3月23日のニュース<br>・来週のアジア杯予選初戦で対戦するネパール代表が格上のシンガポール代表に1-0で勝利<br>・ジョホールは「紳士協定」を来季撤廃へ<br>・元リバプールのルイス・ガルシア氏がジョホールのCEOに就任

来週のアジア杯予選初戦で対戦するネパール代表が格上のシンガポール代表に1-0で勝利

3月21日に行われた国際親善試合でFIFAランキング175位のネパールは、12分にカウンターからギレスピー・ジュン・カルキがゴールを決め、同160位で日本人の小倉勉監督、帰化選手の仲村京雅選手を擁するシンガポールに1-0で勝利しています。なおネパール代表は、3月25日に2027年アジア杯3次予選の初戦として同132位のマレーシア代表と対戦します。

シンガポールの英字紙ストレイトタイムズによると、この試合後の会見で小倉監督は、「こんなプレーでは、どんなチームにも勝てない。自分が監督になって1年になるが、今回はシンガポール代表の最悪のパフォーマンスだ。」「ネパールは90分間戦い続けたが、我々は10分か15分程度しかファイトしなかった。それでは全く不十分だ。などと語ったそうです。

なおシンガポール代表は3月25日にFIFAランキング155位の香港代表と2027年アジア杯3次予選で対戦します。

ジョホールは「紳士協定」を来季撤廃へ

ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、来季のスーパーリーグでは、リーグ内の他のチームにローン移籍している選手に対し、JDTとの試合への出場禁止を撤廃する予定があると、マレーシア語紙ハリアンメトロが報じています。

これまで、JDTは他クラブにローン移籍している選手に対し、JDT戦への出場を禁止するという「紳士協定」を設けていましたが、これがマレーシアのサッカーファンや関係者の間で議論の的となっていました。

この紳士協定に基づき、ローン移籍している選手がJDTとの試合でプレーするのを禁止することで、JDTに有利に働いていると批判されることもありましたが、JDTのオーナーで、ジョホール州の摂政でもあるトゥンク・イスマイル殿下は、来季からこの紳士協定を撤廃する意向を示しています。

「スーパーリーグ内の他クラブにローン移籍している選手については、給与の半分は我々(JDT)が負担し、残りの半分はローン先のクラブが支払っている。しかし来季からは、ローン移籍中の選手がJDT戦に出場できるようにするつもりであり、クラブの経営陣にこの件について対応するよう求めている。」

「JDTからローンされた選手がいるクラブとJDTが対戦する際、JDTが有利だと思われたくないので、来季からは、ローンしている選手もJDT戦に出場できるようにする」と、イスマイル殿下はハリアンメトロとのインタビューで述べています。

JDTは過去数シーズンの間、この「紳士協定」を採用しており、一部のファンからはこれがJDTにとって有利な戦略だという声が上がっていました。しかし、この「紳士協定」自体は、JDTとローン先のクラブの合意に基づくものであり、JDTが何か規則違反を犯していたわけではありません。


JDTのローン移籍について、個人的には「紳士協定」以上に気になることがあります。それはスーパーリーグ内でJDTから他のクラブへローン移籍している選手の数です。

クラブ名リーグ順位JDTからローン移籍中の選手
(年齢)
スランゴールFC2位なし
クチンシティFC3位FWラマダン・サイフラー
*MFダニエル・アミル
サバFC4位*DFダニエル・ティン(33)
トレンガヌFC5位*MFサファウィ・ラシド(28)
*DFアザム・アズミ(24)
*#アキヤ・ラシド(25)
KLシティFC6位*DFデクラン・ランバート(26)
MFライアン・ランバート(26)
ペラFC7位*GKハジク・ナズリ(27)
PDRM FC8位なし
ペナンFC9位*MFシャミル・クティ(27)
スリ・パハンFC10位MFマヌエル・イダルゴ(25)
クダ・ダルル・アマンFC11位*FWシャフィク・アフマド(29)
ヌグリスンビランFC12位なし
クランタン・ダルル・ナイムFC13位なし

