2025/26シーズンのAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)とAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)がそれぞれ開幕し。マレーシアからACLEに出場するジョホール・ダルル・タジムFCとACL2に出場するスランゴールFCは、いずれもタイのクラブと対戦し、ともに敗れています。
2025/26ACLエリート リーグステージ第1節:ジョホールはまたもブリーラムに惜敗
マレーシアリーグ11連覇中のジョホールが対戦したのは、現在タイ1部リーグを4連覇中、しかも過去10シーズンで7度優勝というタイの王者ブリーラム・ユナイテッド。マレーシア関連で言えば、昨シーズンまではマレーシア代表DFディオン・クールズ(現セレッソ大阪)が所属していたチームでもあります。
それぞれの自国リーグを席巻している両クラブですが、奇遇なことに公式戦での対戦は2024/25シーズンのACLエリートが初めてでした。昨年12月3日にジョホールのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行われたリーグステージ第6節では、ジョホールが2名、ブリーラムも1名の退場者を出す乱戦の結果、0-0で引き分けました。
東地区12チーム中、上位8チームが進出するノックアウトステージ進出を決めていた両クラブですが、リーグステージ最終第8節の試合数時間前に山東泰山(中国)が「選手の体調不良」を理由に出場を辞退します。これにより山東泰山との試合結果全てが無効となり、山東泰山に敗れていたジョホールは、山東泰山を破っていたヴィッセル神戸の勝点3が無効となったことでリーグ3位に浮上、ノックアウトステージでは悲願のベスト8と進出をかけて同5位のブリーラムとの再戦が決まりました。
しかしホームアンドアウェイ形式で行われた今年3月のノックアウトステージ1回戦でジョホールは、初戦のアウェイマッチでは0−0と引き分けたものの、ホームでスパナット・ムエンターのゴールにより0−1で破れて敗退しています。東南アジアの盟主争いとも言える両チームの対戦は終わってみればジョホールの2分1敗、しかも3試合いずれもクリーンシートを許す屈辱的な試合でした。
そして迎えた今季2025/26ACLEでは、2024年12月以来何と4度目となる両クラブの対戦が実現しています。以下はこの試合の両クラブの先発XIです。半年前の2025年3月の対戦でも先発していたのはジョホールはGKアンドニ・スビアウレ、DFエディ・イスラフィロフ、FWアリフ・アイマンのわずか3名のみ、一方のブリーラムは8選手が前回対戦と同じ顔ぶれで、MFロベルト・ジュリ、SBシェイン・パティナマ、DFフィリップ・ストイコビッチが新たに加わっています。


過去3回の対戦でいずれも無得点のジョホールは、開始23秒でブラジル出身でヘリテイジ帰化選手としてマレーシア代表でもプレーするジョアン・フィゲイレドがゴールかと思われましたが、VARが介入すると直前にフィゲイレドにハンドがあったとして無効となります。その後ブリーラムも6分にロベルト・ジュリからジョホールのDFライン裏に絶妙のパスが出ると、それに走り込んだギリェルメ・ビソリがゴールしますが、こちらもVARが入ってオフサイドと判定されます。しかし28分、ついに均衡が破れます。アリフ・アイマンの右コーナーキックをCBながら現在国内リーグ得点王のジョン・イラザバルが頭で合わせると、このシュートにはブリーラムGKニール・エザリッジが反応よくブロックしますが、そのこぼれ球にアントニオ・グラウデルが反応よく蹴り込み、ジョホールに待望の先制点が入ります。
前半はボール保持率がジョホール49%に対してブリーラムが51%、シュート数(枠内)はジョホール8(2)、ブリーラム5(1)、コーナーキックはジョホールが2、ブリーラムが5、共にイエロー、レッドともなくファウル数はジョホール7、ブリーラム3という数字を残して、後半に入ります。
そして後半の開始5分、ジョホールの隙をついてブリーラムが追いつきます。この試合を通じて効果的なパスで何度もジョホールDF陣を翻弄したロベルト・ジュリがスパナット・ムエンターへパス。これをスパナットが狙いすましてシュートし、同点ゴールが決まったブリーラムが追いつきます。さらにその4分後には、ゴールライン近くでジョン・イラザバルに競り勝ったスパナットがゴール前でフリーとなっていたロベルト・ジュリへパス。これをジュリが落ち着いて決め、ついにブリーラムが逆転します。
負けられないジョホールは81分にはフィゲイレドがヘディングシュートを、90分にはベルグソン・ダ・シウバがシュートを放ちますが、いずれもGKエザリッジがスーパーセーブ連発で凌ぎ、ジョホールはゴールを割ることができず試合は終了。東南アジアの強豪同士の対戦は、またしてもブリーラムに軍配が挙がっています。
2025/26 ACLエリート リーグステージ第1節
2025年9月15日@ブリーラム・スタジアム(ブリーラム、タイ)
ブリーラム・ユナイテッドFC 2-1 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️ブリーラム:スパナット・(50分)、ロベルト・ジュリ(54分)
⚽️ジョホール:ジョアン・フィゲイレド(28分)
2025/26 ACL2 グループステージ第1節:スランゴールは4失点で黒星スタート
一方ACL2では、スランゴールFCがタイのトゥルー・バンコク・ユナイテッドと対戦しています。いずれも昨季は自国リーグで2位のチームですが、スランゴールは優勝したジョホールに勝点18と離されての2位に対し、バンコク・ユナイテッドは優勝したブリーラムとの勝点差はわずか1の2位でした。
そんな両チームの対戦は試合前から不穏な雰囲気でした。スランゴールのウルトラス「ウルトラセル」がこの試合の開始時間に不満を表明しました。「平日の午後6時にキックオフ!? マジで!?」「サッカーは労働者階級のものだ!」と言った横断幕をスタンドに掲げて抗議を行いました。以下はSNS上に投稿されたウルトラセルの声明文で、この中では「午前9時から午後6時まで働く労働者は、スタジアムまでの距離や渋滞状況からこのキックオフ時間では試合開始に間に合わない。放映権や商業価値と同じくらいサポーターのサッカーへの想いは重視すべきで、AFCにはこの後の試合開始時間の再検討を求めたい。」と言ったことが述べられています。ちなみに私も試合開始時間を確認せずに国内リーグ同様午後9時キックオフと思い込んでチケットを買い、結局、試合に間に合わうように職場を出られず観戦できませんでした。(以下はウルトラセルがSNSに投稿した声明文)

