マンUと対戦のアセアンオールスターズはインドネシア選手不在で急遽オーストラリアから4選手が参加
5月28日に行われるアセアンオールスターズを前に、マンチェスター・ユナイテッドが5月26日にマレーシア入りしています。ルベン・アモリム監督以下32名は、東南アジア各国から選抜された選手たちで構成されたチームと対戦します。
しかし、この試合に出場予定だったタイ代表MFピーラドル・チャムラツァミーとインドネシア代表DFアスナウィ・マンクアラム(いずれもタイ1部ポートFC)の出場辞退が直前に発表されています。ピーラドル選手は夫人の出産に立ち会うため、またアスナウィ選手は現在、バリ島で行われている2026W杯予選に向けたインドネシア代表合宿からの離脱をパトリック・クライファート監督が認めなかったからだと報じられています。また、インドネシア1部リーグ2連覇を果たしたプルシブ・バンドンに所属していた(現在は対談)ムハマド・フェラーリも当初の出場予定が取り消されており、アセアンオールスターズはインドネシア出身選手不在となってしまいました。
その代わりということかどうかは分かりませんが、急遽、DFハリソン・デルブリッジ(韓国1部仁川ユナイテッド)、FWエイドリアン・セゲチッチ(オーストラリア1部シドニーFC)、FWヤヤ・デュクリー(アデレード・ユナイテッド)、DFキーリー・アダムソン(マッカーサーFC)のオーストラリア出身4選手がアセアンオールスターズに合流することが発表されています。
オーストラリアサッカー連盟「フットボール・オーストラリア」は実は東南アジアサッカー連盟に加盟しているので、アセアンオールスターズに加わること自体は間違いではないのですが、ここに来て突然、オーストラリア出身選手が合流するのは数合わせというか、なんというか…。
東南アジア選手権はスポンサー変更で「三菱電機カップ」から「現代カップ」へ
東南アジア王者を決めるASEANチャンピオンシップ(旧AFFチャンピオンシップ)の次回大会(2026年大会)のスポンサーが韓国の現代自動車となることを東南アジアサッカー連盟(AFF)が発表しています。
2022年の第14回大会と2024年第15回大会の過去2大会は三菱電機が、また2008年の第8回大会から2020年の第13回大会まではスズキ自動車がスポンサーとなり、それぞれ「三菱電機カップ」、「スズキカップ」の愛称で親しまれてきました。
1996年に第1回大会が開かれたこの大会は、シンガポールのタイガービールがスポンサーとなり、2004年の第6回大会までは「タイガーカップ」と呼ばれたこともありました。
1921年(大正10年)に創設されたクラブが運営資金不足を理由に解散を発表
その前身が1921年(大正10年)に創設されたペラFCがクラブの解散を正式に発表しています。5月26日の夜に発表された公式声明では、手元に残された資金は外国籍選手の帰国費用を支払った後、選手や監督、コーチを含めたスタッフ全員に分配されるということです。
「全ての選手やスタッフには、ペラFCが来季はどのレベルのリーグにも参加しないことを通告した。これにより選手やスタッフは他のクラブと自由に契約交渉を行うことができる。」といった内容が書かれた声明には、前経営陣による負債800万リンギ(およそ2億7000万円)を抱えてスタートした現在の経営陣は、年間1000万リンギ(およそ3億4000万円)をクラブの運営に投入し、その全てがU18、U21、U23そしてトップチームの選手やスタッフ、そして事務方の職員の給料にのみ使われたこと、そして過去3シーズンで総額4000万リンギ(およそ13億5000万円)が投入されたが、残念ながら現在は手元に現金がほとんど残っていないことが説明されています。
また現経営陣はクラブが所有するトレーニング器具や売れ残っているグッズなどの管理をしている他、スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)からの分配金の支給を待っており、この分配金で未払い給料などについてできる限り支払いたいとしています。
またこの声明の最後では、選手やスタッフへの感謝とともに、受け入れ難い事実ではあるものの、クラブを解散せざるを得ない状況への理解を求めています。
5月22日に第一審機関(FIB)が来季2025/26シーズンの1部スーパーリーグ参加に必要なクラブライセンスが交付されたクラブを発表した際に、このペラFCはライセンス交付が受けられなかったことを発表していましたが、それ以降、ペラFCからは何も声明が発表されていませんでした。一部では下部リーグからの再スタートなども噂されていましたが、今回の声明によって、100年を超える歴史を持つクラブの解散が決定しています。
負債の額が巨大ではあるものの、長い伝統を持つクラブをこのように解散させてしまうのであれば、一部のサポーターが唱えるほどにはサッカーはこの国の文化ではなく、単なる娯楽の一環だったのかと残念な気持ちになります。スズ鉱脈が豊富なペラ州は、それに目をつけた英国が19世紀にマレー半島の植民地化を始めた地域です。英国はそれまでマレー半島にはなかった郵便や鉄道、博物館や動物園などを持ち込みましたが、サッカーもその一つでした。ペラFCの前身となったペラアマチュアサッカー協会(PAFA)は、マレー半島では最古のサッカー協会で、同じマレー半島西海岸側のペナンやスランゴール、ヌグリスンビランがこれに続く形でサッカー協会を設立しています。
