2025/26マレーシアカップ1回戦<br> 試合結果とハイライト映像(2)

トランスファーウィンドウも閉じ、落ち着きを取り戻したマレーシアリーグ。しかし今週末はリーグ戦はお休みで、代わりに行われるのがマレーシアカップの準々決勝。マレーシアカップは決勝以外はホームアンドアウェイ方式で行われるため、正確には準々決勝の1stレグが予定されています。そこで既に終了した1回戦の8カードを簡単に振り返っておきます。

1921年(大正10年)に第1回大会(当時の名称はマラヤカップ)が開催されたマレーシアカップは、やはり同じ1921年に第1回大会が開かれた日本のサッカー天皇杯とともにアジア最古のカップ戦の一つです。なおサッカー天皇杯は昨年、町田ゼルビアがヴィッセル神戸を破って優勝したのが第105回大会でしたが、現在開幕中の2025/26シーズンのマレーシアカップは第99回大会となっています。これはサッカー天皇杯が太平洋戦争などで中止になった大会も含めてカウントされている一方で、マレーシアカップは当時英領マラヤと呼ばれていたマレーシアが日本による占領により大会が開催されなかった1942年から1945年までと、戦後の混乱期の1946年と1947年の計6年間の大会開催がなかった年をカウントしていないためです。

第1回大会は、当時、「海峡植民地」と呼ばれていた英国の直轄植民地のシンガポール、マラッカ、ペナン、そして英国から送られた行政官が実質統治した英国保護領の「マレー連合州」4国中、パハンを除いたスランゴール、ヌグリ・スンビラン、ペラの6チームが参加しています。なおこのマラヤカップ開催を契機にマラッカ、ペラ、ヌグリ・スンビランではサッカー協会が設立され、既にサッカー協会が発足していたシンガポール、スランゴール、ペナンとともに各サッカー協会が主導する形でマラヤカップ出場チームを編成しました。こういった経緯もあり、現在まで続くマレーシアカップはマレーシア各州の代表がぶつかり合う対抗戦という色合いが強まっていきました。

古い記録を見ると、マレーシア国内のサッカーチームが「⚪︎⚪︎FC」ではなく「⚪︎⚪︎FA」と表記されているのも、この国のサッカーの発展はクラブチームではなく、各州のサッカー協会(Football Associaiton, FA)が運営するチームが担ってきたという経緯もあります。そういった各州FAチームが対戦してきたマレーシアカップは、例えていうならば、自分の出身地の高校を応援する高校野球甲子園大会のようなものであり、マレーシアカップがリーグ戦以上に盛り上がる大会でもある理由でもあります。

ちなみに現在の国内リーグ1部マレーシアスーパーリーグの前身となる1989年発足のマレーシアセミプロリーグも元を辿れば、マレーシアカップの予選として行われたのが起源で、歴史的に見ても、マレーシアカップはマレーシアのサッカーの歴史そのものとも言えます。

そんなマレーシアカップ2025/26の1回戦1stレグの8試合が1月17日から19日にかけて、そして2ndレグは1月22日から25日にかけて行われています。マレーシアカップにはスーパーリーグの13チームと、実質2部にあたるA1セミプロリーグの3チームの合計16チームが1回戦から準決勝まではホームアンドアウェイ方式で対戦し、5月23日にブキ・ジャリル国立競技場で予定されている一発勝負の決勝進出を目指して争います(試合のハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeより。)


リーグ6位と9位の対戦は順当にヌグリ・スンビランがベスト8進出決定

スーパーリーグ6位のヌグリ・スンビランと9位イミグレセンの対戦は、ヌグリ・スンビランが1勝1分で準々決勝進出を決めています。

1stレグではアウェイのヌグリ・スンビランは、久しぶりに常安澪選手が先発XIに名を連ねる一方で、トランスファーウィンドウでの加入後2試合連続先発し、ジョホールのベルグソン・ダ・シウバ、スランゴールのクリゴール・モラエスの両エースを抑えた大城蛍選手はベンチスタートでした。

