今年最後のFIFA国際マッチデーも終わり、国内リーグが再開し、11月21日から24日にかけて第10節を迎えています。
今節は首位を独走するジョホールが開幕から10連勝する一方で、上位進出を狙うトレンガヌとヌグリ・スンビランが引き分けるなど、ジョホール以外のチームが互いに潰し合い、今節2位に浮上したクチン・シティとジョホールの勝点差が既に10と大きく開いてしまっています。
なお今季のマレーシアスーパーリーグは13チーム編成のため、今節はクアラルンプール・シティFCの試合はありません。
*ハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより。
ジョホールは8試合ぶりの失点を喫するもマラッカを粉砕し開幕から10連勝
国籍偽装が疑われているヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)3名が12ヶ月間の出場停止処分を受けたジョホール・ダルル・タジム。しかし国内での無双状態は相変わらずで、今節では今季未勝利の相手に7ゴールを挙げて大勝しています。
開始6分にDFホナタン・シウバの今季初ゴールで先制したジョホールでしたが、その後はマラッカを圧倒するも、前半はベルグソンの32分のゴールと合わせて2点のみで終了します。
しかし後半開始とともにヘベルチ・フェルナンデス、テト・マーティンが立て続けにゴールを決めると、ベルグソンもこの試合2試合目のゴールを決めて、自身の持つリーグ最多ゴール記録を116に伸ばします。
終わってみれば、ベルグソンの他にもヘベルチ、マーティンもこの試合2ゴールを挙げたジョホールがマラッカを粉砕しています。
マラッカは86分にセンターサークル付近で相手のボールを奪ったアジム・ラヒムが、ジョホールGKシーハン・ハズミが前に出ているのを見て、そのまま超ロングシュートを放つとシーハンは戻りきれず、ボールはそのままゴールイン。ジョホールにとっては8試合振りの失点となりましたが、所詮は焼け石に水でした。
この試合で気になったのは、11月18日に行われたアジア杯2027年大会予選ネパール戦で先発しながらハムストリングを痛めて10分足らずで交代したアリフ・アイマンがベンチ外だったこと。試合後の会見では、ジョホールのシスコ・ムニョス監督もアリフ選手のケガについて明言を避けていましたが、復帰までには数週間を要するとも報じられています。現在、ジョホールはACLエリートでは2勝1分1敗でヴィッセル神戸に次ぐ2位につけており、来週11月25日にアウェイのメルボルン・シティ戦が予定されています。しかしこの状況下では、勝点差1で迫るメルボルンとの試合に「マレーシアの至宝」が出場することはなさそうです。
2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月21日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジム 7-1 マラッカ
⚽️ジョホール;ホナタン・シウバ(6分)、ベルグソン・ダ・シウバ2(32分、58分)、ヘベルチ・フェルナンデス2(48分、89分)、テト・マーティン2(49分、66分)
⚽️マラッカ:アジム・ラヒム(86分)
MOM:ベルグソン・ダ・シウバ(ジョホール・ダルル・タジム)
ヌグリ・スンビランはルクマン・ハキムの初ゴールを守れず10人のトレンガヌと引き分け
2019年にマレーシアで開催されたAFC U16選手権(現AFC U17アジア杯)で得点王を取った活躍が認められ、マレーシア人オーナーのベルギー1部のKVコルトレイクと5年契約を結んだものの、昨季ローン移籍で在籍した横浜Y.S.S.Cも含め、この間は十分な出場時間を得ることができなかったルクマン・ハキム。その契約も終わり、今シーズンからマレーシアに戻っています。シーズン当初こそ試合感不足やマッチフィットネスに問題もあってか、なかなか先発出場がありませんでしたが、ここ3試合ではいずれも先発XIに名を連ねています。
この試合では開始からトレンガヌDFを翻弄したルクマン選手ですが、12分にはミャンマー代表のトレンガヌDFチョー・ミン・ウーがそのルクマン選手を自陣ペナルティエリア手前で倒してしまいます。主審はイエローを出しましたが、VARが入って1発レッドとなり、トレンガヌは10人となってしまいます。
そんなルクマン選手がスーパーリーグ初ゴールを記録したのは前半アディショナルタイムでした。右サイドのアン・サンスからのクロスを頭で合わせたシュートが決まり、このゴールでヌグリ・スンビランが先制し、そのまま前半を1-0とリードして折り返します。
しかし試合は最後にドラマが待っていました。後半の90分を過ぎたアディショナルタイムに、11月18日のアジア杯予選ネパール戦にも出場した若きDFウバイドラー・シャムスルがヌリロ・トゥカタシノフのパスに抜け出し、ヌグリ・スンビランDFを交わして同点ゴール!
