ヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)の国籍偽装疑惑に揺れるマレーシア代表に、新たな帰化選手が加わりそうだと英字紙ニューストレイツタイムズが伝えています。ブラジル出身のFWベルグソン・ダ・シウバ(ジョホール)とオーストラリア出身のDFジャンカルロ・ガリフオコ(KLシティ)は、いずれもマレーシアリーグで5年以上ブレーしていますが、3月31日のAFCアジアカップ2027年大会予選ベトナム戦前にマレーシア国籍を取得し、この両選手が予選突破がかかるこの重要な試合でマレーシア代表デビューを果たすだろうと、ピーター・クラモフスキー監督が述べたことを報じています。(詳しくは明日の記事で取り上げます。)
さてマレーシアカップ準々決勝により中断していたスーパーリーグは第18節の6試合が2月21日と22日に行われています。今節の注目カードは熾烈な2位争いを続けるクチンシティとスランゴールの直接対決です。またマレーシアは2月19日に断食月(ラマダン)に入ったため、マレー半島部での試合はラマダン中の断食が開けるのが午後7時30分前後であることから、ラマダン終了まで午後10時キックオフとなります。
なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節第18節はペナンの試合はありません。(試合のハイライト映像は、注がない限りマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeより。)
平野選手退場で4連敗のヌグリ・スンビランは9位転落
マレーシアカップ準々決勝ではスランゴールに大敗するなど、開幕時の勢いを失っているリーグ8位のヌグリ・スンビラン。それでもホームでは今季5勝3分3敗の成績を残し、敗れたのはリーグ首位のジョホールと2位のスランゴールの2チームだけです。この試合でホームに迎えたのは同9位のイミグレセンで、今季は敵地で1−1と引き分けている相手です。
開始8分で記録上はルクマン・ハキムのゴールになっていますが、実際にはゴール前でシュートをクリアしようとしたイミグレセンDFペドロ・サントス・フィルホのオウンゴールでヌグリ・スンビランが先制します。スランゴールに大敗したマレーシアカップ準々決勝同様、この試合でも攻撃に全振りしたヌグリ・スンビランでしたが、19分にはこの試合がリーグ戦初先発となった平野佑一選手が危険なタックルでイエローをもらいます。しかしその後はVARが入って一発レッドとなってしまいます。
試合後の会見でヌグリ・スンビランのニザム・ジャミル監督がこの試合の節目と語った退場劇で作戦が狂い始めます。この試合の先発でリーグ規定上限となる外国籍選手6名を使っていたヌグリ・スンビランは、マレーシア人選手に代えて新たに外国籍選手を起用することができず、結局チーム得点王のボスニア出身FWヨヴァン・モティカに代えて韓国出身のMFアン・サンス、そしてこの試合ではキャプテンとして先発したFWハディン・アズマンに代えてDFハリス・サムスリを投入します。
しかしイミグレセンは、それまでもシュートがゴールポストに当たるなど不運が続いていたエドゥアルド・ソーサが40分に同点ゴールを決めて、前半を同点で折り返します。この時もアイマン・ユスニのパスを受けたソーサは完全にフリーで、スランゴール線同様、DF陣のマークが完全に外されており、GKアブドル・ガニはその強烈なシュートに反応すらできませんでした。
後半に入ると数的有利を活かしてイミグレセンがゴールに迫りますが、GKアブドル・ガニが至近距離からのシュートを何度も好セーブで防ぎ、試合は同点のまま終盤へ進みます。そして決勝弾は85分でした。ペナルティエリアの外でボールを持ったソーサが再びフリーとなった一瞬の隙をついてシュートを放つと、ダイブしたGKアブドル・ガニの指先を掠めるようにゴールインし、イミグレセンが今季5勝目を挙げるとともにヌグリ・スンビランと入れ替わりで8位に浮上しています。
昨季12位のヌグリ・スンビランにしてみれば、現在の9位も躍進ではあるものの、開幕前の期待が高かっただけに、復活の兆しが見えないチームを率いるニザム・ジャミル監督の退陣を求める声も大きくなっています。
マレーシアスーパーリーグ2025/26 第18節
2026年2月21日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ)
