2月11日のニュース:国籍偽装疑惑の7選手に対してスポーツ仲裁裁判所が最終判断までの処分一時執行停止を決定-ジョホールは所属する3選手を早速、試合で起用、クチンシティは所属先から契約解除となっていたパルメロを獲得

昨日はマレーシアを代表するジョホールがACLエリート東地区第7節でJリーグの広島とアウェイで対戦し、逆転で敗れています。この日の広島は強烈な寒波により朝方はほとんどの地域で氷点下の冷え込みだったと報じられていますが、こちらマレーシアはこの時期でも最高気温が30度を超える日も普通にあります。ちなみにこの日のジョホールは最高気温32度を記録していましたので、気温差が30度近くあったかも知れない中での試合は大変だったことでしょう。

もう一つ残念だったのは、現時点でマレーシア最高の選手であるアリフ・アイマンがこの広島戦にケガで出場できなかったこと。23歳ながら4シーズン連続でマレーシアリーグ年間最優秀選手を獲得している「マレーシアの至宝」を日本のサッカーファンやJクラブに見て欲しかった…。

国籍偽装疑惑の7選手に対してスポーツ仲裁裁判所が最終判断までの処分一時執行停止を決定

マレーシア代表でプレーする7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に対して、FIFAが国籍偽装を理由に12ヶ月のサッカー活動禁止処分を科されてしたのは昨年9月のことでした。

同年6月10日に行われたFCアジア杯予選では、11年ぶりとなるベトナム戦勝利に貢献したこの選手たちは、祖父母がいずれもマレーシア(正確には英国の植民地であった英領マラヤ)出身ということで、マレーシア国籍を取得した上での代表入りでした。

3-0で勝利したベトナム戦で先制ゴールを決めたFWジョアン・フィゲイレド(ブラジル出身)、2点目を挙げたFWロドリゴ・オルガド(アルゼンチン出身)の他、この試合に先発したDFファクンド・ガルセス(アルゼンチン出身)、DFジョン・イラザバル(スペイン出身)、MFエクトル・ヘヴェル(オランダ出身)、そして途中出場となったFWイマノル・マチュカ(アルゼンチン出身)、DFガブリエル・パルメロ(スペイン出身)に対し、この試合の翌日6月11日にはこれら7選手の代表資格について「ある筋」(FIFAはこの「ある筋」が誰なのかを明らかにしていません)からFIFAに問い合わせがあり、FIFAがその問い合わせについての真偽を改めて捜査したところ、7選手の祖父母全員がマレーシア国外で生まれていたことが明らかになりました。

FIFAの規律委員会はこの7選手が国籍詐称を行っていたと断定し、昨年12月に罰金2000スイスフラン(およそ41万円)と12ヶ月間のあらゆるサッカー活動への参加禁止、そして監督責任を果たしていなかったとしてマレーシアサッカー協会(FAM)にも罰金35万スイスフラン(およそ7100万円)を科す決定を下しました。

さらにFIFAは、マレーシア代表選手として資格がないも関わらず出場したとして、国際親善試合として行われた5月29日のボベルデ戦(1-1で引き分け)、9月4日のシンガポール戦(2-1で勝利)、そして9月8日のパレスチナ戦(1−0で勝利)の3試合について、いずれも向こう試合として0−3でマレーシアが敗れたという結果に変更することを発表しています。これにより右肩上がりで上がっていたFIFAランキングも影響を受けています。

しかしこの処分に納得できない7選手とFAMは、この規律委員会による処分に対して不服申し立て(アピール)を控訴委員会に行い、再審理を求めました。しかし昨年11月に控訴委員会も規律委員会の処分を支持し、その理由も公開しました。

公開された理由の中には、選手の祖父母の出生証明の原本では文字が書かれて部分が、FIFAに提出された「出生証明のコピー」ではその一部が白塗りになっていたことや、マレーシア国籍申請については本来ならば綿密な審査に時間がかかるところを、この7選手については最長で10日、最短ではなんと申請当日に国籍が付与されていたことが明らかになっています。これに対してFAMはFIFAに提出した書類は代理人が用意したものを誤って提出したことや、国籍付与についてはマレーシアの法律に則った手続きであることなどを主張しましたが、控訴委員会はこのアピールを却下し、昨年12月にFIFAの裁定が確定しました。(なお、マレーシア国籍の付与については、マレーシア政府国民登録局が、「祖父母の出生届の原本が見つからなかった」という説明を元に、新たに「原本のコピー」なるものを作成した上で7選手に対して国籍を付与していたことものちに判明しており、「原本が見つからない」という説明を鵜呑みにして、国籍付与に必要な書類を偽造したことになる政府機関の対応や、その政府機関に対してそのような影響力を行使できた人物がいたことに怒りの声も上がっています。

FIFAの控訴委員会が規律委員会の裁定を支持すると発表すると、7選手とFAMは最後の手段としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)にFIFAによる処分撤回を求めて今年1月に控訴を行いました。

