FIBが来季の国内クラブライセンス交付クラブを発表-クダとペラには交付されずリーグ不参加が決定
5月22日に国内クラブライセンス交付の可否決定を行う第一審機関(FIB)が来季2025/26シーズンのクラブライセンス審査の結果を発表し、今季2024/25シーズンに国内1部スーパーリーグに参加した13チーム中、8チームに来季の国内クラブライセンスが交付されたことを発表しています。
国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)の公式ホームページで発表された審査結果によると、来季のクラブライセンス交付条件となるクラブ運営のための資金基準を満たしていないことから、今季のスーパーリーグで8勝6分10敗で7位に終わったペラFCと、6勝6分12敗の11位に終わったクダ・ダルル・アマンFCの2クラブには来季の国内クラブライセンスが交付されず、このまま不服申し立てと再審査が行われない限り、この両クラブは2025/26シーズンのスーパーリーグへの参戦が不可能となりました。
またFIBは今季優勝のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)、同2位のスランゴールFC、以下サバFC(同3位)、谷川由来選手が所属するクチンシティFC(同4位)、トレンガヌFC(同5位)、スリ・パハンFC(同8位)、ペナンFC(同10位)、佐々木匠選手が所属するヌグリスンビランFC(同12位)の8クラブには、来季の国内クラブライセンスが交付されたことを発表しています。
その一方でFIBライセンス委員会のシーク・ナシル・シーク・シャリフ委員長名で出された声明では、今季6位のクアラルンプールシティFC(KLシティFC)、鈴木ブルーノ選手所属の同9位PDRM FC、そして最下位13位に終わったクランタン・ダルル・ナイムFCについては暫定措置としてクラブライセンスを交付するものの、5月31日を期限として財務状況に関するさらなる書類の提出を求めており、その提出がない場合にはライセンスの取り消し措置となることも発表しています。
また今季3部のA1セミプロリーグで優勝したマラッカFCとイミグレセン(出入国管理局)FCについては、MFLの規定に基づき国内クラブライセンスが交付され、来季のスーパーリーグ参戦が可能なったことも明らかになっています。(注:2部リーグのプレミアリーグは現在、休止中でこのセミプロリーグであるA1リーグが実質のマレーシア2部リーグとなっています。)
今回の発表では、さまざまな憶測を読んでいた来季のスーパーリーグ参戦クラブが明らかになりました。今季最終戦となったマレーシアカップ決勝でJDTに惜敗したスリ・パハンFCは、試合後にオーナーでパハン州のトゥンク・アブドル・ラーマン・スルタン・アフマド・シャー王子がクラブから身を引くことを明らかにし、同時にクラブの来季のスーパーリーグ撤退を示唆するような発言をしていました。また今月初めにはクラブから選手や監督、コーチに対しても来季のリーグ撤退を伝える手紙が送られたと報じられており、今回このスリ・パハンFCがライセンスを交付されたことで、リーグ撤退の方針からUターンしたようです。
その一方で、今季終了後にやはりスーパーリーグ撤退を発表していたペラFCにはライセンスが交付されませんでした。前身のペラ州サッカー協会クラブ(ペラFA)から数えるとクラブ創設100年を超える名門は数年前にも資金不足からクラブ史上初となる2部降格を経験したものの、一昨年には国内通信会社がオーナーとなり再建が始まりましたが、道半ばで断念となりました。
また2023シーズンの給料未払い問題未解決により、今季開幕前に勝点3の剥奪処分を受けてスタートしたクダ・ダルル・アマンFCは、シーズン中には主力選手が練習をボイコットした他、アウェイの試合への帯同を拒否し、急遽U23やU19チームの選手を集めて試合を行うなどの問題を抱えており、頼みの州政府からの資金援助も得られなかったことから、やはりライセンス交付を受けるだけの金銭的な安定が示せなかったようです。今季はJDTが3季連続国内三冠を達成しましたが、マレーシアで初めて連続で国内3冠(リーグ戦、マレーシアカップ、FAカップ)を達成したのは2006/07,2007/08の2シーズン連続で国内三冠を達成したクダ・ダルル・アマンFCの前身クダFAでした。そんなかつての強豪にとって、今回のリーグ不参加は残念としか言いようがありません’。
この他、追加書類の提出がなければライセンス取り消しとなることが発表されたKLシティFC、クランタンFCも今季中から数ヶ月に及ぶ給料未払い問題が起こっていたことがメディアでは度々報じられており、期限の5月31日までにFIBを納得させるだけの書類が用意できるかどうかは正直、疑問です。
