2月6日から8日にかけて2025/26マレーシアカップ準々決勝の3試合が行われています。16チーム(今季は1部スーパーリーグ13チーム、3部A1セミプロリーグ3チーム)しか参加しないこの大会は、ホームアンドアウェイ方式の1回戦を勝ち上がった8チームは準々決勝に、また1回戦で敗れた8チームは、マレーシアカップ開催中は手持ち無沙汰となるためチャレンジカップと呼ばれるもう一つのカップ戦に出場します。
マレーシアがまだ英国の植民地「英領マラヤ」と呼ばれていた1921年にマラヤカップとして始まったこの大会は、今季2025/26シーズンが第99回大会。ちなみに同じ年に始まったサッカー天皇杯は町田ゼルビアが優勝した2025年大会は105回大会です。これは天皇杯が太平洋戦争で、マレーシアカップは日本による英領マラヤ占領でいずれも大会が行われなかった1942年から1945年などの期間について、サッカー天皇杯は開催されなかった年の大会もカウントしているのに対し、マレーシアカップは行われなかった大会はカウントしていないことから、大会回数が異なっています。
このマレーシアカップで最も優勝回数が多いのはスランゴールで33回、しかもスランゴールは過去98回大会中50回決勝に進出しています。しかし最後に優勝したのは2015年、決勝進出も2022年が最後と近年は思うような成績を残せておらず、古豪と言えば聞こえは良いですが、過去の栄光は今いずこ、と言った状況です。
このスランゴールに次ぐ優勝回数を誇るのはシンガポールの24回(決勝進出43回)です。かつてはマレーシアリーグでプレーしていたシンガポール(当時の名称はシンガポールFA)。一国の代表チーム(ただし途中から外国籍選手も加入)が他国の国内リーグでプレーすることはなかなか想像できないでしょうが、そのシンガポールは1994年シーズンを最後にマレーシアリーグから撤退、その後は自国内にリーグをつくっており,この優勝回数が増えることはなさそうです。
通算優勝第3位はペラの8回。しかしペラは給料未払い問題から今季のクラブライセンスが交付されず、クラブは解散してしまいました。しかしペラの本拠地ペラ州のサッカー協会が新たにペラFAというクラブを新設し,今季から3部A1セミプロリーグにも参戦しています。このペラFAは今季のマレーシアカップにも出場しましたが、1回戦でクアラルンプールに敗れています。
通算優勝回数4位はクダの5回ですが、クダも今季は1部スーパーリーグでプレーしていません。今季のクラブライセンスは交付されたものの、運営資金不足を理由にリーグを離脱し,今季は3部A1セミプロリーグでプレーしています。しかしこのクダについては状況がやや不雑で、クラブライセンスを交付されたのはクダ・ダルル・アマンFCという名のクラブですが、クダ州サッカー協会がクダFAというクラブを自前で立ち上げ、やはりA1セミプロリーグに参戦しています。クダFAはクダ州サッカー協会がクダ州政府から公的資金による支援を受けて運営される一方、クダ・ダルル・アマンFCはかつてのクダの流れを汲むクラブとして民営化されたクラブです。
クダと並んで優勝回数4位なのがジョホールです。近年はマレーシアのサッカーと言えばジョホールの名前が出るほど、名実ともにマレーシアのトップクラブとなっていますが、現在のジョホール、正確にはジョホール・ダルル・タジムFCが設立されたのは2013年と比較的歴史が浅く、伝統という点では古豪スランゴールやクラブ創設100年を超えるペラなどに劣ります。しかし、マレーシアリーグ100戦連続無敗記録を作るなど国内では無双するジョホールは現在マレーシアカップ3連覇中で、マレーシアカップでもクダやペラの記録を抜くのは時間の問題でしょう。
クアラルンプールはアウェイで貴重な引き分け
この試合のクアラルンプールシティ(KLシティ)の先発XIを見て、自分の目を疑いました。リーグ戦で8ゴールを挙げているサファウィ・ラシド、それぞれ4ゴールを挙げているクパー・シャーマンとパウロ・ジョズエのいずれもFWの3選手が先発から外れていました。リーグ戦の総得点27点の半分以上を挙げている3選手のベンチスタートについて、試合後の会見でKLシティのリスト・ヴィダコビッチ監督は「フィジカルな理由」によるものとしか説明しませんでした。
しかしそれも理解できなくもありません。KLシティはミロスラフ・クリヤナッチ前監督ら3名の給料未払い問題が解決していないとして、昨年12月にFIFAからトランスファーウィンドウでの新規選手獲得処分を科されています。この結果、2月1日に閉じた今季2度目のトランスファーウィンドウでは戦力補強ができず、また決して厚いとは言えない選手層のせいで、前述の3選手を含めた主力はここまでのリーグ戦とカップ戦それぞれで出突っ張りの状態が続いていました。