ローン移籍中の人数は12名、移籍先クラブ数はスーパーリーグのJDTを除く12チーム中8クラブに及びます。(注:トレンガヌのアキヤ・ラシドは今季途中に完全移籍済み)また*印の9選手はマレーシア代表でプレー経験のある選手で、この内、ダニエル・ティン(サバFC)、サファウィ・ラシド、アキヤ・ラシド(いずれもトレンガヌFC)、ハジク・ナズリ(ペラFC)、シャミル・クティ(ペナンFC)の5選手は、3月25日の2027年アジア杯予選に出場するマレーシア代表のメンバーでもあります。

このブログを読んでくださっている方であれば、マレーシアリーグのクラブの多くが資金不足に困っていること、そして無払い給料問題が複数のクラブで起きていることもご存知かと思います。そんな中でJDTからのローン移籍で選手を獲得できるとなれば、前述の通り支払う給料は半分で済み、しかも代表クラスの選手がローンできるわけです。また選手にとってもJDT内のポジション争いに敗れた結果、ベンチを温めるよりも他のクラブで試合出場時間を積み重ねることができ、またJDT自身も選手を無駄に飼い殺しせずに済むこの仕組みは、一見するとJDT、選手、移籍先クラブにとって「三方良し」にも思えます。

しかし今後も各クラブにJDTからのローン移籍の選手が増えていくと、いくら「紳士協定」を撤廃するとはいえ、ローン移籍中の選手が自身の給料の半分を支払うクラブ相手に全力を出せるのか、そこに無意識に縛りのようなものが発生しないのか、という疑問が起こります。しかし、それ以上に私が気になるのは、JDTが有望な選手を次々に獲得してはローン移籍で貸し出し、結果として国内の有力選手の大半がJDTの選手になってしまう、という点です。例えば上の表で言えば、トレンガヌのアザム・アズミ、KLシティの双子のランバート兄弟、スリ・パハンのマヌエル・イダルゴは、JDTと契約したものの、JDTでプレーすることは一度もなく、元々いた所属クラブにそのままローン移籍した選手たちです。将来の代表の右SBを担うと言われるアザム選手や、アルゼンチン出身で来年2026年5月にはマレーシアでのプレーが5年となり、帰化申請が可能になるイダルゴ選手の獲得といった言わば「先行投資」は、まさに資金力のあるJDTだからこそなせる技です。しかしこの先行投資が今後も続いたばあい、それが果たしてマレーシアリーグにとって、ひいてはマレーシアサッカーにとって良いことなのか。個人的には1クラブが1年間に国内の他クラブへローン移籍させることができる選手の数を制限するといった規定を設けるなど、国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)による英断が必要と思います。しかしそのMFLもラ・リガから来たCEOが半年も持たずに辞任するなど、組織としての機能を果たしていないので、状況はすぐには変わりそうにはありません。

元リバプールのルイス・ガルシア氏がジョホールのCEOに就任

マレーシア国内リーグ11連覇中の絶対王者ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、元スペイン代表でUEFAチャンピオンズリーグ優勝経験を持つルイス・ガルシア氏を、新たな最高経営責任者(CEO)に任命したことを発表しています。

数日前に自身のSNSにマレーシアの国民食「ナシレマ」の画像を投稿するなど、マレーシアのクラブCEO就任が秒読みとされていたルイス・ガルシア氏は、リバプールのOB戦「バトルオブレッズ」なども含め、何度かマレーシアを訪れています。

JDTのSNSに投稿された発表では、「元リバプール、バルセロナ、アトレティコ・マドリードの選手であるルイス・ガルシア氏は、UEFAプロライセンスおよびUEFAエグゼクティブ・マスター(国際選手向け)を取得しており、これまでFIFA、UEFA、ラ・リーガのアンバサダーも務めた経歴があります」と記されており、今回の人事はクラブ経営の専門性を強化することを目的とした再編計画の一環であると説明されています。

また、今回の再編により、2017年からテクニカルディレクター(TD)を務めてきたアリスター・エドワーズ氏がTDに加え、新たに最高執行責任者(COO)との2役を兼任することも発表されています。