そんな試合の両チームの先発XIは以下の通りです。バンコク・ユナイテッドはいずれも今季新加入のFW久乗聖亜選手とシンガポール代表のMF仲村京雅選手が先発しています。ちなみに両選手は昨季はシンガポールのタンピネス・ローヴァーズFCでチームメートでした。


スランゴールサポーターの後押しもないままキックオフとなったこの試合は、開始11分でバンコク・ユナイテッドが先制します。ムフセン・アルガッサニのパスを受けたイリアス・アルハフトがスランゴールDFをかわしてシュート。GKカラムラー・アル=ハフィズが一旦はこのシュートをブロックするも、そのこぼれ球をイリアス選手自身が押し込んでゴールとなります。さらにその4分後には今度はムフセン選手自身が右サイドのジャカパン・プレイスワンからのクロスを頭で合わせて追加点となるゴールを挙げます。
スランゴールは22分、相手のミスからボールを得た右サイドのクエンティン・チェンが得意の低く速いクロスを入れると、クリゴール・モラレスがこれを押し込み1点を返しますが、その1分後には再び右サイドを上がったイリアス選手がシュートを放つと、これがDFケビン・ディーロムラムに当たって角度が変わりそのままゴールインし、バンコク・ユナイテッドが再びリードを2点に広げます。
そして39分にはマレーシア代表でもプレーするDFハリス・ハイカルが久乗聖亜選手との競り合いで挙げた足が九乗選手に当たる不運で1発レッドで退場なり、スランゴールは2点を追う展開の中で10名となってしまいます。
後半に入るとスランゴールが数的不利の中、何度か好機を作ると73分にはクリゴールのシュートをGKパティワット・カーマイが弾くと、マレーシアU23代表FWアリフ・イズワンがこのこぼれ球を押し込み、スランゴールは1点差に迫ります。
スランゴールは今季は終盤の失点が目立つ中、この試合でも84分に左コーナーキックからフィリペ・マイアにヘディングシュートからのゴールを許して万事休す。序盤の大量失点に苦しんだスランゴールは、今季のACL2を黒星でスタートしました。
スランゴールのACL2第2節は、10月1日のアウェイのライオン・シティ・セイラーズFC(シンガポール)戦です。なおこの試合は、車や電車でも行くことができる隣国シンガポールでの開催ということで多くのスランゴールサポーターが押しかけることが期待されましたが、ライオン・シティ・セイラーズFCがアウェイチーム用に用意したのはわずか120枚だということです。試合会場のビシャン・スタジアムの収容人数が2,400名(!)で、AFCの規定ではアウェイサポーター向けのチケットは収容人員の5%が最低ラインということから算定されているようですが、昨季のACL2決勝が同じビシャン・スタジアムで行われた際には、観客が9,737名でしたので、なぜ今回2,400名とされているかは不明です。
2025/26 ACL2 グループステージ第1節
2025年9月18日@MBPJスタジアム(スランゴール州プタリン・ジャヤ)
スランゴールFC 2-4 トゥルー・バンコク・ユナイテッドFC
⚽️スランゴール:クリゴール(50分)、アリフ・イズワン(54分)
⚽️バンコク:イリアス・アルハフト2(28分)、ムフセン・アルガッサニ、フィリペ・マイア
🟥スランゴール:ハリス・ハイカル(39分)
