9月27日のニュース(2)<br>・スランゴールが喜熨斗勝史監督を解任!今季リーグの監督解任第1号に<br>・マレーシアの至宝、ジョホールのアリフ・アイマンがアジア年間最優秀選手候補に<br>・フットサルアジアカップ予選:マレーシアはG組2位で終了も3大会ぶりの本戦出場決定

スランゴールが喜熨斗勝史監督を解任!今季リーグの監督解任第1号に

開幕から2ヶ月足らずで解任。

今年8月に開幕した2025/26年シーズンのマレーシアスーパーリーグで最初の監督交代劇が起こりました。第5節を終えて2勝3敗でリーグ5位のスランゴールFCが喜熨斗勝史監督の解任を発表しています。スランゴールは本日9月27日にムルデカ・スタジアムで開催されるスランゴール・スルタン・カップでシンガポール選抜と対戦する予定ですが、スランゴールは元スリ・パハン監督で、ベトナム代表監督時代のフィリップ・トルシエ監督の元でコーチも務めたクリストファー・ギャメル氏が監督代行を務めるとも発表しています。

過去2シーズン連続でリーグ2位のスランゴールですが、リーグ11連覇中のジョホールからは23年シーズンは勝点差15、昨シーズンは同18と大きく水を空けられての2位だっただけに今季は捲土重来を期したものの、開幕戦のジョホール戦で0-3と完敗すると、第3節は昨季は12位のヌグリスンビランに1-2と敗れ、さらに第5節ではクチン・シティに0-1で敗れ、今季早くも3敗となっていました。

特に昨季途中までスランゴールを指揮していたニザム・ジャミル監督率いるヌグリ・スンビラン戦での敗戦は、ニザム氏に代わって就任した喜熨斗勝史に大きくプレッシャーがかかるものでした。さらに前年の13位から昨季は4位へとチームを押し上げたシンガポール出身のアイディル・シャリン監督率いるクチン・シティとの上位争いに敗れたことで喜熨斗監督の立場はさらに悪くなっていきました。

また2季連続での出場となったACL2では、スランゴールは9月18日にグループステージ初戦のバンコク・ユナイテッド(タイ)戦に2-4で敗れた一方で、ジョホールが一昨日9月25日アセアン(東南アジア)クラブ選手権ショピーカップのグループステージでほぼ同じスタメンのバンコク・ユナイテッドを4-0と粉砕したことも少なからず影響していそうです。なおスランゴールは、9月24日に行われたショピーカップではBGタンピネス・ローバーズ(シンガポール)では4−2と快勝していましたが、この勝利では喜熨斗勝史監督の首はつながらなかったようです

昨年11月に前述の通りスランゴール監督を辞任したニザム・ジャミル氏に代わり、セルビア代表コーチの職を辞してマレーシアにやってきた喜熨斗氏ですが、これまでクラブチームでの監督経験が全くないこともあり、当初からその手腕に疑問の声が上がっていました。それでもシーズン途中の監督就任ながらも昨季は8勝3分3敗のリーグ2位で終えていました。しかし今季はここまで5勝1分4敗で、通算成績は、国内リーグやACL2など全てを合わせると13勝4分7敗、勝率は5割4分2厘となっています。また特にホームでは8勝1分3敗で勝率6割6分7厘なのに対し、アウェイでは5勝3分4敗の4割1分7厘で、今季リーグ戦での3敗はいずれもアウェイマッチでした。

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今季のスランゴールは国内リーグの他、ACL2とアセアン(東南アジア)クラブ選手権「ショピーカップ」に出場していることもあり、今月9月は12日間で4試合という過酷な日程に直面していましたが、その際には「ローテーションできるほど十分に選手がいない」と発言するほど「正直」である一方で、敗れた試合でも選手を批判せず、常にポジティブな対応は好印象でした。またモティベーター型の指導者であるようなエピソードが度々報じられた他、試合後のスタンドへの挨拶も非常に丁寧で「良い人」であることはサポーターには伝わっていましたが、今のスランゴールに必要なタイプの監督ではなかったのかも知れません。

