マレーシアサッカー協会(FAM)の公式記録サイトCMSがハッキングの被害を受けていることを複数のメディアが報じています。この記事を書いている10月8日現在も閲覧できません。このCMSサイトは試合結果だけでなく、各クラブの登録選手やマレーシアリーグの試合記録などの情報が現在のシーズンだけでなく、過去に遡って閲覧もできるので、ボラセパマレーシアJPもほぼ毎日お世話になっているサイトです。しかし10月6日からアクセスできず、ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑問題関連で修正中なのかと思っていたのですが、報道によるとハッキングされており、しかも身代金が請求されおり、支払いがなければデータを全て消去すると脅されているということです。しかしこんなときに…。
FIFAが国籍偽装疑惑のヘリテイジ帰化選手7名についてマレーシアにルーツなしと発表
9月26日にFIFAがマレーシアサッカー協会(FAM)と7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に対して国籍偽装を理由に制裁措置を発表しました。FAMには35万スイスフラン(およそ6700万円)の罰金、7選手には2000スイスフラン(およそ38万円)罰金に加えて12ヶ月間に及ぶあらゆるサッカー活動の停止という非常に厳しい処分が科されました。
そして10月6日にはFIFAは処分の根拠となった詳細を発表しています。この発表によると、その祖父母がマレーシア生まれであることからマレーシア国籍を得て代表入りした7名のヘリテイジ帰化選手について、マレーシア国籍取得の根拠となった祖父母の出生地がいずれもマレーシア国外であると指摘し、FIFAに提出された書類はいずれも捏造されたものであるとしています。
以下はFIFA規律委員会のホルヘ・パラシオ副委員長名で発表した裁定の根拠を説明する書類ですが、この中でFIFAは、FAMが提出した書類に書かれていた内容とFIFAが独自で行った調査の結果との間に明らかな相違があることを指摘しています。書類からの抜粋である上の表は今回、国籍偽装が指摘された7名の選手の氏名と出生地が記載されています。下の表はそれぞれの選手の祖父あるいは祖母の出生地についてのFIFAの調査結果です。表の一番右はFIFAが入手した出生届に記載されている出生地で、その隣はマレーシアサッカー協会FAMが提出した「捏造されたとされる出征届」に記載されていた出生地です。例えばPlayer 1のガブリエル・フェリペ・アロチャ(通称ガブリエル・パルメロ)は、FAMが提出した出生届では祖母のマリア・ベレン・コンセプシオン・マルティン氏の出生地がマラッカとされていますが、FIFAが「発見」した出生届の原本によるとスペインのカナリア諸島、サンタ・クルズ・デ・ラ・パルマとなっています。他の6選手も同様で、出生地がペナンやジョホール、クチンなどとされていた祖母/祖父がいずれもマレーシア生まれでないことがFIFAの発表で明らかになっています。


またFIFAが発表した書類の中では、この7選手の祖父母の出生届を「再交付」したマレーシア内務省下の国民登記局にも言及しています。この国民登記局は国内の出生、死亡、結婚、離婚などの登録事務を行なっている役所でが、FAMがFIFAに提出した7選手の祖父母の出生届については、各選手の母国の関係機関に問い合わせた結果「原本が発見できなかった」として、「再交付」を行ったことを国民登記局のトップが認めています。
FIFAはマレーシアの国民登記局について、「7選手の祖父母の出生届の原本を入手できなかったことから、第三者の情報と外国からの非公式な書類をもとにして、マレーシアで出生したことを公式に証明する出生届を『再交付』した」と指摘し、「この手続きはマレーシア政府による法的有効性の審査が本来の原本の記載内容に基づいていないことを示しており、再交付書類の内容に基づくマレーシアサッカー協会による法的有効性の審査そのものを疑わざるを得ない。」と述べて正当な手続きによるものではないと批判しています。
マレーシアサッカー協会はFIFAの発表内容が不正確だと指摘し、不服申し立ての準備を進める
FIFAによる裁定の根拠が明らかになったことを受け、マレーシアサッカー協会(FAM)は、裁定の根拠として挙げられてる内容に誤りがあるとしています。
FAMは10月7日に声明を発表し、7名のヘリテイジ帰化選手について、捏造された書類を入手したことや、そもそもその書類が捏造されたものであることを知っていたことなど、FIFAが指摘している点については、確たる証拠がないとした上で、7選手全員が正当なマレーシア国籍保持者であると主張しています。
「これまで繰り返して説明してきたように、FAMからFIFAへの書類提出の時点で『軽微なミス』があった。具体的には、FAMの職員が国民登記局が交付した公式書類ではなく、「代理人」経由で入手した書類を誤ってFIFAに提出するというミスを犯してしまった。FAMはマレーシア政府によってその法的有効性が認められている出生届の「原本」とともに不服申し立てのための書類を正式に提出する予定である。これによりFAMはマレーシアサッカーの誠実さも証明できるだろう。」という声明を発表しています。
反論しなければ、不正を認めることになるので、不正がないのであればFIFAに誤った裁定を取り消させるためにも徹底的に争うのは当然です。その一方で言及されている「代理人」とは誰なのか、またそもそもFIFAが指摘している「再交付された出生届」に正当性はあるのか、さらに言えば、そのような公的書類を国民登記局という公的機関に再交付させるだけの影響力を持つ人物と、それに従ってしまう政府職員は違法行為をしていないのか、などツッコミどころはまだたくさんあるこの国籍偽装疑惑問題はその真実が明らかになるまでには時間がかかりそうです。
