5月25日のニュース(2)<br>来季のリーグ規約が発表:秋春制以降により開幕は8月初旬・外国籍選手は1クラブ最大15名が登録可能、ピッチ上では同時7名の出場が可能に・ブルネイDPMM FCの正式参入が決定・ファイナンシャルフェアプレーを導入

マレーシア1部スーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が来季2025/26シーズンの規約を発表しています。主な変更点としては来季の開幕が8月初旬となること、外国籍選手登録の上限が15名となったこと、ブルネイのDPMM FCの参戦が正式発表されたこと、そしてクラブ収入に基づく給料の上限を決めるファイナンシャルフェアプレー(FFP)が正式に導入さることなどが挙げられます。

来季2025/26シーズンの開幕は8月初旬に決

AFCの秋春制導入に伴い、2025/26シーズンの開幕は8月初旬となることが発表されています。例年、開幕戦は英国のチャリティーシールド(現コミュニティーシールド)を模し、前年度のリーグ覇者とマレーシアカップ優勝チームが対戦するスンバンシーカップですが、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)がリーグ戦、マレーシアカップ、FAカップの国内三冠を達成しているため、2024/25シーズンに続き、JDTはリーグ2位のスランゴールFCが対戦します。

英国のチャリティーシールドと大きく異なるのは、この試合がリーグ戦の一環として行われ、さらにリーグチャンピオンのホームで行われること。昨年のスンバンシーカップもJDTとスランゴールFCの顔合わせとなりましたが、試合の5日前にスランゴールFCのファイサル・ハリムが酸攻撃を受け事件が起こりました。スランゴールFCは安全上の懸念を理由に試合の延期を求めましたが、MFLはこれを拒否。スランゴールFCは後見者でもあるスランゴール州スルタンの同意を得て出場を辞退した結果、MFLはJDTに勝点3を与えることを決定しています。

リーグ覇者とマレーシアカップ王者の対戦という試合の性格から、本家がウェンブリーアリーナで開催されるのと同様に、このスンバンシーカップもブキ・ジャリル国立競技場のような中立地で、しかもリーグ戦の一環ではなく単なるカップ戦として開催するべきだと思うのですが、主催するMFLはそうは考えていないようです。

トランスファーウィンドウは6月と来年1月オープン

年2回のトランスファーウィンドウ(移籍期間)は、1度目が開幕前の6月9日から8月31日まで、シーズン途中の2度目は2026年1月5日から2月1日となっています。

FAカップは8月、マレーシアカップは来年1月開催

FAカップは8月に予定されており、マレーシアカップとその敗者が出場するチャレンジカップはいずれも2026年1月に予定されています。マレーシアカップは昨年と同じであれば、1部スーパーリーグの14チームにおそらく3部A1セミプロリーグの2チームが加わった16チームで1回戦がスタートすることになりそうです。またFAカップはトップリーグ以外のカブリーグでプレーするのクラブに門戸が開かれる大会ですが、2024/25シーズンは16クラブと、前年2023年の20、2022年の34、2021年の59から毎年減少しています。国内サッカー人気の低迷が危ぶまれる中で、日本の天皇杯サッカーのようなアマチュアレベルから出場できる唯一の国内大会はサッカー振興という観点からも重要なので、是非とも出場チーム数の拡大を検討してもらいたいところです。

出場登録選手の半数に当たる最大15名の外国籍選手の登録が可能に

各クラブは登録選手の上限が今季2024/25シーズンの32名(ACLエリートに出場のJDTとACL2出場のスランゴールは例外措置で34名)から30名に減る一方で、外国籍選手枠についてはAFC大会出場の有無に関係なく何と15名まで登録できるようになりました。今季は各クラブの外国籍選手登録は最大9名、ACLエリートに出場したJDTとACL2に出場したスランゴールに限って12名となっていました。

ピッチ上では同時に7名の外国籍選手のプレーが可能に

ベンチ入り可能な外国籍選手数も今季の最大7名から8名となり、ピッチ上の外国籍選手数も今季の6名から東南アジア枠が1名増えて7名(無条件4名、アジア枠1名、東南アジア枠2名)が同時に出場することが可能になっています。

