10月9日のニュース<br>・国籍偽装疑惑の喧騒の中でマレーシアは本日、アジア杯予選ラオス戦<br>・国籍偽装疑惑:FIFAの裁定に対する異議申し立てのハードルは高い-スポーツ専門弁護士<br>・主力不参加のウルグアイ戦主催者が高額チケット払い戻しととチケット価格改定を発表

10月8日から始まったW杯予選アジア4次予選は、3次予選で3位と4位だった6チームが3チームずつ2組に分かれて1回戦総当たり方式で対戦し、各組の1位が2026年W杯に出場します。この4次予選にはアラブ首長国連邦(3次予選A組3位)、カタール(同4位)、イラク(B組3位)、オマーン(同4位)、サウジアラビア(C組3位)、インドネシア(同4位)の6チームが出場します。集中開催方式行われるこの4次予選の開催地については、当初は中立地でもありAFC本部もあるマレーシアが候補に上がりましたが、最終的にAFCがこの4次予選に出場するサウジアラビアとカタールでの開催を発表すると、開催地決定までの経緯の不透明に加え、予選の「中立性」が損なわれるとして残る4チーム全てがAFCに再考を求めました。しかし近年はカタールを中心とした謎の「中東押し」が顕著なAFCはこれを無視、サウジアラビアとカタールにとっては全試合「ホーム」での予選が決定しています。

さらに4次予選B組初戦のインドネシア対サウジアラビア戦の主審として、AFCがクウェートのアフメド・アル=アリ氏を指名したことに今度はインドネシアサッカー協会が「中東の笛」への懸念から猛反発し、東アジアやオーストラリアからの審判への交代をAFCに求めるも再びAFCはこれを無視。ちなみにオマーンが属するA組の3試合は日本、オーストラリア、カザフスタンと中東以外の国が主審を務めることが発表されています。

そんな中で迎えた10月8日のインドネシア対サウジアラビア戦は、東南アジア最後の砦としてボラセパマレーシアJPもインドネシアを応援しながらストリーム配信を観戦しましたが、サウジにレッド1枚、さらに3つのPKとなんとも大荒れの試合となりました。さらにインドネシアが心配した「中東の笛」は、アフメド主審が前後半ともアディショナルタイムを表示の9分以上も取るなど、追いかける立場のインドネシアにとっては有利に機能し、まるで12番目の選手のような振る舞いでした。

結局、インドネシアは先制するも、自力で勝るサウジアラビアに敗れてしまいましたが、終了間際にサウジアラビアを2−3まで追い込んだことで、この4次予選の2位2チームが大陸間プレーオフ出場権をかけて対戦する5次予選にも望みを繋いでいます。


国籍偽装疑惑の喧騒の中でマレーシアは本日、アジア杯予選ラオス戦

マレーシアサッカー協会(FAM)とヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に関する国籍偽装疑惑がマレーシアサッカー界を揺るがす中、本日はアジア杯2027年大会予選のマレーシア対ラオス戦がラオスの首都ヴィエンチャンにあるラオス新国立競技場で行われます。10月8日にはこの試合に先立って両チームの監督とキャプテンが出席して試合前会見が行われています。

​直近のFIFAランキングではマレーシアが123位、ラオスが189位と一見するとマレーシア有利ですが、試合前会見でマレーシアのピーター・クラモフスキー監督は、ピッチ外の「騒音」に気を取られることなく、最高のパフォーマンスで勝点3を獲得することにチーム全員が集中していると述べています。

FIFAランキングでは大きな差があるラオスを与し易い相手だとは思っていないと述べたクラモフスキー監督は、「自分たちが何もコントロールできないことに煩わされてもしょうがない。ピッチ外で起こっていることについては、このチームとは関係がないので何も気にならない。我々は無事にラオスに着き、全力で試合に臨むために準備してきた。ラオスとの試合以外のことを考えているとしたら、それは自分たちがすべきことをしてないことになる。」と述べ、チームの結束と一人一人が練習に取り組む姿勢によって全員が集中力を維持できている説明しています。

