2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節 試合結果とハイライト映像<br>・好調クチンの連勝がストップ<br>・スランゴールはクリゴールの3発で3連勝<br>・ナニン・ダービー勝利のマラッカが昇格9試合目で初勝利

現在タイで開催中の東南アジア版オリンピックとも言える東南アジア競技大会通称シーゲームズ。男子サッカーはU22代表が対戦しますが、昨日はフィリピンが前回大会優勝のインドネシアを破り1991年大会以来となる準決勝進出を決め、また東ティモールもシンガポールを逆転破るなどなかなか盛り上がっています。そのおかげでマレーシアも12月11日のベトナム戦に敗れても僅差であれば、前々回2021年大会以来の準決勝進出が見えてきました。

さてマレーシアスーパーリーグ第11節の5試合が12月5日から7日にかけて行われています。今節のもう1試合クアラルンプール・シティ対ジョホール・ダルル・タジム戦は、本日12月9日にACLエリート第6節でジョホールが上海海港とアウェイで対戦するため、12月17日に順延されています。

なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はクランタン・ザ・リアル・ウォリアーズの試合はありません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。

好調クチンの連勝がストップ

FAカップ準決勝ではジョホールに敗れたもの、今季はそのジョホール以外のチームには敗れていないクチン。今季無敗のリーグ首位ジョホールとの差を詰めるには、他のチーム相手に勝ち点を積み上げて、少しでも首位との差を詰めておきたいところです。

一方のトレンガヌは今季は不安定な戦いが続き、現在リーグ5位ながら4勝3分3敗で首位のジョホールまでは勝点差13、2位のクアラルンプールまで同9となっています。昨季途中から指揮を取るバドルル・アフザン監督に対して、クラブ経営陣は前半戦終了となる第13節終了時を目処に、今季の目標である「リーグ5位以内」を達成できるかどうかを基準に去就を判断するといわば最後通牒を突きつけています。

そんな勢いに差がある両チームの対戦は、前半終了間際にリードを奪ったクチンが、アディショナルタイムにトレンガヌに追いつかれる展開。その後は両チームから退場者が出たもののスコアは変わらず、引き分けに終わっています。

この試合後にはトレンガヌのバドルル・アフザン監督がチームトップの6ゴールを挙げているフランス出身FWヤン・マベラが半月板のケガの治療を理由にチームを離脱し母国に帰国、さらに今季の復帰は絶望であることを明らかにしています。10月のFAカップ準決勝1stレグを最後に出場がなかったマベラですが、その後チームはFAカップ準決勝敗退、リーグ戦も1分1敗と失速し、来月開く今季2度目のトランスファーウィンドウではFWの補強が必須となりそうです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月5日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌ 1-1 クチン・シティ
⚽️トレンガヌ:ヌル・シャキル・エンク(90+5分)
⚽️クチン・シティ:ペトラス・シテムビ(45分)
MOM:ペトラス・シテムビ(クチン・シティ)
クチン・シティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。


不適切発言で後味の悪い試合に

21年ぶりとなるFAカップ決勝進出を果たしたサバと給料未払いが続いていることが報じられているPDRMの対戦は、チームの勢いそのままにアウェイのサバがPDRMを4−1で破っています。代表FWダレン・ロックの今季初ゴールに始まり、ミゲル・シフエンテス、アジディン・ムヤギッチ、そしてタイの東南アジア大会出場中のU22代表の招集を拒否してチームに残ったファーガス・ティアニーがゴールを決めて、12月14日に控えているFAカップ決勝に弾みをつけています。

しかしこの試合後にはPDRMの元ヨルダン代表MFファディ・アワドが、サバのジャン=ポール・ド・マリニー監督から人種差別的な発言を受けたことを自身のSNS上で明らかにしています。

マレーシアリーグ4季目となるファディ選手は、これまでサバとの対戦では経験したことがないほどの敬意を欠く不適切な発言が多くの人がいる前で発せられたとして、こういった発言はクラブの品位を下げるものだと激しく非難し、またPDRMの公式SNSもファディ選手の投稿をリポストしています。なおこの記事の執筆時点では、マリニー監督からはコメントは出されていないようです。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月6日@MBSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM 1-4 サバ
⚽️PDRM:アグレ・ノエル(74分PK)
⚽️サバ:ダレン・ロック(44分)、ミゲル・シフエンテス(54分)、アジディン・ムヤギッチ(60分)、ファーガス・ティアニー(90+4分PK)
MOM:カイルル・ファーミ(サバ)


ナニン・ダービー勝利のマラッカが昇格9試合目で初勝利

隣接するマラッカ州とヌグリ・スンビラン州のチームの対戦は2022年以来3年ぶりですが、このカードは「ナニン・ダービー」と呼ばれています。

ナニンはマラッカ州にある地域で、16世紀にヌグリ・スンビランを形成した9つの構成国の1つでした。しかし、英国が1824年にオランダと締結した英蘭協約により、当時のオランダ領マラッカと、現在はインドネシアのスマトラ島のベンクーレン(現地名ブンクル)交換しました。(ちなみにこの英蘭協約によりマラッカ海峡の東側が英国領、現在のマレーシア、西側をオランダ領、現在のインドネシアに分かれました)

