4月2日のニュース:アジア杯2027予選最終節ベトナム戦は完敗-改めて東南アジアトップの差が明らかに

再び暗黒の時代へと向かうのか。

日本がウェンブリーでイングランド相手に金星を挙げた数時間前、マレーシアはアジア杯2027年大会予選最終節のベトナム戦に臨み、1−3で敗れています。昨年1月に就任したピーター・クラモフスキー監督にとっては初黒星となります。

この結果、この予選の最終成績は3勝3敗で勝点9の2位となり、予選各組1位のみに与えられた本戦出場枠を獲得できず、予選突破による出場は43年ぶりとなった前回2023年大会に続く連続出場はなりませんでした。(2007年大会はタイ、ベトナム、インドネシアとの共同開催国枠での出場あり)

昨年3月25日のネパール戦と6月10日のベトナム戦は、国籍を偽装した選手が出場していたことでいずれもマレーシアが勝利していましたが、その結果を取り消すとともに0-3でマレーシアの負けとする処分をAFCが発表しました。これによりこの日のベトナム戦でたとえマレーシアが勝利しても、ベトナムの勝点に追いつくことができないことがわかっており、試合前の段階で予選敗退はわかっていました。言わばプライド以外には何も賭かっていないこの試合のマレーシアの先発XIは以下の通りでした。

いずれもマレーシア国外で生まれ育った国籍偽装組と張り合えるだけの力を持つ唯一のマレーシア生まれの選手、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)もこの試合はケガで欠場と、文字通り「手負の虎」となったマレーシア代表。FWはそのアリフ選手に代わりブラジル出身の帰化選手パウロ・ジョズエ(クアラルンプールシティ)が、またサファウィ・ラシド(クアラルンプールシティ)に代わりファイサル・ハリム(スランゴール)が2トップ。中盤は左右のサイドハーフがラヴェル・コービン=オング(ジョホール)とディオン・クールズ(セレッソ大阪)中央にノーア・ライネ(スランゴール)、スチュアート・ウィルキン、ナズミ・ファイズ(いずれもジョホール)、そして3バックはウバイドラー・シャムスル(トレンガヌ)、ハリス・ハイカル(スランゴール)、マット・ディヴィーズ(ジョホール)と、メンバー的には、昨年11月のアジア杯予選ネパール戦からはFW陣以外にメンバー変更はありません。


現地時間午後7時のキックオフながら気温27度、しかし涼しい風も吹くティエン・チュオン・スタジアムでの試合は、マレーシアのディオン・コールズが開始1分でシュートを放つも枠を外すと、今度はホームのベトナムが6分、チュオン・ティエン・アインのコーナーキックからド・ドゥイ・マンが頭で合わせて先制ゴール!ベトナムがあっさりとリードを奪います。

マレーシアも11分にはパウロ・ジョズエのパスに抜け出したファイサル・ハリムが、さらに13分にはファイサルからのパスを受けたスチュアート・ウィルキンが同点ゴールを狙ってシュートを放つもいずれもゴールとはなりません。逆に24分にはグエン・ホアン・ドゥックが放った強烈なミドルシュートがマレーシアのゴールポストを直撃して、あわや追加点か、という危ない場面もありました。

前半を最小失点で折り返したマレーシアでしたが、後半開始直後の51分にブラジル出身の帰化選手グエン・スアン・ソンにゴールを許すと、その4分後にも再びゴールを決められてしまいます。この試合前までで代表戦7試合で8ゴールを挙げていたグエン・スアン・ソンは、昨年6月のベトナム戦ではケガのため出場がありませんでしたが、マレーシアはこの日の試合で初めて対峙しその怖さを思い知らされました。またいずれのゴールも自陣でボールを奪われた後のプレーが起点になっており、課題を残す失点でもありました。

マレーシアは77分、ゴール前のプレーでダニエル・ティン(タイ1部ラーチャブリー)が倒されて得たPKをベトナム1部ハノイ公安でプレーするエンドリック・ドス・サントスが決めて1点を返すも焼け石に水。このまま試合は終わり、6戦全勝のベトナムがF組首位として来年1月にサウジアラビアで開かれるアジア杯2027年大会に、タイ、シンガポールの東南アジア組とともに出場し、マレーシアは韓国と引き分けるなど健闘した前回2023年大会に続く出場とはなりませんでした。


