マレーシアサッカー協会が出場停止処分のヘリテイジ帰化選手7名についてFIFAに正式控訴
マレーシアサッカー協会(FAM)は、7人のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に関する書類問題について、FIFAに正式な控訴手続きに必要な書類をを提出したことを明らかにしています。
FAMのユソフ・マハディ会長代行によると、FAMの法務部門が提出した書類はFAMが任命したマレーシア国外の弁護士らによる「専門家チーム」によって作成されたということです。
「マレーシア代表チームの運営陣はプロフェッショナルな組織であり、世界的なレベルでサッカーに関する規定に詳しい国際的な弁護士ともつながりを持っている。経験豊富な法律専門家のネットワークが、FAMの控訴手続きを支援してくれている。控訴については慎重かつ丁寧に準備を進めている。拙速に進めたわけでも、圧力の下で行ったわけでもなく、我々は有利な判断を得るために万全を期しています」と述べています。
今回の控訴手続きは、10月6日にFIFAがその処分決定理由を公表した、FAMおよび7人のヘリテイジ帰化選手に対する懲戒処分に関するものです。FIFAの規律委員会は9月26日に、ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘヴェルの7選手に対し、公式文書の偽造および改ざんに関する規定(FIFA規律規定第22条)違反で処分を科したことを発表し、FAMに35万スイスフラン(およそ6600万円)の罰金を、7選手にはそれぞれ2,000スイスフラン(およそ38万円)の罰金と、12か月間に及ぶサッカーに関連するあらゆる活動の禁止処分を命じています。
FAMはこれまで、登録時の書類不備は、FIFAに書類を提出した事務職員による「軽微なミス」によるもので、意図的な改ざんではないと主張しています。
国籍偽装疑惑関連-ネパールがアジア杯マレーシア戦の無効化をFIFAに要請
ネパールサッカー協会(ANFA)は、対戦相手が資格のない選手を起用したとして、今年3月25日に行われたアジア杯2027年大会3次予選でマレーシアに0対2で敗れた試合を無効にするようFIFAに正式に要請したというニュースを、AFP通信社が配信しています。
AFP通信社配信の記事によると、マレーシアのジョホールで行われたこの試合では、国籍偽装疑惑で処分を受けた7名のヘリテイジ帰化選手の一人、MFエクトル・ヘヴェルがマレーシア代表としてプレーし、しかも先制ゴールを決めており、マレーシア代表としての出場資格を持たないへヴェル選手が出場したことをネパールサッカー協会が問題視した結果だということです。
「試合に出場資格のない選手が出場していた件についてFIFAに連絡を取った。したがって、結果は覆される必要がある」と、ネパールサッカー協会のインドラ・マン・トゥラダールCEOと発言しています。
FAMは故意に不正行為をしたことを否定していますが、FIFAはその調査の結果として、7選手誰一人ともその親や祖父母がマレーシア出身でないと発表しています。
ネパールは現在、アジア杯予選F組第4節を終えて勝点0で最下位となっています。
国籍偽装疑惑関連-かつて東南アジアを揺るがした「東ティモール事件」との類似点
マレーシアのヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑問題は、東南アジアサッカー界でかつて起こった、いわゆる「東ティモール事件」との類似が指摘されています。
この「東ティモール事件」の発端は、2015年10月8日に行われたW杯2015年大会アジア2次予選のパレスチナ戦で、かつてはボルトガルの植民地だった東ティモールの先発11人のうち7人が同じポルトガルの植民地だったブラジル出身のヘリテイジ帰化選手(東ティモールにルーツを持つ帰化選手)だったことでした。
この試合後、パレスチナサッカー協会はFIFAに対し、この試合に出場した東ティモールのヘリテイジ帰化選手が代表戦に出場する資格がないとして不服申し立てをおこないました。これを受けたアジアサッカー連盟(AFC)が調査を行った結果、ブラジル出身の12名のヘリテイジ帰化選手が偽造された東ティモールの出生証明書または洗礼証明書で登録されていたことが判明しました。「不正選手の出場に対してはゼロ容認政策を取る」ことを明言していたAFCは、W杯2015年大会予選での不正選手が出場した東ティモールの全29試合の結果を無効にするとともに、アジア杯2023年大会予選からの追放も発表しました。
東ティモールサッカー協会は当初、この処分に反発しましたが、最終的にAFCとFIFAの処分を受け入れ、東ティモールサッカー連盟には2万米ドルの罰金とのアマンディオ・サルメント事務局長(当時)は9000米ドルの罰金と3年間のサッカー活動関与停止処分を受けました。
今回のマレーシアの国籍偽装疑惑については、マレーシアサッカー協会(FAM)も同様の試練に直面しています。ユソフ・マハディFAM会長代行はFIFAへの控訴を行った際には、「FIFAの決定には驚いたが、国内法のもとで帰化が認められた選手であり、控訴で誤解が解かれると信じている」と述べています。なお、東ティモールの例では制裁確定までに2年近くを要した上、その後、長期間に渡り国際大会から遠ざかることになり、信頼回復に数年を要したことを考えると、FAMの控訴の行方が気になります。
クラモフスキー監督の協会批判発言を巡り処分の可能性が浮上
マレーシアサッカー協会(FAM)は、ピーター・クラモフスキー監督の最近の発言が協会への批判と見なされたことを受け、FAMの懲戒委員会に対応を委ねると発表しています。
クラモフスキー監督本人から謝罪を受け入れたと述べたユソフ・マハディFAM会長代行は、「クラモフスキー監督は、もしかしたら、口を滑らせたか、あるいは意図しないミスだったのかも知れない。しかしFAMは明確な規約のもとで運営されており、全員がそれを尊重すべきだ」と強調し、適正な手続きを踏む必要があるとして、懲戒委員会に審議と決定を委ねると述べています。
クラモフスキー監督は10月9日にラオスのヴィエンチャンで行われたアジア杯2027年大会3次予選ラオス対マレーシア戦の試合後、「FIFAで起こっている全ての混乱は事務的なミスが原因であり、それは全てFAMのせいだ」と述べて、今回のヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑の根源をFAMと非難していました。
しかし10月14日のアジア杯3次予選マレーシア対ラオス戦の試合前の会見では、FAMを軽視する意図は全くなかったと述べて、自身の発言で不快感を与えたことを謝罪していました。
ユソフ・マハディFAM会長代行は、「「クラモフスキー監督の発言後、迅速な対応を求める声もあったが、FAMは代表チームの利益を何よりも優先しました。(ラオスとの)試合が控えており、監督や選手たちに不必要な緊張や不快感を与えず、チームの調和を保ち、準備がスムーズに進むようにしたいと考えていた」とも述べて、FAMがクラモフスキー監督の非難に直ちに反応しなかったのは、代表チームの集中を優先したと説明しています。
