ACLエリート東地区第7節:ジョホールは広島に逆転負けでリーグステージ敗退危機

2月10日にACLエリート東地区第7節が行われ、マレーシアから出場しているジョホール・ダルル・タジム(ジョホール)はJリーグの広島と対戦し、1-2と逆転負けしています。

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ACLエリートの前身、ACLでジョホールが本大会に初めて出場したのは2019年でした。それ以来、今季2025/26シーズンまで7大会連続出場を果たしているジョホールはこれまでJクラブでは鹿島、名古屋、神戸、川崎、浦和の5チームと対戦し、その成績は1勝1分8敗です。そこで広島戦前までの10試合の試合結果を振り返ってみます。

2019年:グループステージ4位敗退

本大会デビューとなった2019年シーズンのACLでは、ジョホールはグループステージE組では1勝1分4敗で最下位で敗退に終わりましたが、その記念すべき1勝した相手が鹿島アントラーズ戦でした。そしてこれが現在に至るまで、ジョホールがJリーグクラブとの対戦で唯一、勝利した試合です。

 2019年3月5日@カシマサッカースタジアム(現メルカリスタジアム、鹿島)
 鹿島 2-1 ジョホール
 ⚽️鹿島:平戸太貴、セルジーニョ 
 ⚽️ジョホール:ジオゴ

 2019年5月8日@ラーキン・スタジアム(ジョホール州ジョホールバル)
 ジョホール 1-0 鹿島
 ⚽️ジョホール:シャフィク・アフマド

2020年:出場後に出場辞退

2020年のACLグループステージではジョホールはヴィッセル神戸と同組でした。その神戸とは第1節で対戦し、アウェイで1−5と大敗する最悪のスタートでした。しかしその後がさらに苦難が待っていました。この年は新型コロナ感染拡大により日程が大きく変更更された後、ジョホールが入ったグループステージF組は、それ以前に延期されていた試合も含めた第3節以降はカタールでの集中開催が決まりました。しかしこの時、マレーシア政府は自国民に不要不急の出入国を禁じており、ジョホールはカタールへ向けて出国できず、結局、出場辞退を選ばざるを得ませんでした。またこれにより、第1節の神戸戦などジョホールの試合記録は全て無効となりました。このため、下の記録も非公式記録扱いになっています。

 2020年2月12日@ノエビア・スタジアム(神戸)
 神戸 5-1 ジョホール
 ⚽️神戸:小川慶治朗3、古橋亨梧1、ドウグラス1 
 ⚽️ジョホール:サファウィ・ラシド(PK)

2021年:グループステージ3位敗退

新型コロナの影響で集中開催となった2021年のACLグループステージでは、ジョホールは名古屋グランパスと同じG組となりました。タイで開催されたこのステージは15日間で各チームが6試合を行う強硬日程でした。全試合が無観客で行われたこのステージでジョホールは名古屋に2敗し、1勝1分4敗で3位に終わっています。

 2021年6月22日@ラジャマンガラ・スタジアム(バンコク)
 ジョホール 0-1 名古屋
 ⚽️名古屋:阿部浩之

 2021年7月4日@ラジャマンガラ・スタジアム(バンコク)
 名古屋 2-1 ジョホール
 ⚽️名古屋:マテウス・カストロ(PK)、阿部浩之 
 ⚽️ジョホール:ラマダン・サイフラー