外国籍選手枠の増加により、これまで以上にクラブ格差が広がりそうです。このブログでも何度も取り上げているように多くのスーパーリーグクラブは給料未払い問題を抱えるなど運営資金の捻出に苦労しています。一方で、今季ACLエリートに出場したJDTとACL2に出場したスランゴールについてはそういった問題が起こっていないことから、15名に拡大した外国籍選手枠をフル活用するクラブがあるとすれば、おそらくこの2クラブしか考えられません。(後は可能性があるとすれば、世界屈指の産油国ブルネイからスーパーリーグに参加するDPMM FCでしょうか。)

ACLエリートやACL2での上位進出を目指すクラブにしてみれば、この外国籍枠拡大は大きなメリットですし、試合そのもののレベルアップやエンタメ性がますという利点はある位一方で、資金的にも苦しい中位から下位のクラブには全く関係ない話です。しかも既にJDTが圧倒的な強さを誇るスーパーリーグで、今後さらにクラブ間格差が広がれば、大味な試合が増え、リーグそのものに魅力がなくなってしまう恐れがあります。またピッチ上で同時に最大7名の外国籍選手がいるということはマレーシア人選手は4名飲みの出場となり、これが各選手の出場時間減少につながり、ひいては代表チーム教科にに及ぼす影響も少なくなさそうです。

    ブルネイのDPMM FCのスーパーリーグ参加が正式に発表で今季参加の全14クラブが決定

    MFLからはこれまで何の発表もなかったブルネイのクラブであるDPMM FCの今季スーパーリーグ参入についても正式に発表しています。2008年以来のマレーシアリーグ復帰となるDPMM FCの参戦は、FIFAによる「招待クラブ」との承認を受けたことで実現しています。この結果、2025/26シーズンのスーパーリーグは、ジョホール・ダルル・タジムFC、スランゴールFC、サバFC、クチンシティFC、トレンガヌFC、クアラルンプールシティFC、スリ・パハンFC、PDRM FC、ペナンFC、ヌグリスンビランFC、クランタン・ダルル・ナイムFCに加え、昇格組のマラッカFC、イミグレセン(入国管理局)FC、DPMM FCの14クラブに決定しています。ただし、クアラルンプールシティFC、PDRM FC、クランタン・ダルル・ナイムFCの3クラブについては条件付きでのクラブライセンス交付となっており、今月末までにクラブの財政状況についての詳細をライセンス交付を担う第一審期間(FIB)に提出することが求められています。これが行われない場合、この3つのクラブのクラブライセンス交付は取り消しとなり、今季のスーパーリーグ出場ができなくなります。

    ファイナンシャルフェアプレーの正式導入

    これまで導入が検討されてきたファイナンシャルフェアプレー(FFP)が導入されます。これにより、各クラブはFIBに提出した2025/25シーズンのクラブ運営予算額の80%が選手への給料支払いの上限となります。

    5月25日のニュース(1)<br>・ベトナム戦に向けたマレーシアの秘密兵器はコロンビアリーグのストライカー<br>・スランゴールFCは来季のチーム強化へ積極補強も<br>・6シーズン在籍も帰化選手になれなかったレゾヴィッチがトレンガヌFC退団<br>プルシスの1部残留を果たしたオン監督はマレーシア出身選手の獲得も視野

    5月21日の東南アジアクラブ選手権「ショッピーカップ」決勝2ndレグでは、タイの王者ブリーラム・ユナイテッドがベトナムのハノイ公安FCを通算成績5-5、PK戦3−2という大接戦の末に破り、ショッピーカップ初代王者に輝いています。そのブリーラム・ユナイテッドではシーズンを通して安定したプレーを見せたのが、マレーシア代表でもプレーするディオン・クールズです。ベルギー出身の父とマレーシア出身の母を持つクールズ選手はベルギーの年代別代表でもプレー経験がある選手ですが、、そのコールズ選手がJリーグのセレッソ大阪移籍が濃厚だとマレーシアやタイのメディアが報じています。マレーシア人選手として初めてJ1でプレーする選手となれるのでしょうか。

    ベトナム戦に向けたマレーシアの秘密兵器はコロンビアリーグのストライカー

    しかしよくこんな人材を地球の反対側から見つけてきたなぁ。

    6月10日のAFCアジアカップ2027年大会第3次予選でベトナム代表と対戦するマレーシア代表に強力な秘密兵器が加わりそうです。アルゼンチン出身で今季はコロンビア1部のアメリカ・デ・カリでプレーするFWロドリゴ・オルガドが、マレーシア人の血を引くとして「ハリマウ・マラヤ(マレーの虎)」の愛称を持つマレーシア代表に招集されたと国内外のメディアが報じています。