その常安選手や、佐々木匠、ジョセフ・エッソらによる攻撃で試合の主導権を握ったヌグリ・スンビランに対し、一方のイミグレセンは、ウィルマル・ホルタンのゴールはVARの判定で認められなかったものの、エドゥアルド・ソーサ、ファズルル・ダネルらがシュートを放って反撃します。

しかし結局、午後5時と強い日差しが残る中でキックオフとなったこの試合は0−0に終わり、ヌグリ・スンビランはリーグ戦から3試合連続ノーゴールとなりました。

2025/26マレーシアカップ1回戦1stレグ
2025年1月13日@ペナン州立スタジアム(ペナン州バトゥ・カワン)
イミグレセン 0-0 ヌグリ・スンビラン
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手と常安澪選手は先発して、それぞれ83分と65分に交代しています。また大城蛍選手はベンチ入りしましたが、出場はありませんでした。


2ndレグは1月25日にヌグリ・スンビランのホームで行われ、こちらヌグリ・スンビランがルクマン・ハキムの挙げた1点を守って辛勝し、通算成績1-0でベスト8進出を決めています。ヌグリ・スンビランは、クランタンを破ったスランゴールと準々決勝で対戦します。

2025/26マレーシアカップ1回戦2ndレグ
2025年1月25日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ)
ヌグリ・スンビラン 1-0 イミグレセン
⚽️ヌグリ・スンビラン:ルクマン・ハキム(62分)
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手と大城蛍選手は先発し、佐々木選手は76分に交代、大城選手はフル出場しています。また常安澪選手はと85分から出場して試合終了までプレーしています。


ファイサル・ハリムが牽引するスランゴールがクランタン・ザ・リアル・ウォリアーズに完勝でベスト8進出

英語でChemistry(ケミストリー)は「化学」という意味ですが、その他に「化学反応で異なる物質が結びついた結果、別のものが生み出されるような『相性の良さ』」という意味もあります。そしてまさにそのケミストリーが現在のスランゴールで起こっています。

今季のスランゴールは、スタートダッシュに失敗すると、開幕から2ヶ月も経たない昨年9月末に喜熨斗勝史監督を更迭し、その後はクリストファー・ギャメル代行監督(現スランゴールFCテクニカル・ディレクター)が指揮を取りました。そして2026年1月5日に新たな監督に就任したのが、前マレーシア代表監督のキム・パンゴン氏でした。

そしてキム監督就任が決まると真っ先に反応したのがスランゴールのエース、ファイサル・ハリムでした。キム代表監督時代には、2023アジア杯の劇的な韓国戦同点ゴールを含め30試合で15ゴール7アシストを記録するなど、一気に代表の主力選手へと成長しています。

再び同じチームとなったキム監督のもと、ファイサル選手が覚醒します。アウェイゲームとなった1stレグでは、クランタンに先制を許すも、ファイサル選手が同点弾、そしてアディショナルタイムでの劇的な逆転弾の2ゴールで先勝しています。

2025/26マレーシアカップ1回戦1stレグ
2025年1月19日@スルタン・ムハマド4世スタジアム(クランタン州コタ・バル)
クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズ 1-2 スタンゴール
⚽️クランタン:シメン・リンボ(25分)
⚽️スランゴール:ファイサル・ハリム2(61分、90+3分)

スランゴールがホームに戻った2ndレグでも、ファイサル選手はクリゴール・モラエスの先制ゴールに続く2点目を挙げてスランゴールの準々決勝進出に貢献しています。準々決勝でスランゴールはイミグレセンを破ったヌグリ・スンビランと対戦しますが、このマレーシアカップで覚醒した感があるファイサル選手は、この試合の5日後に行われた東南アジアクラブ選手権「ショピーカップ」グループステージのハノイ公安(ベトナム)戦で2発、2月1日のトレンガヌ戦、そして2月4日のショピーカップ、BGパトゥム戦でもそれぞれ1発と、計5試合で7発とまさにケミストリーが起こっています。そして本日2月8日に予定されているベスト8のヌグリ・スンビラン戦で、もしファイサル選手が6戦連発を達成すれば、スランゴールのベスト4も見えてきそうです。

