2月21日のニュース:ラマダン関連2題他<br>イミグレセンはラマダンを機に本拠地をペナンからプルリスへ移動<br>ラマダン中は本拠地で試合ができないクランタンはPDRMの本拠地を一時間借り<br>給料未払いでFIFAから処分を受けたトレンガヌが状況を説明

2月19日から始まっているイスラム教の断食月「ラマダン」。イスラム暦では9月に当たるこの月は、イスラム教の五行である「信仰告白」、「礼拝」、「喜捨」、「巡礼」と並ぶ「断食」を1ヶ月間行います。ラマダン中は日の出から日没まで飲食を断つことは知られていますが、「嘘をついたり、他人を騙すこと」、「喧嘩や口論など争うこと」、「淫らな行為や考えを持たないこと」なども禁止される行為となります。

この時期のマレーシアは、地域にもよりますが日の出が午前7時15分から30分頃、日没が午後7時25分から30分頃なので、イスラム教徒はほぼ半日断食することになりますが、この断食はマレーシアリーグにも少なからず影響を及ぼします。例えばラマダン中のリーグ戦はマレー半島部では、キックオフの時間が従来の午後9時から10時と1時間遅くなります。しかしそれだけでない、というのが今日のニュースです。

イミグレセンはラマダンを機に本拠地をペナンからプルリスへ移動

マレーシア1部スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、現在リーグ9位のイミグレセンFCから申請されていた本拠地の移転について、ペナン州立スタジアムから、マレーシア最北端のプルリス州にあるトゥンク・サイド・プトラ・スタジアムへと変更することを承認したと発表しています。これによりイミグレセンFCは今季終了までホームマッチをトゥンク・サイド・プトラ・スタジアムで開催するということです。

今季初めて1部スーパーリーグに昇格したイミグレセンFCは、マレーシア内務省入国管理局(イミグレーション)を母体とするクラブです。昨季までスランゴール州にあるマレーシア国民大学UKMのスタジアムを本拠地として使用していましたが、その最大観客収容数が2000人と、1部スーパーリーグの規定を満たさなかったことから、開幕前に新たな本拠地探しを始めました。最初はマレーシア北部にあるクダ州のダルル・アマン・スタジアムを本拠地としようとしました。ここを本拠地とするクダ・ダルル・アマンFCが3部A1セミプロリーグに降格した結果、クダ州や隣接するプルリス州などマレーシア北部の州にはトップリーグでプレーするクラブがなくなったため、北部のサッカーファン開拓を期待しての移転案でした。しかしダルル・アマン・スタジアムを所有するクダ州政府が、州外のクラブの本拠地とすることはできないと拒否し、移転案は頓挫します。

続いて候補に上がったのが、今回の移転先となるプルリス州のトゥンク・サイド・プトラ・スタジアムでした。しかし、プルリス州政府からの認可に手間取ったこともあり、観客収容数40000万人とスーパーリーグの基準を満たし、既にペナン州に本拠地を持つペナンFCの使うシティ・スタジアムとも競合しないとして、ペナン州でもペナン島側ではなくマレー半島側にあるペナン州立スタジアムが本拠地となりました。

しかしラマダン中のスーパーリーグは、マレー半島では午後10時キックオフとなる一方で、ラマダン前の2月4日にMFLがペナン州立スタジアムの視察を行い、その夜間照明の明るさがリーグ基準を満たしていないことが問題になりました。ちなみに今季のイミグレセンFCは、ホームでの試合を全て夕方に行っていましたが、それはこの照明設備が理由でした。ペナン州立スタジアムではラマダン中は夕方の試合が行えないこと、そしてプルリス州政府がイミグレセンFCを受け入れる姿勢を示したことで、一気に本拠地移転が進みました。

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今回、イミグレセンFCが本拠地を移転したプルリス州はマレーシア最北の州であるとともに、最小の州でもあります。北は隣国タイと、南はクダ州と接するプルリス州の面積は819平方キロメートルで、東京23区(627平方キロメートル)より一回り大きいくらいと言えばわかりやすいでしょうか。人口もマレーシアの州では最小のおよそ30万人、クダ州とともに北部の米作地帯として知られています。


ラマダン中は本拠地で試合ができないクランタンはPDRMの本拠地を一時間借り

また現在リーグ10位のクランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFC(クランタンFC)は、ラマダン中に限りPDRM FCが本拠地としているスランゴール州スラヤンのMBSスタジアムでホームゲームを行うことも明らかになっています。

MFLの公式発表によると、クランタンのホーム、スルタン・ムハマド4世スタジアムがあるクランタン州の州政府はラマダン期間中、州内でのあらゆる娯楽やスポーツイベントを禁止していることから、クランタンFCから出されていた本拠地以外でのホームゲーム開催の申請を受け、これを許可したとしています。

この結果、今節第18節のスーパーリーグでは、クランタンFCが借りることになるMBSスタジアムでホームゲームを開催しますが、その相手がそのMBSスタジアムを元々ホームとして使用している「大家」の’PDRM FCという奇妙な状況になっています。

