでした。しかも、隣国インドネシアの躍進に対して、キム前監督によるマレーシアサッカー協会(FAM)の支援が不十分だったといった発言や、各年代代表の伸び悩み、さらにファイサル・ハリムの酸攻撃など代表選手が続けて襲われた事件の進捗が見られないこともあり、サポーターの不満はFAMに向かい、その結果が今大会の代表選応援ボイコット呼びかけでした。

初戦となったフィリピン戦に続き、この試合もウルトラスによるボイコットは続き、ゴール裏はガラガラでした。しかしこの日の試合こそ、マレーシア代表の1番のサポーターであるウルトラスの面々にこそ見てもらいたい試合でした。パウ・マルティ監督代行がかつてバルセロナユースのコーチだったことを引き合いに出されて、スペインサッカーの片鱗すら感じられないと酷評された初戦のフィリピン戦は何だったのか、と感じさせるほど一人一人の選手が躍動し、その一方でチームが連動して動く、キックオフから全く別のチームを見せられているようでした。W杯予選やアジアカップと比べても、。段違いのパフォーマンスは単純に見ていて楽しく、初戦のタジキスタン戦ではフィジカルの強さも使い、ことごとく相手の守備を跳ね返していたレバノンを試合開始から完全に守勢に回らせる様は圧巻でした。

そんな中、マレーシアの先制ゴールは33分でした。初戦はベンチながらこの試合は左サイドバックで先発したラヴェル・コービン=オングが得意のロングスローをゴール前にへ送ると、相手DFのクリアが小さくこれをサファウィ・ラシドが再びヘディングで戻すと、待ち構えていたエンドリック・ドス・サントスのシュートは阻まれたものの、そのこぼれ球をロメル・モラレスが押し込んでマレーシアが先制します。

マレーシア1点リードで後半に入ると、今度はギアを上げたレバノンに押し込まれ、自陣でプレーする時間が長くなったマレーシアですが、それでもシャマー・クティとノーア・レインの新しいボランチコンビがセンターバックなどとうまく連携し、決定機をほとんど与えませんでした。そしてレバノンが78分に2枚目のイエローで退場者を出し10人となった後も、最後まで集中を切らさなかったマレーシアが今季初の完封勝ちを挙げて、少ないながらも1万人を超えるファンの期待に応えました。そしてこの勝利は 対レバノン戦3試合目で初勝利であるとともに、中東のチームとの対戦でも2014年にアジアカップ予選でイエメンを2-1で破って以来の勝利でもありました。

第43回ムルデカ大会決勝
2024年9月8日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
マレーシア 1-0 レバノン
⚽️マレーシア:ロメル・モラレス(33分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
ムルデカ大会:3/4位決定戦はPK戦の末、タジキスタンが勝利

決勝に先立って行われた3/4位決定戦では、昨年のこの大会優勝チーム、タジキスタンがPK戦の末、フィリピンを破って3位になっています。初戦のレバノン戦に0−1で敗れたタジキスタンは、この試合でも90分間では0−0と得点がありませんでした。PK戦はフィリピンの1人目タビナス・ジェファーソン、2人目ハーヴェイ・ガヨソがいずれもゴールポストに当てて失敗してしまった一方で、タジキスタンは2人目のパルヴィジョン・ウマルバエフがフィリピンGKケヴィン・メンドーザに止められたものの、残り4名がPKを決めて、4-3で勝利しています。

昨年のムルデカ大会優勝時のペタル・セグルト前監督は、今年2月に契約満了で退任し、セグルト前監督時代にコーチを務めていたゲラ・シェキラゼ監督がしゅうにんしましたが、今大会を振り返ってシェキラゼ監督は、今大会が代表デビューとなった5選手を含めて、ベスト16に残ったアジアカップからも半数以上の選手が入れ替わっていると述べて、チーム状況が変わっていると説明し、さらに今月開幕するACL2に出場するFCイスティクロル・ドゥシャンベとラフシャン・クリャーブからは、今大会の代表チームには選手を招集しなかったことも述べています。

第43回ムルデカ大会3/4位決定戦
2024年9月8日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
フィリピン 0-0 タジキスタン(PK 3-4)

ムルデカ大会優勝のマレーシア代表に朗報ーオランダ1部クラブのキャプテンが代表入りも 

オランダ1部ゴーアヘッドイーグルズに所属する27歳のDFマッツ・デアイルが「マレーシア国籍取得の準備中」と自身のSNSに投稿したことを、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。

オランダのフラールディング生まれのデアイル選手は、父方にマレーシア人の血が入っていることをこれまでも明らかにしていましたが、今回はマレーシア代表入りに関心があることを初めて明らかにしています。

マレーシアサッカー協会(FAM)に対して両親や祖父の出生証明書など自身の血筋を示す書類を用意している最中だと投稿したデアイル選手は、既にFAMからも接触されているとし、招集されることがあれば代表でプレーする意思も既に表明済みだとも述べています。「当初はマレーシア代表でプレーすることなど起こり得ないと思っていたが、FAMが積極的に関与してくれており、心配無用だとも言われているので、今では確信をもって代表入りについて話すことができる。」とも述べています。

FAM側もハミディン・アミン会長が代表入りの意思を表明すれば全力で支援する方針であることを明らかにしており、デアイル選手の代表入りは時間の問題のようです。

9月8日のニュース・ムルデカ大会:サファウィ・ラシドは決勝で最多ゴール記録更新を狙う・クダの選手が給料未払いに抗議し、3日連続で練習をボイコット・他のクラブでは給料未払いから家賃滞納で追い出される選手も・マレーシアリーグ王者がシンガポール代表に3発快勝