そして1月26日には、CASが選手からのアピールを認め、最終判断が下されるまではFIFAによるサッカー活動停止処分が「一時執行停止」されることを発表し、7選手に対して自由な活動を認めるとしています。しかし、その一方でこの措置はあくまでも暫定的なものでありその最終判断には全く関係ないものである点も強調しています。

CASのヴァネッサ・トレイシー広報担当官は、これらの暫定措置は、案件が全面的に審理される前に出される一時的な判断であると述べた上で、2月26日に出される予定の最終判断が選手に不利なものとなった場合、クラブは引き続き規則上のリスクにさらされることになると明言しています。

FIFA懲戒規程第19条では、出場資格のない選手が公式戦に出場した場合、違反チームは3-0での敗戦として試合を没収されると規定されており、この規定は、国内リーグやAFC主催大会を含む、FIFA公認のすべての大会に適用されるとしています。これにより、処分が一時執行停止となっている7選手を起用するクラブは、CASの最終判断が選手に不利に出た場合は、時間を遡っての制裁や試合没収が科される可能性があることを理解する必要があることもトレーシー広報官は強調しています。


ジョホールのフィゲイレド、へヴェル、イラザバルは早速出場

そんな中でFWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルの3選手が所属するジョホール・ダルル・タジムは、CASの処分一時執行停止が発表されてから3日後の1月29日に行われた東南アジアクラブ選手権「ショピーカップ」のシャン・ユナイテッド(ミャンマー)戦で、早速、この3選手を先発起用し、フィゲイレド選手はゴールも挙げています。続く1月31日の国内リーグ戦でもフィゲイレド選手は先発、へヴェル選手は途中から出場しています。

また昨日2月11日に行われたACLエリート東地区第7節でJリーグの広島と対戦したジョホールはフィゲイレド選手が先発して90分まで出場する一方で、へヴェル選手とイラザバル選手はベンチ入りしたものの出場はありませんでした。


アラベスのガルセスも出場2試合目で先発復帰

またスペインではデポルティーボ・アラベスに所属するDFファクンド・ガルセスが、1月31日のエスパニョール戦で後半から途中出場しますが、これが昨年9月24日のヘタフェ戦以来15試合ぶりの試合出場でした。そして2月8日のヘタフェ戦ではついに先発に復帰しています。アラベスのエドゥアルド・コウデ監督は、現在14位のチームにとって影響力がある選手でもあるガルセス選手の復帰を歓迎するコメントを出しています。


ベレス・サルスフィエルドのマチュカは練習復帰

またアルゼンチンでは、ベレス・サルスフィエルドに所属するイマノル・マチュカ選手の練習復帰が報じられています。なおベレス・サルスフィエルドのギジェルモ・バロス・スケロット監督は長期間に渡りサッカーから離れていたマチュカ選手について、試合に出場するだけのフィットネスレベルにはないとして、すぐに試合に出場するかどうかについては名言を避けています。


オルガドはチリ1部コキンボ・ウニドに加入

またアルゼンチン出身のFWロドリゴ・オルガドは、今年6月までのレンタル移籍でチリ1部のコキンボ・ウニドに加入することがクラブの公式SNSを通じて発表されています。オルガド選手は、アルゼンチン1部のヒムナシアからコロンビア1部のアメリカ・デ・カリへローン移籍していましたが、FIFAによる出場停止処分が発表されるとアメリカ・デ・カリは契約期間を1年以上残して昨年11月に契約を解除していました。オルガド選手は2023年シーズンには、細長いチリのほぼ中央に位置する港湾都市コキンボに本拠地を持つこのクラブでプレー経験があるということです。


所属先がなかったパルメロはクチンシティへ加入

そして現在マレーシアスーパーリーグ2位のクチンシティはDFガブリエル・パルメロ獲得を公式SNSで発表しています。パルメロ選手は、FIFAによる出場停止処分が出ると所属していたスペイン4部CDテネリフェとの契約が解除されていました。

この発表の数日前には、地元ファンがサラワク州クチンの空港でパルメロ選手に遭遇したという投稿や、パルメロ選手自身がアップロードした写真などがSNSに上がっており、加入が発表されるのは時間の問題と噂されていました。

*****

今回のFIFAによる処分の結果、所属するクラブから契約解除された選手は全てジョホールと契約するのではないかという噂もありましたが、所属先がなかったパルメロ選手は結局、クチンシティに落ち着きました。しかし、このクチンシティには、今季ジョホールから移籍したGKハジク・ナズリ、FWラマダン・サイフラーの両マレーシア代表選手、そしてやはりジョホールからいずれもローン移籍中のFWガブリエル・ニステルロイ、MFダニアル・アミルがおり、この4選手は現在リーグ2位のクチンシティの躍進に大きく貢献していることから、その関係性がかなり良好に見えるクチンシティとジョホールの間では裏で何かしらの密約があり、パルメロ選手がジョホールではなく、クチンシティとの契約となったのではと勘ぐってしまいます。