3月28日のニュース<br>・クラブは抜け穴を利用して不正にクラブライセンスを取得?<br>・海外在住のマレーシア出身選手7名がマレーシア代表に合流予定-イスマイル殿下<br>・2026年女子アジア杯予選組合せ決定-マレーシアは強豪北朝鮮と同組に

マレーシア1部スーパーリーグは今季2024/25シーズンもあと2節を残すのみ。FIFAデイズが終わり、さてまた国内リーグ、となるところですが次節となる第24節は来週末の4月4日から6日の開催となっています。今週末に試合がないのは、イスラム教の断食月ラマダンが3月31日に終了し、週明けにはマレーシア最大の祝日「ハリ・ラヤ」となるからです。日本で言えばお盆や年末のような帰省ラッシュもあり、サッカーどころではありません。金曜日はイスラム教の礼拝日で、午前中に仕事を終え、昼の礼拝後には帰省というムスリム(イスラム教徒)も多そうです。また国内の主要高速道路は今日と明日は50%オフとなることが発表されており、帰省ラッシュが始まる反面、地方出身者が多い首都のクアラ・ルンプールは静かな週末になりそうです。

クラブが抜け穴を利用して不正にクラブライセンスを取得?

このブログでも繰り返し取り上げてきましたが、マレーシアリーグの「闇」の一つに給料未払い問題があります。今季開幕前にはクランタンFC(クランタン・ダルル・ナイムFCとは別のクラブです)が給料問題未解決を理由にクラブライセンスを発給されなかった結果、今季のスーパーリーグが13チーム編成になってしまいました。また開幕後には、クダ・ダルル・アマンFCとKLシティFCがやはり問題未解決を理由にいずれも勝点剥奪の処分を受けています。この他、処分対象とはなっていないものの、クランタン・ダルル・ナイムFCやサバFCなど他のクラブでも数ヶ月に及ぶ給料の「遅配」が発生していたことが報じられています。

そんな中、英字紙ニューストレイツタイムズは、「給与未払い問題を起こすようなクラブが、なぜ国内クラブライセンスを取得できるのか」という見出しの記事を掲載しています。

この記事では、その問いの答えとして「給料未払い問題を起こすクラブが『抜け穴』を利用しているからだ」とするサッカー法務アドバイザーのザフリ・アミヌラシッド氏のコメントを掲載しています。

ザフリ氏によると、近年、国内リーグでは給与未払いの報告が相次いでおり、さらにクラブライセンス発行に関する不正や、ライセンス交付を目的とした文書偽造の疑いも浮上しているということです。

さらにザフリ氏は、これらのクラブは負債を分割払いで清算することをリーグ主催者のマレーシアンフットボールリーグ(MFL)や、クラブライセンス交付を行う独立機関の第一次審査機関(FIB)に約束するだけで、国内クラブライセンスを取得できてしまうと指摘し、この抜け穴が繰り返し利用されているのが現状であると説明しています。

「FIBがクラブライセンス交付において、その審査に透明性を欠いている場合、アジアサッカー連盟(AFC)に苦情を申し立てることができる。さらにAFCが公平性の欠如を確認すれば、FIBの権限を取り消し、AFCがライセンス発行のプロセスを引き継ぐことも可能である」とザフリ氏は説明しています。

先週には、パフォーマンスアナリストのハズワン・ニザム・ファズィル氏とブラジル人理学療法士のヘルバー・リチャード氏が、クダ・ダルル・アマンFCから数カ月間の未払い給与があると訴えたことが報じられています。また首都圏の某クラブがライセンスが交付されるよう文書偽造を行ったとの疑いも報じられています。

アジアサッカー連盟(AFC)のウィンザー・ポール事務局長は、不正にクラブライセンスを取得したクラブへの対応はマレーシアサッカー協会(FAM)およびMFLの責任であると述べ、AFCが介入するのは誤った種類のライセンスが交付された場合のみであると説明しています。

ちなみに2025/26シーズンの国内クラブライセンス交付のための書類の提出期限は4月30日、ACLエリートやACL2に出場するのに必要なAFCクラブライセンスの申請書類提出の期限は3月31日となっています。