ムルデカ大会:サファウィ・ラシドは決勝で最多ゴール記録更新を狙う

第43回ムルデカ大会の決勝は、2013年以来、11年ぶりの優勝を目指すマレーシアと初優勝を狙うレバノンが対戦します。9月4日に行われた準決勝では、先制されながらもフィリピンを2-1で破って決勝進出を決めたマレーシアですが、決勝ゴールはFWサファウィ・ラシドのPKでした。

そのサファウィ・ラシドは現在、代表通算22ゴールで歴代8位につけていますが、本日行われるレバノンとの決勝で1点を挙げることがあれば、サフィー・サリらが持つ歴代通算6位タイの23ゴールに並びます。

マレーシアの歴代最多ゴールは、マレーシアサッカー史上最高の選手とされるモクタル・ダハリ(代表在籍期間は1972年〜1985年)が持つ89ゴールですが、それ以下の選手もほぼ全員がマレーシアが強かった1980年代かそれ以前の選手です。歴代10位までに入っている選手で、2000年代以降に活躍した選手では、クアラルンプールFA(現KLシティFC)やスランゴールFA(現スランゴールFC)、インドネシアのプリタ・ジャヤFC(現マドゥーラ・ユナイテッド)などでプレーしたサフィー・サリ(代表在籍期間は2006年〜2017年)とサファウィ・ラシドの2名しかいません。

2017年のAFCアジアカップ予選、北朝鮮戦で代表初ゴールを挙げたサファウィ選手は、2019年までには27試合出場で10ゴールを挙げると、新型コロナにより代表戦がなかった2020年を挟んで、2021年から2023年までは31試合出場で10ゴールを挙げ、通算20ゴールとして、通算ゴール歴代トップ10入りを果たしてます。

さらに今年に入ってからは、6月のW杯予選の台湾戦、そして先日のフィリピン戦でそれぞれゴールを挙げて、並んでいたN・タナバラン(代表在籍期間は1964年〜1969年)、ウォン・チューンワー(同1968年〜1977年)を抜いて単独8位に浮上しています。

まずは歴代通算8位を狙うサファウイ選手は、「フィリピン戦のゴールは自分のモチベーションを上げる材料となった。次は何としても通算ゴール歴代6位タイになりたい。そしてレバノン戦でゴールを挙げてそれを達成できれば申し分ない。」と話しており、記録更新に積極的な姿勢を見せています。そして今日の試合でサファウィ選手がゴールを挙げることができれば、マレーシアにも11年ぶりの優勝が見えてきます。

クダの選手が3日連続で練習をボイコットし給料未払いに抗議か

英字紙ニューストレイツタイムズは、クダ・ダルル・アマンFCの選手たちが3日連続で練習に姿を表していないと報じています。クダは給料未払い問題未解決を理由に、今季開幕前に勝点3を剥奪されており、給料未払いに選手が耐えられなくなった可能性が懸念されています。

チームの練習場となっているアブドル・ハリム・スタジアムに隣接するフィールドには、選手は誰1人おらず、ナフジ・ザイン監督とスタッフのみが姿を表したということですが、ナフジ監督はこの状況についての質問に対しては回答を拒んだと、ニューストレイツタイムズは伝えています。

この記事では関係者の話として、選手たちは給料が未払いとなっていることから様々な金銭的問題に直面しており、その不満が練習ボイコットにつながっているとしています。さらに給料未払い問題がもっと早く解決していれば、このような事態には陥らなかったと述べ、この状況が今後どの程度続くのかも予想できないとも述べているということです。

他のクラブでは給料未払いから家賃滞納で追い出される選手も

同じニューストレイツタイムズでは、東海岸に本拠地を持つクラブの選手とスタッフが家賃滞納により、借りていた家を追い出されたという事例も報じています。この家賃滞納は、やはり所属チームからの給料未払いが原因だということです。

これを報じた記事では、関係者の話としてこの選手が所属しているチームは4ヶ月近く、給料が支払われていないということですが、このチームの選手たちは前述のクダとは違い、選手たちは給料を支払われていなくとも練習には参加し続けているということです。

「選手一人一人は(給料未払いにより)苦しんでいるが、全員が自分の役割に取り組んでおり、プロ意識を持って日々の練習を続けている。その一方で現実は厳しく、家賃が払えず、家を立ち退かねばならない選手が複数いる。」と匿名を条件に語った選手は、チームの経営陣に対して義務を果たして給料を払ってもらえねば、家賃だけでなく様々な支払いができず、生活が危うくなりつつあると、窮状を訴えています。

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この記事では「東海岸に本拠地を持つクラブ」と書かれていますが、該当するのはスリ・パハンFC、トレンガヌFC、クランタン・ダルル・ナイムFCの3チームです。この中では、スリ・パハンFCは以前も今季の給料遅配が報じられたこともあるため、この記事の東海岸に本拠地を持つクラブとはスリ・パハンFCの可能性が濃厚です。

マレーシアリーグ王者がシンガポール代表に3発快勝

マレーシア国内リーグ10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、9月7日にシンガポール代表と練習試合を行い、3−0で快勝しています。シンガポールのカラン・フットボール・ハブで行われた試合では、JDTはムルデカ大会出場のマレーシア代表にマレーシア人主力選手が招集されていることもあり、現在開いているトランスファーウィンドウで加入した新戦力を起用したようです。(下はこの試合の先発XI)

