2025/26ACL試合結果とハイライト映像<br>・ACLエリートリーグステージ第4節:ジョホールは中国クラブに連勝で2位浮上<br>・ACL2グループステージ第4節:スランゴールは4連敗で早くも敗退決定

ACLエリートリーグステージ第4節:ジョホールは中国クラブに連勝で2位浮上

ヘリテイジ帰化選手不在もなんのその。

FWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・ヘヴェル、DFジョン・イラザバルの主力3選手が国籍偽装疑惑で出場停止処分を受けているジョホールは、第1節で域内ライバルのBGパトゥム・ユナイテッド(タイ)に敗れ、続く第2節ではACLエリート初出場のJリーグ町田と引き分けるなどノックアウトステージ進出を狙うチームにとってはやや不安なスタートでした。しかし続く第3節では成都蓉城(中国)をアウェイで撃破し、チームに勢いが出てきたこの第4節では同じ中国の上海申花と対戦しています。

前節の成都蓉城戦勝利後には、国内リーグで優勝争いをしている成都蓉城が控え中心で臨んだ試合だからジョホールが勝てた、などといった声も聞こえてきましたが、それはあちらの問題であって、何を言われようと勝ったことが事実。そしてこの第4節もやはり中国スーパーリーグ2位、首位の上海海港を勝点差2で追う上海申花との対戦でした。

この試合の両チームの先発XIは以下の通り。ジョホールの先発XIを見ると、マレーシアで生まれ育ったマレーシア人はアリフ・アイマンただ1人とこれまた振り切った布陣です。一方の上海申花は11月2日の国内リーグ深圳新鵬城戦と全く同じ11名が先発しています。

試合はホナタン・シウバが2ゴール、スペイン出身のフィリピン国籍を持つ(しかしなぜか代表に召集されない)オスカル・アリバスも2試合連続のゴールを決めて快勝しています。

前半を両チームとも無得点で折り返すと、後半の48分にジョホールが均衡を破ります。アリフ・アイマンがペナルティエリア内で2人のDFをかわしてゴール前に送ったボールが上海申花DFに当たって、ホナタン・シウバの足元へ。これをシウバが押し込んでジョホールが先制します。

その5分後には上海申花がアンドレ・ルイスのシュートで同点かと思われましたが、その直前のルイス・アスエとジョホールGKアンドニ・ズビアウレの接触がファウルとなり、得点には至りません。逆にジョホールはプレッシャーをかけ続け、63分には途中出場のアフィク・ファザイルからのパスを受けたオスカル・アリバスがゴールの左隅に滑り込むシュートを決めてリードを広げます。

上海申花はペナルティエリアでシュー・ハオヤンがジョホールのナチョ・インサに倒されて得たPKをサウロ・ミネイロが決めて1点を返しますが、88分にジョホールも再びアリフ・アイマンからのパスをホナタン・シウバがゴールして再び点差を広げると、そのまま逃げ切ってACLエリート2連勝を飾っています。

2025/26ACLエリート リーグステージ第4節
2025年11月5日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ
ジョホール・ダルル・タジム 3-1 上海申花
⚽️ジョホール:ホナタン・シウバ2(48分、88分)オスカル・アリバス(63分)
⚽️上海申花:サウロ・ミネイロ(71分PK)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

ACL2 グループステージG組第4節:スランゴールは4連敗で早くも敗退決定

第1節のバンコク・ユナイテッド(タイ)、第2節のライオン・シティ・セイラーズ(シンガポール)にいずれも4失点、第3節のプルシブ・バンドン(インドネシア)にも敗れてここまでACL2では3連敗のスランゴール。ホーム開催となったこの第4節のプルシブ戦で敗れれば、2シーズン連続でグループステージ敗退が決まってしまいます。しかもプルシブは3試合で2勝1分の成績でグループステージG組のトップです。

試合前会見でペルシブ・バンドンのボヤン・ホダック監督は、MBPJスタジアムのピッチの状態は単に悪いだけではなく、AFCの基準を満たしていないと感じると述べて軽くジャブ。前クアラルンプール・シティの指揮官は、「MBPJスタジアムは外から見るととても美しいがピッチはとてもひどい」「スタジアムにとって一番大切なのはピッチだということをマレーシア人は理解していない」とコメントしています。ジョホールやクランタンなどでも優勝監督を経験し、マレーシアのサッカー界を熟知しているホダック監督は、自身がマレーシアを去ってから2年経っても改善されていない問題点を厳しく指摘していました。

この指摘をスランゴールの運営陣にどのように響いたのかは興味があるところです。ACL2に向けて、スタンドはペンキが塗り直され、マレーシアではお約束の不潔なトイレも完全に改修され、MBPJスタジアムの設備や外見は確かに見違えるほど改善されていますが、結局、「見栄えだけを整える」ことに忙しい今のスランゴールの運営陣の対応を見抜いているようにも思えるコメントです。

