ファイナンシャルフェアプレー違反の2クラブに罰金と選手移籍禁止処分
マレーシア1部スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)はケランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCとPDRM FCに対し、ファイナンシャルフェアプレー(FFP)規則違反により罰金とトランスファーウィンドウでの選手移籍禁止を科したことを公式サイトで発表しています。
シェイク・モハメド・ナシル第一審機関(FIB)委員長名で発表された声明によると、両クラブは財務報告書の提出義務についてMFLの指示に従わなかったことが理由と説明されています。
今季からMFLが本格的に導入したファイナンシャルフェアプレー(FFP)に基づき、スーパーリーグの全クラブに対し、2025年9月までの期間の滞納金の有無と、2025年8月および9月の財務報告書を、10月16日を提出期限として提出するよう求められていました。
MFLのFFP部門が各クラブの財務報告書を精査した結果、ケランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCとPDRM FCは昨シーズンから給料未払い問題を抱えていることが判明。MFLのFFP部門はマレーシアプロサッカー選手協会(PFAM)の協力も得て、この問題があることが確認されたということです。
MFLのFFP部門は両クラブに対して、未払い給料の支払い済みを証明する書類、もしくは未払い給料の支払い計画を求める警告書を2通発行したが、何の解決策も得られなかったと述べた。
FFP部門の報告を受けたFIBは、規則違反を理由に両クラブに1度目の警告と共に1万リンギ(およそ36万円)の罰金を科し、未払い給料を14日以内に支払うよう命じたということですが、その後、両クラブから支払い領収書や支払い計画を受け取っていないため、FIBはさらに2度目の警告と2万リンギットの罰金を科したということです。しかし、それでも両クラブからは何の回答も得られなかったため、FIBは両クラブに対して3度目となる4万リンギットの罰金と、今季2025/26年シーズンの2度目のトランスファーウィンドウにおける選手の移籍禁止の処分が科されたということです。
なおマレーシアリーグの今季2度目のトランスファーウィンドウは、2016年1月6日から2月1日までとなっています。
クランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCとPDRM FCには、給料未払い問題を解決するために2025年12月31日までの猶予が与えられたということですが、シェイク・モハメド・ナシルFIB委員長は、両クラブが指定された期日までに遵守しない場合にはより厳しい措置が取られることを明言しています。
*****
今季開幕直後から未払い給料の噂が出ていたPDRMについてはやっぱりそうだったか…という感じです。一方、昨季の最下位から現在は7位、そして昨季のシーズン2勝を上回る3勝目を8試合終了時点で既に記録するなど、大躍進しているクランタン・ザ・リアル・ウォリアーズFCについては、昨季の汚名をそそぐためとはいえ、身の丈以上の無謀な補強だったのかもしれません。
代表合宿で甲状腺疾患が判明のジョーダン・ミンターに代わりルクマン・ハキムが合流
ガーナ出身のジョーダン・ミンターは、2020年シーズンにトレンガヌFCに加入すると、そこからクアラルンプール・シティFCなどを経て、昨季からはクチン・シティFCでプレーしています。
今年8月29日にマレーシア国籍を取得したミンター選手は、先月10月に初めてマレーシア代表合宿に召集されましたが、マレーシア代表選手として試合に出場するための資格を証明する書類が準備できてないとして、出場はありませんでした。今月11月の代表合宿にも再び召集されたミンター選手ですが、その後、体調不良を理由に代表候補から外れ、代わりにルクマン・ハキムが召集されました。
そのミンター選手について、スポーツ専門メディアのスタジアム・アストロは、合宿での健康診断で甲状腺疾患及び心臓疾患があることが判明した結果の合宿辞退だったことを報じています。
代表チームのハイパフォーマンス・ディレクターを務めるクレイグ・ダンカン博士は、ミンター選手が当初は単なる風邪と診断されていたその数日前にウイルスが検出されたと説明しています。
「検査結果が出て、パフォーマンスを確認し、そこで何かしらの疑いがあれば調査を行う必要があるのは当然だ」と話したダンカン博士は、ミンター選手にさらに検査を行った結果、甲状腺と心臓に関わる慢性的な健康問題を抱えていることが判明したということですしかし、健康上の問題は個人情報でありそれ以上の情報開示はできないと説明したダンカン博士は、病気の詳細などは明らかにしていないということです。
ミンター選手に代わって代表合宿に加わったのは、3年ぶりの代表復帰となるルクマン・ハキム(ヌグリ・スンビランFC)です。これまで代表戦9試合に出場している23歳のルクマン選手は、2022年3月26日の国際親善試合シンガポール戦以来の代表復帰となります。