いずれもスペイン出身のGKアンドニ・スビアウレ(スペイン2部CDエルデンセから加入)、DMFイケル・ウンダバレナ(スペイン2部CDレガネスから加入)、コロンビア出身のFWジョルジ・オブレゴン(クロアチア1部HNKリエカから加入)、フランス出身のMFエンゾ・ロンバルド(スペイン2部SDウエスカから加入)、韓国出身のDFパク・ジュンホン(タイ1部ラーチャブリーFCから加入)らが起用された試合は、前半31分にJDTがナズミ・ファイズのゴールで先制すると、後半の58分には新加入のジョルジ・オブレゴンが2点目を、そして90分にはFWモハマドゥ・スマレが3点目を決め、3−0でJDTがシンガポール代表に勝利しています。

9月7日のニュース・ムルデカ大会:ウルトラスが観戦ボイコットの中、マレーシアはフィリピンに辛勝・レバノンが前回優勝のタジキスタンに勝利し、マレーシアと決勝で対戦

第1節から波乱のスタートとなった2026W杯アジア3次予選。日本や中国、オーストラリアが入るC組では、東南アジア勢として唯一、3次予選に残ったインドネシアがアウェイでサウジアラビアと1-1で引き分けています。帰化選手による補強が大当たりのインドネシアは、さらにCBミーズ・ヒルハース(23歳、FCトゥエンテ所属)、RBエリアノ・ラインデルス(23歳、FCズヴォレ所属)が加わるという噂もあり、C組の台風の眼になりそうです。

またB組ではイスラエルとの戦闘状態により、マレーシアで合宿を行っていたパレスチナが韓国を相手にやはり敵地で0-0と引き分けています。そのパレスチナは、クウェートにロスタイムのゴールで追いつかれてやはり初戦を1−1で引き分けたヨルダンと、マレーシアで9月10日の第2節で対戦します。初戦に出場したノー・アル=ラワブデ、アリ・オルワン、レジク・バニハニの3選手がスランゴールFCでプレーするヨルダンと、やはり初戦に出場したオディ・ハロウブがクランタン・ダルル・ナイムFCでプレーするパレスチナの対戦は、マレーシアサッカーとも縁があり、国内サッカーファンの関心を集めそうです。

ムルデカ大会:ウルトラスが観戦ボイコットの中、マレーシアはフィリピンに辛勝

試合からは3日経ってしまいましたが、第43回となるムルデカ大会が9月4日に開幕し、フィリピンと対戦したマレーシアは2−1と逆転で勝利し、9月8日の決勝に駒を進めています。

マレーシアサッカー協会(FAM)の運営に不満を持つ最大のサポーターグループ「ウルトラス・マラヤ」が観戦ボイコットを呼びかけたことで、大会2日前になっても1,000枚程度しかチケットが売れていないことが報じられました。国際試合の前にはFAMも公式SNSで売上枚数を明らかにしていましたが、今大会については全く音沙汰なしだったことで、事態の深刻さがより明らかになりました。(下は見事なくらい誰もいなかったマレーシア戦ハーフタイムのゴール裏)

収容人数85,000人のブキ・ジャリル国立競技場は、1階部分はそれなりに観客がいたもののおそらくは全体で15,000人前後、という印象でした。なおマレーシア代表はキム・パンゴン前監督が今年7月に突然辞任し(その後は韓国1部リーグ蔚山HDの監督に就任)、この試合はコーチから昇格したパウ・マルティ監督代行にとっての初めての試合でしたが、そんな時こそサポーターの声援が必要だと思うのですが、ウルトラスにはそうした発想はなかったようでした。

パレスチナのハマスを承認しているマレーシアでは、イスラエルに関連するとされるアメリカ系企業をボイコットする運動も起こり、結果として国内で100店以上のケンタッキーフライドチキンの店舗を閉店させたマレーシア人の行動は、それがそこで働く多くのマレーシア人従業員の職を奪うといった思慮がないまま行われたのと、現場の選手や監督、コーチにはなんら罪がない今回のボイコット騒動は似ていると感じました。

監督代行といえば、この試合でマレーシアが対戦したフィリピンもノーマン・フェジデロ監督代行が指揮を取っていました。フィリピンは今年2月に就任したばかりのベルギー出身のトム・セイントフィート監督がやはり先月8月末に辞任しています。ガンビアやトーゴ、さらにマルタなどで代表監督を務めた経験があるセントフィート氏は、契約条件の中に含まれていた「より大きなチームで監督機会があれば契約を解除できる」という条項を使って、アフリカのマリ代表監督に就任しています。

いずれも監督代行が指揮を取るチーム同士のこの試合の先発XIは以下の通りです。

マレーシアの先発XIは、現在国内リーグ1位のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)から6名の他は、サバFCから1名、トレンガヌFCから1名、ペナンFCから1名、KLシティFCから1名、そしてタイ1部のブリーラム・ユナイテッドから1名となっています。ただし、サバのダニエル・ティン、トレンガヌのアキヤ・ラシドと、ペナンのシャマー・クティはいずれも今季はJDTからローンされている選手なので、実質はJDTからは9名が先発メンバーに名を連ねていることになります。

一方、フィリピンの先発XIには、神奈川県の桐光学園出身で、ガンバ大阪U23を経てJ2の水戸から今季はタイ1部で3連覇中のブリーラム・ユナイテッドに移籍したDFタビナス・ジェファーソンの名前があります。ちなみにマレーシア代表のキャプテン、ディオン・コールズも同じブリーラム・ユナイテッドの選手なので、同チーム対決となります。またこの先発XIにはKLシティFCでプレーするFWパトリック・ライヒェルト、ペラFCでプレーするDFイエスペル・ニホルムの名前も見える他、先発XIではDFアマニ・アギナルド、MFジャスティン・バース、控えではGKケヴィン・メンドーザ、DFクリスチャン・ロンティーニにもマレーシアリーグでのプレー経験があります。