またこのクラブライセンス不正交付について、MFLのシャズリ・シャイク・モハマド暫定CEOはニューストレイツタイムズからの問い合わせに対して「その件については確認が必要であり、今ははっきりとは分からないので、確認する」と答え、同様の質問に対し、FAMのノール・アズマン・ラーマン事務局長は、「FAMに何か意見が届き、それがクラブライセンスに関するものであれば、MFLに対応を求める。もしMFLから回答がない場合のみ、FAMが対応し、(FAMの)懲戒委員会に持ち込まれる可能性もある」と互いに責任を逃れるような対応だったということです。

この記事の最後では、この官僚的な責任の押し付け合いが起こっている間、選手、コーチ、チームスタッフは給料未払いにより苦しみ続けていると述べ、FAMとMFLが責任を押し付け合い続けるなら、マレーシアサッカーを救うのは一体誰の役目なのだろうか?と締め括っています。


これに関連して、国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)のシャズリ・シャイク暫定CEOは、財政難に直面しているクラブを含めた全クラブと連絡を取り合い、クラブライセンス制度に必要な書類の提出を促しているとニューストレイツタイムズは別の記事で報じています。

「各クラブは(クラブライセンス申請書類提出期限の)4月30日までに全てのライセンス交付要件を満たすために努力する必要がある」と、最近行われたMFLのメディア向けイフタール(断食明けの食事)イベントで語っています。

このブログでは既に報じていますが、先週、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーでジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、JDTファンとの会合で、スリ・パハンFCとクダ・ダルル・アマンFCが来季のスーパーリーグに出場しない可能性が高いと驚きの発言をしています。

この他、今季はシンガポール1部プレミアリーグに参戦中のブルネイDPMM FCがスーパーリーグに復帰する、といううわさについて問われると、シャズリCEOは今後、正式に発表があるだろうと述べ、完全否定はしなかったということです。

このブルネイDPMM FCは、1979年からマレーシアリーグに参戦していたブルネイ代表と交代するする形で2005/06シーズンに当時の2部プレミアリーグに参戦すると、翌2006/07シーズンには1部スーパーリーグへ昇格するとそのシーズンには3位となり、翌2007/08シーズンには10位となりました。しかしその年、ブルネイサッカー協会(ブルネイFA)がブルネイ政府の下した判断により正式スポーツ団体としての資格を失うと、マレーシアサッカー協会(FAM)はブルネイDPPM FCのマレーシアリーグ参加を認めず、わずか3シーズンでマレーシアから撤退することになりました。(その後FIFAは2009年にブルネイサッカー協会に対して、政府の介入を理由に資格停止処分を下します。)

なおシャズリ氏は、FIFAが承認すれば、MFLは外国チームのMリーグ参加に前向きであると語っています。しかし、2017年にはこのDPMM FCが当時参戦していたシンガポールリーグからマレーシアリーグへの復帰を図った際、MFL(当時の名称はFMLLP)が、ブルネイ人選手は外国籍選手としてのみ登録可能で、それ以外はマレーシア人でチームを編成すること、またホームの試合はマレーシア国内で行うことなどの条件を出しました。この結果、DPMMは復帰を見送った経緯があるため、今回、再参戦となればMFLがリーグ参加に際してDPMMにどのような条件を提示するのかが気になります。

海外在住のマレーシア出身選手7名がマレーシア代表に合流予定-イスマイル殿下

先日の2027年アジア杯3次予選では、代表合流からわずか数日のヘクター・へベルの活躍でネパールに勝利したマレーシア代表。オランダ出身のヘクター・ヘヴェルとスペイン出身のガブリエル・パルメロの両選手がマレーシアにルーツ持つ帰化選手として今回の試合前の合宿に参加しましたが、ネパール戦に先発したヘベル選手は先制点を決め、さらにはMOMにも選ばれるほどの活躍でした。

次戦となるのは6月のベトナム戦ですが、東南アジアNo. 2、FIFAランキング114位は同132位のマレーシアにとっては厳しい相手です。そんな中で代表チーム強化に積極的に関わるジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下は、自身のSNSで海外在住のマレーシア出身選手7名が加わる見通しであると投稿しています。

今季の優勝を含めリーグ11連覇を果たしたジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーでもあるイスマイル殿下は、3月25日に行われた2027年アジア杯予選でのネパール戦の後に投稿し、海外在住のマレーシア出身選手7名の加入が、代表チームの質をさらに向上させだろうと述べています。