2018年9月にマレーシアで行われたU16アジア選手権(現U17アジア杯)では、開催国枠で出場したマレーシアはグループステージで敗退したものの、ルクマン選手はこの大会で優勝した日本の唐山翔自(現東京ヴェルディ)、その日本に準決勝で敗れたオーストラリアのノア・ボティッチ(オーストリア1部アウストリア・ウィーン)らと共に通算5ゴールで得点王を分け合いました。
マレーシアのサッカー界を背負って立つ存在と期待されたルクマン選手はその後、スランゴールFCを経て、マレーシア人ビジネスマンのヴィンセント・タン氏がオーナーのベルギー1部コルトレイクと2020年8月から5年契約を結びました。しかしそこでは出場機会を得ることができず、出場機会を求めてUMFニャルドヴィク(アイスランド2部)、横浜Y.S.C.C(ルクマン選手在籍時はJ3)などを転々とし、コルトレイクとの契約が切れた今年からはヌグリ・スンビランFCに加入しています。
今季のシーズン当初はケガなどで出場がなかったものの、回復後は徐々に出場時間を増やし、11月10日に行われたヌグリ・スンビランFC対東ティモール代表との練習試合では、2ゴールを挙げるなど調子を上げてきています。
アセアン選手権「ヒュンダイカップ」の日程発表-30周年となる大会は来年7月からおよそ1ヶ月の長丁場に
1996年開催の第1回大会から30周年記念となる第16回アセアン選手権は、2026年7月24日からグループステージが始まることが発表されています。東南アジアサッカー連盟(AFF)に加盟する11カ国が出場して隔年開催されるこの大会は、今回からヒュンダイモーターズが冠スポンサーとなり、大会名が「ヒュンダイカップ」となります。
タイガービールが冠スポンサーとなり「タイガーカップ」として始まった東南アジア選手権(当時)の第1回大会はシンガポールでの集中開催で、決勝ではタイがマレーシアを1−0で破り優勝しています。
2004年までスポンサーを務めたタイガービールに代わり、2008年からはスズキ自動車がスポンサーとなったことで「スズキカップ」となったこの大会は、2018年からはそれまでの集中開催からホームアンドアウェイ方式となっています。また大会名はスポンサーの変更にあわせて2022年からは「三菱電機カップ」、2026年の大会からは「ヒュンダイカップ」と変わっています。また大会の正式名称も2024年からは東南アジア選手権からアセアン選手権へと変更されています。
前回2024年大会では、ベトナムがタイをホームで2−1、アウェイでは3−2といずれも破って3大会振りに優勝しています。また総合優勝回数ではタイが7回、シンガポール4回、ベトナム3回となっており、マレーシアは2010年大会優勝の1回のみです。
2026年開催の第16回大会はグループステージの組み合わせ抽選は来年、行われます。6月2日と9日にはプレイオフが行われ、この勝者を含めた全10チームが、それぞれ5チームに分かれて、7月24日から8月8日にかけて1回戦総当たり方式のグループステージで争います。
そして各組上位2チームが、8月15日からホームアンドアウェイ方式で行われる準決勝を経て、やはりホームアンドアウェイ方式による決勝に進出し、8月26日の決勝2ndレグで大会王者が決定します。
*****
東南アジアサッカー連盟(AFF)のチエフ・サメス会長は公式発表の生命の中で、30周年を迎えるこの大会の歴史の長さを強調していますが、その裏には今年10月にマレーシアで行われた東南アジア首脳会議アセアンサミットの際にこの地を訪れたFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長の口から飛び出した新大会「FIFAアセアンカップ」への対抗意識がありそうです。このFIFAアセアンカップの詳細は何も明らかになっていませんが、FIFA国際マッチカレンダー(FIFAデイズ)内で行われることが発表されています。
アセアン選手権は例年、FIFAデイズ外で開催されることから、マレーシア国内リーグ11連覇中のジョホール・ダルル・タジムが選手の招集を完全に拒否する状況が続いています。代表チームの主力の多くが所属するジョホールの選手招集拒否により近年の大会には「本当の」マレーシア代表が出場できていないのが現状です。そんな状況下でFIFAアセアンカップがFIFAデイズ内で開催されるのであれば、これが真の東南アジア王者決定戦となる可能性もあります。
FIFAは2021年からAFC傘下の中東の13カ国とアフリカサッカー連盟(CAF)所属の10カ国が参加する「FIFAアラブカップ」を主催しており、こちらは4年に1度の開催となっています。このため、FIFAアセアンカップもアセアン選手権と共存する形で4年に1度の開催となる可能性もあります。
*****
ちなみに今季2025/26シーズンのマレーシア1部スーパーリーグは8月8日に開幕しました。来季はヒュンダイカップが7月24日に開幕することで、マレーシアスーパーリーグを主催するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、日程変更を余儀なくされそうです。またFIFAデイズ外の大会ということで、開幕前の大事なプレシーズンに選手が代表召集されることを拒否するクラブも出そうで、過去大会と同じならジョホール・ダルル・タジムの選手は召集拒否が濃厚です。2025年は無敗で終えることになりそうなピーター・クラモフスキー代表監督にとっても、このヒュンダイカップは選手選考が難しい頭の痛い大会となりそうです。