ヌグリ・スンビラン 1-2 イミグレセン
⚽️ヌグリ・スンビラン:ルクマン・ハキム(9分)
⚽️イミグレセン:エドゥアルド・ソーサ2(40分、85分)
ヌグリ・スンビランの平野佑一選手は先発して、19分にレッドカードで退場、佐々木匠選手は86分から出場し、試合終了までプレーしています。また常安澪、大城蛍の両選手はこの試合ではベンチ外でした。
「大家」のPDRMが「店子」のクランタンを破り5ヶ月ぶりの勝利
イスラム教の断食月「ラマダン」が始まっているマレーシア。イスラム教徒は断食はもちろんですが、、信仰をより深め、より自身を清めようとする心を養うときでもあり、また欲望や悪を遠ざけるとても神聖なときでもあります。このイスラム教徒の中でも原理主義主義者の多いクランタン州では、このラマダン期間中は州政府が娯楽を禁じており、プロサッカーの試合もそこに含まれます。クランタン州コタ・バルのスルタン・ムハマド4世スタジアムをホームとするクランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC(クランタン)は、リーグの特別措置によりラマダン中はPDRMが使用するスランゴール州のMBSスタジアムを仮のホームとすることが発表されています。
間借りするMBSスタジアムでのクランタンの初戦の相手は、ここをホームとするPDRMでした。リーグ10位の「店子」クランタンに対して、5ヶ月間勝利がない最下位13位の「大家」PDRMですが、今季ここまで唯一の勝利が9月に行われたクランタン戦だったことを考えると、PDRMにとっては相性は悪くない相手でした。
そしてこの試合唯一の得点は26分でした。パク・テスのパスを受けたPDRMのアイズルル・アシュラフがクランタンDF2人をかわしてゴール。この1点を守り切ったPDRMが13試合ぶり、そして昨年9月以来154日ぶりの勝利を挙げています。
マレーシアスーパーリーグ2025/26 第18節
2026年2月21日@MBSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
クランタン 0-1 PDRM
⚽️PDRM:アイズルル・アシュラフ(26分)
トレンガヌは引き分けを挟んで3連勝
前節ではスランゴールとホームで引き分け、無敗記録を3まで伸ばしていたリーグ5位トレンガヌが、12位のマラッカに順当に勝利しています。
試合開始からマラッカを圧倒したトレンガヌですが、先制したのは36分でした。ヘルファネ・カスタネールからの折り返しをアキヤ・ラシドが蹴り込んで、トレンガヌがリードを奪います。しかし追加点が取れないまま前半は1−0とトレンガヌがリードして終了します。
マラッカもゴール前で長身のFWアフメド・シャムスルディンにボールを集めて同点の機会を伺いますが、同点ゴールは意外なところからでした。76分にゴール前の混戦からマハリ・ジャスリがシュートを放つもトレンガヌDFシャルル・ニザムがこれをブロック、しかし大きく跳ね返ったボールをペナルティエリアの外にいたディノ・カレシッチがボレーで蹴り込み、マラッカがトレンガヌに追いつきます。
しかしその2分後、右サイドを攻め込むアキヤ、カスタネール、シェルヴォニ・マバツショエフにマラッカDF陣が引き寄せられると、カスタネールは左サイドで完全にフリーとなったバキウディン・シャムスディヘパス。これをバキウディンが落ち着いて決め、トレンガヌがリードを奪い返します。1点のリードを守り切ってトレンガヌが引き分けを挟んで4連勝し、12位のマラッカはこの日勝利を挙げた最下位PDRMと勝点で並びました。
マレーシアスーパーリーグ2025/26 第18節
2026年2月21日@ハン・ジェバ・スタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカ 1-2 トレンガヌ
⚽️マラッカ:ディノ・カレシッチ(76分)
⚽️トレンガヌ:アキヤ・ラシド(36分)、バキウディン・シャムスディン(78分)
ジョホールは今季7度目の失点も危なげなく17連勝
開幕から17連勝と国内では敵なしのジョホール。スランゴールやクチンシティなど上位チームとの対戦もほぼ終えており、リーグ12連覇はほぼ確定。
この試合で対戦したサバからは、シーズン2度目のトランスファーウィンドウでFWアイディン・ムヤギッチを獲得しましたが、このムヤギッチが大成功。この試合も含めて出場3試合で5ゴール上げ、ACLエリートで上位進出を目指すチームのローテーションに貢献しています。