2022年:グループステージ初突破もベスト16で敗退

前年に続いてグループステージが集中開催となった2022年のACLでは、ジョホールが入ったI組はマレーシアのジョホールが集中開催地となりましたが、ジョホールはあらゆる手を使ってノックアウトステージ進出を目論み、これが大成功し、I組1位で初のノックアウトステージ進出を果たしています。
 このステージは4月15日から30日まで行われましたが、この時期はちょうどイスラム教の断食月ラマダンの最中でした。そこでイスラム教徒の選手がいるジョホールは全ての試合が、断食が明ける日没後の午後10時キックオフとなった一方で、もう一方の試合はマレーシアではまだ強い日差しが残る午後5時キックオフとなりました。またジョホールは2020年に開場し、ピッチにはバミューダグラスが敷かれたスルタン・イブラヒム・スタジアムで全試合を行いましたが、もう一方の試合はいわゆる「ジョホールバルの歓喜」の舞台となったラーキン・スタジアムが試合会場でした。こちらはカウグラスと呼ばれるアカツメクサが敷かれており、さらにピッチも固く、ボールは高く弾むなどなかなかなセッティングになっていました。
 この年は川崎フロンターレと同組で、対戦結果は1分1敗だったものの、国内リーグを優先して若手主体で臨んだ広州FC(中国)、そしてホン・ミョンボ現韓国代表監督が率いていた蔚山現代(現蔚山HD)にそれぞれ2勝し、蔚山現代と引き分けていた川崎を抑えて4勝1分1敗でノックアウトステージに進出しました。

 2022年4月21日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
 川崎 0-0 ジョホール

 2022年4月24日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
 ジョホール 0-5 川崎
 ⚽️川崎:脇坂泰斗、小林悠2、マルシーニョ、チャナティップ・ソングラシン

初めて出場したACLノックアウトステージでは浦和と埼玉スタジアムで対戦しましたが、開始8分でPKによる先制を許すと、前半だけで3失点し、終わってみればノックアウトステージ初挑戦は0−5の大敗でした。

 2022年8月19日@埼玉スタジアム2002(浦和)
 ジョホール 0-5 浦和
 ⚽️浦和:アレクサンダー・ショルツ(PK)、ダヴィド・モーベルグ2、キャスパー・ユンカー2

2023/24年:グループステージ3位敗退

ACLが秋春制に移行した2022/23年シーズンでは、ジョホールは前年に続きI組に入り、再び川崎フロンターレと同組になりました。このシーズンは川崎にホーム、アウェイ共に敗れ、3勝0分3敗のグループ3位となり敗退しています。

 2023年9月19日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
 ジョホール 0-1 川崎
 ⚽️川崎:マルシーニョ

 2023年11月28日@等々力陸上競技場(川崎)
 川崎 5-0 ジョホール
 ⚽️川崎:家長昭博、レアンドロ・ダミアン、マルシーニョ、小林悠、山根視来

2024/25年:リーグステージ突破もベスト16で敗退

このシーズンからACLエリートとして生まれ変わった大会は、フォーマットも大きく変更されました。日本からはヴィッセル神戸、川崎フロンターレ、そして横浜Fマリノスと3チームが出場しましたが、この年は残念ながらジョホールとの対戦はありませんでした。リーグステージを4勝2分1敗で終えたジョホールは、最終節に山東泰山(中国)が出場を取りやめ、その結果、各チームとの対戦成績が無効となったことにより順位が4位に繰り上がりました。リーグステージを突破したジョホールでしたが、ホームアンドアウェイで行われたベスト16ではブリーラム・ユナイテッド(タイ)に敗れています。

マレーシア国内では現在、リーグ11連覇中で、今季も優勝濃厚で12連覇達成となりそうなジョホールですが、以上のように、Jクラブはジョホールにとってはなかなか越えられない壁になっています。


今季のACLエリートでは、この試合前まではリーグステージ6位で2勝2分2敗で勝点8のジョホールは、この日の広島戦、そして次節の神戸戦と前述のように相性が悪いJクラブとの連戦となります。

試合前の会見でシスコ・ムニョス監督は、選手たちが試合中は集中力を切らさないようにし、最後まで100%のプレーが必要だと述べています。その一方でマレーシアとの気温差が大きい日本の寒さの問題について問われると、「熱帯のマレーシアから来た我々にとっては、広島の寒さは非常に厳しいのは否定しないが、それでもこの環境になれなければならない」と述べて、寒さを言い訳にすることはしない姿勢を見せています。

とはいえ、試合日のジョホールの最高気温は32度だった一方で、寒波に見舞われていたこともあり広島はこの日の朝は氷点下を記録した地域が多かったことが報じられており、30度近い気温差は2日前に来日していたとは言え、短期間で慣れるのは難しかったでしょう。(しかも日本に到着した日も雪だったことが、クラブ公式SNSに投稿されていました。)

