12月に入って愛用のPCが突然、動かなくなりました。そこから修理とデータ回復に手間取り、気がつけば今日は大晦日。マレーシアサッカーのブログを始めてからこれほど長く投稿しなかった期間はありませんでしたが、今日から再び記事を書いていきます。休載中はいろいろなニュースがありましたが、それも含めて今年最後の投稿は、複数回に分けて2024年のマレーシアサッカーを振り返る重大ニュースの第1回です。
秋春制以降期間となる今季の国内リーグは5月開幕、翌年4月閉幕と12ヶ月の長丁場に
マレーシア1部マレーシアスーパーリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)がAFCの秋春制移行に合わせる形で、秋春制以降を発表したのは昨年2023年末でした。今季2024/25シーズンと来季2025/26シーズンの2シーズンをかけてこの移行を行うことを発表しており、従来の1月/2月開幕、11月閉幕と言う日程から、今季5月開幕(ただし当初は4月開幕予定でした)、翌年4月閉幕の12ヶ月となりました。
今年の年明け早々には予選突破での出場は43年ぶりとなったAFCアジアカップ2023年大会、3月にはFIFAワールドカップ2026アジア2次予選、4月中旬にはマレーシアU23代表も出場するAFC U23アジアカップ2024年大会などがあったこともシーズン開幕が5月となった理由です。
また、この新たな日程変更は思わぬところに影響を及ぼしました、今季からリブランディングされACL2となった昨季までのAFCカップでは、サバFCが東南アジアゾーングループステージを勝ち上がっていました。しかし東南アジアゾーンプレーオフ準決勝の日程はなんと2月。12月のシーズンオフから2か月空き、5月の国内リーグ開幕まで3ヶ月と言う時期の試合では調整も難しく、サバFCではマッカーサーFC(オーストラリア)に0−3で敗れて敗退しました。このマッカーサーFCは東南アジアゾーン決勝で同胞のセントラルコーストマリナーズFCに延長で敗れ、勝ったセントラルコーストマリナーズFCはそのまま一気にAFCカップに優勝し、今季のACLエリート出場権を獲得しています。MFLの日程変更がなければ、2月は開幕前後の仕上がっている状態だっただけにサバFCも違った結果を残していたのではないかと思うと残念です。
クランタンFCは国内クラブライセンスを発給されず、今季のスーパーリーグは奇数の13チーム編成で実施
年が明けた1月にはマレーシアンフットボールリーグ(MFL)のクラブライセンス控訴委員会が会合を開き、今季のスーパーリーグ出場に必要となる国内クラブライセンス申請が却下されていたクランタンFCによる控訴を却下する決定したことを発表しました。クランタンFCはこれ以前に、給料未払い問題により国内クラブライセンスの発給を行う第一審機関(FIB)によってライセンス申請を却下されており、この決定を不服として控訴していました。
この決定によりクランタンFCの今季のスーパーリーグ出場資格が消失し、クランタンFCが離脱っしたことで、今季のスーパーリーグは奇数となる13チームで構成されることになりました。
クランタン州の州旗の色をとってレッドウォリアーズ「赤い戦士」の愛称で呼ばれるクランタンFCは、前身のクランタンFA時代の2012年にはリーグ、FAカップ、マレーシアカップを全て制して国内三冠を達成した他、2011年から13年にかけてはリーグ、FAカップ、マレーシアカップを合わせて6回という古豪です。しかし2018年にスーパーリーグで11位となり当時の2部プレミアリーグに降格、それまでの放漫経営の結果、毎年給料未払い問題を起こすクラブとなっていました。2020年シーズン終了後には未払い給料などの負債を背負う形で実業家のノリザム・トゥキマン氏が新たなオーナーになったものの、「金も出すが口も出す」タイプのノリザム氏が昨季2023年シーズンだけで3名の監督の首を飛ばすなど運営が混乱しました。さらに再び発生した給料未払い問題によりMFLからはトランスファーウィンドウ期間の新規選手獲得禁止処分を受け、また外国籍選手を含む主力選手をシーズン途中で契約解除したこともあり、2023年シーズンは26試合で2勝2分22敗の最下位となっただけでなく、リーグ新記録となる121失点を記録するなど散々でした。
