6月16日のニュース<br>・ジョホールにブラジル出身FWが新たに加入<br>・サファウィ・ラシドはKLシティへ移籍<br>・ペナンのキャプテン、ヴィトールは退団しブラジルへ<br>・サバFCも6シーズン在籍のパク・テスらの退団を発表

残り2.5枠をかけた2026W杯アジア4次予選(プレーオフ)がサウジアラビアとカタールの2カ国で集中開催となることをアジアサッカー連盟(AFC)が6月13日に発表していますが、これに対して各国から批判が噴出しています。

このプレーオフにはA組3位のアラブ首長国連邦UAE、同4位のカタール、B組3位のイラン、同4位のオマーン、C組の3位サウジアラビア、同4位のインドネシアが出場し、10月8日から14日までの間、3カ国ずつ2組に分かれて総当たり戦を行い、各組の1位が2026W杯への出場権を獲得します。

こういったプレーオフは当然ながら中立国で開催されるのが常で、AFC本部があり最終予選に残ることがないマレーシアも、かつてはこのプレーオフのような試合で会場としてよく使われることがありましたが、今回はなんとプレーオフに出場するサウジアラビアとカタールで行われるということでAFCに対して批判が続出しているということです。

サウジアラビアで集中開催されたACLエリート決勝トーナメントでも、他国のクラブに対して、優勝したアル・アハリを含めた地元勢に有利な日程になっていたり、組合せ抽選前日に急遽、日程が変更されるなどことでAFCは批判を受けましたが、まぁオイルマネーなしではAFCは立ち行かないということなのでしょう。なおこのニュースをマレーシアで報じた英字紙ニューストレイツタイムズはAFCに問い合わせを行ったということですが、記事執筆の時点では返答がないということです。

ジョホールにブラジル出身FWが新たに加入

あくなき勝利への執念。

今季2024/25シーズンにリーグ11連覇を含む3シーズン連続となる国内三冠を達成したジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が新たなFWを獲得しています。今回加入するのはブラジル出身のジャイロことジャイロ・ダ・シウバです。33歳のジャイロ選手は2021/22シーズンからキプロス1部のパフォスFCでプレーし、2022/23シーズンには18ゴールでリーグ得点王となっています。今季は26試合に出場して10ゴール5アシストの記録を残しています。またUEFAカンファレンスリーグ10試合、UEFAヨーロッパリーグ予選2試合にも出場しています。

JDTはスペイン出身で前スペイン2部カディスCFのCBアントニオ・グラウデル、そして今年3月にマレーシア代表デビューを果たした元オランダU20代表のAMFエクトル・へヴェルをポルトガル2部ポルティモネンセSCから獲得して、来季のACLEでの上位進出を目指しています。


JDTはスペイン2部スポルティング・ヒホンで10番をつけるMFナチョ・メンデスにオファーを出していることが報じられています。オーナーでジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下の趣味なのか、前述の同じスペイン2部カディスCFから加入するアントニオ・グラウデルをはじめ、MFイケル・ウンダバレナ、DMFエディ・イスラフィロフ、AMFフアン・ムニョス、SBオスカル・アリバスら多くのスペイン出身選手がJDTには在籍しています。

メンデス選手についての記事を掲載した英字紙ニューストレイツタイムズによると、27歳のメンデス選手にはスペイン1部ラ・リーガや2部のクラブ複数も興味を示しているということです。

サファウィ・ラシドはトレンガヌからKLシティへ

今季2024/25シーズンはジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)からトレンガヌFCにローン移籍していた代表FWサファウィ・ラシドが来季はクアラルンプールシティFC(KLシティFC)でプレーすることをKLシティFCを運営するクアラルンプールサッカー協会(KLFA)のサイド・ヤジド・サイド・オマル会長が明らかにしています。

20歳となる2017年に出身地のトレンガヌからJDTに移籍し、2018年、2019年と2シーズン連続でリーグMVPを受賞、マレーシア代表でも主力となるなど順調だった選手生活が変わってしまったのが2020年のポルトガル1部ポルティモネンセへのローン移籍でした。シーズン途中の10月に移籍したポルティモネンセでは、トップチーム出場どころかU23チームで1試合に出場したのみで、結局、ローン移籍期間を短縮してわずか3ヶ月でJDTに戻りました。