ラマダン中、クランタンFCはリーグ戦3試合、カップ戦1試合がホームゲームとして組まれており、クランタンFCのアクマル・リザル監督代行は、従来のホームから400キロ以上も離れたMBSスタジアムでのホームゲームはチームにとっては厳しいものになるだろうと話しています。

ラマダン前のホーム最終戦となったチャレンジカップ1回戦ではイミグレセンFCを破り、ペナンFCとの準決勝進出を決める、リーグ戦でも直近の2試合で負けなしと好調が続いているクランタンFCですが、選手とってには体力面だけでなく精神面については大きなチャレンジであるとマレーシア語紙ブリタハリアンの取材に答えたアクマル監督はこの勢いを絶やさぬよう、試合に向けた準備をしっかりしていきたいと話しています。

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クランタンFCのホームがあるクランタン州はマレー半島北部の東海岸に面した州で、その州都コタバルは、太平洋戦争開戦時に日本軍が上陸した場所でもあります。この時、時差の関係からハワイ真珠湾への攻撃よりも数時間早く上陸作戦が行われており、いわば太平洋戦争開戦の地とも言える場所です。

このクランタン州はイスラム教原理主義政党のPASが州政府の与党としてイスラム教に基づく様々な政策を導入しており、マレーシアの中で最もイスラム色が強い地域でもあります。映画館では座席の区分が、またスーパーなどでも支払いレジの列が男女で分けれているなど、マレーシアの他の地域でもあまり見られないようなこともここでは普通です。

その一方でクランタン州は様々な伝統文化が現在も保存されている地域でもあります。マレーシア航空のロゴのモチーフになっていたり、現行の1リンギ紙幣にもその姿が見られる伝統的な凧「ワウ」は、今でも地元の人々が凧揚げに興じています。また「ガシン」とよばれるコマ回しも人気の娯楽です。木製や金属製のコマを回し、最も長く回り続けたものが勝つという勝負に大人が真剣になります。また食文化ではバタフライピー(蝶豆)を使って色付けしたご飯のナシ・クラブが特徴的です。青く色付けされた米は初めて見ると驚きますが、味は普通のご飯で、生のもやしやハーブ、こちらではロングビーンと呼ばれるインゲンに似た豆などと一緒に、濃厚な魚醤のブドゥ、ココナッツ都唐辛子で作るココナッツサンバルと一緒に提供されます。ちなみにナシはマレーシア語でご飯、クラブはサラダ・和物といった意味です。


給料未払いでFIFAから処分を受けたトレンガヌが状況を説明

クアラルンプールシティFC(KLシティ)に続き、同じマレーシア1部スーパーリーグのトレンガヌFC(トレンガヌ)にもトランスファーウィンドウ3回の新規選手獲得禁止処分がFIFAから科されたことが明らかになっています。

昨年、この問題が初めて報じられた昨年5月には、2023年から2025年までトレンガヌに在籍したクロアチア出身FWイヴァン・マムートが主張するような9ヶ月に及ぶ未払い給料はないとして、トレンガヌは名誉毀損など法的措置も時差ないという声明を出していました。しかし今月2月9日に、新規選手獲得禁止処分対象のクラブとして再びトレンガヌの名がFIFAの公式サイトに掲載されたことから、この問題が再燃しています。

この問題に関連して、マムート選手とトレンガヌとの契約内容も明らかになっています。マムート選手がこの給料未払い問題を持ち込んだFIFAの紛争解決室(DRC)が公開した書類では、マムート選手の2023年の契約総額は99万5000リンギ(現在のレートではおよそ4000万円)で、そのうち給料は1ヶ月あたり8万3000リンギ(同330万円)となっています。しかしクラブの公式契約書には月給が26,616リンギ(同106万円)と三分の一以下の金額が書かれていたことから、この差額が給料未払い問題による処分の原因であるとされています。

クラブ、選手双方に対して事実関係を明らかにするために説明を求める声が上がっていましたが、2月16日にはトレンガヌが声明を発表しています。これによるとクラブはFIFAによる処分を回避するため、規定の期限内にマムート選手の未払い給料を完済する予定であるとし、既にその一部の支払いが行われ、マムート選手とFIFAには支払い証明書を提出したとしています。

さらに声明では「(トレンガヌFCを運営する)トレンガヌFC社は、現行の規則に従って下されたいかなる決定にも従う」とする一方で、「透明性を維持して活動する」と声明で述べていますが、FIFAのDRCが明らかにした契約内容とクラブの公式契約内容の違いについての説明はいまだにされていません。

マムート選手は、ルーマニア1部FCSB(旧ステアウア・ブカレスト)を退団後の2023年1月にトレンガヌに加入し、リーグ戦やカップ戦、AFCカップ(現ACL2)合わせて35試合で23ゴールを挙げています。1年契約だったマムート選手は2023年12月に契約を延長しましたが、翌2024/25シーズンは、2024年4月のプレシーズンマッチでアキレス腱を痛め、マレーシアを離れて手術を受けました。その後は回復に時間がかかった結果、このシーズンは出場なしに終わり、トレンガヌとの契約を終えました。