なおクランタンFCは今季は下部リーグでもプレーせず、オーナーのノリザム氏も売却することを表明していますが、買い手がつかない状況です。
43年ぶり出場のアジアカップは韓国との死闘で勝点1も、結局は未勝利で終了
2007年のアジアカップは東南アジア4ヵ国(インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム)の共同開催で行われ、マレーシアは開催国枠で出場を果たしていますが、予選を経ての出場となると43年前の1980年大会以来となったマレーシア。初戦は一昨年はクダ・ダルル・アマンFCでプレーしたマフムード・アル=マルディに2ゴールを許すなど、ヨルダンに0−4で敗れています。2戦目はバーレーンにロスタイムに決勝ゴールを許して0−1で惜敗しましたが、この段階でグループステージ敗退が決定しました。グループステージE組の最終線では、FIFAランキング130位(当時)のマレーシアは同28位の韓国と対戦しています。二転三転した試合の最後は15分と長く取られたロスタイムに、ブラジル出身のパウロ・ジョズエ(KLシティFC)からのパスを受けたコロンビア出身のロメル・モラレス(当時KLシティFC、現在はジョホール・ダルル・タジムFC)の帰化選手コンビの連携で「執念」のゴールを挙げたマレーシアが引き分けに持ち込み、1980年大会以来43年ぶりの勝点1を挙げています。しかし最終成績は0勝1分2敗、得点3失点8という成績で大会を終えています。
2026北中米W杯アジア予選は好発進後に大失速してまたも2次予選の壁を破れず
昨年11月に始まった2026北中米W杯アジア2次予選でD組に入ったFIFランキング132位(当時)のマレーシアは初戦のキルギス、2戦目の台湾にいずれも勝利し、一気に首位に立ちました。今年に入って行われた第3戦の相手はD組で最もFIFAランキングが高い80位のオマーンが相手でした。オマーンは第2戦でキルギスに敗れており1勝1敗の成績で、3月21日、そして29日とアウェイとホームで対戦するうちのどちらかでマレーシアがあわよくば勝利、悪くても引き分けとすることで、2次予選突破の可能性が高くなります。しかし蓋を開けてみれば、ホーム、アウェイのいずれも0−2と敗れてしまいました。
それでも6月のキルギス戦(アウェイ)で勝てば予選突破の可能性が残りましたが、後述するファイサル・ハリム(スランゴールFC)の事件による欠場などもあり、マレーシアはキルギスと1−1で引き分けて自力突破の可能性を失うと、最終戦の台湾戦に勝利したものの、予選敗退となっています。D組2位で3次予選に進出したキルギスと勝点差1の10で3位に終わるなど、悔いの残る予選敗退となりました。
代表FWファイサル・ハリムは酸攻撃を受け、所属のスランゴールはその直後の開幕戦の延期を求めるも、リーグはこれを却下
今季開幕直前にはマレーシアサッカー界が衝撃を受ける事件が続きました、1月のアジアカップ、韓国戦でもゴールを決めてい代表FWファイサル・ハリム(スランゴールFC)が酸をかけられるアシッドアタック(酸攻撃)を受け、首から肩、さらに腕にかけての数カ所に火傷を追っています。
ファイサル選手は5月5日の午後、家族とスランゴール州内のショッピングモールを訪れてゴーカートを楽しんだ後で、このアシッドアタックを受け、直ちに近隣の病院で診断と治療を受けた結果、「皮膚の水膨れと真皮の表面的な破壊を引き起こす」火傷2度(Second degree burn)と診断されたということですが、命に別状はありませんでした。スランゴール州警察本部長は事件後に会見を開き、事件の経緯を説明した上で、犯人の捜索が続いているとしていますが、別の報道では犯人は2人組でファイサル選手にバイクで近づき、酸をかけた後そのまま逃走したということですが、CCTVに残った記録映像から割り出されたバイクのナンバーは偽造で、バイク自体も盗まれたものだと考えられているようです。