前置きが長くなりましたが、FIFAランキング134位のマレーシアと同147位のフィリピンとの対戦では、先制したのはフィリピンでした。開始からペースが上がらない試合は、27分にゴール前の混戦から左サイドに流れたボールをタビナス・ジェファーソンがシュートすると、そのボールがシュートコースに飛び込んだDFフェロズ・バハルディンに当たって角度が変わり、最初のシュートコースをカバーしていたGKシーハン・ハズミが反応できずそのままゴールイン。これがジェファーソン選手の代表戦16試合目にしての初ゴールとなり、フィリピンが1点をリードします。

この1点でマレーシアもギアを上げますが、フィリピンDF陣を破ることができず、このまま前半終了かと思われた43分にマレーシアは右コーナーキックを得ます。このキックをファーポストのマシュー・ディヴィーズが頭で落とし、それをフェロズ・バハルディンがペナルティーエリアの外へ流すと、それをシャマー・クティが豪快に蹴り込んで、マレーシアが同点に追いつきます。

後半に入ると両チームともやや引き気味な布陣となる中、73分にフィリピンDFマシュー・ボルディシモがアリフ・アイマンをペナルティーエリア内で倒してしまいます。この日はいくつもの疑惑の判定があり、マレーシアに「親切」だったインドネシアのユディ・ヌルチャヤ主審は迷わずPKと判定します。。これを途中出場のサファウィ・ラシドが落ち着いて決めます。そこからはフィリピンが攻勢に転じ、マレーシアは自陣に釘付けとなりますが、結局、サファウィ選手のゴールがが決勝点となり、マレーシアが逆転でフィリピンに勝利し、前回大会に続き決勝進出を決めています。

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この試合はスタジアムで観戦しました。いつもの試合であれば、試合後にはゴール裏へ向かってウルトラスからのエールを受ける流れですが、この日は観戦ボイコットでウルトラス不在ということもあり、選手が思い思いにスタンドに手を振ったり、出場がなかった選手がスプリントを繰り返してひと汗かくなど、いつもとは違う試合後の雰囲気でした。また試合中もメディアが煽り立てるほど静かというわけではなく、自然発生的な形で応援が起こり、統制されてはいないもののあちこちから声がかかり、スタンド全体はマレーシアを応援している雰囲気を感じました。

ウルトラスの声援は確かに代表チームを後押しする力になるでしょうが、それがな勝ったから勝てなかったと言われないよう、この日の試合はチームの全員が意地を見せ多様に私の目には映りました。そして試合後は、勝利に終わったことで安堵しているような和やかな空気も感じました。今日のフィリピンはそれでもなんとか勝利しましたが、日曜日の決勝レバノン戦では、ウルトラスの皆さんには不満もプライドも全て一旦収めていただき、まずはゴール裏へ足を運んで、2013年以来11年ぶりの優勝を目指す「マラヤの虎」に向かって全力で声援して欲しいです。

第43回ムルデカ大会
2024年9月4日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
マレーシア 2-1 フィリピン
⚽️マレーシア:シャマー・クティ(43分)、サファウィ・ラシド(73分PK)
⚽️フィリピン:タビナス・ジェファーソン(27分)
🟨マレーシア(0)、🟨フィリピン(4)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
ムルデカ大会:レバノンが前回優勝のタジキスタンに勝利し、マレーシアと決勝で対戦

同じ9月4日の第1試合は、FIFAランキング116位のレバノンが、同103位のタジキスタン相手に1−0で逃げ切り、9月9日の決勝進出を決めています。昨年のこの大会では決勝でマレーシアを2−0で破り優勝していたタジキスタンは、連覇の機会を逃しています。また、この両チームは今年1月AFCアジアカップのグループステージでは同じA組で、最終戦では勝った方がノックアウトステージ進出が決まるという中、タジキスタンが2−1でレバノンを破っており、この日の勝利は試合後にレバノンのミオドラグ・ラドゥロヴィッチ監督が口にしたように「リベンジ達成」といった意味合いもあったようです。

水曜日の午後4時30分キックオフということもあり、スタンドは明らかにガラガラで、公式発表では観衆が460名となっており、国際Aマッチとしては寂しいものでした。また心配された雨は降らなかったものの、その代わりの暑さに加え、ほとんど風が吹かないスタジアムで、私自身は汗びっしょりになりながら観戦しました。

試合はレバノンの組織だった守備の強さが目立ちました。前半はタジキスタンが両ウイングを使ってボールを進めようとするも、レバノンの両サイドバックがすぐに寄り付いて、前へのボールを出させません。中央に待ち構えるセンターバックとともに、タジキスタンにシュートの機会すら与えませんでした。

試合は13分にコーナーキックからジハド・アヨウブがヘディングシュートを決めてレバノンが先制すると、残る時間帯はその堅固な守備でタジキスタンFW陣にほぼチャンスを与えず完封勝利を収めています。

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決勝でレバノンと対戦するマレーシアは、その守備力に苦しまされそうです。そうでなくとも、今季ここまでマレーシアは10試合(3勝3分4敗)で得点16失点18と、1試合あたり得失点ともに2点を下回っています。となれば、先行逃げ切りの試合展開を目指し、硬い守備のレバノン相手にはコーナーキック、或いはフリーキックでゴールを挙げられるかどうかが勝敗を握る鍵になりそうです。

第43回ムルデカ大会
2024年9月4日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
レバノン 1-0 タジキスタン
⚽️レバノン:ジハド・アヨウブ(13分)
🟨レバノン(4)、🟨タジキスタン(2)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。