翌2021年には開幕直後のケガで3ヶ月を棒に振ったサファウィ選手ですが、自身が不在だったJDTでその間に同じ右ウィングとして台頭して来たのがアリフ・アイマンでした。アリフ選手はこの2021年シーズンにサファウィ選手に代わって、史上最年少の19歳でリーグMVPを獲得すると、今シーズンまで4季連続でリーグMVPを獲得するスーパースターとなっています。このアリフ選手に押し出される形で、2022年末にタイリーグのラーチャブリーFCにローン移籍します。しかし13試合で1ゴールとマレーシア代表としてはやや寂しい成績でシーズンを終えると、2023年シーズンはJDTに復帰するもリーグ戦出場2試合と激減し、今季はトレンガヌFCへローン移籍していました。リーグ戦とカップ戦合わせて31試合で13ゴールという記録でしたが、20試合以上出場したのは2021年シーズン以来3年ぶりでした。復活の兆しが見えたサファウィ選手ですが、エースのパウロ・ジョズエの退団が濃厚なKLシティFCでは、フル回転が期待されます。

またマレーシア出身の選手に関しては、KLシティFCにはペナンFCからシャマル・クティ・アバの移籍の噂もあります。代表戦出場43試合のMFはやはりJDTからのローン移籍となります。

さらにKLシティは東ティモール代表FWジョアン・ペドロを獲得したことも報じられています。今季はカンボジア1部のアンコール・タイガーでプレーし、26試合で7ゴール6アシストを記録した左WGを主戦場とする26歳のペドロ選手は、PSMマカッサル(インドネシア)、ベンフィカ・デ・マカオ(マカオ)、ウボン・ユナイテッド(タイ)などでプレー経験もあり、5月に行われたマンチェスター・ユナイテッド対アセアンオールスターズ戦には東ティモール代表として出場しています。


今季は未払い給料が一時は7か月に及ぶと報じられたKLシティFCですが、どこから資金を得たかは分かりませんが、サイド・ヤジドKLFA会長は未払い給料は全て支払われていると主張しています。なお今季は6位に終わったKLシティFCですが、財政問題から勝点6を剥奪されており、その6点を加えると順位が1つ上がって5位になるなど、選手の実力ではなく、経営陣によって苦しんだチームが来季は復活しそうです。

ペナンのキャプテン、ラファエル・ヴィトールは退団しブラジルへ

今季10位に終わったペナンFCは、キャプテンでブラジル出身のCBラファエル・ヴィトールの退団、そしてブラジルのセリエB、アマゾナスFCへの移籍が発表されています。

2020年から5シーズンに渡りペナンFCでプレーしてきたヴィトール選手は、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)へ移籍し、マレーシア国籍を所得して、帰化選手として代表入りなどの噂もありました。

強力なリーダーシップを発揮してチームをまとめてきたヴィトール選手の退団は、前述のKLシティFC移籍が噂されているシャマー・クティ・アバの退団とともに、ペナンFCが来季へ向けてチームを大きく刷新する未来を示しています。

ペナンFCには、今季PDRM FCでプレーしたFW鈴木ブルーノに加え、クチンシティFCからFWチェチェ・キプレ、スリ・パハンFCからDFステファノ・ブルンドが加入することが明らかになっている他、ボスニア出身のWGダニーロ・シポヴァッチ(ボスニア1部BSKバニャ・ルカ)、ブラジル生まれで元東ティモールU23代表のAMFチアゴ・フェルナンデス(インドネシア2部プルシカス・スバン)の加入も発表されています。

またマレーシア人選手ではクラブが解散したペラFCから元FC琉球のWGワン・ザック・ハイカルとMFフィルダウス・サイヤディが、また来季のスーパーリーグ参戦を取りやめたクダ・ダルル・アマンFCからSBアリフ・ファルハン、MFアミルル・ヒシャム、CBアクマル・ザヒルの3選手、そしてスランゴールFCから元マレーシア代表GKカイルルアズハン・カリドが加入します。


