2024/25マレーシアカップ準決勝1stレグ:ジョホールはトレンガヌに圧勝で決勝進出に王手、サバとパハンは引き分け<br>2024/25チャレンジカップ1stレグ:連覇を狙うPDRMはクダと引き分け、スランゴールはペナンに辛勝

1921年に第1回大会が開かれたマレーシアカップ(当時はマラヤカップ)は、同痔1921年に第1回大会が行われた天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会(当時はア式蹴球全國優勝競技會)と並ぶアジア最古のカップ戦です。サッカー天皇杯は昨年11月にヴィッセル神戸が優勝した2024年大会が第104回大会だったのに対し、マレーシアカップは今大会が第98回大会ですが、これは当時の英領マラヤに日本軍が侵攻したことにより1942年から1947年までの6年間は大会が中止となったためです。

サッカー天皇杯は、Jリーグ発足前は実業団の日本サッカーリーグと全日本大学選手権の上位4チームが出場する大会でしたが、1972年の第52回大会からはオープン化され、2024年大会はJ1、J2のクラブや各都道府県選手権大会を勝ち上がったクラブなど全88チームが参加しています。これに対してマレーシアカップは、当初は各州のクラブによる対抗戦としてスタートし、現在も16チームのみが参加できる閉じた大会になっています。2部プレミアリーグが存在した2022年までは、1部スーパーリーグ(12チーム編成)の上位11チームと、プレミアリーグの上位5チームの計16チームが対戦する方式でしたが、スーパーリーグとプレミアリーグが合併し、プレミアリーグが中断となった2023年からはスーパーリーグの全14チームに加えて、3部に当たるM3リーグ(当時、現在はA1セミプロリーグ)から2チームが参加、そして今季2024/25シーズンは、給料未払い問題でリーグ不参加となったクランタンFCを除くスーパーリーグの13チームとA1セミプロリーグの3チームが出場しました。

また2021年までは、出場16チームを4つのグループに分けて全チームとホームアンドアウェイで対戦し、各グループの成績上位2チームが準々決勝へ進出、そこから準決勝までは再びホームアンドアウェイ方式で、決勝のみ1発勝負という方式でした。2022年からは、グループステージなしで、1回戦から準決勝までホームアンドアウェイ、そして決勝のみ1試合という方式に変更になっています。

今季は既に準々決勝まで終了しており、準決勝に駒を進めているのは現在、スーパーリーグ首位のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)、同3位サバFC、同4位トレンガヌFC、そして同10位のスリ・パハンFCの4チームで、準決勝のカードはJDT対トレンガヌ、サバ対スリ・パハンとなっています。(試合のハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグMFLの公式YouTubeチャンネルより)

2024/25マレーシアカップ準決勝1stレグ:ジョホールはトレンガヌに圧勝で決勝進出に王手

この試合の前には、今季開幕前にJDTからトレンガヌにレンタル移籍で加入していた代表FWアキヤ・ラシドが完全移籍でトレンガヌを2026/27シーズンまでの2年契約を結んだことが発表されました。これによりアキヤ選手はJDTのマレーシアカップ準決勝出場が可能となったことで、今季ここまで国内無敗のJDTに対して、ほぼベストメンバーのトレンガヌが一矢報いるのではと期待が高まりました。(なお、同じくJDTからローン移籍中で今季チームトップの3ゴールを挙げている代表FWサファウィ・ラシドはこの試合はベンチ外でした。)

しかし試合は開始からJDTが圧倒し、ホームのトレンガヌが一方的に防戦に回る展開となりました。それでもトレンガヌはGKラーディアズリ・ラハリムの好守もあり、立ち上がりこそなんとか持ち堪えますが、17分には帰化選手ロメル・モラレスにゴールを許します。しかし前半はこの1点にJDTの攻撃を留めたトレンガヌは、後半に勝負をかけてます。

後半開始こそJDTの猛攻を凌いだトレンガヌでしたが、徐々にプレッシャからDF陣の連携が緩むと79分、85分といずれもアリフ・アイマンにゴールを決められると、ロスタイムにはエースのベルグソンがダメ押しの4点目を挙げられて完敗。前述のサファウィ・ラシドに加え、今季リーグ戦では10試合に先発している右SBアザム・アズミもJDTからローン移籍中でこの主力2名はJDTのホームでの2ndレグでも出場できないため、トレンガヌにとっては決勝進出が遠のく敗戦でした。