以下はこの試合の両チームの先発XIです。スランゴールの86番ママドゥ・ディアラはセネガル出身のCB。コソボ代表MFトニ・ドムジョニとともにこの試合の直前に加入が発表されています。国内リーグのトランスファーウィンドウ期間でないので、この2選手はACL2要員としての獲得ですが、付け焼き刃感が否めず、やはりここでも「見栄えだけを整える」発想に思えます。ちなみにドムジョニ選手は「食中毒」を理由にこの試合ではベンチ外でした…。またスランゴールのマレーシア代表FWファイサル・ハリムは膝痛のためベンチ外となることも発表されていました。またマレーシア代表ハリス・ハイカルと、リーグ戦では主力のリッチモンド・アンクラの両CBはなぜかベンチスタートです。

それでも試合は開始3分、クリゴール・モラレスがアルヴィン・フォルテスのクロスを押し込んで先制するスランゴールにとっては最高の展開で始まります。さらに17分にはクリゴールのクロスをザック・クラフと競ったプルシブDFのパトリシオ・マトリカルディのオウンゴールで追加点を挙げたスランゴールが前半2−0で折り返します。

この試合は後半から現地観戦となりましたが、後半開始からペースを挙げたプルシブに対し、スランゴールは2点のリードが逆にプレッシャーになったのか、不要なバックパスが多く、まるで残る45分を守り切るつもりなのかと思うようなプレーを頻発します。

そして後半開始直後の48分にゴール前の混戦からアンドリュー・ユングにゴールを決められると、スランゴールはますます自陣に押し込まれる場面が多くなりますが、それでもGKシーク・イズハンが好セーブを連発してそれに耐える展開が続きます。

個人的に悪手だと思ったのはクリゴールの交代でした。スランゴールのクリストファー・ギャメル監督代行は、いわゆるFresh pair of legsとして70分に元Jリーグ甲府のウィリアン・リラと交代させますが、守備でも献身的に動き回るクリゴールが抜け、前方で待つタイプのリラが入ったことで守備のバランスが崩れたように感じました。またギャメル監督となり、解任された喜熨斗勝史監督時代に採用していた5バックから4バックとなった結果、それまで積極的なオーバーラップでサイド攻撃を担っていたクエンティン・チェンが守備に気を取られて持ち味が消えてしまっているように感じます。しかも守備も上手いわけではないので、この試合でも見られたようにチェン選手のサイドから攻め込まれることも多くなっています。

その後の81分には不用意なバックパスからボールを奪われたスランゴールは、バンドンで行われた前節でも得点を挙げていたインドネシア代表FWアダム・アリスがスランゴールDFを振り切って同点ゴールを決めて2-2となってしまいます。

こうなると試合は完全にプルシブが主導権を握ります。防戦一方ながらもなんとか勝点1は取れるのかと思ったアディショナルタイムに決勝点が入ります。バックパスを受けたGKシーク・イズハンが前方へ蹴ろうとしたところにアダム・アリスが詰め、イズハンの蹴ったボールがアダムに当たり、なんとそのままゴールイン。膝から崩れ落ちたイズハンでしたが、それまでのスーパーセーブがなければスランゴールはもっと早い時間で勝負を決められていただけに責めることはできません。

前半2点をリードしながら、後半にまさかの3失点を喫したスランゴール。不安定で自信のないプレーが随所に見られたのはまさに今季のチームを象徴しているようでした。喜熨斗勝史監督を解任しても何も変わっていないスランゴールは、4試合を終えて勝点0となりACL2の敗退が決まりました。

*****

試合はプルシブサポーターに近い席で観戦しましたが、同点になったあたりから大盛り上がりのプルシブサポーターに対して、試合展開にも、そしておそらく今季のプレーぶりにも、そしてそれを引き起こしたクラブの運営陣にも不満が溜まったスランゴールサポーターが試合そっちのけで怒鳴り合いを始めるなど、久しぶりにスタンドが盛り上がる試合を見ることができました。

ピッチ乱入後にスタンドに戻ったサポーターを捕まえようとする警備陣と揉めるプルシブサポーター。

2025/26ACL2 グループステージ第4節
2025年11月6日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴール 2-3 プルシブ・バンドン
⚽️スランゴール:クリゴール・モラエス(3分)、パトリシオ・マトリカルディ(17分OG)
⚽️プルシブ:アンドリュー・ユング(48分)、アダム・アリス2(81分、90+7分)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeチャンネルより。

G組のもう1試合は、バンコク・ユナイテッドが、オマーン代表FWムセン・アル=ガッサニのゴールなどでライオン・シティ・セイラーズを2−1で破り2位を堅守しています。

2025/26 ACL2 グループステージG組順位表(第4節終了)

クラブ勝点
ペルシブ・バンドン431082610
バンコク・ユナイテッド43017529
ライオン・シティ・セーラーズ41126604
スランゴール4003613-70