なおマレーシアは9月26日にFIFAが国籍偽装が疑われるヘリテイジ帰化選手に12ヶ月の出場停止処分を科しており、歴史的なベトナム戦勝利に貢献したFWジョアン・フィゲイレド、MFエクトル・へヴェル、DFジョン・イラザバル(いずれもジョホール・ダルル・タジム)、FWロドリゴ・オルガド(コロンビア1部アメリカ・デ・カリ)、FWイマノル・マチュカ(アルゼンチン1部ベレス・サルスフィエルド)、DFファクンド・ガルセス(スペイン1部アラべス)、DFガブリエル・パルメロ(スペイン3部ウニオニスタス・デ・サラマンカ)の7選手は今回は代表に招集されていません。

ちなみにマレーシアとラオスの通算対戦成績は、マレーシアの13勝5分1敗で、マレーシアが最後にラオスに敗れたのは2015年10月と、過去の対戦ではマレーシアに圧倒的有利な結果ですが、クラモフスキー監督はラオスに対して敬意は払いつつも、自身も含めてこの試合に向けては準備万端と語り、試合のあらゆる局面で強いサッカーを見せ、クリーンシートでの勝利を宣言しています。

一方、ラオスの韓国人指揮官ハ・ヒョクジュン監督は、7名のヘリテイジ帰化選手の欠場により自チームが大いに有利になるとは考えていないと語り、前節のネパール戦での2-1の勝利に続く勝点3を取りに行きたいと話しています。


国籍偽装疑惑:FIFAの裁定に対する異議申し立てのハードルは高い-スポーツ専門弁護士

FIFAは9月26日に国籍偽装が疑われる7名のヘリテイジ帰化選手とマレーシアサッカー協会(FAM)に対して、FAMには罰金、また7選手には罰金に加えて12ヶ月の出場停止という厳罰処分を下し、10月6日にはその裁定の根拠となる調査内容を公表しています。これに対してFAMは書類提出の際に「軽微なミス」があったことを認める一方で、FIFAが公表した調査内容には不正確な内容が含まれるとして、処分に対する異議申し立てを行うことを表明しています。

これに対してスポーツ専門の弁護士のニック・エルマン・ニック・ロスリ氏は英字紙ニューストレイツタイムズの取材に対し、以下のように述べています。

「FIFAの制裁に対する異議申し立てにおいては、FAMはその厳格な責任と、ヘリテイジ帰化選手の資格確認の義務を果たしたかどうかが争点となるため、非常に厳しい状況にあると分析できる。その上で、異議申し立てでは、FIFAの規定の理解不足や「軽微なミス」といった言わば「言い訳」的なものではなく、FIFAの調査内容の誤りや、デューデリジェンス(相当の注意義務)を尽くしたことを証明する必要がある。」

エルマン氏は、FIFAによる制裁はFAMが追うべき厳格な責任の原則と、自国代表選手の資格を確認するFAMの独立した義務に基づいていることから、マレーシア政府下の国民登録局の交付した書類を根拠とするFAMの異議申し立てが受け入れられる余地はほとんどないと説明しています。

さらにエルマン氏は、FAMまたは7名のヘリテイジ帰化選手が書類の偽造を知っていたかどうかは法的に無関係であり、「知らなかった」あるいは「その意図がなかった」という異議申し立ては無効になるとも述べ、7名のヘリテイジ帰化選手がマレーシア代表としてプレーする資格を有することを確認するのは、FAMの独立した義務でり、その責任を(出生届を再交付した)国家登録局に転嫁することはできない。」

エルマン氏はまた、ヘリテイジ帰化選手は既に合法的なマレーシア国民であるため、違反は「軽微なミス」であるというFAMの説明についてはこれを否定し、問題は「合法的なマレーシア国民である」という資格を証明するために使用された手段にあるとも述べています。

