アジア杯2027年大会3次予選もいよいよ第5節。今節では予選E組のシリアと同C組のシンガポールがグループ首位を確定させて本大会出場を決めています。仲村京雅選手も先発した11月18日の香港戦に勝利したシンガポールは1984年大会以来2度目の出場となりますが、1984年大会は開催国としての出場で、予選突破による出場は初となります。
マレーシアが入る予選F組は、第4節を終えて4勝のマレーシアが首位、3勝1敗のベトナムが2位となっています。国籍偽装疑惑問題で主力のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名を欠くマレーシアは今節ではネパールと対戦しました。この試合は本来、ネパールで行われる予定でしたが、AFCの視察後に試合会場予定のスタジアムの使用が認められなかったことから、会場をクアラルンプールのブキ・ジャリル国立競技場へ移し、ネパールのホームゲームとして行われました。
この試合の両チームの先発XIは以下の通り。いつもなら公表される先発XIとベンチ入りメンバーについて、この試合ではなぜかマレーシアサッカー協会(FAM)、マレーシア代表いずれの公式SNSでも発表はありませんでした…。
前節10月のラオス戦からは、ケガから復帰のDFマシュー・デイヴィーズ(ジョホール・ダルル・タジム)が復帰した他、FWサファウィ・ラシド(クアラルンプールシティ)とMFスチュアート・ウィルキン(サバ)が、それぞれFWロメル・モラレス、MFアフィク・ファザイル(いずれもジョホール・ダルル・タジム)に代わって先発しています。

7名のヘリテイジ帰化選手不在でも予選F組前節の3位ラオス戦では5-1と圧勝した首位マレーシアにとって、ここまで0勝4敗、得点2失点8の4位ネパールは難しい相手ではないはずでした。しかし、開始8分で若きエース、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)がハムストリングの肉離れで途中退場するアクシデントがマレーシアを襲います。それでもマレーシアはラヴェル・コービン=オング(ジョホール・ダルル・タジム)、ディオン・クールズ(セレッソ大阪)の左右SHを中心に攻めますが、ネパールもGKゴール前にボールを送りますが、ネパールGKキラン・クマル(バングラデシュ1部バングラデシュ警察FC)の好守や、ほぼ全員が自陣ゴール前を固める戦術の前に、結局、ゴールを挙げることができず、前半は両チーム無得点で終了します。
後半に入っても膠着した展開の中、やはり頼りになるのはこの人でした。アリフ・アイマンに代わって入っていたファイサル・ハリム(スランゴール)が、サファウィ・ラシドのパスに合わせて抜け出すとDFを振り切り、一気にゴール前までドリブルで上がりシュート。これが決まって55分にマレーシアが先制します。
その後もマレーシアは徐々にペースを上げて行きますが、追加点が奪えなかった90分に、ネパールのMFラケン・リンブ(カンボジア1部キリヴォン・ソク・セン・チェイFC)が自陣ゴール前でハリス・ハイカルを倒してしまい、この日2枚目のイエローをもらい退場、マレーシアはPKを獲得します。しかしこのPKをパウロ・ジョズエ(クアラルンプール・シティ)がポストの上に大きく外してしまいます。
しかしアディショナルタイムの3分を守り切ったマレーシアが1点のリードで逃げ切って5連勝でF組の首位を守るとともに、2025年の通算成績も7勝1分と無敗で終えています。
AFCアジア杯3次予選F組第4節
2025年11月18日@ブキ・ジャリル国立競技場(クアラ・ルンプール)
ネパール 0-1 マレーシア
⚽️マレーシア: ファイサル・ハリム(55分)
マレーシアを勝点差3で追うベトナムは、翌日の11月19日にラオスと対戦しています。今年1月のアセアン選手権で骨折していた元Jリーグ仙台のブラジル出身FWグエン・スアン・ソンことラファエルソンが復帰、出場した後半にはPKを挙げるなどし、ラオスを2-1で破ったベトナムは来年3月のマレーシアとの最終節での対戦に逆転でのF組首位突破の可能性を残しています。
アジア杯2027年大会3次予選F組順位(第5節終了)
| 順位 | チーム | 試 | 勝 | 分 | 負 | 得 | 失 | 差 | 勝点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | マレーシア | 5 | 5 | 0 | 0 | 15 | 1 | 14 | 15 |
| 2 | ベトナム | 5 | 4 | 0 | 1 | 11 | 5 | 6 | 12 |
| 3 | ラオス | 5 | 1 | 0 | 4 | 3 | 16 | -13 | 3 |
| 4 | ネパール | 4 | 0 | 0 | 4 | 2 | 9 | -7 | 0 |
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予選の5試合全勝のマレーシアは、最終第6節のベトナム戦で敗れても3点差以内であればF組の首位を守って、再来年2027年のアジア杯に出場が決定します。しかし、その前には国籍偽装に関するFIFAの裁定に基づく、AFCによるマレーシアサッカー協会(FAM)への処分が出される可能性があります。W杯2018年大会兼アジア杯2019年大会予選で、ブラジル出身の選手に国籍偽装をさせて試合に起用した東ティモールは、国籍偽装を行った選手が出場した試合は全てが無効試合となっただけでなく、アジア杯2023年大会予選への出場禁止処分を受けています。もしAFCが同様の処分を下せば、アジア杯2027年大会への夢が潰えるだけでなく、マレーシアサッカーにとっては100名を超える選手と監督、コーチが捜査を受け、79名が出場停止(うち21名は永久追放処分)を受けた1994年「八百長騒動」以来のスキャンダルとなります。マレーシアサッカーはこの八百長騒動から立ち直るのに多くの時間を費やし、その間にFIFAランキンは下落の一途を辿りましたが、あの悪夢が再来する可能性は否定できないだけに、ネパール戦に勝利した選手たちも心の底から喜ぶことはできていないかも知れません。