2024/25マレーシアカップ準決勝1stレグ
2025年1月17日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 0-4 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️ジョホール:ロメル・モラレス(17分)、アリフ・アイマン2(79分、85分)、ベルグソン(90+3分)

2024/25マレーシアカップ準決勝1stレグ:サバとパハンは引き分け

準々決勝ではリーグ2位のスランゴールを、ホームでの1stレグを1−1と引き分けると、アウェイとなった2ndレグでは2−1とまさかの勝利を挙げて準決勝に進出したのが、現在リーグ10位のスリ・パハンFC。ベスト4ではリーグ3位のサバFCと対戦しましたが、ここでもリーグ戦とは違った戦いぶりを見せています。

先制したのはサバFCでした。開始9分に代表でも主力のスチュアート・ウィルキンが絶妙のコースを狙ったシュートが決まり、ホームのサバFCがリードします。しかしスリ・パハンもエースのクパー・シャーマンを中心に攻め入りますが、この試合先発したサバのGKダミアン・リムが好セーブを何度も見せて失点を許しません。

サバのリードで前半を折り返した試合は、後半の66分にクパー・シャーマンが右サイドを上がったエゼキエル・アグエロへパスして自身はゴール前へ走り込むと、アグエロからの折り返しを押し込んで、ついにスリ・パハンが追いつきます。しかしこの10分後にはマヌエル・イダルゴが相手選手と交錯し、VARが介入するとその際にスパイクで踏みつけたとして1発レッドで退場となり、スリ・パハンは10人になってしまいます。しかしサバはこの数的優位を生かすことができず、試合はこのまま引き分けに終わっています。

2024/25マレーシアカップ準決勝1stレグ
2025年1月17日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバFC 1-1 スリ・パハンFC
⚽️サバ:スチュアート・ウィルキン(9分)
⚽️スリ・パハン:クパー・シャーマン(66分)

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1921年に第1回大会が行われたマレーシアカップに対し、2018年から始まったMFLチャレンジカップは、当初はマレーシアカップに出場できない1部スーパーリーグの12位チームと2部プレミアリーグ(現在は休止中)の5位以下のチームが、マレーシアカップ期間中の試合不足を解消するための大会でした。2018年時点のプレミアリーグには、1部スーパーリーグでプレーするクラブのセカンドチームが複数参加しており、第1回大会となった2018年はトレンガヌFCのセカンドチームのトレンガヌFC IIが、翌2019年はジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のセカンドチーム、JDT IIがそれぞれ優勝しています。新型コロナの影響で、2020年から2022年までは開催されなかったものの、再開された2023年の大会からは、スーパーリーグとプレミアリーグが合併したこともあり、マレーシアカップ1回戦で敗れた8チームが出場する大会になっています。

昨季2023年は、鈴木ブルーノ選手が所属するPDRM FCと谷川由来選手が所属するクチンシティFCの日本人所属の2チームがが決勝に勝ち残り、ホームでの1stレグで3-0、アウェイの2ndレグでは1−1と引き分けたPDRMが初めてのタイトルを獲得しています。

今季2024/25シーズンのチャレンジカップも準決勝進出の4チームが決まっており、1月18日と19日に準決勝1stレグが行われています。準決勝に残ったのは連覇を狙うPDRM FC、クダ・ダルル・アマンFC、ペナンFC、そしてスランゴールFCの4チームです。

2024/25チャレンジカップ1stレグ:連覇を狙うPDRMはクダと引き分け

給料未払い問題でリーグ戦では勝点3剥奪処分を受けているクダは、MFソニー・ノルデが今月に入りインドネシア1部マルット・ユナイテッドへ移籍、またFWクレイトンは同じインドネシア1部で前サバFC監督のオン・キムスゥイー監督のプルシス・ソロへ移籍、さらにMFシュクロフ・ヌルラエフは退団と、主力の外国籍選手を今月に入って失っています。その結果、この日の先発には外国籍選手はFWミロシュ・ゴルディッチ1人でした。

一方のPDRMは、警告累積による出場停止から復帰したイフェダヨ・オルセグンに鈴木ブルーノ、元ファジアーノ岡山のハディ・ファイヤッド、そして2020年のマレーシア人リーグ得点王のシャーレル・フィクリと4名のFWが先発すると、開始4分でゴール前の混戦から鈴木ブルーノ選手がゴールを決め、あっさりと先制します。さらに前半終了間際にはイフェダヨ・オルセグンもリーグ戦とカップ戦を合わせて今季12点目となるゴールを決め、PDRMが2点のリードで折り返します。