9月3日のニュース・ムルデカ大会開幕3日前でチケット売り上げは1000枚足らず-サポーターは本当にボイコットするのか・マレーシア政府は代表チームに総額5億円超の割り当てを発表・パク前ベトナム監督代理人はFAMからの接触がないことを明言

ムルデカ大会開幕3日前でチケット売り上げは1000枚足らず-サポーターは本当にボイコットするのか

明日9月4日に開幕するムルデカ大会を前にチケットの売り上げが伸び悩んでいると、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。1957年に第1回大会が開催されたムルデカ大会は、タイのキングズカップと並んでアジア最古の国際招待大会ですが、今回はFAMの運営に不満を明らかにしている代表チームのサポーター団体「ウルトラス・マラヤ」が呼びかけた観戦ボイコットにより、その歴史の重みに反して淋しい大会になる可能性が浮上しています。

マレーシアサッカー協会(FAM)の公式SNSでは、国際大会の前にはチケットの売り上げ状況などが頻繁に投稿されますが、今回のムルデカ大会ではそう言った情報が何も投稿されていないことから、事態は予想された以上に深刻なのかも知れません。なおニューストレイツタイムズは、9月1日の時点でチケットの売り上げは1000枚に達していないとも報じています。

今回のムルデカ大会では明日9月4日には、第1試合で昨年大会の覇者タジキスタンがレバノンと対戦し、第2試合ではマレーシアがフィリピンと対戦します。そして9月8日には、第1試合で9月4日の試合の敗者同士が3位決定戦を、勝者同士が決勝を戦います。

昨年は10月に行われた前回大会では、今回と同じクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場にマレーシアの初戦となったインド戦は4万6000人、決勝のマレーシア対タジキスタン戦は3万7000人の観衆が集まりました。

この状況についてFAMのフィルダウス・モハメド競技委員会委員長は、チケット売り上げ状況に失望しているとともに、蓋を開けてみても観衆が集まらなければ、来年以降のムルデカ大会での代表チームを大会に招待する際に支障が出る可能性があると懸念しています。

マレーシア政府は代表チームに総額5億円超の割り当てを発表

これも政治絡みの人気取りムーブなのか。

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、代表チームに対して総額1500万リンギ(およそ5億円)の金銭的支援を政府が行うことを発表しています。

アンワル首相は9月3日の金融省都の月例会議の席上で「多くのマレーシア人はサッカーを愛しており、マレーシア代表を全力で応援している。そこで代表チーム強化のために、この支援を行うことを決めた。」と発言しています。

さらにアンワル首相は、代表チームが成功するには選手、監督やコーチの福利が安心したものであることが重要であり、そうすることで全員が練習に集中できると述べています。また満足いく練習施設も必要であるとも述べ、今回の支援によって精神的にも物理的にも満足できる練習が行えるだろうとも述べ、近いうちにマレーシアサッカー協会(FAM)にこの割り当てを伝えたいとしています。

自分はマレーシアが安定した経済成長を続けることを望んでいるだけでなく、国の名を世界に広める素晴らしい代表チームを持つことも同時に望んでいるとも話しています。

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アンワル首相がいつからマレーシアのサッカーに関心を持ち始めたのかはわかりませんが、現場の福利厚生を考えるという発想は、以前自身が元マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン氏と話した際に学んだことだと説明しています。

なおアンワル首相は同時に、金融省からFAMの経営状況を監視するための担当者も派遣することを検討していると話していますが、もしかすると、これがこのニュースの最も重要なポイントからも知れません。5億円を受け取ることを条件に、FAM内部に金融省から人間を送り込んで、色々と疑惑があるとされるFAMの運営の調査に着手するのだとすれば、むしろ賢いアプローチと言えそうです。

パク前ベトナム監督代理人はFAMからの接触がないことを明言

8月30日のこのブログでは、マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長が、現在空席となっているマレーシア代表監督の候補の1人として前ベトナム代表監督のパク・ハンソ氏を検討しているというニュースを取り上げましたが、パク氏の代理人はFAMとは何の交渉も行っていないことを明らかにしています。

これを報じて英字紙ニューストレイツタイムズは、その一方で、代理人のイ・ドンジュン氏は、FAMがパク氏を実際に候補として考えているのであれば、まずは代理人のイ氏を通じて監督就任オファーを出すべきだと、韓国メディアに述べています。

これまでにハミディンFAM会長と話し合いを持ったことはあると話したイ氏は、パク氏への監督就任についてはその席では話題に上がらなかったと述べ、FAMからの監督就任オファーも、また一部メディアで取り上げられているようなパク氏が逆に監督就任をFAMに持ちかけたこともないと明言しています。

キム・パンゴン前マレーシア監督は、今年7月に1年5ヶ月の契約期間を残して辞任し、その後は韓国1部の昨季王者、蔚山HDの監督に就任しています。この結果、現在はパウ・マルティ代表チームコーチが監督代行として、明日から始まるムルデカ大会、そして年末の東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電機カップ」で指揮を取ることになっています。マルティ監督代行については、年内の2大会の結果次第では、来年2025年に行われるAFCアジアカップ2027予選でも指揮を取る可能性があることをハミディンFAM会長を明言しています。

9月1日のニュース・成田恵理、中山未咲両選手加入のサバFAが女子ACL本戦出場を決める・ジョホールがACLEに向けてさらに新戦力獲得-今度は前コロンビアU20MF・外国籍選手枠渋滞中のジョホールがフランシコ・ジェラルディスをスペインクラブへローン・今季不振のクダサポーターがナフジ監督に退任を求める