また今回の解任劇で喜熨斗氏以上に批判を浴びているのがスランゴールの経営・運営陣です。2020年にB・サティアナタン氏(故人)が監督を解任されて以来、過去5シーズンで暫定監督の3名を加えると何と延べ9名がスランゴールの監督を務めています(ただし9名の内、ミヒャエイル・ファイヒテンバイナー(前ミャンマー代表監督、現TSG1899ホッフェンハイム アカデミー監督)とニザム・ジャミルの両氏は監督代行と監督の両方を経験しており、人数では7名)。また前任のニザム監督が辞任した理由の一つとして、ニザム監督が希望する選手ではなく、運営陣が選んだ選手を押し付けられて、戦術的に起用が難しかったと言った話もあり、サポーターの中では問題は監督ではなく運営・経営陣であるという認識があります。現在のCEOであるジョハン・カマル・ハミディン氏が就任したのは2020年ですが、今や年中行事とも言える監督交代の責任を負うジョハンCEOの去就にも注目が集まっています。


マレーシアの至宝、ジョホールのアリフ・アイマンがアジア年間最優秀選手候補に

アジアサッカー連盟AFCは9月25日に2025年のアジア年間最優秀選手(男子)の候補3名を発表し、そのうちの1名に国内リーグ11連覇中のジョホール・ダルル・タジムFCに所属するアリフ・アイマン・ハナピが選ばれています。

マレーシア人選手としては初めて候補に上がったアリフ選手は、アジア杯2023年得点王でもあるカタールのFWアクラム・アフィフ(カタール1分アル・サッド)、サウジアラビアのサーレム・アル=ドーサリー(サウジアラビア1部アル=ヒラル)ともに最終候補3名にノミネートされています。

マレーシアの選手では2000年まで続いていたアジアンオールスター(ベスト11)には、ミュンヘンオリンピックに21歳で出場し、その代表キャップ数195は世界第3位のAFC殿堂入りしているソー・チンアウン、マレーシア史上最高のサッカー選手と言われ、その名が国内トップアカデミーに付けられているモクタル・ダハリ、そしてマレーシア人選手としては1985年に最後の受賞者となったザイナル・アビディン・ハサンらが選ばれたことはありますが、個人表彰へのノミネートはマレーシア人選手初となる快挙です。

マレーシア国内では4年連続のリーグMVPを獲得しているアリフ選手ですが、今回のノミネートで国外クラブからの注目を再度集めることになりそうです。なお全部20となる受賞者発表が行われる表彰式は、10月16日にサウジアラビアのリヤドにあるキング・ファハド文化センターで行われます。

以下は主な賞のノミネートリストです。

男子年間最優秀選手
選手国籍所属
アリフ・アイマンマレーシアジョホール・ダルル・タジム
アクラム・アフィフカタールアル=サッド
サーレム・アル=ドーサリーサウジ・アラビアアル=ヒラル
女子年間最優秀選手
選手国籍所属
ホリー・マクナマラオーストラリアメルボルン・シティ
ワン・シュアン(王霜)中国武漢江大女子
高橋はな日本浦和レッドダイヤモンズ・レディース

男子国際最優秀選手賞

選手国籍所属
ホリー・マクナマラオーストラリアメルボルン・シティ
ワン・シュアン(王霜)中国武漢江大女子
高橋はな日本浦和レッドダイヤモンズ・レディース

男子国際年間最優秀選手(アジア以外のクラブチームに所属するアジア国籍の選手が対象)

選手国籍所属
メフディ・タレミイランオリンピアコス(ギリシャ)
久保建英日本レアル・ソシエダ(スペイン)
イ・ガンイン(李康仁)韓国パリ・サンジェルマン(フランス)