土壇場の同点ゴールで引き分けたトレンガヌは貴重な勝点1を獲得、一方のヌグリ・スンビランは、数的有利を活かしきれませんでした。
2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月22日@トゥンク・アブドル・ラーマン・スタジアム(ヌグリ・スンビラン州パロイ)
ヌグリ・スンビラン 1-1 トレンガヌ
⚽️ヌグリ・スンビラン:ルクマン・ハキム(45+7分)
⚽️トレンガヌ:ウバイドラ・シャムスル(90+3分)
MOM:ウバイドラ・シャムスル(トレンガヌ)
ヌグリ・スンビランの佐々木匠選手は先発してフル出場、常安澪選手は後半開始から出場して、試合終了までプレーしています。
クチンは今季初の2位、DPMMは2度のVARに泣く
今季リーグ戦では首位のジョホール以外に敗れていないクチン。直近の6試合でも4勝2敗と好調を維持しています。一方、今季からマレーシアリーグ参戦のブルネイDPMMは今季ここまで1勝と、戦前の予想は圧倒的にクチン有利とされていました。
開始から主導権をつかんだのはクチンでしたが、10分にはDPMMのミゲル・オリベイラがゴール!しかしこれはVARが入って認められませんでした。結局、前半は両チームとも無得点で折り返します。
後半の69分には代表に招集されるなど今季好調のラマダン・サイフラーがペナルティエリアの手前から豪快に蹴り込み、それまでクチンの攻撃の前に立ちはだかっていたDPMMの196cmの巨漢GKミシェルを脇をすり抜けてゴールとなり、ついにクチンが先制します。
しかしこの試合もこのまますんなりとは終わりませんでした。アディショナルタイムにコーナーキックを得たDPMMは、アマニ・アギナルドからのボールをプロスパー・ボアキエがゴール前の混戦の中でボールを押し込み劇的な同点ゴール!DPMMが一旦は同点に追いついたかに見えましたが、ここで再びVARが介入。このゴールも取り消しとなり、逃げ切ったクチンが、今節試合のないクアラルンプールと勝点で並び、得失差で2位に浮上しています。
2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月22日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチン・シティ 1-0 DPMM
⚽️クチン・シティ:ラマダン・サイフラー(69分)
MOM:ペトラス・シテムビ(クチン・シティ)
クチン・シティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。
スランゴールは連勝で4位浮上
スランゴールの先制ゴールは20分でした。自陣のクエンティン・チェンからの絶妙なロングフィードを受けたアルヴィン・フォルテスが落ち着いて相手GKを交わし、シュートを決めます。
後半の50分にはそのフォルテスのフリーキックがポストに当たって跳ね返ったところをエースのクリゴール・モラエスが押し込んでスランゴールに追加点が入ります。追いかけたいクランタンでしたが、60分にはアブドル・シセイがボールを競ったスランゴールDFハリス・ハイカルにファウル。いったんはイエローだったもののVARの介入でこれがリッドとなり1発で退場となってしまうと、このままスランゴールが2点のリードを守って連勝を果たしています。
この日の勝利で引き分けを挟み3連勝となり4位に浮上したスランゴールは、来週末のFAカップ準決勝1stレグ、サバ戦にも弾みをつけています。
2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月23日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 2-0 クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズ
⚽️スランゴール:アルヴィン・フォルテス(20分)、クリゴール・モラエス(50分)
MOM:アルヴィン・フォルテス(スランゴール)
イミグレセンが5ゴールの大勝で今季2勝目
今季1部に初昇格を果たしたイミグレセンが前節の初勝利に続き連勝しています。
前節の「ペナンダービー」でペナン相手に昇格後初勝利を挙げ、続いてホームでの初勝利を目指すイミグレセンに対し、給料未払い問題によりリーグからの警告を受けたことが明らかになったPDRMの対戦は、モチベーションの差が現れた試合となりました。
前半の2ゴールでリードを奪ったイミグレセンは、後半に入っても先制ゴールをアシストした司令塔エルヴィス・カムソバが自身で2ゴール決めるなど絶好調で、この試合のMOMにも輝いています。