またジョホールでこれだけ活躍しながらフィリピン代表になぜか招集されることがないスペイン出身のオスカル・アリバスも2発、そして3月のアジア杯予選ベトナム戦には間に合わなそうですが、年内にはマレーシア国籍取得予定のアルゼンチン出身のマヌエル・イダルゴもゴールを挙げたこの試合は、48分でジョホールが0−6とリードするなど、一方的な展開でした。
マレーシアスーパーリーグ2025/26 第18節
2026年2月22日@リカス・スタジアム(マラッカ州マラッカ)
サバ 1-6 ジョホール
⚽️サバ:クリス・オンドン・ムバ(88分)
⚽️ジョホール:ベルグソン・ダ・シウバ(8分PK)、アイディン・ムヤギッチ2(22分、40分)、オスカル・アリバス2(25分、48分)、マヌエル・イダルゴ(46分)
スランゴールがクチンシティとの2位争いを制す
現在2位のスランゴールはキム・パンゴン監督就任以来、7勝2分0敗と絶好調。一方の3位クチンシティは、消化した試合数がスランゴールより1試合少ないものの、リーグ戦ではジョホール以外に敗れていません。この試合はKLシティも含め熾烈になる2位を抜け出すのはどのチームなのかを占う大事な試合です。
この試合は現地観戦しました。イスラム教の断食月ラマダンに入って初めての試合でしたが、午後10時キックオフと通常より1時間遅い時間もあってか、観客の出足は遅かったですが、最終的にバックスタンドはほぼ満員となっていました。
試合開始からホームのスランゴールはスタンドの声援を背に激しくクチンシティ陣内に攻め込みますが、、谷川由来、ジェイムズ・オクウォサ、ロニー・ケルヴィンのDF陣を中心に連携よく守る相手を崩せません。エースのクリゴール・モラエス、両サイドのファイサル・ハリム、アルヴィン・フォルテスもことごとくクチンシティDFに跳ね返され、また強引に放ったシュートもクチンシティGKハジク・ナズリが落ち着いて対処し、スランゴールは決定機を作ることができません。
一方のクチンシティはラマダン・サイフラー、ペトラス・シテムビらがスランゴールゴールに迫りますが、こちらもCBサフワン・バハルディン、GKカラムラー・アル=ハフィズが好守で失点を許しません。
0-0で前半を折り返し、共にゴールがないまま試合が進むと、この試合で引き分けると自力での2位確保が難しくなることを知っているスタンドに重い空気が立ち込め始めます。しかし、そこで今季のリーグ得点王をベルグソン(ジョホール)と争うクリゴール・モラエスがピンチを救います。右サイドのクエンティン・チェンからのクロスはゴール前でオクゥオサがクリアしたものの、そのボールがモラエスの足元へ。これを躊躇なく蹴り込むとこれがゴールとなり、86分にスランゴールがついに先制します。
しかしこの試合はこの後、後味が悪いものになりました。アディショナルタイムに全員が上がったクチンシティの最終ラインを抜け出したモラエスがドリブルで一気にクチンシティのペナルティエリアへ侵入します。一対一となったGKハジクがモラエスの足元に飛び込んで倒しますが、主審はそのまま流します。そしてそのこぼれ球に詰めたFWペルナンブコを今度はペナルティエリアの外でスライディングで倒してしまいます。しかしここでなぜかVARの介入はありませんでした。試合のハイライト映像で見る限りは明らかにファウルなのですが、主審の判断が間違えていたとしてもVARが介入すべき場面のように思え、スタンドからもVARを求める大合唱が上がる中、試合は続行されました。その後のクチンシティの反撃を抑えたスランゴールが勝利しましたが、もしクチンシティが同点にしていたら、禍根を残す判定であったことは明らかでした。
2位を死守したスランゴールですが、この両チームは来月予定されているマレーシアカップ準決勝でも対戦します。リーグ戦では1勝1敗と五分の成績を残しているだけに、マレーシアカップでも痺れるような試合が見られそうです。
マレーシアスーパーリーグ2025/26 第18節
2026年2月22日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 1-0 クチンシティ
⚽️スランゴール:クリゴール・モラエス(86分)
クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。