英国はナニンをマラッカの一部であると主張し、マラッカで定められた規則をナニンでも適用しようとしました。しかしナニンの首長ドル・サイドと住民がこれに反発すると、英国は軍隊を送って鎮圧しようとしますが、これに失敗すると、英国はより多くの軍勢を投入し、「ナニン戦争」が1832年に勃発します。この戦いに勝利した英国が、ナニンはマラッカの領土として併合されました。

この併合により、歴史的にはヌグリ・スンビランの一部であった地域が政治的に分断され、マラッカの一部となりました。この 歴史的な経緯や、特にナニンという地域をめぐる領有権の対立が、両州のサッカーチーム間の激しいライバル意識の背景にあることからこのカードが「ナニン・ダービー」と呼ばれるようになりました。

前置きが長くなりましたが、マラッカはこの試合で1部昇格9試合目にして待望の初勝利を挙げています。

しかしこの試合も、試合後に一悶着がありました。アウェイのマラッカ州ハン・ジェバ・スタジアムに足を運んだヌグリ・スンビランのサポーターと、ニザム・ジャミル監督との間で激しい口論が起こり、その様子がSNSの投稿されています。

この後の会見に現れニザム監督は、チームのパフォーマンスについての議論については喜んで話を聞き、また批判も受けいれるが、自分の家族についての誹謗中傷については許容できないと話すなど、スタンドのサポーターの口論がサッカーとは無関係な非難であったことを明らかにしています。

開幕からの5試合を2勝2分1敗とサポーターを期待させる成績でスタートしながら、続く5試合は1勝2分2敗、特にペナンやマラッカにそれぞれ今季初勝利を提供するなどやや失速気味のチーム状況への失望が出てしまった形かもしれません。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月6日@ハン・ジェバ・スタジアム(マラッカ州マラッカ)
マラッカ 2-0 ヌグリ・スンビラン
⚽️マラッカ:フアン・ダグラス2(4分、27分)
MOM:フアン・ダグラス(マラッカ)
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手は先発して前半で交代、常安澪選手は佐々木選手と交代で後半から出場し、試合終了までプレーしています。


スランゴールはクリゴールの3発で3連勝

FAカップ準決勝ではサバに敗れた敗退となったスランゴール。ACL2や東南アジアクラブ選手権ショピーカップでも勝ちきれない試合が続いています。

スランゴールはピッチ外でもドタバタ劇を起こしており、ACL2に向けて獲得した元コソボ代表MFトニ・ドムジョニは、獲得直後のプルシブ・バンドン(インドネシア)戦を食中毒を理由に欠場、するとその後に双方合意の上で契約解除となり、ドムジョニ選手は加入から1試合も出場することなくスランゴールを退団しています。

それでもリーグ戦は9月にクチンに敗れて以来、4戦無敗が続いており、この試合では今季1勝、直近では3試合勝星なしのペナンを相手に前半だけで3点を挙げて圧勝しています。

ケガ人が多い中で徐々に本来の調子を取り戻しつつあるスランゴールですが、その穴を埋めるべく、昨季はキャプテンを務めながら、喜熨斗勝史監督がチームに不要だとしてライオンシティ・セイラーズにローン移籍していたシンガポール代表CBサフアン・バハルディンが復帰するとの噂もあり、後半戦に向けての立て直しが期待されます。

一方のペナンはこの試合も含めた10試合で8得点24失点の13位最下位となっており、こちらはスランゴール以上に戦力補強が急務になっています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月7日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ペナン 1-5 スランゴール
⚽️ペナン:ホナタン・シウバ(6分)
⚽️スランゴール:ファイサル・ハリム(26分)、ピチャ・アウトラ(45+5分)、クリゴール・モラエス3(45+12分、59分、75分)
MOM:クリゴール・モラエス(スランゴール)
ペナンの鈴木ブルーノ選手は6試合ぶりに先発して、68分に交代しています。


DPMMが今季2勝目、イミグレセンは3連勝ならず

今季からマレーシアリーグに参戦中のブルネイのDPMMが今季ホーム初勝利を挙げるとともに、今季2勝目を記録しています。

2025/26マレーシアスーパーリーグ第11節
2025年12月7日@ハスナル・ボルキア国立競技場(ブラカス、ブルネイ)
DPMM 4-2 イミグレセン
⚽️DPMM:アズワン・アリ(15分)、ハキミ・ヤジド2(21分、26分)、ミゲル・オリベイラ(86分)
⚽️イミグレセン:ウィルマル・ホルダン2(5分、71分PK)
MOM:ミゲル・オリベイラ(DPMM)


2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第11節途中)

チーム勝点
1ジョホール1010005545130
2クアラ・ルンプール97201941523
3クチン106312051521
4スランゴール1061321111019
5トレンガヌ104332216615
6ヌグリ・スンビラン103431716113
7クランタン10325918-911
8サバ102441221-910
9イミグレセン102351321-89
10DPMM102561031-218
11マラッカ9135619-136
12PDRM10136931-226
13ペナン10127824-165

2025/26スーパーリーグ得点トップ10(第11節途中)

得点選手名所属
112ベルグソン・ダ・シウバジョホール
211ジャイロ・ダ・シウバジョホール
39クリゴール・モラエススランゴール
47アリフ・アイマンジョホール
7ロナルド・ンガクチン
66ヤン・マベラトレンガヌ
6ジョアン・フィゲイレドジョホール
6ヨヴァン・モティカヌグリ・スンビラン
95サファウィ・ラシドクアラルンプール
5ジョセフ・エッソヌグリ・スンビラン
5ラマダン・サイフラークチン