一方のトレンガヌも膝の靭帯断裂により母国フランスへ戻ってリハビリを行っていたFWヤン・マベラが4ヶ月ぶりにチームに合流したことがこの試合前には報じられていましたが、まだ試合出場に十分な体調ではないようです。開幕からの7試合で6ゴール2アシストと活躍しながら、ケガによりチームを離れ、それに合わせるようにトレンガヌも調子を落とし、結果的にバドルル・アフザン前監督が解任されるなど苦境に陥っていました。そんな中でもマベラ選手のチーム合流には大きな期待の声も上がりましたが、実際にはトレーニングもままならない状態のようです。
そんな両チームの対戦となった準々決勝1stレグは、ホームのトレンガヌが試合開始直後こそ積極的に攻めますが、KLシティも徐々にペースを掴み始め,さらにカウンターからの逆襲を狙いますが、トレンガヌDF陣がシュートを打たせません。そんな中でトレンガヌに先制点が生まれます。新戦力のキュラソー代表FWヘルファネ・カスタネール(インドネシア1部プルシス・ソロより移籍)がペナルティエリアの外から豪快に蹴り込んだシュートが決まり、開始から16分でトレンガヌがリードを奪います。
トレンガヌがリードを守って前半を終えると、後半にはKLシティにも好機が訪れます。47分には、この試合が今季初先発となったマジェル・ルイスのパスをゴール前で受けたヴィクトル・ルイスがゴールに押し込むだけのボールを大きく外してしまいます。その後、KLシティのヴィダコビッチ監督は70分を過ぎたあたりから、ベンチスタートのFWトリオを次々と導入し、ゴールを狙います。そして84分、サファウィ・ラシドとゴルカ・ラルセアのパス交換から出たボールをニコラオ・ドゥミトルがGKと交錯しながらも押し込み、ついにKLシティが同点に追いつきます。その後はアディショナルタイムでのトレンガヌの猛攻にも耐え、2018年マレーシアカップ優勝チームのKLシティがアウェイで貴重な引き分けに持ち込んでいます。このカードの2ndレグは2月15日にKLシティのホーム、KLフットボールスタジアムで行われます。
2025/26マレーシアカップ準々決勝1stレグ
2025年2月6日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 1-1 クアラルンプールシティ
⚽️トレンガヌ:ヘルファネ・カスタネール(16分)
⚽️KLシティ:ニコラオ・ドゥミトル(84分)
クチンシティは安定の戦いぶりでDPMMに先勝
共にボルネオ島にホームを持つ両チームの対戦「ボルネオダービー」となった準々決勝は、逆転でクチンシティがホームのブルネイDPMMに先勝しています。
先制したのはアウェイのクチンシティでした。この試合が移籍後初先発となったジェロム・エムパコ・エタメ(レバノン1部アル・アヘドから加入)がダニアル・アスリからのパスからゴールを決め、クチンシティが39分に先制します。
後半開始直後にはクチンシティのキャプテン、ジェイムズ・オクゥオサがゴール前へのクロスをクリアミスしてオウンゴールし,一時は同点となりますが、DPMMもペトラス・シテムビのコーナーキックに反応したGKハイミー・アブドラ・ニャリンがこのボールにパンチングすると、ボールはそのままゴールイン。こちらもオウンゴールとなり,クチンシティが64分に逆転します。その後はラマダン・サイフラーのゴールによる追加点でリードを広げたクチンシティが先勝し,ホームのクチン州立スタジアムで行われる2月14日の2ndレグで再びDPMMと対戦します。
2025/26マレーシアカップ1回戦1stレグ
2025年2月7日@ハスナル・ボルキア国立競技場(ブルネイ)
DPMM 1-3 クチンシティ
⚽️DPMM:ジェイムズ・オクゥオサ(50分OG)
⚽️クチンシティ:ジェロム・エムパコ・エタメ(39分)、ハイミー・アブドラ・ニャリン(64分OG)、ラマダン・サイフラー(84分)
クチンシティの谷川由来選手は、先発してフル出場しています。
土壇場のPKでスランゴールが敵地で先勝
ヌグリ・スンビランとの試合の前日の2月7日にスランゴールは声明を発表し、公式サポーターグループのウルトラス・セランゴール(通称ウルトラセル)に対して、3試合の入場禁止処分を科すことを発表しました。この結果、ウルトラセルはマレーシアカップ準々決勝の2試合、そしてリーグ第18節のクチンシティ戦と、今季のスランゴールにとって重要な3試合に入場禁止となりました。