女子国際年間最優秀選手(アジア以外のクラブチームに所属するアジア国籍の選手が対象)

選手国籍所属
ステファニー・キャトリーオーストラリアアーセナル(英国)
浜野まいか日本チェルシー(英国)
長谷川唯日本マンチェスター・シティ(英国)

フットサルアジアカップ予選:マレーシアはG組2位で終了も3大会ぶりの本戦出場決定

パハン州クアンタンで行われていたAFCフットサルアジアカップ2026年大会予選G組の最終第3節が行われ、マレーシアはアジア王者のイランに0-4で敗れてG組2位となったものの、通算成績を2勝1敗とした結果、全2位チームの成績上位7チームに入り、2018年の第15回大会以来、3大会ぶり(2020年大会はコロナ禍のため中止)のフットサルアジアカップ出場を決めています。

初戦のアラブ首長国連邦戦を1-0の僅差で勝利すると、続くバングラデシュ戦を7−1と快勝して2勝とし、やはり2連勝中のイランと最終節で無条件で本選出場となる1位を争って対戦しました。前々回2022年大会準優勝、そして前回2024年大会優勝の成績を残すイラン相手に

タイ出身のラクポル・サイネットガム代表監督は予選を通じて選手たちが闘志を見せてくれたことが勝因と述べ、当初の目的だった本選出場が果たせたことは喜ぶ一方で、来年1月に開催されるアジアカップではより厳しい試合となるとして、インドネシアのジャカルタで開催される本選に向けた準備を早めに始めたいとも述べています。このためラクポル監督は、マレーシアサッカー協会(FAM)のフットサル委員会と会合を持ち、年内12月の東南アジア競技大会通称シーゲームズ、そして翌1月の不ットサルアジアカップと続く試合に向けての準備のための話し合いを持つ予定であるとも述べています。

「できれば10月半ばから1ヶ月あるいは2ヶ月程度の合宿と他国の代表チームとの試合を組んで、選手たちを高いレベルのフットサルに慣れさせたい。」と話しラクポル監督ですが、年末に切れる自身の3年契約の更新については、あくまでもFAMとの話し合いを優先するとし、現状では何も話すことはできないと述べています。

9月27日のニュース<br>・マレーシアサッカーに激震!FIFAがマレーシアサッカー協会と7名のヘリテイジ選手の資格停止処分を発表-偽装書類提出による国籍詐称が理由か

スランゴールの喜熨斗勝史監督解任や、アリフ・アイマン(ジョホール・ダルル・タジム)のAFC年間最優秀選手ノミネートなど全てのニュースが吹っ飛ぶようなニュースが昨日金曜日の夜に入ってきました。

FIFAがマレーシアサッカー協会と7名のヘリテイジ選手の資格停止処分を発表-偽装書類提出による国籍詐称が理由か

FIFA規律委員会は、FIFA規律規程第22条(文書偽造・改ざんに関する条項)違反を理由にマレーシアサッカー協会(FAM)および7名のヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)に対する制裁を科すことを発表しています。FIFAによると、FAMはFIFAに対し選手資格に関する照会を行った際、7名のヘリテイジ帰化選手がアジアカップ予選に出場可能とするために改ざんされた書類を使用していたということです。

なお今回処分の対象となった7名のヘリテイジ帰化選手は以下の通りです。

氏名(出身国)所属(リーグ)
DFガブリエル・パルメロ
(スペイン)
23ウニオニスタス・デ・サラマンカ
(スペイン3部)
DFファクンド・ガルセス
(アルゼンチン)
26デポルティーボ・アラベス
(スペイン1部)
FWロドリゴ・オルガド
(アルゼンチン)
30アメリカ・デ・カリ
(コロンビア1部)
FWイマノル・マチュカ
(アルゼンチン)
25ベレス・サルスフィエルド
(アルゼンチン1部)
FWジョアン・フィゲイレド
(ブラジル)
29ジョホール・ダルル・タジム
DFジョン・イラザバル
(スペイン)
28ジョホール・ダルル・タジム
MFエクトル・へヴェル
(オランダ)
29ジョホール・ダルル・タジム