しかし、この事件の発生からすでに7ヶ月以上が経った現在、犯人が逮捕されるどころか、捜査の進捗状況も報じられておらず、警察の能力の低さが問われる一方で、何か「見えない力」が働いているのではないか、とすら言われています。この事件の直前にはジョホール・ダルル・タジムFCからトレンガヌFCに期限付き移籍中の代表FWアキヤ・ラシドも強盗被害に遭っていますが、このアキヤ選手の事件も実はファイサル選手襲撃の捜査を撹乱する目的だったのでは、などさまざまな憶測が飛び交っています。
なお被害を受けたファイサル選手は、その後、皮膚移植手術やリハビリを経て、今月初めて今季リーグ戦での先発出場を果たしています。
またこのファイサル選手の事件を受け、スランゴールFCは5月10日に予定されていた今季開幕戦兼スンバンシー・カップについて「安全上の問題」があるとして延期をリーグを運営するマレーシアン・フットボール・リーグ(MFL)に求めましたが、MFLは試合当日に警官を増員するなど安全が確保されているといて、これを却下。それを受けたスランゴールFCは、チームの講演者でもあるスランゴール州スルタン(州王)の同意を得て、最終的に出場辞退を決定しました。
前年のリーグ覇者とマレーシアカップチャンピオンが対戦するスンバンシーカップは、本家英国のチャリティーシールド(現コミュニティーシールド)を模して始まったカップ戦ですが、マレーシアではなぜか公式戦に組み込まれている上、ウェンブリースタジアムのような中立地で開催されるのではなく、前年のリーグ覇者のホームで開催される、なんとも奇妙なカップ戦です。
なおスランゴールが出場辞退した結果、対戦相手のジョホール・ダルル・タジム(JDT)が規定により3-0でこの試合の勝者とされ、スンバンシー・カップの8年連続優勝と、開幕戦の勝点3が与えられています。
キム・パンゴン代表監督が「個人的な事情」を理由に契約期間を1年以上残して辞任-その後は空席となっていた蔚山HD監督に就任しリーグ優勝に導く
7月にもマレーシアサッカー界に激震が走りました。マレーシア代表のキム・パンゴン(金判坤)監督が7月16日に「個人的な事情」を理由に、2025年12月末までの契約を全うすることなく、即時辞任しています。キム監督はおよそ1ヶ月前のW杯アジア2次予選台湾戦後、予選敗退が決まった後の会見では「できるだけ長く監督を務めたい」と話していただけに、この豹変ぶりは関係者だけでなく、国内サッカーファンも困惑しました。
また後任には、スペイン出身でバルセロナのユースのコーチを務めた他、アデレード・ユナイテッド(オーストラリア)やキッチーFC(香港)などで指導経験があるパウ・マルティ・ヴィンセント コーチが監督代行に就任、残るコーチ陣は全員残留しています。
不満は全くなかったとも述べたキム氏ですが、辞任理由の「個人的な事情」の詳しい内容を会見の席で問われると、全ては既にFAMのハミディン・アミン会長に説明済みだとして、メディアには詳細を明かすことはありませんでした。一部メディアは、キム氏は辞任する意向をこれまで何度か伝えてきたものの、ハミディン会長がこれを拒否していたとしており、直近では6月11日のW杯アジア2次予選の台湾戦直後にも辞任を申し出たと報じています。
在籍期間907日、監督として35試合を指揮し、20勝5分10敗の結果を残したキム氏は、監督就任以来61名の選手を代表に招集し、マレーシアのFIFAランキングを就任時の154位から、最高で130位まで引き上げています。
なおキム氏は、代表監督辞任からおよそ2週間後に洪明甫前監督が韓国代表の監督に就任したことにより空席となっていた韓国1部Kリーグの蔚山HDの監督に就任することが発表され、選手としてプレーした蔚山現代(当時)に監督として凱旋した形です。そしてキム氏が就任した蔚山HDは今季のKリーグで見事に優勝しています