リーグ3位のサバFC監督が契約延長拒否で退団-「11月30日問題」の影響も
現在8勝2分4敗でリーグ3位のサバFCは、オン・キムスイ監督の退任を発表しています。この公式声明によると、オン監督が指揮を取るのは明日11月23日のマレーシアカップ1回戦の対PTアスレチックFC戦が最後になるということです。
この声明の中でオン監督は、サバ州のハジジ・ノー州首相、サバ州サッカー協会のシャヘルミ・ヤーヤ会長、そしてサバFCの経営陣やスタッフにこれまでの支援を感謝しています。
さらにオン監督は「サバFCを率いた36ヶ月という期間は素晴らしい時間だった。この優れたクラブを指揮することができたことを嬉しく思う。ピッチの内外で責任を果たし、プロ意識をみ見せてくれた選手を誇りであると同時に、一緒にプレーできたことを光栄に思う。」とも述べています。またオン監督はサポーターにもこれまでの応援に対する感謝の意を表し、自身は退団してもサバFCのサポーターの1人としてその成長を見守りたいとも述べています。
オン監督がサバFC監督に就任したのは2021年シーズン途中でした。このときはインドネシアのレジェンドで前任のクルニアワン・ドウィ・ユリアン監督が2021年8月に成績不振で事実上の解任となり、サバFCがその後任として、当時マレーシアサッカー協会(FAM)のテクニカル・ディレクター(TD)だったオン氏に監督就任を要請し、オン氏もFAMのTDを辞して監督に就任しています。シーズン途中の就任となった2021年は9位に終わったものの、オン監督が開幕から指揮を取った2022年、昨季2023年はいずれもリーグ3位で、AFCカップ(現ACL2)にも出場、今季もここまでリーグ3位とサバFCでは安定した成績を残しています。
オン監督の契約は今月11月30日までとなっており、オン監督自身は契約延長を希望するという発言を行なっていました。11月5日にはサバ州サッカー協会とサバFCが今季2024/25シーズンが終了する来年4月末までの契約延長をオファーしたと報じられていましたが、今回、オン監督はこのオファーを断って退団を選択したことになります。オン監督は退団を選んだ理由などは明らかにしていませんが、現在、マレーシアサッカー協会(FAM)が創設を進めているとされる代表チーム運営の特別部署に関わるのではという噂などが出ています。
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とここまで読んで、そもそもなぜオン監督の契約が11月30日までというシーズン途中の中途半端な時期までの契約になっていたのかを疑問に思う方がいるかも知れません。これがこの記事のタイトルにある「11月30日問題」に関わることなのです。従来、春秋制で行われてきたマレーシアスーパーリーグ(MSL)は、1月下旬か2月に開幕し、11月末までに全日程が終了するという年間予定で長らく運営されていました。しかし、AFCの年間予定変更に沿う形で、MSLは今季2024/25シーズンと2025/26シーズンの2シーズンをかけて秋春制への以降を進めることになりました。そのため、今季は従来と大きく異なる5月開幕、来年4月閉幕という12ヶ月に及ぶ長期スケジュールが組まれました。しかしその一方で、各チームと選手や監督、コーチさらにスタッフとの契約は大半が、今回のオン監督のような従来通りの11月30日までとなっていることが明らかになると、これが「11月30日問題」としてクローズアップされることになりました。
この11月30日問題は、チーム側の立場で言えば、前半戦を終わって不要と判断した選手の契約をこの11月30日に満了として終了させることが可能です。契約延長を行わない判断の理由は選手の能力の他、これまでこのブログでも何度も取り上げている(そしてこの記事の下でも取り上げる)給料未払い問題に代表されるチームの経営悪化も考えられます。さらに再契約となっても待遇を下げられるケースも考えられます。前述のオン監督で言えば、サバFCは今季給料未払い問題を抱えていた時期があり、金銭面での待遇譲歩を求められた可能性もあります。