成田恵理、中山未咲両選手加入のサバFAが女子ACL本戦出場を決める

AFC女子チャンピオンズリーグ(女子ACL)予選C組の最終戦が行われ、MF成田恵理(前WEリーグ長野パルセイロレディース)、MF中山未咲(前なでしこリーグ2部大和シルフィード)両選手が加入したサバFAは、PFCナサフ(ウズベキスタン)を2-1で破っています。この結果、予選C組はサバFAが1勝1分で勝点4、PFCナサフは1勝1敗で勝点3、APF FC(ネパール)は2敗で勝点0となり、サバFAが予選C組1位となっています。これによりサバFAは女子ACL2024/25本選への出場が決定し、中国が開催地となるグループステージA組で武漢江漢大学(中国)、仁川現代製鉄レッドエンジェルズ(韓国)、そして予選A組1位のと同組となることも決定しています。

この女子ACLでは6名の外国籍枠があり、昨季のマレーシア国内女子リーグチャンピオンとして出場するサバFAは、マレーシア女子代表のキャプテンDFシュテフィ・サルジ・カウル、同じく代表のFWインタン・セラーとGKヌルル・アズリン・マズランの加入に加えて、ミャンマー女子代表FWウィン・テインギ・トゥン(ヤンゴン・ユナイテッドFCから加入)、そして成田恵理、中山未咲両選手を獲得しています。

予選の初戦となった8月28日のAPF FCとの対戦では0−0と引き分けているサバFAは、同じ相手に1−0と勝利していたPFCナサフとの対戦となったこの試合では、勝利以外にこの予選C組突破の道はありませんでした。

サバFAのジャスティン・ガナイ監督は、引き分けたAPF FC戦からはジャシア・ジュミリスとウスリザ・ビンティ・ウスマンに代わりハインディー・マスローとヘンリエッタ・ジャスティンを先発XIに起用しています。

前半からPFCナサフが優勢で試合が進む中、GKヌルル・アズリンは何度も好セーブを連発して得点を許さず、両チーム無得点の状況が続きますが、32分に試合が動きます。ミャンマー代表のウィン・テインギ・トゥンが相手DFをかわし、GKの逆をつく先制ゴールを決めて、ついにサバFAがリードを奪います。さらに44分にはシュテフィ・サルジ・カウルのフリーキックをゴール前で捕球し損ねたPFCナサフGKと、このボールに詰めたヘンリエッタ・ジャスティンが交錯、サバFAはPKを得ます。成田恵理選手が蹴ったPKは相手GKにはじかれたものの、このボールに詰めていたウィン・テインギ・トゥンがこれを押し込んでこの試合2点目を決め、サバFAはリードを広げて前半を終了します。

後半に入るとPFCナサフが好機を作り、サバFAが自陣に押し込まれる場面が多くなりますが、GKヌルル・アズリンを中心に粘り強く守り、失点を許しません。しかし残り10分辺りからはPFCナサフの猛攻が続き、88分にはコーナーキックからアルヴィン・エマ・ンゴンジャにヘディングシュートを決められて2-1とサバFAのリードは1点となります。

この試合が引き分けならば1位突破となるPFCナサフはさらに激しく攻めますが、全員でゴール前を固めたサバFAの守備を崩すことができないまま試合が終了し、最高のパフォーマンスを見せたサバFAが、マレーシアの女子チームとしては初めてアジアの舞台に立つことになりました。

この試合のフル試合映像。マレーシアサッカー協会(FAM)のYouTubeより
サバFA対APF FC(ネパール)のフル試合映像。マレーシアサッカー協会(FAM)のYouTubeより
ジョホールがACLEに向けてさらに新戦力獲得-今度は前コロンビアU20MFが加入

今月18日から始まるACLエリート(ACLE)に向けて、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が更なる戦力補強を発表しています。今回は前コロンビアU20代表のホルヘ・ブレゴンをクロアチア1部のHNKリエカから獲得しています。クラブ公式SNSで加入が発表された27歳のオブレゴン選手は、2021年からの3シーズンをHNKリエカでプレーし、今季のUEFAヨーロッパリーグ予選にも出場しています。

8月26日から開いている今季2度目のトランスファーウィンドウで、JDTは既に韓国出身のセンターバック、パク・ジュンホン(タイ1部ラーチャブリーFCから加入)、スペイン出身でマレーシア人の血を引くGKクリスチャン・アバド(スペイン2部エルチェCF U19から加入)、フランス出身のMFエンゾ・ロンバルド(スペイン2部SDウェスカから加入)、アゼルバイジャン代表MFエディ・イスラフィロフ(アゼルバイジャン1部ネフチ・バクー)を既に獲得しており、このブレゴン選手が5人目の新戦力となっています。

外国籍選手枠渋滞中のジョホールがフランシコ・ジェラルディスをスペインクラブへローン

上のニュースでも取り上げたように、ACLエリートに向けて現在開いているトランスファーウィンドウで積極的な補強を行っているジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、今季開幕前に獲得したAMFフランシスコ・「チコ」・ジェラルディスがスペイン2部のCDエルデンセへローン移籍することを発表しています。

ポルトガル年代別代表でもプレーしたジェラルディス選手は今季開幕前にアラブ首長国連邦(UAE)1部のバニーヤースSCから加入しましたが、昨季からJDTでプレーするフアン・ムニスが絶好調なこともあり、今季のマレーシアスーパーリーグ第9節を終えて5試合に出場(先発4試合)し、0ゴール1アシストの記録を残しましたが、ポジション争いに敗れた結果、新戦力のために外国籍選手枠を空けるための移籍となりました。

