2週間ぶりの更新となってしまいました。
マレーシア代表でプレーする7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の代表資格を巡って、FIFAの規律委員会は昨年9月25日、帰化書類の偽造があったとして、選手には12か月間の全てのサッカー活動禁止と罰金、マレーシアサッカー協会(FAM)には罰金の処分を科すことを決定しました。この処分に対して7選手とFAMは不服申し立てを行うも、昨年11月上旬には申し立てを受けたFIFA控訴委員会がこの処分を支持することを発表しました。
すると今度は翌12月上旬、FAMと7選手はFIFAに提出された書類が偽造されたことを認める一方で、偽造書類作成への関与を否定するとともに、12ヶ月間の出場停止など制裁の軽減を求めてCASに控訴を行いました。これを受けたCASは最終判断が出されるまでの間はFIFAによる制裁処分を執行猶予とすることを発表、3月4日には7選手の1人でもあるジョアン・フィゲイレド(ジョホール・ダルル・タジム)がACLエリートのラウンド16の広島戦に出場し、ジョホールの勝利に貢献しています。
そしてその翌日3月5日にはCASが最終決定を発表し、処分対象期間の12か月間は短縮されなかったものの、処分内容は「サッカー活動禁止」から「公式戦出場停止」に軽減されました。これを受けてフィゲイレド選手は決定発表後の3月11日の広島との2ndレグには出場できなくなりました。
またCASの最終決定を受けて、AFCも代表資格がない選手を起用したとしてマレーシア代表への処分を発表し、昨年3月のネパール戦(マレーシアが2−0で勝利)と同6月のベトナム戦(こちらもマレーシアが2-0で勝利)、について、その結果がいずれも0-3でマレーシアの負けとする処分を下しています。これにより、それに以前にFIFAによって試合結果が変更された3試合と合わせて、5試合の試合結果が全て0−3となりました。
| 試合日 | 大会 | 対戦相手 | 元の結果 | 変更後 |
| 2025年3月25日 | アジア杯2027 予選 | ネパール | 2-0 (勝) | 0-3 (負) |
| 2025年6月10日 | アジア杯2027 予選 | ベトナム | 4-0 (勝) | 0-3 (負) |
| 2025年5月29日 | 国際親善試合 | カーボベルデ | 1-1 (分) | 0-3 (負) |
| 2025年9月4日 | 国際親善試合 | シンガポール | 2-1 (勝) | 0-3 (負) |
| 2025年9月85日 | 国際親善試合 | パレスチナ | 1-0 (勝) | 0-3 (負) |
これにより、アジア杯2027予選は5戦全勝、勝点15でF組首位だったマレーシアは、3勝2敗で勝点9となる一方で、マレーシアに代わって首位となったベトナムの勝点は15となり、本日予定されているF組最終節の結果に関係なくベトナムがF組首位を確定させるとともに、来年1月にサウジアラビアで開催されるアジア杯本大会の出場を決めています。
本日3月31日午後8時(マレーシア時間、日本時間午後9時)にベトナム北部の都市ナムディンのティエン・チュオン・スタジアムでキックオフとなるF組最終節ベトナム対マレーシアの試合は、ベトナムのアジア杯出場が決まっているからかチケットの売れ行きが悪いといった報道も見られ、またベトナムのキム・サンシク監督は2−0で勝利すると余裕の発言をしていますが、マレーシアにとってはプライドを賭けた勝負になります。この試合で敗れれば、やはり国籍偽装選手がいなければベトナムとは渡り合えないという評価になるわけで、昨年からマレーシア代表の指揮を取るピーター・クラモフスキー監督も、7勝1分と無敗で終えたはずの代表監督1年目が、結局、勝利したのは格下のラオスとネパールだけの3勝4敗となってしまいました。
しかしクラモフスキー監督このベトナム戦で招集したメンバーには疑問の疑問の声が上がっています。その選手は34歳のDFジュニオール・エルドストール(ジョホール・ダルル・タジムII)です。ジョホールのセカンドチームで3部のセミプロA1リーグでプレーするジョホール・ダルル・タジムIIに所属するエルドストール選手は、今季は1部スーパーリーグでの出場がなく、カップ戦1試合の28分のみの出場にも関わらず、昨年10月のアジア杯予選ラオス戦、11月のアジア杯ネパール戦に続く代表招集です。クラモフスキー監督は、エルドストール選手の経験と特に「ロッカールームでのリーダーシップ」を評価しての招集であると説明しています。
また招集されないことで疑問の声が上がったのが、ナチョ・メンデスでした。スペイン生まれで27歳のMFは、スペイン2部のスポルティング・デ・ヒホンで200試合以上に出場している選手ですが、このメンデス選手は祖父がマレーシアのペナン出身ということで昨年7月にマレーシア国籍を取得したヘリテイジ帰化選手で、マレーシア国籍取得と同時期にジョホール・ダルル・タジムに移籍しています。しかし国籍偽装7選手が出場しなかった昨年10月と11月のアジア杯予選には、代表に招集されませんでした。今季はジョホールでリーグ戦では全試合にベンチ入りし、先発18試合、途中出場2試合と全ての試合に出場しています。またACLエリートでもラウンド16の広島戦では3月4日の1stレグ、そして3月11日の2ndレグいずれにも先発してフル出場しています。そのメンデス選手が大小に招集されないことが明らかになると、メンデス選手の持つマレーシアのルーツが国籍偽装の7選手と同様に偽装なのではないかという声が上がりました。しかし、クラモフスキー監督は体調不良を理由に今回のベトナム戦に招集しなかったと説明していますが、多くの国内サッカーファンはその説明を信じていないようです。
その一方でケガからの代表復帰を果たしたのがいずれもジョホールのDFフェロズ・バハルディンとシャーミ・サファリです。25歳のCBのフェロズ選手は、ベトナム戦に出場すれば2024年10月以来の代表戦となり、シャーミ選手が出場すれば2023年9月以来の代表戦となります。2024/25シーズンにはリーグ最優秀DFに選ばれたフェロズ選手は昨年1月に膝前十字靭帯を痛めて長期離脱、そしてマレーシアのサッカーファンなら誰でも知っている2018年の当時のスズキカップ(現ヒュンダイカップ)東南アジア選手権、タイ戦でのスーパーゴールが代名詞のシャーミ選手は、一昨年11月に痛めたやはり膝前十字靭帯のケガからの復帰です。
またいずれも国内で5シーズン以上プレーし、マレーシア国籍を取得と同時に今回代表入りが期待されていたブラジル出身で国内リーグ最多ゴール記録を更新中のFWベルグソン・ダ・シウバ(ジョホール・ダルル・タジム)、そしてオーストラリア出身のCBジャンカルロ・ガリフオコ(クアラルンプールシティ)は招集されませんでした。これはクラモフスキー監督が、例の7人がいない代表でもベトナムに通用することを見せたいという願望(あるいは自身)によるものなのではないかという気がします。
この試合で代表引退が噂されているパウロ・ジョズエ(クアラルンプールシティ)の去就なども含め、アジア杯出場権を失ったいわば「手負の虎」がどこまで「黄金の龍」(ベトナム代表のニックネーム)と戦えるのでしょうか。