マレーシア国籍を得て代表入りが噂されていたヴィトール選手の退団は、先日、ベトナム代表に4−0と圧勝したマレーシア代表と関係があるかもしれません。これまでマレーシア代表には国内で5シーズン以上プレーした経験を持つというFIFAの規約に沿って、外国籍選手がマレーシア国籍取得後に代表入り選手が7名おり、今回のベトナム代表との試合でベンチ入りした中では、ブラジル出身のパウロ・ジョズエ(KLシティFC)とエンドリック・ドス・サントス(ベトナム1部ホーチミンシティFC)、そしてロメル・モラレス(JDT)の3名がいます。ここ数年のマレーシア代表は、こういった帰化選手が主力として活躍していました。しかし、今回のベトナム代表戦で11年ぶりの勝利に導いたのは、そういった帰化選手ではなく、国外生まれながらマレーシアにルーツを持つ帰化選手(ヘリテイジ帰化選手)でした。このヘリテイジ帰化選手はマレーシアリーグよりレベルの高いリーグでプレーしていることもあり、今後はこのヘリテイジ帰化選手の方が重用される可能性が高いだけでなく、マレーシアサッカー協会(FAM)や所属するクラブなどがルーツを持たない外国籍選手のマレーシア国籍取得支援を積極的に行わない可能性もあります。

今回退団したヴィトール選手の他、今季のリーグでシーズン最多ゴール記録を樹立したブラジル出身のFWベルグソン・ダ・シルヴァ(JDT)や、KLシティFCのオーストラリア出身CBジャンカルロ・ガリフオコなども、今後代表入りする帰化選手候補と言われていましたが、今回のヴィトール選手、そして以前このブログでも取り上げたマレーシア人と結婚までしてマレーシア国籍取得に前向きだったにもかかわらず、やはりマレーシアを去ったトレンガヌFCのモンテネグロ出身CBアルグジム・レゾヴィッチのケースを見ると、今後はヘリテイジ帰化選手が代表強化の中心となるのではないでしょうか。

サバFCも6シーズン在籍のキャプテン、パク・テスらの退団を発表

今季はJDT、スランゴールFCに次ぐ3位に終わったサバFCは、キャプテンで韓国出身のDFパク・テスら外国籍選手の退団を発表しています。

2019年からサバFCでプレーするパク選手はCBとして99試合に出場して20ゴールを挙げています。35歳のパク選手は自身のインスタグラムストーリーで、今年1月からクラブと契約更新について話し合うことになっていたものの、「チームへの忠誠心と愛ゆえにその話し合いを待ち続け」る一方で、他のクラブへの移籍を考えることなかったと明かしています。さらにクラブに問い合わせても返事はなく、『また後で』とだけ言われ続けた。」と綴り、最後は「サバFCに感謝したい。私はただクラブが選手を人間として、よりプロフェッショナルに扱ってくれることを願っているだけである。(こういった形での退団は)苦いが、これもサッカーの一部なので耐えるつもりだ。」と失望の色を滲ませる投稿を行なっています。

サバFCは、元インドネシア代表WGサディル・ラムダニ、元ポルトガルU17代表MFテルモ・カスタニェイラ、元ギリシャU19代表CBハリス・スタンブリディスの退団が発表されている他、元マレーシア代表MFイルファン・ファザイルら9名のマレーシア人選手の退団も併せて発表されています。


その一方でサバFCは新加入の4選手を発表しています。新外国籍選手2名はニュージーランド代表で12試合出場経験を持つSBデイン・インガム(26歳、オーストラリア1部ニューカッスル・ジェッツFC)と、MFディーン・ペレカノス(24歳、オーストラリア1部ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC)、そしてマレーシア人選手2名はいずれも地元サバ州出身で、今季はPDRM FCでリーグ戦14試合に出場したCBバドルル・アフェンディと、2023年シーズン以来の復帰となるWGマクシアス・ムサとなっています。