2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月24日@ペナン州立スタジアム(ペナン州バトゥ・カワン)
イミグレセン 5-0 PDRM
⚽️イミグレセン:ファズルル・ダネル(19分)、ジョアン・ペドロ(38分)、エルヴィス・カムソバ2(74分、77分)、ファイヤド・ズルキフリ(90分)
MOM:エルヴィス・カムソバ(イミグレセン)
過去3季連続3位のサバが9試合目にして今季初勝利
過去3シーズンいずれも3位と安定して成績を残していたサバは、2021年から指揮をとっていた元マレーシアU23代表監督オン・キムスウィ氏(現インドネシア1部プルシク・クディリ監督)との契約をなぜか延長しませんでした。そして迎えた今季は8試合を終えて4分4敗とここまで未勝利で13チーム中の12位と低迷しています。
一方のペナンもここまで1勝2分5敗の成績で10位と下位に沈んでおり、両チームに共通するのは8試合で5得点という深刻な得点力不足です。
先制したのはペナンでした。17分にディラン・ウェンゼル=ホールズのゴールでリードを奪います。しかしサバもその5分後にアジディン・ムヤギッチのゴールですぐさま同点に追いつきます。しかし39分にはウェンゼル=ホールズがこの試合2点目のゴールを決め、前半はペナンがリードして終了します。
しかしサバは後半の56分にジャフリ・フィルダウス・チュウのゴールで同点に追いつくと、71分には代表DFダニエル・ティンが決勝ゴールを決めて、今季初勝利をホームのサポーターの前で果たしています。
この結果、サバは12位から9位と順位を上げるとともに、今週末のFAカップ準決勝1stレグのスランゴール戦に向けて勢いをつけています。
2025/26マレーシアスーパーリーグ第10節
2025年11月24日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバ 3-2 ペナン
⚽️サバ:アジディン・ムヤギッチ(22分)、ジャフリ・フィルダウス・チュウ(56分)、ダニエル・ティン(70分)
⚽️ペナン:ディラン・ウェンゼル=ホールズ2(17分、39分)
MOM:ジェフリ・フィルダウス・チュウ(サバ)
ペナンの鈴木ブルーノ選手は83分から出場し、試合終了までプレーしています。
2025/26マレーシアスーパーリーグ順位表(第10節終了)
| チーム | 試 | 勝 | 分 | 負 | 得 | 失 | 差 | 勝点 | |
| 1 | ジョホール | 10 | 10 | 0 | 0 | 55 | 4 | 51 | 30 |
| 2 | クチン | 9 | 6 | 2 | 1 | 19 | 4 | 16 | 20 |
| 3 | クアラ・ルンプール | 8 | 6 | 2 | 0 | 16 | 4 | 12 | 20 |
| 4 | スランゴール | 9 | 5 | 1 | 3 | 16 | 10 | 6 | 16 |
| 5 | トレンガヌ | 9 | 4 | 2 | 3 | 21 | 15 | 6 | 14 |
| 6 | ヌグリ・スンビラン | 9 | 3 | 4 | 2 | 17 | 14 | 3 | 13 |
| 7 | クランタン | 10 | 3 | 2 | 5 | 9 | 18 | -9 | 11 |
| 8 | イミグレセン | 9 | 2 | 3 | 4 | 11 | 17 | -6 | 9 |
| 9 | サバ | 9 | 1 | 4 | 4 | 8 | 20 | -12 | 7 |
| 10 | PDRM | 9 | 1 | 3 | 5 | 8 | 27 | -19 | 6 |
| 11 | ペナン | 9 | 1 | 2 | 6 | 7 | 19 | -12 | 5 |
| 12 | DPMM | 9 | 1 | 2 | 6 | 6 | 29 | -23 | 5 |
| 13 | マラッカ | 7 | 0 | 3 | 4 | 4 | 16 | -12 | 3 |
2025/26スーパーリーグ得点トップ10(第10節終了)
| 得点 | 選手名 | 所属 | |
| 1 | 12 | ベルグソン・ダ・シウバ | ジョホール |
| 2 | 10 | ジャイロ・ダ・シウバ | ジョホール |
| 3 | 7 | アリフ・アイマン | ジョホール |
| 7 | ロナルド・ンガ | クチン | |
| 5 | 6 | ヤン・マベラ | トレンガヌ |
| 6 | ジョアン・フィゲイレド | ジョホール | |
| 6 | ヨヴァン・モティカ | ヌグリ・スンビラン | |
| 6 | クリゴール・モラエス | スランゴール | |
| 9 | 5 | サファウィ・ラシド | クアラルンプール |
| 5 | ジョセフ・エッソ | ヌグリ・スンビラン | |
| 5 | ラマダン・サイフラー | クチン |
