11月4日のニュース<br>・国籍偽装疑惑問題-FIFAはマレーシアサッカー協会による控訴を棄却<br>・サッカー協会はFIFAの決定を受け入れた上でスポーツ仲裁裁判所へ控訴準備<br>・トゥンク・イスマイル殿下-FIFAの制裁は「政治的動機によるもの」

国籍偽装疑惑問題-FIFAはマレーシアサッカー協会による控訴を棄却

そうなるとは思っていたけれど、いざ正式に棄却されるとやはり辛い。しかもこの後にはAFCによる処分がまだ残っている…。

FIFAの控訴委員会は11月3日に声明を発表し、国籍偽装疑惑について、マレーシアサッカー協会(FAM)とマレーシア代表として試合に出場したヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)7名に科した制裁を支持することを発表しています。以下はFIFAによる声明全文です。

「FIFA控訴委員会は、マレーシアサッカー協会(FAM)と7名の選手–ガブリエル・フェリペ・アローチャ、ファクンド・トマス・ガルセス、ロドリゴ・フリアン・ホルガド、イマノル・ハビエル・マチュカ、ジョアン・ビトール・ブランダオ・フィゲイレド、ジョン・イラサバル・イラウルギ、エクトル・アレハンドロ・ヘベル・セラーノ–から提出された控訴に対して決定を下した。これは偽造と改ざんに関するFIFA規律規定(FIFA Disciplinary Code、FDC)第22条の違反に対してFIFA規律委員会が出した決定に対しての控訴であった。

提出された意見を分析し、審問を行った後、控訴委員会は控訴を棄却し、FAMと7名の選手に科せられた以下の制裁を全面的に承認することを決定した。

・FAM:35万スイスフラン(およそ6660万円)の罰金支払い。
・ガブリエル・フェリペ・アローチャ、ファクンド・トマス・ガルセス、ロドリゴ・フリアン・ホルガド、イマノル・ハビエル・マチュカ、ジョアン・ヴィトール・ブランダオン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル・イラウルギ、エクトル・アレハンドロ・ヘベル・セラーノはそれぞれ2,000スイスフラン(およそ38万円)の罰金支払い
・前述の選手は、追加制裁としてサッカー関連の全ての活動から12か月間の出場停止

FAMと選手は本日、決定の条件について告知された。これに対して10日以内に理由を付した決定内容についてを開示を求めることができ、この通知後、21日以内にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に控訴することができる。」

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FAMと7名のヘリテージ帰化選手は今年9月、文書偽造に関するFIFA規律規定(FDC)第22条に違反したとして、FIFAの規律委員会から制裁を受けていました。

この制裁についてFIFAは、FAMが7選手の資格を確認するために偽造文書を提出し、6月10日に行われた2027年アジアカップ3次予選ベトナム戦への出場を許可したことを制裁理由に挙げていました。

FAMはその後、7選手の資格確認書類の提出手続きにおいて、事務職員による「軽微なミス」があったことを認める一方で、その後はこの制裁処分に関してFIFAに控訴を行なっていました。

しかしFIFAが控訴を却下したことで、FAMの「軽微なミス」という主張は全く的外れであったということのようです。


サッカー協会はFIFAの決定を受け入れた上でスポーツ仲裁裁判所へ控訴準備

またこれを受けたマレーシアサッカー協会(FAM)は同日、公式サイトでユソフ・マハディ会長代行名で以下のような声明を発表しています。

「FAMは、国際サッカー連盟(FIFA)からの上訴棄却の決定を受け取った。FAMは、スポーツ仲裁裁判所(CAS)への控訴という次のステップに進む前に、FIFAから決定の詳細と理由を書面で入手する予定である。FAMにとってこのような状況に直面するのは初めてであり、弁護士と経営陣は今回の決定に大変驚いている。しかしながら、FAMは今後も選手の権利と国際レベルにおけるマレーシアサッカーの利益のために、断固として闘っていく。」

この声明発表を報じた英字紙ニューストレイツタイムズは、「マレーシアサッカー協会(FAM)はFIFAとの闘争を自国のサッカーを守るための『大戦争』と呼ぶ」の見出しで、FAMがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に申立てを行うため、必要な全ての文書、証拠、主張を準備すると報じています。

FAMのユソフ・マハディ会長代行は、FAMは今回の処分について沈黙を守るつもりはなく、あらゆる手段を尽くし、正義を求めると述べて、マレーシアサッカーの将来に重大な影響を及ぼすと考えられるこの決定に対して、FAMは譲歩するつもりはないと強調しています。

ユソフ会長代行は、さらに法廷闘争は長期化し、費用もかかる可能性があると認めた上で、FAMは国際社会でマレーシアの評判を守るためにその重荷を負う覚悟があると主張、。また同時に、国内サッカーファンには、引き続きFAMへの祈りと支援を求めたいとしています。


トゥンク・イスマイル殿下-FIFAの制裁は「政治的動機によるもの」

現在のマレーシア代表は、ジョホール・ダルル・タジム(JDT)の選手が全体の3分の2近くを占めますが、そのJDTのオーナーでもあり、マレーシア代表強化の中心的存在でもあるジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、今回のFIFAの決定を激しく非難する内容を自身のSNSに投稿しています。

マレーシアサッカー協会(FAM)とは距離を置きながらも、代表チームの「アドバイザー」でもあるイスマイル殿下は、FIFAの行動は自らの規定を誤って適用していると主張しています。

「FIFAは規定を誤用して選手を処罰し続けている。FIFA規約第22条では、制裁は偽造文書を作成または使用した者に対してのみ課せられると規定されているが、その規定は選手には適用されない」

「言い換えれば、この制裁は法律に基づかずに課されており、他の何物よりも政治的な動機によるものであるように思われる。」

と投稿したイスマイル殿下は、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴訟を持ち込む準備をする選手たちを今後も支援していくとも綴っています。

「非難する者もいれば、騒ぎ立てる者もいる。しかし私は、最後までいかなる犠牲を払ってでも選手たちのために立ち上がって闘うことを選んだ。闘いは今後、独立機関であるCASで行われることになる」と投稿を締め括っています。

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殿下の投稿の「制裁は偽造文書を作成または使用した者に対してのみ課せられると規定されているが、その規定は選手には適用されない」という部分は、偽造文書を作成、使用したFAMが処分を受けるのは当然だが、選手は処分を受けるべきでないと主張しているように読み取れます。ヘリテイジ帰化選手7名の知らないところでFAMが偽造文書を作成した、という事実が証明できない限りこの主張は筋が通らないと思いますが、果たしてこの主張に賛同する者はいるのでしょうか。