JDTは既に、アルゼンチン生まれのシリア代表MFジャリル・エリアスをアルゼンチン1部のCAベレス・サルスフィエルドへローン移籍させている他、過去3シーズンで40試合に出場し34ゴールを挙げたFWフェルナンド・フォレスティエリの退団も発表しています。またフォレスティエリ選手とイタリア年代別代表でともにプレー経験があるFWニコラオ・ドゥミトルに至っては、タイ1部ブリーラム・ユナイテッドから移籍しながら、トップチームでは一度も出場することなく、先月からインドネシア1部のPSSスレマンにy針ローン移籍となっています。

FAカップでは4ゴールを挙げるなど、シーズン前の高い評判の片鱗は見せたジェラルディス選手ですが、同じAMFフアン・ムニスがここまでリーグ戦、カップ戦全てに先発し12試合で6ゴール7アシストと絶好調なこともあり、半年も経たずに移籍となってしまいました。

今季不振のクダサポーターがナフジ監督に退任を求める

FIFA国際マッチカレンダーにより、第9節を終えて現在中断しているマレーシアスーパーリーグですが、リーグ8位のクダ・ダルル・アマンFCはインドネシア1部のマルク・ウタラ・ユナイテッド(マルト・ユナイテッド)を招いて「ヌサンタラ・チャレンジ2024」と称する親善試合を行っています。

試合はマルト・ユナイテッドが19分にG大阪ジュニアユース出身で今季からマルト・ユナイテッドでプレーする永松達郎選手がゴールを決めて先制しますが、クダもミロシュ・ゴルディッチが40分にゴールを決めておいつきます。しかし後半には、米国年代別代表の経験を持つビクター・マンサレーとディエゴ・マキシモ・マルティネスの両FWがゴールを決めたマルト・ユナイテッドが3-1と勝利を収めています。

この試合結果を伝えたマレーシア語紙のマジョリティーによれば、試合後はクダのナフジ・ザイン監督に対して退任を求めるチャントなども聞かれた他、試合後のチーム公式メディアでも同様の投稿が見られたと伝えています。

今季はここまで3勝2分3敗ながら、選手に対する給料未払い問題の解決が遅れたことで開幕前に勝点3を剥奪されているクダは、開幕後も給料遅配が怒っているとも言われており、今季の不安定な戦いぶりをナフジ監督1人の責任とするのは違うような気がしますが、貴重な戦力だった司令塔MFハビブ・ハルーンが現在開いているトランスファー・ウインドウで退団するなど、チーム状況は今後、さらに厳しくなりそうで、それに伴いサポーターからの風当たりも強くなりそうです。

8月30日のニュース・サッカー協会会長-前ベトナム代表監督のパク氏も代表監督の候補者・いまさら何を?キム前代表監督の突然の辞任をサッカー協会会長が批判・W杯予選を「中立地」マレーシアで行うパレスチナ代表が合宿入り・マレーシア代表の医療チームに元バルサのチームドクターと理学療法士が加わる

サッカー協会会長-前ベトナム代表監督のパク氏も代表監督の候補者

マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長は、前ベトナム代表監督のパク・ハンソ氏が、現在空席となっているマレーシア代表の監督候補の1人であると述べています。

FAMの本部で行われた記者会見の席上で、1年5ヶ月の契約期間を残しながら先月7月に辞任したキム・パンゴン前代表監督の後任として、メディアなどでも報じれていたパク前ベトナム代表監督も候補者の1人であると、メディアの質問に答える形で認めています。

来月9月4日に開幕するムルデカ大会では、マレーシア代表はパウ・パルディ代表チームコーチを監督代行に大会に臨みますが、ハミディン会長は「キム前監督に勝る」後任を探すために全力を注いでいる最中だと説明し、その中で出てきたのがパク前ベトナム代表監督の名前でした。

ハミディン会長は、FAMが代表監督に求めるものとして代表選手の「質」を理解していることに加え、マレーシア代表がW杯予選やアジアカップ予選で対戦する東南アジアを含むアジア各国の対戦相手の「質」も正しく理解していることであると話しています。

その上でFAMは複数の候補者の中から、現在絞り込みを行なっている最中だと説明しています。

いまさら何を?キム前代表監督の突然の辞任をサッカー協会会長が批判

マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長は、先月、突然辞任し、その後は蔚山HDの監督に就任したキム・パンゴン前代表監督の姿勢を「プロフェッショナルでない」とFAM本部で開かれた記者会見という公の場で批判しています。

マレーシア代表サッカーチームが出場しないにもかかわらず、パリオリンピックに出場したマレーシア選手団の団長を務めていたハミディン氏は、ほぼ1ヶ月近くマレーシアを離れていました。オリンピックも終わりひと段落といったとこのなのか、いまさらになってキム前監督の話を蒸し返し、その辞任の状況を明らかにしています。

ハミディン会長は、キム前監督が辞任する数日前まで、家族の問題を理由に代表チームを離れたいと何度も主張していたとのことです。しかし、その一方でハミディン会長が知らぬ間に、キム前監督は韓国の蔚山HD FCと交渉し、監督就任に合意していたことが明らかになりました。

「私が失望したのは、キム前監督が記者会見を開き、様々な辞任理由の一つとして、代表選手の招集が自身の望むようにできなかったことを挙げたことだ。私はキム前監督がそれを辞任する好機と捉えたのではないかと考えている。結果的に蔚山HD FCと交渉していたわけで、私はこの行為にはプロ意識が欠落していると感じている。」

「FAMはキム前監督の辞任による被害者である。キム前監督は(蔚山HDから)良いオファーを受けたことにより代表監督を辞任したにもかかわらず、、事実とは異なる辞任理由を述べた。FAMはキム前監督の要望にできる限り応じていたため、そういった(辞任理由として挙げた)非難には当たらない。」と述べて、ハミディンFAM会長はキム前監督を批判をしています。