また来季の1部スーパーリーグ撤退が決定したペラFCとクダ・ダルル・アマンFCに対し、3部A1セミプロリーグが参戦を求めたいと報じられています。A1セミプロリーグを運営するアマチュアフットボールリーグ(AFL)のユソフ・マハディ会長は、両クラブを救済し、復活のための機械を提供できると話しています。
マレーシアサッカー協会(FAM)の副会長でもあるユソフAFL会長は「両クラブがこのまま消滅してほしくない。A1セミプロリーグは両クラブが参戦して、将来スーパーリーグに復帰するための舞台となりうるものだ。」と述べ、すでに終了した来季のA1セミプロリーグ参加の申請を再開して、両クラブの受け入れを行う用意があるとしています。
A1セミプロリーグの下には、A2、A3と下部リーグがありますが、一昨年には新設されたマラッカFCを「マラッカ州サッカー発展を妨げないように」という謎の理由でいきなり下部リーグを経ずに参入させたり(これはユソフAFL会長がマラッカ州出身であることも影響していると言われています)、不十分な資格審査で参入させては途中離脱を許すなどゆる〜いAFLの審査であれば、ペラFC、クダ・ダルル・アマンFCとも参入の壁は高くなさそうです。
ブルネイDPMM FCが来季のスーパーリーグ参戦を公式発表
来季2025/26シーズンのマレーシアスーパーリーグの参加クラブ数減が危ぶまれる中、これまで噂に上がっていたブルネイのDPMM FCが、クラブ公式サイトで来季スーパーリーグへの参入と新規選手獲得を発表しています。なおスーパーリーグを運営するMFLからは現時点では何の公式発表もありません。現在、参戦中のシンガポールプレミアリーグを運営するシンガポールサッカー協会(FAS)もDPMM FCがリーグを離脱し、「他のリーグ」へ移籍することを公式サイトで発表しています。
DPMM FCはペナンFCのDFファイズル・ザカリアの加入を発表するとともに、ブルネイ出身選手と、DPMM FCでプレーするマレーシア出身選手は、いずれも他のクラブのマレーシア出身選手と同じ扱いとなり、外国籍選手登録とはならないことも併せて発表しています。
DPMM FCはブルネイ唯一のプロクラブで、今季2024/25シーズンはシンガポール1部のプレミアリーグに参戦中です。今季のACL2の決勝にライオンシティ・セイラーズFCが進出するなど躍進が著しいリーグですが、今年4月にシンガポールメディアが初めてDPMM FCのプレミアリーグ離脱の噂を報じました。またその際にはプレミアリーグ得点王を独走する土井智之選手(ゲイラン・ユナイテッドFC)の獲得なども同時にうわされました。今週末に最終節を迎えるプレミアリーグでは、DPMM FCは現在、11勝8分12敗で9チーム中6位につけ、また5月27日にはライオンシティ・セイラーズとのシンガポールカップ準決勝2ndレグも控えています。
DPMM FCがマレーシアのリーグに参戦するのはこれが初めてではありません。2005/06シーズンに2部プレミアリーグ(シンガポールは1部がプレミアリーグですが、マレーシアは2部の名称がプレミアリーグです。)に参戦し、翌シーズンには1部スーパーリーグへ昇格するといきなり3位、そして翌シーズンは10位という成績を記録しています。しかしこの頃、ブルネイサッカー協会内部で問題が発生し、マレーシアリーグを離脱せざるをえませんでした。その後の2009年に今度はシンガポールリーグに参戦し、リーグカップで優勝するなどの成績を残しました。
しかし、同年9月にはブルネイ政府によるブルネイサッカー協会人事への介入があったとしてFIFAはブルネイのサッカー活動全てを停止させる処分を科し、この結果DPMM FCはシンガポールリーグを離脱せざるを得ませんでした。FIFAの処分が解けた2012年にシンガポールリーグに復帰したDPMM FCは、同年そして2014年とリーグカップで優勝すると、2015年と2019年にはリーグ制覇も果たしています。
その途中の2017年にはマレーシアリーグ復帰を目論んだ時期もありましたが、2015年からリーグ運営を始めたMFL(当時の名称はフットボールマレーシアLLP-有限責任パートナーシップ)がホームゲームはマレーシア国内で行うことや、ブルネイ出身選手は外国籍選手登録とし、主力をマレーシア出身選手で構成することなどを求めたため、シンガポールリーグに残ったという経緯もあります。
しかし2020年には新型コロナの影響でブルネイ政府が国民の出国制限を設けたため、2020年から2022年までの3シーズンはシンガポールリーグに参加せず、昨季2023年に3シーズンぶりに復帰した際は9チーム中7位に終わっています。