    直近の10試合で5勝3分2敗の成績を残しているマレーシア代表ですが、FW陣はブラジル出身のパウロ・ジョズエ(KLシティFC、代表通算25試合出場8ゴール)やアルゼンチン出身のセルヒオ・アグエロ(スリ・パハンFC17試合出場3ゴール)、コロンビア出身のロメル・モラレス(ジョホール・ダルル・タジムFC、同9試合2ゴール)、ら帰化選手たちに依存しています。そんな南米コネクションに新たに加わることが期待されているのがオルガド選手です。

    29歳のオルガド選手は2024年にアメリカ・デ・カリに移籍以来、44試合で17ゴールを挙げているFWですが、いずれも元々は所属クラブではMFだったものの代表チームの得点力不足からFWにコンバートされたジョズエ、モラエスの両選手、そしてやはり本来はMFであるアグエロ選手らとは違った、いわゆる「アウトアンドアウト」ストライカーならではプレーが6月の試合では見られるのではとの期待が高まります。


    スランゴールは来季のチーム強化へ積極補強も

    2シーズン連続で王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)の後塵を拝することになったスランゴールFCは、FAカップでは決勝に進出するも同じJDTに1-6と惨敗し、マレーシアカップではまさかの1回戦敗退、そして8年ぶりとなったAFC主催大会出場もACL2ではグループステージ敗退と、2024/25シーズンは思うような結果を残すことができませんでした。そんなスランゴールFCが来季に向けて、国内外の選手を積極的に補強しそうだと英字紙スターが報じています。

    今季のメンバーからはキャプテンを務めたシンガポール代表のDFサフワン・バハルディンが契約を1年残して退団することが明らかになっている他、チーム最多の10ゴールを挙げたチリ出身のFWロニー・フェルナンデス、チーム最多先発出場を記録したベネズエラ出身のMFヨハンドリ・オロスコ、そしてヨルダン代表FWアリ・オルワンらがチームを去ることが発表されています。

    この記事の中でスランゴールFCのシャーリル・モクタル理事は、サフワン選手についてクラブとの関係は良好で、サフワン選手が「新たな挑戦」を求めていることから、退団を希望したと説明しており、現在はローン移籍先を探している最中だと説明しています。

    サフワン選手に代わるキャプテン候補としてはマレーシア代表MFノーア・ライネや同じく代表選手のFWファイサル・ハリムを挙げたシャーリル理事は、来月6月17日から始まる予定のプレーシーズンに向けて、喜熨斗勝史監督と来季に向けたチームの補強策について検討中とも話しています。

    「現在はヨーロッパ、南米、東南アジア、日本出身の数名の候補選手の名が上がっており、プレシーズン前には新加入の選手が確定できるだろう。」と話したシャーリル理事は具体的な名前は挙げなかったものの、SNS上では2023年シーズンにクダ・ダルル・アマンFCでプレーした経験もある元Jリーグ甲府のFWウィリアン・リラ、元ベネズエラ代表MFフアンピこと、フアン・パブロ・アニョル・アコスタ(現ギリシャ1部ヴォロスFC)のいずれも31歳の両選手の名前が挙がっています。

    また獲得を目論んでいたとされるインドネシア代表DFエリアノ・ラインデルス(オランダ1部PECズヴォレ)との交渉は破談となったものの、シャーリル理事はさらに東南アジアの「大物」獲得を続けていくと話していることもスターは報じています。

    6シーズン在籍も帰化選手になれなかったレゾヴィッチがトレンガヌFC退団

    2019年からトレンガヌFCに在籍してきたモンテネグロ出身のDFアルグジム・レゾヴィッチが自身のSNSで対談することを明らかにしています。33歳のレゾヴィッチ選手は190cmのセンターバックで2018年にPDRM FCに移籍してマレーシアリーグでプレーを始めると翌2019年からはトレンガヌFCに移籍しトップチームとセカンドチームのトレンガヌFC IIでプレーを続けてきました。