試合後の会見でクラモフスキー監督は、得点機を生かしていれば違った結果になっていただろうと話す一方で、選手を非難する代わりに、最後まで強豪ベトナムに対して闘志を見せた選手たちの精神力を誇りに思うと話しています。

「早い時間帯でゴールを決められたが、選手たちは冷静に対応できた。前半に4、5個あった得点機に同点弾を決めていたら、結果は違ったものになっていたかもしれない。」

「ベトナムは良いチームで、グエン・スアン・ソンと(代表戦2試合目となった)ドー・ホアン・ヘンの2人のブラジル出身選手もとても良かった。ビジターとしてプレーした中で、また我々が過去半年間置かれていた(国籍偽装問題が連日取り上げられる)状況の中での試合だったにも関わらず、選手たちが強い精神力と決意を持ち、集中を切らすことなくプレーしたことに私も心を動かされた。」

「ピッチ上では結果を残しながら、ピッチ外の問題で傷ついた選手たちは、自分自身だけでなく応援してくれるサポーターや国家のため、そして次代に続く選手たちのために全力を尽くしてくれた。」とも話していました。


AFCアジア杯2027年大会予選F組第6節
2027年3月31日@ティエン・チュオン・スタジアム(ベトナム、ナムディン)
ベトナム 3-1 マレーシア
⚽️ベトナム:ド・ドゥイ・マン(6分)、グエン・スアン・ソン2(51分、59分)
⚽️マレーシア:エンドリック・ドス・サントス(89分PK)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。

下の写真はベトナムのサポーターが掲げていたものです。(seasia goalのFacebookより)描かれているのは祖父母がマレーシア生まれと偽り、国籍を偽装してマレーシア国籍を取り、マレーシア代表としてアジア杯予選に出場した7選手です。ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、ジョアン・フィゲイレド、エクトル・へヴェル、ジョン・イラザバル、イマノル・マチュカ、そしてガブリエル・パルメロが「自分たちは虎(マレーシア代表の愛称)ではなく、観光客だ。」と皮肉たっぷりに述べていますが、外国からやってきたこの7名の観光客と彼らを手引きした国内にいる一連の集団のせいで、マレーシアのサッカーはFIFAランキング170位代に低迷したおよそ8年前の暗黒時代に逆戻りさせられてしまいそうです。

またアジア杯出場とならなかったことで、今後、マレーシア代表が何を目標にするのかも気になります。今年は8月に新設のFIFAアセアンカップ、そして9月から10月にかけては東南アジアサッカー連盟(AFF)が主催するアセアン選手権「ヒュンダイカップ」が予定されています。このような近い日程で東南アジアのチーム同士の対戦が続くことの意義は別として、これら目先の大会で好成績を残すために現在のメンバーを維持するのか、それとも次のアジア杯大会予選/W杯年予選を見据えた将来的なチームへとシフトするのかも重要な観点となります。

FIFA国際マッチカレンダーで開催されるFIFAアセアンカップに対して、カレンダー外の開催となるヒュンダイカップでは、これまでの例を見てもジョホールを筆頭に所属選手の召集を拒むクラブも出ることが予想されるので、例えばアセアンカップは主力中心のマレーシアA、そしてヒュンダイカップは若手主体のマレーシアBで臨む、といった方針も考えられます。特にマレーシア代表チームの運営がマレーシアサッカー協会から独立して以来、A代表強化への執着の一方で、U23代表はU23アジア杯予選、U23アセアン選手権と公式戦以外は合宿も国際親善試合も行なっておらず、放置されたままであることからも、U23代表、さらにはその下の年代別代表の強化も必要でしょう。

またAFCは次回大会となる2031年、そしてのその次の大会となる2035年の開催国決定について、そのプロセスを中止すると発表、さらに次回大会以降はUEFA欧州選手権と同じ偶数年に開催する案も浮上しています。そうなれば次のアジア杯は2032年開催となることが濃厚で、この大会を目指すのであれば、若い選手を登用する代表チーム強化方針も考えられます。(代表チーム運営陣がそこまでマレーシアサッカーのことを考えていればの話ですが…。)