国内スポーツ人気No. 1のサッカーは政治的にも利用されてきた歴史があり、1957年のマラヤ連邦独立後は各州の州首相(日本で言えば知事にあたります)が州サッカー協会(州FA)の会長を兼務し、この州FAが運営するプロクラブ(マレーシアサッカーの資料を見ると、FAがついたクラブ名がありますが、これは州サッカー協会、州FAが運営するプロクラブだったためです。)に州政府の予算から資金提供することでチームを強化しました。おらがチームを優勝させた州首相は、選挙の際には州民からは大変な支持が集まりますが、その一方で政権交代が起これば、州サッカー協会の方針が一変し、監督やコーチが総入れ替えとなる、といったことも常態化していました。
そういった状況を変革しようとしたのが2019年にマレーシアサッカー協会が導入した「FAからFCへ」というクラブの民営化方針でした。州政府による資金提供に頼る運営ではなく、クラブ運営会社を設立して企業や個人をオーナーとする運営へと変革させるのがこの民営化方針ですが、協会の会長は州首相、役員も州議会議員が兼務し、クラブは公金頼みで運営していたところにこの変革は急すぎました。資金が足りなければ州予算を回すという無謀な経営が長年続いてきた中では、プロの経営者もいなければ、スポンサー獲得のノウハウすらない上、新型コロナ禍により、各州政府がクラブ運営資金をコロナ対策に回す状況などあり、多くのクラブがこの時期、資金難に陥りました。さらにコロナ禍でリーグ戦は強行するも、試合は無観客試合となったことで、費用はかかるが入場料収入すら入ってこない状況では、多くのクラブが財務状況を悪化させ、それまでも度々起こっていた給料未払い問題が複数のクラブで頻発するようになっていきました。
今回のペラFCの解散は、こういった様々な経緯の結果でもありますが、これを契機に溜まった膿を全て出し切ることができるのか、それともこのままジョホールやスランゴールといった資金に問題のない幾つかのクラブだけが生き残るのか。マレーシアサッカーは転換期に来ています。
ペラ州サッカー協会がチームを新たに編成して3部リーグに参戦か
ペラFCがクラブの解散を発表した5月26日と同じ日の遅い時間には、ペラ州サッカー協会(PAFA)が声明を発表し、PAFAが新たなチームを編成して来季2025/26シーズンの3部のA1セミプロリーグに参戦する計画があることを明らかにしています。
PAFAが公式SNSに行った投稿では、マレーシアの国体にあたるマレーシアゲーム(Sukma)の2024年大会に出場したU21チームのメンバーを中心にチームを編成し、将来のプレジデントカップ(U21チームのリーグ)やユースカップ(U18チームのリーグ)参加なども視野に入れて、ペラFCの再興を目指すものにしていく予定だということです。
「チーム編成はすでに始まっており、アマチュアフットボールリーグ(AFL)が主催するリーグに参戦を予定している。また2026年をめどにプレジデントカップやユースカップにも参戦を考えている。今回のプログラムは、ペラ州のサアラニ・モハマド州首相と州政府の支援(!)によるもので、PAFAが行う州内のサッカー振興を継続的に支援してくれていることにも合わせて感謝の意を表明したい。」とも声明では述べられています。
この声明の最後には「われわれ(PAFA)は奇跡を起こすことは約束できないが、(週内にプロサッカークラブがなくなったという)異常事態を解決しようという決意は持っている。州内のサポーターには協力して、ペラFC再興のための希望を持ってもらいたい。」と結ばれています。
結局は州政府の資金頼りである点や、ペラFCではなく全く実績がない新たなクラブが5部や4部などもある下部リーグを一気に飛び越えて、実質2部リーグにあたる3部A1セミプロリーグに参入を目論んでいる点など、ツッコミどころは満載ですがそこはマレーシア。2022年にやはり資金不足や未払い給料問題などでマラッカ・ユナイテッドが解散した時も、その負債は無視して新たにマラッカFCというクラブを新設して、やはりシラっとA1セミプロリーグに参入した既成事実もあるだけに、今後は困ったら解散して、新たにクラブを作り、問題解決は後回しという手法が流行るかもしれません。
クダFCオーナーは給料未払いがライセンス不交付の原因と認める
前述のペラFC同様、来季20255/26のクラブライセンスの交付を受けられなかったのがクダ・ダルル・アマンFCでした。2006/07と2007/08シーズンに国内クラブとして初めて2季連続の国内三冠を達成した名門の凋落は、ここ数年間に渡り起こっていた給料未払い問題などで明らかでしたが、いざスーパーリーグからその姿が見られなくなるとなると残念でしかありません。
そのクダ・ダルル・アマンFC(クダFC)は、第一審機関(FIB)によるライセンス不交付発表後初めて声明を発表し、クラブライセンス申請書類提出期限までに運営資金に関する規定違反状態を改善できなかったことが、ライセンス不交付の理由であったことを明らかにしています。
クダFCのオーナーの1人で主要株主であるダウド・バカル氏は、未払いとなっている給料問題が未解決であり、現在もその支払い方法について支払い対象者からの了承を得ていないことを明らかにし、これがライセンス交付に至らなかった主要原因の一つであるとして、サポーターやスポンサー、さらには選手やスタッフに謝罪したいと述べてます。
ダウド氏は、現在がクダFCの「冬眠」期間だとして、財務基盤の強化などの財政状況の改善などを行って、クラブ再建に備えたいと述べてます。さらに今回のライセンス不交付がクラブの終焉ではなく、クラブ運営を強化するための機会と考えていると述べたダウド氏は、今後もサポーターの指示を求めるとともにクラブの再興を約束しています。