「これは、7名のヘリテイジ帰化選手が国内法上マレーシア人であるかどうかの問題ではない。FIFAは国民登録局が国籍を付与したことを問題視しているのではなく、『FIFAの規定に基づき』7選手がマレーシア代表としてプレーする資格があるかどうかを問題視している。」

「このため、選手たちが他の正当な手段でマレーシアにルーツがあることであることを証明できたとしても、FIFAの決定は当初提出された捏造された書類に基づいているため、裁定処分はおそらく有効になるだろう。」

しかもFIFAは、出生届の原本を「支障なく」入手できたと述べており、FAMの検証プロセスに大きな疑問が生じています。この点についてエルマン氏は、なぜFIFAは原本を入手できたのに、(原本が入手できないとして出生届を「再交付」した)国民登録局は入手できなかったのかには疑問が残るとした上で、FAMはどのような手順を踏み、どのような独立した調査を行い、そして書類が選手たちに直接要求されたのかどうかを示す必要があるとし、「努力したが入手できなかった」という説明では不十分であると述べた。

このようにさまざまな点からも異議申し立てを行うのは困難であるものの、これは国益に関わる問題なので、控訴すべきであると述べたエルマン氏は、FAMが、事務的な誤りに関する一般的な陳述ではなく、FIFAの調査結果について詳細かつ信憑性のある弁明を提示しなければならないだろうとも述べています。


主力不参加のウルグアイ戦主催者が高額チケット払い戻しととチケット価格改定を発表

明日10月10日と10月13日にマレーシアで開催されるウルグアイ・スター・グローバル・フレンドリーマッチは、MFフェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリード)、DFロナルド・アラウホ(バルセロナ)、MFマヌエル・ウガルテ(マンチェスター・ユナイテッド)を含む複数のスター選手の欠場を受け、主催者がチケットの払い戻しと、新たに割引価格によるチケット販売が発表されています。なおこれらの試合は、FIFAによって国際Aマッチとして公式認定されています。

主催者は10月7日に発表した声明で、バルベルデ、、アラウホ、ウガルテの3選手は10月10日のドミニカ共和国戦(ブキット・ジャリル国立競技場)と10月13日のウズベキスタン戦(マラッカ、ハン・ジェバ・スタジアム)に出場しないことが明らかになったとしています。

さらにGKセルヒオ・ロシェ(インテルナシオナル)、DFホセマ・ヒメネス(アトレティコ・マドリード)、FWダルウィン・ヌニェス(アル・ヒラル)、MFジョージアン・デ・アラスカエタ、DFギジェルモ・バレラ(いずれもフラメンゴ)らの主力選手もマレーシアでの試合には出場しないということです。

主催者のコヒージョン・プリマ社は、「予期せぬ事態により数名の選手が欠場となるが、両試合はFIFAの国際Aマッチとして認められており、トップレベルの競技とスポーツとしての価値を保証する。」と述べています。

その上で「ファンの支援は、常に我々のイベントの原動力となっている」として、「善意と感謝の気持ちとして」チケット価格を引き下げると発表しています。

またこの発表以前にチケットを購入したファンの希望者全員に全額払い戻しを約束すると同時に、価格を調整した新しいチケットを用意するとしています。

ちなみにチケット価格は以下のようになっています。
左側がウルグアイ対ドミニカ戦で、25リンギから299リンギまでとなっています。参考までに右側は来週、同じブキ・ジャリル国立競技場で行われるアジア杯2027年大会予選のラオス戦のチケット価格で、40リンギから70リンギとなっています。(1リンギはおよそ35円。)


個人的にはドミニカ共和国戦よりも、再びアジアに戻ってきたファビオ・カンナバーロ新監督の就任が発表されたウズベキスタン戦が見たかった。しかし初のW杯出場を決めたチームの試合は筆者の住むクアラルンプールから150キロ以上離れたマラッカで行われ、それも月曜日の夜ということで断念しました。