    トレンガヌ州の隣のパハン州出身のマレーシア人女性と結婚し、子供も生まれていたレゾヴィッチ選手は、マレーシアでのプレーが5年目を過ぎてからはマレーシア国籍取得を目指していることが報じられていました。しかし、今年3月の英字紙ニューストレイツタイムズの報道では、クラブが国籍取得の審査を行う内務省に積極的に働きかけ、マレーシアサッカー協会(FAM)からも推薦状を得ているものの、契約満了となる4月30日を前に国籍の取得はできていませんでした。

    退団を伝えるSNSへの投稿でレゾヴィッチ選手は、自身のキャリアの中で最も長く所属したクラブであるトレンガヌFCとチームメート、そしてサポーターへの感謝を伝えています。

    今季5位に終わったトレンガヌFCは、シーズン途中でトミスラフ・シュタインブリュックナー監督(現ベトナム1部タインホアFC監督)を解任し、バドルル・アフザン・ラザリを暫定監督に据えましたが、来季はこのバドルル暫定監督を正式監督として迎えることをすでに発表しており、バドルル監督の元でチーム再建の一環として大幅なメンバーの入れ替えを行うとされています。

    プルシスの1部残留を果たしたオン監督はマレーシア出身選手の獲得も視野

    マレーシアの隣、インドネシアの1部リーグ「リガ1」は昨日5月24日に最終第34節を終えて2024/25シーズンが終了しましたが、そのリガ1で2連覇を達成したのが、クアラルンプールシティFC前監督のボヤン・ホダック監督が指揮するプルシブ・バンドンでした。そして最終節にこのプルシブと対戦したのが、マレーシア出身でサバFC前監督のオン・キムスウィー監督率いるプルシス・ソロでした。マレーシア国内でも対戦経験のある両氏が舞台をインドネシアリーグに変えて対峙した結果は、プルシブがかつてJ2金沢やトレンガヌFCでもプレーしたダビ・アパレシド・ダ・シルバのゴールなどで一時は3点差をつけてリードするも、プルシスもMF山本奨選手のゴールなどで追い上げましたが、3-2と逃げ切ったプルシブがシーズン最終戦を勝利で飾っています。

    プルシブ・バンドンに敗れたペルシス・ソロですが、5月11日に行われたリーガ1第32節のPSBSビアク戦で2-0と勝利し、今季の1部残留を既に決めています。 このプルシブのオン監督はマレーシアでは代表監督やU23代表監督、またマレーシアサッカー協会(FAM)のテクニカルディレクターなどを歴任し、2011年の東南アジア競技大会通称シーゲームズではマレーシアを優勝に導いています。このオン監督はマレーシアスーパーリーグの2024/25シーズン途中の昨年11月にリーグ3位にいたサバFCからの契約延長オファーを断り、当時降格圏の16位にいたプルシスの監督に就任しました。

    好成績を残しているクラブから2部降格危機に直面するクラブへの転身したオン監督でしたが、プルシスは、オン監督就任以降の7試合では0勝3分4敗の成績で、一時は最下位の18位に転落してしまいました。しかし年が明けた今年1月20日の第19節PSISスマラン戦でオン監督が初勝利を挙げると、チームもそこからの15試合を7勝5分3敗とし、第25節で15位に浮上してついに降格圏を脱すると、その後は2度と降格圏内に落ちることなく最終成績を14位とし、オン監督は課せられていた1部残留というミッションを果たしました。

    今季最終戦となったプルシブ戦を前にオン監督はインドネシアのメディアとのインタビューで、「ペルシス・ソロに来た時の目標は明確で、降格を回避することができたことは喜ばしい。プルシスがリガ1で6か月近く降格争いを続けなければならなかったことが、この国のサッカーリーグがいかに競争が厳しいかを示しているだろう。」と話しています。さらに、負けても立ち上がる先進的な強さを持つ選手たちに加え、クダ・ダルル・アマンFCから移籍したCBクレイトンをはじめ、MFラウタロ・ベレッジャ、FWジョン・クレイ、DFジョーディ・トゥトゥアリマのシーズン途中に加入した4選手の影響も大きかったとオン監督は話したということです。

    プルシスとの契約は今月末で切れることから、オン監督はクラブ側との契約延長についての話し合いを始めたいしていますが、個人的には来季もプルシスで指揮を取りたいと話し、クラブの予算次第ではあるもののマレーシア出身選手数名との契約も視野に入れているとも話しています。