2025/26マレーシアカップ1回戦2ndレグ
2025年1月23日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 3-0 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズ
⚽️スランゴール:クリゴール・モラエス2(19分、66分)、ファイサル・ハリム(45+3分)


リーグ降格圏のマラッカがFAカップ準優勝のサバを破ってクラブ初のベスト8進出

1stレグではホームのマラッカはシャレル・フィクリで先制、一度はサバに追いつかれたものの、Jリーグの松本山雅や愛媛FCなどでもプレー経験があるパク・カンイルのゴールで逆転します。しかし前半のアディショナルタイムにディノ・カレシッチが1発レッドで退場で10人となってしまうとサバの猛攻に遭います。それでも試合終盤にマレーシアU23代表FWファーガス・ティアニーのゴールで追いつかれたものの、劣勢の中での貴重な引き分けでした。

2025/26マレーシアカップ1回戦1stレグ
2025年1月13日@ハン・ジェバ・スタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカ 2-2 サバ
⚽️マラッカ:シャレル・フィクリ(3分)、パク・カンイル(37分)
⚽️サバ:アイディン・ムヤギッチ(15分)、ファーガス・ティアニー(88分)

2ndレグではマラッカに新加入のエジプト出身FWアフメド・シャムサルディン(アルバニア2部KSカストリオティより加入)がマレーシアデビュー戦で挨拶代わりの2ゴールを挙げ、マレーシアカップ初出場のマラッカをクラブ初となる準々決勝へと誘っています。サバは前半終了間際に危険なタックルにより、ゲリー・スティーブン・ラバトが1発レッドで退場となり、数的不利になったことが後半の試合展開に大きな影響を与えていました。ベスト8進出を決めたマラッカは、マレーシアカップ4連覇を目指すジョホールと準々決勝で対戦します。

2025/26マレーシアカップ1回戦2ndレグ
2025年1月22日@リカス・スタジアム(サバ州コタキナバル)
サバ 0-3 マラッカ
⚽️マラッカ:アフメド・シャムサルディン2(49分、87分)、チェ・ラシド・チェ・ハリム(85分)


ジョホールはテト・マーティンの1試合6ゴールなどでPDRMを粉砕で4連覇へ向けて発信

1stレグはPDRMのホームでしたが、本拠地のMBSスタジアムがこの日は使えないとして、ジョホールのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムでの開催となりました。給料未払い問題が解決されず、リーグから罰金処分を受けるなど今季のクラブ運営にやる気が感じられないPDRMは、近隣で他のスタジアムを探すでもなく、ジョホールからの試合会場提供に飛びついたんだろうなぁ。ジョホールにとっても4時間近くかかるジョホールからの移動も不要となり、むしろジョホールで試合をしてくれてありがたい、と言ったところでしょう。

今季のリーグ戦ではジョホールに0−7と大敗している最下位のPDRMは、マレーシアカップ1回戦の相手がジョホールと決まった段階ですでに諦めムードが漂っていたのかもしれません。そうでなければ、テト・マルティン1人に6ゴールを決められ、終わってみれば1-10とはならないでしょう。

2025/26マレーシアカップ1回戦1stレグ
2025年1月18日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
PDRM 1-10 ジョホール・ダルル・タジム
⚽️ジョホール:テト・マーティン6(3分、8分、50分、64分、73分、90+4分)、ナズミ・ファイズ(47分)、マルコス・ギリェルメ2(66分、90分)、マヌエル・イダルゴ(87分)

通算成績で9点リードのジョホールは、2ndレグでは終始安全運転。控え選手中心で臨んだ試合では、外国籍選手わずか2人のPDRM相手に、再びテト・マルティンがゴールを決めて1-0で勝利しています。

2025/26マレーシアカップ1回戦2ndレグ
2025年1月24日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
ジョホール・ダルル・タジム 1-0 PDRM
⚽️ジョホール:テト・マーティン(66分)