7月2日のニュース<br>・マレーシアサッカー協会会長「ヘリテイジ帰化選手は全員がFIFAの承認を得ている」<br>・シンガポール代表監督候補のクチンシティ監督はクラブ残留へ<br>・本拠地が決まらないイミグレセンFCのホーム候補にプルリス州が浮上

マレーシアサッカー協会会長「ヘリテイジ帰化選手は全員がFIFAの承認を得ている」

6月10日のAFCアジア杯2027年大会3次予選のベトナム代表戦では4−0と圧勝したマレーシア代表。ベトナム代表戦の勝利は11年ぶりのことでした。そんな長年の宿敵相手に大勝した原動力となったのはマレーシアにルーツを持つヘリテイジ帰化選手でした。特に2025年になって代表入りしたヘリテイジ帰化選手はスペインやオランダ、ブラジルやアルゼンチン出身で、一見するとマレーシアとは縁遠いように思える国々であることから、近隣諸国はもとより、国内でもその「ルーツ」の信憑性に疑問の声が上がっています。

そんな中、マレーシアサッカー協会FAMのモハマド・ジョハリ・アユブ会長が声明を発表し、ヘリテイジ帰化選手のマレーシア代表入りについては、FIFAによる厳格な審査を経ていると説明しています。

「我々(FAM)は誰彼構わずヘリテイジ帰化選手として代表に招集しているわけではない。FIFAが選手たちについて全てを審査しており、FAMはFIFAの設けた手順や指示に従っているだけに過ぎない。」

さらにジョハリFAM会長は、一部のヘリテイジ選手のルーツについての情報が開示されていないという指摘については、選手の帰化資格についての情報を隠したり、開示を遅らせる理由がないと述べています。

「もし我々が(そういったルーツに関する情報を)公にするのは簡単なことだ。しかし全てのヘリテイジ帰化選手はFIFAの審査を通っているので、今後も(これまでと同様の)正しい方法と手順に従う予定である。」と述べたジョハリFAM会長は、一部から出ている、ルーツを明らかにしていない帰化選手は正式な帰化手続きを経ずにマレーシア国籍を取得しているという疑問の声に応えています。

ベトナム代表戦直前の1週間ほどで、いずれもアルゼンチン出身のCBファクンド・ガルセス、WGイマノル・マチュカ、CFロドリゴ・オルガド、スペイン出身のCBジョン・イラザバル、ブラジル出身のCFジョアン・フィゲイレドと一気に5名のヘリテイジ帰化選手が発表されるとそのまま代表入りし、ベトナム代表戦にはこの5名全員が先発、そしてフィゲイレド、オルガドの両選手が1点目と2点目を挙げて、歴史的なベトナム代表勝利に貢献しています。


11年ぶりとなるベトナム代表戦勝利に国内サポーターが盛り上がりを見せる一方で、複数の帰化選手はそのルーツが明らかにされておらず、一部国内メディアを中心にFAMに対しては帰化選手のマレーシア国籍取得に至るルーツを明らかにするべきという声があるのも事実です。今回のマレーシアサッカー協会(FAM)会長の発言もその火消しの一環ですが、FIFAはFAMが提出した書類を審査するだけで、FIFA自体が選手のルーツそのものについて独自の調査を行うわけでなく、また英字紙スターでは、国籍付与のための審査を行うマレーシア政府内務省に問い合わせたところ、詳細はFAMに問い合わせるようにと門前払いを受けたという報道もあります。ベトナム戦勝利で一気に加速したアジア杯2027年大会出場権獲得に向けて、サポーターが一丸となって代表を応援するにはFAMが各帰化選手のルーツを公表して、この疑念を払拭する責任があるように思えます。