2ヶ月給料未払いのKLシティはDPMMに快勝で3位浮上
スランゴール、クチンシティと2位を争うクアラルンプールシティ(KLシティ)はホームにDPMMを迎えての対戦でした。
2ヶ月分の給料未払いや小利休などの支払いがないことが明らかになったKLシティですが、リーグ8位でここまで5勝3分8敗の相手に、9分にサファウィ・ラシドの珍しいへディンシュートによるゴールで先制します。さらに18分にはサファウィが再び頭で決めて、あっという間にリードを広げると、後半にも、2点を追加したKLシティが快勝。ブラジル出身の帰化選手パウロ・ジョズエに続き、オーストラリア出身のCBジャンカルロ・ガリフオコもマレーシア国籍取得が間近と報じられており、マレーシアリーグでの経験豊富な両選手に加え、KLシティ移籍後はかつての輝きを取り戻しつつあるサファウィ・ラシドの活躍で、2位争いだけでなく、おそらくジョホールが相手となるマレーシアカップ準決勝でも一波乱を起こしそうなチームになっています。
マレーシアスーパーリーグ2025/26 第18節
2026年2月22日@KLフットボールスタジアム(クアラルンプール)
クアラルンプールシティ 4-0 DPMM
⚽️クアラルンプールシティ:サファウィ・ラシド2(9分、18分)、パウロ・ジョズエ(61分)、ヴィクトル・ルイス(70分)
2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第18節終了)
| チーム | 試 | 勝 | 分 | 負 | 得 | 失 | 差 | 勝点 | |
| 1 | ジョホール | 17 | 17 | 0 | 0 | 79 | 7 | 72 | 51 |
| 2 | スランゴール | 17 | 11 | 2 | 4 | 35 | 17 | 18 | 35 |
| 3 | クアラルンプール | 17 | 9 | 6 | 2 | 31 | 15 | 16 | 33 |
| 4 | クチンシティ | 16 | 9 | 4 | 3 | 29 | 9 | 20 | 31 |
| 5 | トレンガヌ | 17 | 8 | 4 | 5 | 31 | 25 | 6 | 28 |
| 6 | ペナン | 16 | 5 | 3 | 8 | 20 | 27 | -7 | 18 |
| 7 | イミグレセン | 16 | 5 | 3 | 8 | 24 | 24 | -10 | 18 |
| 8 | DPMM | 17 | 5 | 3 | 9 | 21 | 44 | -23 | 18 |
| 9 | ヌグリ・スンビラン | 16 | 4 | 5 | 7 | 21 | 23 | -2 | 17 |
| 10 | クランタン | 17 | 4 | 3 | 10 | 14 | 32 | -18 | 15 |
| 11 | サバ | 15 | 3 | 5 | 7 | 20 | 35 | -15 | 14 |
| 12 | マラッカ | 16 | 2 | 4 | 10 | 11 | 36 | -25 | 10 |
| 13 | PDRM | 17 | 2 | 4 | 11 | 13 | 45 | -32 | 10 |
2025/26スーパーリーグ得点トップ10(第18節終了)
| 得点 | 選手名 | 所属 | |
| 1 | 17 | クリゴール・モラレス | スランゴール |
| 17 | ベルグソン・ダ・シウバ | ジョホール | |
| 3 | 12 | ジャイロ・ダ・シウバ | ジョホール |
| 4 | 10 | ロナルド・ンガ | クチン |
| 10 | サファウィ・ラシド | クアラルンプール | |
| 10 | *アイディン・ムヤギッチ | ジョホール | |
| 7 | 8 | ディラン・ウェンゼル=ホールズ | ペナン |
| 8 | エドゥアルド・ソーサ | イミグレセン | |
| 9 | 7 | アリフ・アイマン | ジョホール |
| 7 | ジョアン・フィゲイレド | ジョホール | |
| 11 | 6 | ヤン・マベラ | トレンガヌ |
| 6 | カレッカ | トレンガヌ | |
| 6 | ヨヴァン・モティカ | ヌグリ・スンビラン | |
| 6 | ジョセフ・エッソ | ヌグリ・スンビラン | |
| 6 | チェチェ・キプレ | ペナン | |
| 6 | オスカル・アリバス | ジョホール |
