マレーシアの「パトリック・ヴィエラ」もジョホール入り
君もジョホールを選ぶのか。
今季2024/25シーズンに彗星のように現れながらも、その風貌やプレースタイルからマレーシアの「パトリック・ヴェエラ」の愛称を得たスリ・パハンFCのイブラヒム・マヌシがジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)移籍を発表しています。またイブラヒム選手の背番号は、今季アルバロ・ゴンザレスが着けていた27となることも明らかになっています。
23歳のイブラヒム選手は、昨季2023年シーズンはわずか1試合の出場ながら、開幕から1勝1分2敗と苦しいスタートを切ったファンディ・アフマド監督が第6節となるクアラルンプールシティFCに初めて先発に起用すると、そこから出場時間を伸ばし、シーズン後半戦からは豊富な運動量を誇るDMFとしてレギュラーポジションを掴みました。
所属するスリ・パハンFCは、今季リーグ戦で8試合連続勝星など苦しいシーズンを送り7勝8分9敗の8位と苦しみましたが、今季最終戦となった4月25日のマレーシアカップ決勝では、イブラヒム選手はマレーシアカップ3連覇と3季連続国内三冠のかかるJDTを相手に自慢の運動量と時折見せる正確なロングフィードで接戦を演出しました。
しかしこのマレーシアカップ決勝後には、スリ・パハンFCのオーナーでパハン州王子のトゥンク・アブドル・ラーマン・イブニ・スルタン・ハジ・アフマド・シャー殿下が来季はクラブオーナーを辞任することを明らかにし、マレーシアカップ準優勝のスリ・パハンFCは選手の自由な移籍を容認しました。そこからスランゴールFCとJDTの間でイブラヒム選手の争奪戦が勃発しました。中盤の選手層が厚く、加入しても出番があるかどうかはわからないJDTに対して、スランゴール州スンガイ・ブロー出身のイブラヒム選手はスランゴールFCには文字通り喉から手が出るほど欲しい選手でしたが、この勝負にはJDTが勝利しています。
マレーシアのサッカーファンでも、そのマレーシア人離れした風貌から新たな外国籍選手と間違えることが多かったイブラヒム選手。国内でもそれだけ無名だったわけですが、それもそのはず。ジョホール州のトゥンク・マコタ・イスマイル・スポーツ高校では、スランゴールFCでプレーするムカイリ・アジマルと同期のイブラヒム選手ですが、18歳で卒業するとマレーシアリーグクラブのセレクションに参加できず、3年間はフードデリバリーなどに従事し、ほとんどサッカーをすることがなかったということです。それでも一昨年に母親の勧めでスリ・パハンFCのセレクションに参加し、トップチームでは2022年シーズンは3試合、翌2023年シーズンは1試合の出場機会を得たものの、大半をU23チームで過ごしたイブラヒム選手ですが、今季のチームの窮状で出場機会を得るとそのチャンスを逃さずに、最後は国内最高峰のクラブ移籍まで手に入れています。
来季の実質2部リーグのA1セミプロリーグは韓国チームを含む16チーム編成に
マレーシア国内リーグは1部スーパーリーグ、2部プレミアリーグという編成が長らく続いていましたが、2023年シーズンにスーパーリーグとプレミアリーグを統合して新たなスーパーリーグを編成した結果、現在、プレミアリーグは休止状態となっています。
このためスーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)とは別団体のアマチュアフットボールリーグ(AFL)が運営する3部A1セミプロリーグが、現在は実質的な2部リーグです。そのA1セミプロリーグに来季2025/26シーズンに参戦する16チームが発表されています。
チーム名 | 備考 | |
1 | JDT II | JDTのU23チーム |
2 | スランゴールFC II | スランゴールFCのU23チーム |
3 | イミグレセンFC II | イミグレセンFCのU23チーム |
4 | ブンガラヤFC | 今季A1セミプロリーグ4位 |
5 | マレーシア大学 | 今季A1セミプロリーグ5位 |
6 | 国軍FC | 今季A1セミプロリーグ8位 |
7 | マンジュンシティFC | 今季A1セミプロリーグ9位 |
8 | マチャンFC | 今季A1セミプロリーグ14位 |
9 | クダFA | クダ州サッカー協会のチーム。初参戦 |
10 | ペラFA | ペラ州サッカー協会のチーム。初参戦 |
11 | KRW FC | かつての名門クランタンFCの流れを汲む |
12 | クランタンWTC FC | 4部A2アマチュアリーグ2024/25 2位 |
13 | クダ・ダルル・アマンFC | スーパーリーグ撤退から再生を目指す |
14 | プルリスGSA FC | 4部A2アマチュアリーグ2024/25チャンピオン |
15 | UMダマンサラ・ユナイテッド | 詳細は不明 |
16 | ソウルフェニックスFC | 今季は韓国K4リーグ所属。詳細は不明 |
今季2024/25シーズンは15チームが参加したA1セミプロリーグは、優勝したマラッカFCと2位のイミグレセン(入国管理局)FCがスーパーリーグへ昇格しています。
2023年シーズンに発足させたU23チームのリーグ、MFLカップがわずか2シーズンで廃止されたことで、行き場のなくなったU23チームの内、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)、スランゴールFC、そして今季1部スーパーリーグに昇格したばかりのイミグレセンFCの3クラブはU23ちーむをこのA1セミプロリーグに参戦させています。また来季2025/26シーズンにスーパーリーグでプレーするための国内クラブライセンスが交付されず、チームを解散したペラFCの後を継ぐ形でペラ州サッカー協会がマレーシアの国体Sukmaに出場するU23チームを核にした「ペラFA」を創設して参戦しています。同様にクラブライセンスを交付されなかったクダ・ダルル・アマンFCは、クラブを解散せずにそのまま参戦し、これとは別にクダ州サッカー協会のチーム、クダFAも参戦しています。またクランタン・レッド・ウォリアーズFC(KRW FC)を含めたこれのチームは、他のチームが下部リーグから昇格してA1セミプロリーグまた到達しているのに対し、いきなりこのリーグ参戦を認められるなど、マレーシアらしい緩さも見られますが、そこで問題になるのはリーグを運営するAFLの運営能力です。来季途中で突如参戦のどこかのチームに給料未払い問題が発生するようなことがあれば、その審査能力にも疑問符がつきます。