この日の対戦相手、広島サンフレッチェとは初顔合わせとなったジョホールですが、その広島はグループステージ出場の12チーム中、6試合で3失点と最小失点を誇っているだけでなく、今季のACLエリートでは6試合で3勝2分1敗、昨季のACL2では準々決勝でライオンシティセイラーズ(シンガポール)に敗れるなど、アジアではその強さを発揮しています。ライオンシティセイラーズとの準々決勝も相手を圧倒しながら、誤って出場資格にない選手を起用したことにより没収試合となった結果、敗退しており、ライオンシティセイラーズが決勝まで進んだことを考えると、没収試合がなければACL2で優勝していたのは広島だった可能性もありました。

また試合前会見に臨んだジョホールのCBシェーン・ローリーは、アウェイだからといって守備的な試合をするつもりは毛頭ないと述べ、良い結果となるように全力で試合に臨みたいと答えていました。

そして以下がこの試合の両チームの先発XIです。ジョホールはマレーシア生まれのマレーシア人はキャプテンのアフィク・ファザイル1人だけで、25番のジョアン・フィゲイレドはブラジル生まれのヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)ですが、国籍偽装疑惑を持たれている選手です。(現在はスポーツ仲裁裁判所CASで審議中のため、最終判断が出るまでは試合出場可能になっています。)また58番のGKアンドニ・ズビアウレは国内リーグでは出場選手登録がされていない純粋なACLエリート要員で、このズビアウレ、23番のCBエディ・イスラフィロフ、36番のRBラウル・パラ、5番のLBアントニオ・グラウデル、24番のLWオスカル・アリバスがスペイン出身(ただしグラウデル、アリバス両選手はフィリピン国籍も持っています)、18番のMFネネがポルトガル出身、そして残る4選手は全員ブラジル出身というメンバーが先発しています。

試合の方は、既にあちこちで報じられている通り、ジョホールが先制しながら、早い時間に退場者を出してしまったことで、同点、逆転を許して敗れるという展開でした。

立ち上がりこそGKズビアウレの攻守で失点を防いだジョホールでの先制点はJクラブ対策としてなのかどうかはわかりませんが、先月加入したばかりの前FC東京(V・ファーレン長崎からローン移籍)のマルコス・ギリェルメからでした。広島のDF山崎大地のバックパスをカットしてゴールを決める理想的な展開で始まった試合でした。

しかし、16分に悲劇が待っていました。ヘディングでのクリアを試みるもボールには届かず、目の前でゴールされるのが嫌だったんだろうなぁ。ジョホールのCBホナタン・シウバが思わず手を伸ばしてクリアし、1発でレッドになってしまいました。失点は嫌だったんだろけど、このゴールが決まってもまだ同点だっただけに、このような早い時間帯でやるべきファウルではなかったです。

このホナタン・シウバのハンドにより与えられたPKを鈴木章斗に決められて同点となっただけでなく、残る70分以上を10人で戦わざるを得なくなったジョホールは、広島の猛攻を受けながらも前半はなんとか持ち堪えて1-1で試合を折り返します。

しかし後半開始直後の47分に再び鈴木選手に今度は頭で決められてリードを2点に広げられると、反撃もできず、試合はこのまま1−2でジョホールが破れています。

この結果順位を7位へと下げたジョホールは、上位8チームが進むノックアウトステージ進出圏内にはまだ残っているものの、最終節となる次節第8節、2月17日の対戦相手がリーグ首位の神戸なだけに、勝点8で並ぶ蔚山HD、江原FC(いずれも韓国)、勝点6の成都蓉城(中国)との7位・8位争いは予断を許しません。

2025/26ACLエリート東地区リーグステージ第7節
2026年2月10日@ピース・ウィング広島(広島県広島市)
広島 2-1 ジョホール
⚽️広島:鈴木章斗2(18分PK、47分)
⚽️ジョホール:マルコス・ギリェルメ(3分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナの公式YouTubeチャンネルより。