日本や韓国などアジアの強豪2026年W杯3次予選に臨む中、2次予選で敗れた他国はこの日から始まった2027年アジア杯予選に臨んでいます。前FC東京監督のピーター・クラモフスキー監督が就任したマレーシアは、予選F組の初戦でネパールと対戦して2-0と勝利し、好発進を果たしています。
クラモフスキー監督はこの試合に3バックを採用し、左右SBにシャルル・サアドとマット・ディヴィーズのJDTコンビを起用、CBに代表戦7試合目となるハリス・ハイカル(スランゴールFC)を配置しています。中盤は前任のキム・パンゴン監督時代にはCBで起用され続けたディオン・クールズが、所属するタイ1部ブリーラム・ユナイテッドでプレーする右WBに入り、左WBがラヴェル・コービン=オング、中央にはこの試合が代表デビューとなるオランダ出身のヘクター・ヘヴェル(ポルトガル2部ポルティモネンセSC)とノーア・ライネ(スランゴールFC)が並びます。前線には左からエンドリック・ドス・サントス(ベトナム1部ホーチミンシティ)、ロメル・モラレス(JDT)、そしてマレーシアの至宝アリフ・アイマン(JDT)という3-4-3の布陣です。(以下はこの試合の先発XIとベンチ入りの選手)

日本人の笠原寛貴が主審を務めたこの試合は、クアラ・ルンプールから300km以上離れたマレー半島南端のジョホール州で行われたため、ストリーミング配信で観戦しました。試合は開始から自陣で引き気味にプレーするネパールに対し、マレーシアが試合をコントロールします。しかし、ペナルティエリア付近まではボールは運ぶものの、エンドリックやアリフ・アイマンの放ったシュートが枠外に外れるなど、ゴールまでには至りません。マレーシアが一方的に攻める場面が続く中、配信が突然中断。そして再開した時には、初代表初先発となった28歳のヘクター・ハヴェルがペナルティエリアの外から放ったシュートがゴールとなり、既にマレーシアが先制していました。(笑)中断は機材トラブルが原因だったようですが、下にも添付したハイライト映像でもわかるように、ゴールの瞬間はピッチ全体を映した映像も、ゴールの瞬間のはっきりした映像も映っていません。(このフィールドレベルのカメラの映像も試合配信中には見ることができませんでした。)また中継ではシュートの角度が変わった結果のゴールであると実況されており、映像を見る限りではゴールポストに当たったシュートがうまく弾んでゴールとなったようです。
とは言え、ホームのマレーシアが先制すると、このゴールで目が覚めたのか、映像が再開した際にはネパールも積極的に攻めている様子が見られ、ついに35分にこの試合初のPKを得ます。しかし直接ゴールを狙ったシュートはゴールの上を大きく超えていきます。前半はともにそれ以上のゴールは挙げられず、マレーシアが1点をリードして、前半を折り返します。
後半に入っても、決定的なチャンスを得られないマレーシアでしたが、70分に相手ペナルティエリアの左外でPKを得ます。エンドリックがこのPKを蹴る前に、アリフ・アイマンが左サイドに走ります。これにつられてネパールDFが左に動くと、エンドリックは逆に右にいたクター・へヴェルへパスを出します。これをヘヴェル選手がノールックで左のアリフ選手へパスすると、今度はアリフ選手がカットバック気味にファーサイドへボールを送ります。するとそこにはフリーのラベル・コービン・オングが待ち構えており、このボールを難なく蹴り込みゴール!練習通りにコンビネーションがぴたりと決まったプレーでマレーシアが追加点を奪います。奇しくも2019年6月2日のネパール戦が代表デビューだったコービン=オング選手の代表戦41試合目にして通算5ゴール目で、マレーシアはリードを広げます。
74分にはほぼ1年ぶりに代表復帰となったファイサル・ハリムが登場して、観衆は代表戦としては寂しい7,895名が最大の盛り上がりを見せた試合は、そのままマレーシアが逃げ切って、2大会連続出場を目指す2027年アジア杯へ向けて白星スタートを切りました。
代表デビュー戦でゴールを決めたヘクター・ヘヴェルは、TranfermarktではAMFとなっていますが、この試合ではむしろ下がり気味でDMF的なプレーを見せていましたが、これについて前スランゴールFC監督のニザム・ジャミル氏は、ヘヴェル選手が後方にいることで、左右のウイングバックがより高い位置に上がることができ、マレーシアの攻撃の組み立てが円滑になると説明しています。実際に左のラヴェル・コービン=オング、右のディオン・クールズがオーバーラップする場面は何度も見られましたし、ディオン・クールズは右WBが適正なポジションなのだろうことも伝わってきました。さらにヘヴェル選手は「ディープ・ライイング・プレーメーカー(後方から攻撃を組み立てる司令塔)」としての役割を果たしていたということで、攻撃の組み立てと創造性の中心となるような、まさにマレーシア代表が待ち望んでいた選手と言えそうです。
2027年アジア杯3次予選F組第1節
2025年3月25日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
マレーシア 1-0 ネパール
⚽️マレーシア:ヘクター・へベル(29分)、ラヴェル・コービン=オング(70分)
なおF組のもう1試合はベトナムがグエン・バイ・ヴィの2ゴールやエースのグエン・クアン・ハイらのゴールでラオスに5-0と大勝しています。
6月11日のF組第2節ではマレーシアがホームにベトナムを迎えます。各組1位のチームのみが本戦出場となるこの3次予選では、マレーシアはベトナムに勝利しない限り本戦出場はあり得ませんが、そのベトナムとは2014年の東南アジアサッカー連盟選手権での勝利を最後に、現在は引き分けを挟んで7連敗中です。またこの間は3得点15失点(8試合)と圧倒されており、パク・ハンソ監督がベトナム代表を率いていた時代は手も足も出ませんでした。昨年就任したキム・サンシク監督となってからは、マレーシアはまだベトナムと対戦はありませんが、6月には10年ぶりの勝利を期待したいところです。
2027年アジア杯3次予選F組 順位表(第1節終了)
順位 | 試 | 勝 | 分 | 負 | 得 | 失 | 差 | 勝点 | |
1 | ベトナム | 1 | 1 | 0 | 0 | 5 | 0 | 5 | 3 |
2 | マレーシア | 1 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 2 | 3 |
3 | ネパール | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | -2 | 1 |
4 | ラオス | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 5 | -5 | 0 |