シンガポール代表監督候補のクチンシティ監督はクラブ残留へ

チームはアジア杯2027年予選を1勝1分と好スタートを切りながら、先月に突然辞任した小倉勉前シンガポール代表監督。その後任候補の1人として名前が上がっていたのがシンガポール出身でクチンシティFCで指揮を取るアイディル・シャリン監督でした。昨季2024/25シーズンにはマレーシアリーグ最優秀監督賞を受賞したその手腕が評価された結果、メディアが次のシンガポール代表監督候補として報じていましたが、今季2025/26シーズンは、アイディル監督のクチンシティFC残留が決まったようです。

クチンシティFCのファズルディン・アブドル・ラーマン オーナーは「アイディル監督はチームの全権を与えられており、クチンシティFCでの指導に取り組むことに満足している。」と述べて、アイディル監督がチームを離れることはないとしています。

8月8日に開幕が予定されている今季2025/26シーズンのスーパーリーグに向けて、クチンシティFCは95%の補強が完了していると述べたファズルディン オーナーは、2シーズンぶりにマレーシアリーグに復帰するカメルーン出身のCFロナルド・ンガは数日中にチームに合流すると述べ、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)からローン移籍する昨季のU23リーグ得点王のガブリエル・ニステルロイや、同じJDTから完全移籍するGKハジク・ナズリ、FWラマダン・サイフラーなどに加えて、昨季のチームからはマレーシアでのプレーが5年目を迎えるCB谷川由来選手や谷川選手とコンビを組むCBジェイムズ・オクウォサらの残留も発表しており、昨季の4位に続いて今季もリーグトップ5入りを目指すとしています。

本拠地が決まらないイミグレセンFCのホーム候補にプルリス州が浮上

昨季2024/25シーズンの3部A1セミプロリーグで2位となり、今季は1部スーパーリーグに昇格するイミグレセン(入国管理局)FCは、昨季本拠地としていた最大収容人数2000名のUKMスタジアムに代わる新たな本拠地を探しています。マレーシア語紙ブリタハリアンは、新たなホームの候補地としてマレーシア最北端のプルリス州が浮上していると報じています。

マレーシアの行政首都プトラジャで発足したイミグレセンFCは、隣接するスランゴール州のバンギにあるUKMスタジアムを昨季はホームとして使用していました。しかしここは、マレーシア国民大学UKM内にある運動場で、収容人員が少ない上、スタンドのついた運動場という体で、1部スーパーリーグの公式戦を行うには心許ない設備です。このためイミグレセンFCは1部参入決定後から、新たな本拠地探しを続けてきました。

マレーシアにある13州の内、1部スーパーリーグに所属するクラブが本拠地としていないので、ペラ、クダ、プルリスの3州ですが、イミグレセンFCが当初、本拠地を移そうとしたのがクダ州でした。財政面の問題から昨季はスーパーリーグに所属していたクダ・ダルル・アマンFC(KDA FC)が今季はクラブライセンスを交付されずに撤退したため、KDA FCが使用していたダルル・アマン・スタジアムを新たな本拠地としようとしましたが、クダ州サッカー協会会長も兼ねるクダ州のムハマド・サヌシ州首相(日本で言えば知事に当たります)がイミグレセンFCがクダ州でホームゲームを開催することを拒否しました。

これによりイミグレセンFCは新たな本拠地を探すことになったのですが、今回はプルリス州の名前が挙がりました。プルリス州のトゥンク・サイド・プトラ・スタジアムを管理するプルリス州スポーツ評議会のモハマド・アズライ・ザイン・トゥシミン議長がマレーシア語紙ブリタハリアンの取材に応え、イミグレセンFCの関係者がトゥンク・サイド・プトラ・スタジアムの視察に訪れたことを明らかにしています。

アズライ議長は、プルリス州はペナン州、連邦直轄地クアラルンプール、スランゴール州同様にイミグレセンFCのホーム候補地の一つであると話し、実際にホームとなった場合でも(3部の)A1セミプロリーグでプルリスGSA FCや(4部の)A2リーグでプレーするビントンFCといったプルリス州のクラブによる使用が優先されるとも述べています。