これは2月1日のリーグ第17節トレンガヌ戦のためにトレンガヌ州を訪れていたウルトラセルのメンバーが、市内にかかる橋を発煙筒を焚きながら行進するなどして交通を妨げる行為を行ったことに端を発します。トレンガヌ州警察は事情聴取のためおよそ400名のメンバーを拘束、そして主要メンバーとして33名が再勾留されていました。しかしその中にいた中学生や大学生を含む21人の尿から大麻の反応が出たことにより、薬物所持や使用による逮捕者も出るなどの事件となっていました。
クラブ後援者であるセランゴール州スルタン、スルタン・シャラフディン・イドリス・シャー殿下、そしてクラブ会長であるセランゴール州ラジャ・ムダ(皇太子)のトゥンク・アミール・シャー殿下もこの状況は容認できるものではなく、特にスランゴールのユニフォームを来てフーリガン行為を行うことは断じて許されないと、ウルトラセルの行為を激しく非難しています。
さらにスランゴールは、薬物の使用または所持で有罪と認定された個人については、即日発効で3年間、セランゴールのいかなる試合への入場も禁止されるとしており、この日の対戦相手のヌグリ・スンビランもスランゴールのからの要請を受け、年間パスの保持者などウルトラセルのメンバーと特定できる人物の入場を拒否することも発表しています。
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リーグ戦での対戦成績は1勝1敗と譲らない両チームの対戦は、キム・パンゴン監督が先月1月に就任以来、7戦無敗のスランゴールが開始からからファイサル・ハリムとクリゴール・モラエスの両FWを中心に積極的に攻め込み、ホームのヌグリ・スンビランを圧倒、加入以来、相手のエースを封じてきた大城蛍選手もモラエスの強烈な寄せにボールを失う場面もありました。しかしこの日はヌグリ・スンビランのGKアズリ・ガニも絶好調。スランゴールに合計11本のシュートを放たれながらもゴールを許しません。一方のヌグリ・スンビランの攻撃陣は、30分過ぎにジョセフ・エッソが放ったシュートがこの試合の初めてのシュートとなるなど前半はわずかシュート2本と防戦一方でしたが、結局、前半は0-0で終了します。
後半に入り、ヌグリ・スンビランもペースを上げるものの、スランゴール優勢で試合が進む中、ヌグリ・スンビランのニザム・ジャミル監督は新加入の平野祐一選手を62分に投入します。すると絶妙のパスをスランゴールDFラインの裏に送るなど好機を演出し,それ以降は平野選手がボールを持つたびにスタンドから歓声が上がります。ジャミル監督はチーム得点王のヨヴァン・モティカも投入して先制点を狙いますが、スランゴールGKカラムラー・アル=ハフィズが立ちはだかり、両チームとも無得点のまま試合は終盤へ向かいます。
76分には自陣からのロングパスを受けたジクリ・カリリのクロスに合わせたモラエスがゴールを決めたかに見えましたが、VARが入り、シュート直前のトラップでボールが手に僅かに当たっていたことから認められませんでした。この判定に激しく抗議したキム監督にFIFAレフェリーでもあるヤシン・ハナフィア主審からイエローが出されるなど熱が入った試合は、アディショナルタイムのPKで決まりました。
90+7分にゴール前でヌグリ・スンビランDFハリス・サムスリが交錯したモラエス選手が倒れると、VARが入り、今度はペナルティキックが与えられ、これをモラエス選手自身が決めてゴール!その直後に試合が終了し,アウェイのスランゴールが1点のリードを持って2月14日の2ndレグに臨みます。
2025/26マレーシアカップ1回戦1stレグ
2025年2月8日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ)
ヌグリ・スンビラン 0-0 スランゴール
⚽️スランゴール:クリゴール・モラエス(90+7分PK)
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手はキャプテンマークを巻いて先発し,87分に交代しています。また大城蛍選手も先発し,こちらはフル出場しています。平野祐一選手は62分から出場し,試合終了までプレーしています。なお常安澪選手はベンチ外でした。
なお準々決勝のもう一試合であるジョホール対マラッカは、2月13日にジョホールのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)で1stレグが行われます。
