3月22日のニュース:代表関連の3題<br>・アジア杯予選を控えるマレーシア代表に2人の帰化選手が合流<br>・「消息不明」のナチョ・インサが発見される<br>・代表チームはサッカー協会の管理下にある-サッカー協会会長

2026年W杯アジア3次予選が再開し、東南アジアから唯一出場しているインドネシア代表はオーストラリア代表にアウェイで1-5で敗れています。これまでのシン・テヨン監督を「選手とのコミュニケーションの難しさ」を理由に解任し、オランダ出身の選手が集まる代表にパトリック・クライファート監督を招聘しましたが、デビュー戦としては残念な結果となりました。昨年9月の対戦では、シン・テヨン監督の元でオーストラリアとスコアレスドローだったこともあり、監督経験に問題ありとされたクライファート監督への風当たりは強いようです。帰化選手に対しても、ルーツを持つとはいえインドネシアに住んだこともなく、生まれた国では代表になれなかった「二流」の選手といった批判が出始めており、今後も結果が出なければこの声が大きくなる可能性があります。同様の機関選手による強化を進めるマレーシア代表の関係者がこの状況をどうみているのかが気になるところです。

アジア杯予選を控えるマレーシア代表に2人の帰化選手が合流

3月25日に2027年アジア杯3次予選の初戦を迎えるマレーシア代表に2名の帰化選手が合流したことをマレーシア代表の公式SNS Malaysia NTが発表しています。現在マレー半島南端のジョホール州で合宿中のマレーシア代表に合流したのは、オランダ生まれのAMFエクトル・へベルと、スペイン生まれで左SBを得意とするガブリエル・パルメロの両選手です。

29歳のヘベル選手は、ADOデン・ハーグ(オランダ)のユース出身で、AEKラルナカ(キプロス1部)では2017/18シーズンにキプロスカップ、2018/19シーズンにはスーパーカップ優勝に貢献。また、2020/21シーズンにはスペインの隣国、アンドラ公国に本拠地を持つFCアンドラのクラブ史上初となるスペイン2部昇格にも貢献しています。現在はポルトガル2部のポルティモネンセSCに所属しています。

一方、23歳のパルメロ選手は、スペインのUDラス・パルマスのユースやBチームを経て、いずれも同国4部のギムナスティカ・セゴビアナCFや、現在所属するCDテネリフェBにレンタル移籍しています。

Malaysia NTの投稿では「海外で活躍するマレーシア人が帰ってきた!エクトル・ヘベル選手、ガブリエル・パルメロ選手、Selamat datang(マレーシア語で「ようこそ」)!」と記されています。

なお今年1月に就任したピーター・クラモフスキー監督は以前、3人の帰化選手がマレーシア代表に加わると示唆していましたが、現在のところ発表されたのは上記の2選手のみです。


ちなみにこの代表合宿はJDTの練習施設を使って行われています。JDT以外の選手にとっては、自チームの施設と比べてその質の高さから、クラブに戻ってもこんな環境で練習したい、と思わせるJDTに勧誘するため良い宣伝材料にもなっていそうです。

「消息不明」のナチョ・インサが発見される

2027年アジア杯3次予選のネパール戦を控えたマレーシア代表のトレーニングに、代表招集されているナチョ・インサ(ジョホール・ダルル・タジムFC、JDT)が参加しておらず、またマレーシアサッカー協会(FAM)からも何も発表がないため、様々な憶測が飛び交っていましたが、ついに事実が明らかになりました。

ピーター・クラモフスキー代表監督は、インサ選手が現在リハビリ中であると明らかにしています。38歳のインサ選手は今季も主力としてJDTで国内リーグやカップ戦、さらにACLエリートといった過密なスケジュールでプレーしておりおり、現在は自身の回復のために個別のリハビリを行っていると説明しています。

「彼は私たちと一緒にトレーニングをしておらず、個別のリハビリプランに取り組んでいる。全体練習に合流できるかどうかは後ほど判断する予定である。」と、クラモフスキー監督は練習後の記者会見で述べています。

またクラモフスキー監督は、同じJDTに所属するアリフ・アイマンも個別リハビリ中であるものの、。「彼のリハビリプランは若干異なり、個別リハビリではあるものの、メディカルチームと共に練習場で活動している。次回の全体練習には合流できることを期待している」と述べて、全体練習には参加していると説明しています

また代表チームのトレーニングの進捗についてクラモフスキー監督は、「我々は良いチーム、強いチーム、そして見ていてワクワクするチームになるために重要な点に集中しています。選手たちは真剣に取り組んでおり、情熱を持っているので、チームが最高の状態になるようさらに引き上げたい。」と話し、選手たちが戦術的アプローチに順応しており、残りのトレーニングでさらに磨きをかけられるだろうとも述べています。

「チームは正しい方向に進んでいます。トレーニングで取り組んでいる良い内容は試合に現れるだろう。(ネパール戦に向けた)準備の仕上げとして、今後数日間を有効に活用したい。」と自信を見せています。

またクラモフスキー監督は、ファンに対してネパール戦が開催されるスルタン・イブラヒム・スタジアムに足を運び、代表チームを応援するよう呼びかけています。3月11日に行われたACLエリートのJDT対ブリーラム・ユナイテッド(タイ)戦では、イスラム教の断食月、ラマダン期間中にもかかわらず3万4000人以上の観客が集まったことを例に挙げ、同様の盛り上がりを期待していると話しています。

代表チームはサッカー協会の管理下にある-サッカー協会会長

マレーシアサッカー協会(FAM)のジョハリ・アユブ会長は、マレーシア代表がFAMの管轄外になったとの憶測を否定しました。ジョハリFAM会長は、「(マレーシア代表の愛称)ハリマウ・マラヤは引き続きFAMの管理下にある」と述べ、独立して運営されているという話を否定しました。

過去数ヶ月間にわたり、ジョホール・ダルル・タジムFCのオーナーで、かつてはFAMの会長もつとめた、ジョホール州摂政のトゥンク・イスマイル殿下が中心となって代表チーム改革を積極的に進めており、マレーシア代表チームがFAMとは別に運営されているとの見方が広がっていましたが、ジョハリ会長は「外部からの支援は歓迎するが、マレーシア代表チームは依然としてFAMの組織内にある」と強調しています。

ジョハリ会長は、トゥンク・イスマイル殿下の貢献に言及し、「殿下の支援により、代表チームが前進できている。どなたの支援でも歓迎するが、殿下の協力には非常に感謝している」と述べています。

トゥンク・イスマイル殿下は、これまでも代表チーム改革案を提案、プロ意識と競争力を向上させる重要な人事を主張し、代表チーム首脳陣の人選の原動力となっています。元オーストラリア代表のティム・ケーヒル氏を自身のアドバイザーとして、マレーシア代表チームのロブ・フレンドCEO、ピーター・クラモフスキー監督、また元オーストラリア代表選手のマーク・ミリガン、マット・スミス両氏の代表チームコーチ就任、さらに高名なハイパフォーマンス専門家のクレイグ・ダンカン博士などを次々と起用しています。


代表合宿はFAMの施設よりもあらゆる面で優っているJDTの練習施設を使い、クラモフスキー新監督披露となるネパール戦代表戦をマレーシア代表の「ホーム」であるブキ・ジャリル国立競技場ではなく、JDTのホーム、スルタン・イブラヒム・スタジアムで行ななど、マレーシアサッカー協会(FAM)会長が何と言おうと、マレーシアサッカーの中心は、少なくとも代表チームの運営についてはFAMではなくジョホールになっています。