この7選手はいずれもマレーシアにルーツ(父母あるいは祖父母がマレーシア出身)を持つということで、今年に入ってからマレーシア国籍を取得した選手たちで、この7選手全員が2025年6月10日にクアラ・ルンプールのブキ・ジャリル国立競技場で行われたAFCアジアカップ2027年大会3次予選のベトナム戦に出場しました。試合はジョアン・フィゲイレドの先制ゴールでリードしたマレーシアが、ロドリゴ・オルガドのゴールなどで追加点を挙げ、4-0で大勝しましたが、この勝利は対ベトナム戦11年ぶりの勝利でした。

しかしこの試合後に後、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラザバル、エクトル・ヘベルの5選手についてその資格適格性に関する異議申立てがFIFAに寄せられたため、FIFAの規律委員会はすべての証拠を精査し、以下の制裁を決定しました。

1)マレーシアサッカー協会(FAM)はFIFAに対し、35万スイスフラン(およそ6600万円)の罰金をFIFAに支払う。
2)7名のヘリテイジ帰化選手(ガブリエル・パルメロ、ファクンド・ガルセス、ロドリゴ・オルガド、イマノル・マチュカ、ジョアン・フィゲイレド、ジョン・イラサバル、エクトル・ヘベル・)は、それぞれ2,000スイスフラン(およそ37万円)の罰金をFIFAに支払う。
3)上記の7選手はさらに、本決定の通知日から12か月間、全てのサッカー関連活動への関与を停止される。なおこの7選手のマレーシア代表としての試合出場資格の適格性については、FIFA規律委員会からFIFAフットボール審判部門へ付託され、審理される。

FIFAからは9月26日付でFAMおよび7名のヘリテイジ帰化選手に対して、FIFA規律委員会による決定の内容が正式に通知されまており、FIFA規律規程の関連条項に従い、通知から10日以内に理由付き決定(不服申し立て)を請求することが可能だということです。

またマレーシアサッカー協会(FAM)も9月27日早朝に公式声明を発表し、FIFAからの通知が届いていることを明らかにした上で、以下のような声明をモフド・ユソフ会長代理名で発表しています。

「FAMは、関係する選手たちとFAM自身が、このプロセス全体を通して誠意を持って、完全な透明性をもって行動してきたことを強調したい。」

「FAMは、定められたガイドラインに従い、すべての書類手続きと関連手続きを透明性をもって管理してきた。実際にFIFAは既に選手たちの資格を審査し、マレーシア代表として出場する資格があることを公式に確認していた。」

「FIFAによる今回の決定に関して、FAMは控訴を行い、選手たちとマレーシア代表チームの利益が常に保護されるよう、利用可能なあらゆる法的手段と手続きを活用する。FAMは、毅然とした行動、国際規則の遵守、そしてマレーシアサッカーの公正性の擁護に引き続き尽力する。」

「また、マレーシア政府およびすべての関係者と緊密に連携し、このプロセスが透明性、公正性、そしてスポーツマンシップ精神に基づいたものとなるよう努めるつもりだ。」とした声明では、控訴手続きおよびFAMによる今後の対応に関する今後の進展については、随時公表されるということです。

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FIFAからの発表には含まれていませんが、勝利していた6月のベトナム戦はもちろん、3月のネパール戦の勝利が剥奪されるなど試合結果が変更となる可能性があるだけでなく、現在出場中のアジアカップ予選すら出場禁止となる可能性すらあります。

報道ではFAMのユソフ・マハディ会長代理が不服申し立てを行う旨の発言をしたとも伝えられており、マレーシアのサッカー界は当面はこの話題で持ちきりとなりそうです。