「まだ道のりは長いが、(帰化選手による代表強化策によって)全ての面で継続的な進歩と向上が見られるだろうと確信している。今後さらに7名の海外在住のマレーシア人選手が加わることで、チームの質が向上するだろう。重要なのは、我々の代表チームが主要な国際大会で戦い、尊敬を得ることだ。この目標を達成するためには、団結し、忍耐強くあることが必要だ。」と投稿したイスマイル殿下は、大切なのは代表チーム強化のスピードではなく、目指す方向であるとも、Xに投稿しています。


へヴェル選手はこれまでの代表チームにわずか1試合で「変化」をもたらした選手で、同様の質の高い帰化選手が今後、ハリマウ・マラヤ(マレーシア代表の愛称「マラヤの虎」の意味)に加わることは、過去10年以上、勝利したことがないベトナムとの対戦にも希望が湧いてきます。その一方で気になるのは、この新たな帰化選手の情報が、代表チームを運営している(はずの)マレーシアサッカー協会(FAM)からではなく、前FAM会長とはいえ、現在は協会内の人間でない、いわば一個人のイスマイル殿下から漏れてくること。国外のサッカー関係者とのネットワークは誰よりも広く、強力なのは事実で、ピーター・クラモフスキー監督は、イスマイル殿下の「個人的なアドバイザー」のティム・ケイヒル氏と同郷のオーストラリア出身で、チーム帯同のスポーツ医療専門家のクレイグ・ダンカン氏もやはりオーストラリア出身であることから、イスマイル殿下はこれらの人選に関与していそうです。以前はマレーシア代表チームをマレーシアサッカー協会(FAM)から完全に独立させて「民営化」する案なども披露したイスマイル殿下ですが、できれば是非ともFAMに戻り、内部から改革を進めて欲しいと思っているのは私だけではないように思います。

2026年女子アジア杯予選組合せ決定-マレーシアは強豪北朝鮮と同組に

3月27日に2026年女子アジア杯予選の組合せ抽選がマレーシアのクアラ・ルンプールにあるAFCハウスで行われ、1995年以来の本大会出場を目指すマレーシア女子代表はH組に入り、予選開催国となるタジキスタン、パレスチナ、そして過去3度の優勝経験を持つ北朝鮮と同組に入っています。

この日の抽選では、5チームで編成されるA組とB組、4チームで編成されるC組からH組が決定し、各組とも6月23日から7月5日にかけて行われる予選を戦います。来年3月1日から21日までオーストラリアのシドニー、パース、ゴールドコーストの3都市で開催される本大会へは予選各組の首位のみが出場します。

グループ別対戦チーム

A組:イラン、ヨルダン(開催国)、レバノン、シンガポール、ブータン
B組:タイ(開催国)、インド、モンゴル、東ティモール、イラク
C組:ミャンマー(開催国)、バーレーン、バングラデシュ、トルクメニスタン
D組:チャイニーズタイペイ、インドネシア(開催国)、キルギス、パキスタン
E組:ベトナム(開催国)、グアム、アラブ首長国連邦、モルディブ
F組:ウズベキスタン(開催国)、ネパール、ラオス、スリランカ
G組:フィリピン、香港、中国、カンボジア(開催国)、サウジアラビア
H組:北朝鮮、マレーシア、パレスチナ、タジキスタン(開催国)

2026年女子アジア杯は、2022年にインドで開催された前回大会から出場チームが4チーム増えて12チームとなっています。既に出場が決まっているのは開催国のオーストラリア、前回大会のチャンピオンで過去9回の優勝経験を持つ中華人民共和国、そして同じく前回大会準優勝の日本、同3位の韓国の4チームで、ここに予選を突破した8チームが加わります。なお、この大会の上位6チームには、2027年FIFA女子W杯2027(ブラジル)の出場権が与えられます。


マレーシアが最後に女子アジア杯に出場したのは1995年で、このときの大会がマレーシアのコタ・キナバルで開催されたことから、開催国枠での出場でした。またマレーシア女子代表がこの大会で残した過去最高成績は、1983年にタイで開催された大会での3位入賞です。