後半に入るとチャンスを作りながらも得点に至らないPDRMに対して、クダが徐々にペースを上げると、50分のミロシュ・ゴルディッチのゴールを皮切りに15分間で3ゴールを挙げてPDRMを逆点します。しかしPDRMも途中出場のイズルル・アシュラフが放ったシュートをやはり途中交代のクダGKイフワット・アクマルが反応できずゴール。最後は劣勢に回ったPDRMが引き分けに持ち込んだ試合でした。この試合はスタンドから観戦しましたが、試合中には中盤のキーマン、ミャンマー代表のチョー・ミン・ウーがチームメートやベンチにフラストレーションを示す場面が何度かみられるなど、連携に問題があるような様子も伺え、2ndレグではPDRMのP・マニアム監督がどのような布陣で望むのかに注目です。

2024/25MFLチャレンジカップ準決勝1stレグ
2025年1月18日@MPSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 3-3 クダ・ダルル・アマンFC
⚽️PDRM:鈴木ブルーノ(4分)、イフェダヨ・オルセグン(44分)、イズルル・アシュラフ(79分)
⚽️クダ:ミロシュ・ゴルディッチ(50分)、アイマン・アフィフ(53分)、アクマル・ザヒル(65分)

2024/25チャレンジカップ1stレグ:スランゴールはペナンに辛勝

マレーシアカップでは通算33回優勝と2位シンガポールの24回(シンガポールはかつてはマレーシアリーグでプレーしていました。)、3位ペラの8回を遥かに凌ぐ成績を収めていますが、直近では2015年以来、優勝から遠ざかっています。そんな古豪スランゴールが、準々決勝進出を逃したのは2018年以来のこと。その結果、スランゴールにとっては今回がクラブ史上初のチャレンジカップ出場となっています。

2024年12月 1日1-2 スリ・パハンマレーシアカップ
2024年12月 9日4-0 ヌグリスンビランスーパーリーグ
2024年12月12日5-1 クランタン・ダルル・ナイムチャレンジカップ
2024年12月17日2-1 ペラスーパーリーグ
2024年12月22日3-0 クランタン・ダルル・ナイムチャレンジカップ
2025年 1月12日1-0 KLシティスーパーリーグ

上はスランゴールの12月から1月にかけての試合結果です。リーグ最下位争いを繰り広げているクランタン・ダルル・ナイムFCとヌグリスンビランFC以外は全て1点差の試合となっており、しかもこの両チームとの対戦を除くと2勝1敗、4得点3失点という成績です。

この試合でも唯一の得点は、ペナンのキャプテンDFラファエル・ヴィトールが右サイドを上がったクエンティン・チェンからゴール前のロニー・フェルナンデスへのクロスをブロックしようとしてオウンゴールした35分の1点だけでした。それまでも右サイドからペナンDF陣にプレッシャーをかけていたチェン選手の動きが功を奏したといえばそれまでですが、スランゴールの得点力不足は深刻です。

この試合でも喜熨斗勝史監督は、1月12日の試合で途中出場ながら試合の流れを変えるような縦パスを何度も繰り出したムカイリ・アジマルを先発に起用するなど、前線の選手については試行錯誤を繰り返しているように見えます。

「(ペナンが得意とする)ロングボール対策がうまくいき、サポーターに対して勝利をもたらすという最低限の目標を達することができたことは嬉しいが、『スランゴールらしさ』を見せるためにはさらに改善していく必要がある。」と述べた喜熨斗監督ですが、ここ数年のスランゴールは前任のニザム・ジャミル監督時からその『スランゴールらしさ』を模索し続けているのが現状です。

さらに体力面、精神面、そして戦術面のいずれもさらなる努力が必要とも述べた喜熨斗監督ですが、今週末の1月25日にはリーグ戦でもこのペナンと同じアウェイでの対戦が組まれており、そこでの対戦で今回の勝利が順当だったのかどうかもわかるでしょう。

2024/25MFLチャレンジカップ準決勝1stレグ
2025年1月19日@シティ・スタジアム(ペナン州ジョージ・タウン)
ペナンFC 0-1 スランゴールFC
⚽️スランゴール:ラファエル・ヴィトール(35分OG)