その一方でさらにコメントを求められたハミディン会長は、FAMがキム前監督に対して法的措置を取らなかったのは、在任中の代表チームへの貢献を評価してのことだと説明しました。

「我々は彼の貢献を評価しており、(残りの契約期間の)1年半分の補償を求めることができたが、それはあえて行わなかった。私が唯一失望しているのは、彼が真実を明かさなかったことだ、そこは正直に話して欲しかったと思っている。と述べた、ハミディン会長は、わずか数ヶ月前まではキム前監督が監督としての契約を2025年末まで守ると誓っていたことも明らかにしています。

先月、キム前監督は個人的な理由を挙げて、マレーシア代表監督を2年4ヶ月務めた後に辞任し、その後わずか2週間足らずで、蔚山HD FCの監督に就任しました。

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パリオリンピック選手団の団長となったことで、本当にキム前監督の動向を把握できていたのか、と正直、疑問が残ります。キム前監督への蔚山HDからの監督オファーは、前任者の洪明甫氏が韓国代表監督に就任したことで監督不在となったことによるもので、そういった事態はハミディン会長がFAMのトップとしてサッカーのことだけを考えていれば、何か手を打てたのではないかと思ってしまいます。サッカーがパリオリンピックに出場しないにもかかわらずハミディン会長に選手団団長就任を要請したマレーシアオリンピック協会もなんですが、それを受けたハミディン会長に対しても、それが自身のやるべき仕事だったのかと感じてしまいます。

W杯予選を「中立地」マレーシアで行うパレスチナ代表が合宿入り

「パレスチナ代表を受け入れてくれたマレーシアに心から感謝している。」

2026年W杯アジア3次予選に残っているパレスチナ代表は、第1節では韓国代表とアウェイで、そして続く第2節ではホームでヨルダン代表と対戦します。パレスチナとイスラエルとの紛争が続く中で、現在、パレスチナ代表は韓国戦に向けての合宿をマレーシアで行っています。第2節のヨルダン代表戦を中立地のマレーシアで行うこともあり、マレーシアが合宿地に選ばれたわけですが、冒頭の言葉は、マレーシアでの合宿に参加しているパレスチナ代表のMFモハメド・バシム・アハメド・ラシド(インドネシア1部プルセバヤ・スラバヤ)によるものです。

W杯初出場を目指すパレスチナ代表は、8月27日からKLフットボールスタジアムを使用した合宿を行っていますが、9月5日にソウルのW杯スタジアムで行われる韓国代表戦後には、マレーシアに戻って9月10日にヨルダン代表とこのKLフットボールスタジアムで対戦します。

イスラム教徒が多いマレーシアはパレスチナ支援の姿勢を表明し、アンワル・イブラヒム首相は先月末にイスラエルにより訪問先のイランのテヘランで暗殺されたイスラム組織ハマスのハニヤ最高指導者とも会談しています。また国内ではイスラエルを支援しているとされる欧米企業に対する不買運動も起こっており、その影響を受けたケンタッキーフライドチキン(KFC)は100店舗以上を一時的に閉鎖、また数日前にはスターバックスのフランチャイズを運営する企業が今年6月までの通年決済では9000万リンギ(およそ30億円)の赤字に転落したことを発表、さらにマレーシア政府は対イスラエル直接投資を全会一致で閣議決定するなど徹底しています。

そういった親パレスチナの姿勢からFAMはパレスチナ代表に合宿に必要な施設の提供を申し出ていました。

マレーシアの隣国インドネシアのリーグでプレーする代表戦46試合出場経験があるモハメド・バシム選手は、マレーシア国内でパレスチナの人々との連帯を示す姿勢をこれまで何度も見てきたと話し、マレーシアは単なる「中立地」ではなく、多くのマレーシア人がパレスチナを支援していることから、マレーシアを「ホーム」としてW杯3次予選に臨みたいと、ニューストレイツタイムズの取材に対して話しています。

さらに29歳のモハメド・バシム選手は、チームとして初となるW杯アジア最終予選出場については様々な制約がある中でも周りを驚かせるような結果を出したいとも話しています。

パレスチナは、韓国、ヨルダン、イラク、オマーン、クウェートと同じ予選B組に入っています。今回の予選ではA組からC組までの上位2チームがアメリカ、カナダ、メキシコが共同開催する2026年W杯の出場権を獲得し、各組3位と4地のチームは残る2枠をかけて4次予選で対戦します。

マレーシア代表の医療チームに元バルサのチームドクターと理学療法士が加わる

マレーシア代表の医療チームに元FCバルセロナのスタッフが加わったことをマレーシアの通信社ブルナマが報じています。

今日のニュースでも取り上げたように、先月7月にキム・パンゴン代表監督が辞任し、その後任にはパウ・マルティ コーチが監督代行に就任し、来月9月4日に開幕するムルデカ大会では指揮を取ることになっています。

そんな中、かつてはFCバルセロナのU18のコーチでもあったマルティ監督代行との縁があったのかも知れませんが、マレーシアサッカー協会(FAM)は、バルセロナのトップチームで豊富な経験を持つザビエル・バジェ医師と、エドゥ・マルティネス理学療法士が医療チームに参加することを発表しています。

2021/22シーズンから昨季2023/24シーズンまでバルセロナのトップチームの医師を務めたバジェ氏は、マレーシア代表のコンサルティングドクターとして、代表チームの医療スタッフと密接に協力し、専門知識や指導を提供するということです。。

また、バルセロナででは過去12年間にわたり理学療法士として勤務し、2022年12月から2024年6月までトップチームの理学療法士を務めたマルティネスも既にマレーシア入りしており、代表チームでの仕事に取り掛かっているということです。