しかし選手側の立場では、チームへの貢献度が高ければ好条件を引き出しての再契約も考えられます。さらにここで気になるのは海外移籍の可能性です。マレーシア国内のトランスファーウィンドウは開いていないので、契約延長を拒否しても、国内の他のクラブへの移籍は不可能ですが、隣国のトランスファーウィンドウを見てみると、インドネシアは12月19日から来年2025年1月15日まで、またタイのは12月2日から来年1月10日となっており、11月30日に再契約しなくともこの両国リーグへは移籍が可能です。さらにカンボジア、フィリピン、シンガポールなども12月から来年1月にかけてトランファーウィンドウが開いています。またタイリーグでは、同時にピッチ上でプレーできる外国籍選手枠を無制限4枠に加えて、アセアン(東南アジア)枠を1名から2名に増やし、さらにアセアン出身選手については無制限に登録可能とルール変更されるという話を伝わってきており、給料未払い問題を抱えるチームが多いマレーシアに愛想をつかして国外移籍する選手が出てくることも十分考えられます。
そもそもリーグやサッカー協会が事前に手を打っておけば問題化すらしなかったこの「11月30日問題」がこれから数週間は話題となりそうです。
下部リーグまで広がる給料未払い問題-9人で試合に臨むクラブまで登場
現在2部プレミアリーグが休止中のマレーシアリーグは、3部のA1セミプロリーグ(スポンサー名からMBSB銀行チャンピオンシップが正式名称)が実質的な2部にあたります。このA1セミプロリーグにも、トップリーグのマレーシアスーパーリーグ(MSL)同様、給料未払いが発生しており、先日の試合ではついに先発の11名が揃わず、9名で試合に臨むチームが現れたと、マレーシア語紙ブリタハリアンが報じています。
スランゴール州シャー・アラムを本拠地とするPIB FCは2022年には3部優勝を果たすなど実績のあるチームですが、今季第19節11月16日のマンジュン・シティFC戦では、試合開始時に選手9名しか揃いませんでした。後半開始にもう1人が遅れて到着し、最後は10名となったものの、交代要員もいないPIB FCはこの試合でマンジュン・シティFCに0−4で敗れています。
試合後、PIB FCのアズリン・モハメド監督は、給料未払いにより多くの選手が練習や試合に参加できなくなっていると説明する一方で、生活費を稼ぐための仕事を理由に練習や試合に来ることができない選手を責めることができないと話しています。また試合のための移動などもチームからの支給はなく、選手自らが負担しており、アウェイの試合に参加できない選手もいるということです。
現在は15チーム編成のセミプロA1リーグで7勝4分8敗で7位に位置するPIB FCですが、試合前の数日に全体練習を行うだけで、チームとしても生活費を稼ぐ仕事を優先することを選手に認めており、全員に練習参加を強制することは難しいともアズリン監督は話しています。
「このチームは本来、(リーグの上位チームが出場する)マレーシアカップ出場を目指すチームで、リーグの殴られ役になるべきチームではない。しかし未払い給料問題の性で選手のやる気もチームの勢いも全て失ってしまった。」と話したアズリン監督は、チームの運営陣は未払い給料の早期解決を約束しているものの、現在の状況が続けば、今季終了まで試合ができるだけの選手がチームに所属しているかどうかすら、現在は疑わしいと話しています。
3部首位のマラッカFCはマレーシアカップを前に2名の外国籍選手が加入
第19節を終えた3部のA1セミプロリーグ(スポンサー名からMBSB銀行チャンピオンシップが正式名称)で首位のマラッカFCは、3部の上位3チームに出場枠があるマレーシアカップに出場しますが、初戦となる1回戦の11月23日のトレンガヌFC戦を前に、2名の外国籍選手の加入を発表しています。
3部のセミプロA1リーグは、外国籍選手の登録は21歳以下の選手に限り2名が可能となっており、今季のマラッカFCには既にナイジェリア出身で20歳のMFミカエル・オゾルとガーナ出身で19歳のFWフセイニ・イサーが所属しています。オゾル、イサー両選手はチーム19試合中18試合に出場し、特にイサー選手は11ゴールを挙げて得点王争いの3位につけています。
この両選手に加え、マラッカFCはフランス生まれでコンゴ国籍を持つCBロドリゲ・ナニテラミオ、そしてギニア出身のストライカー、オウマル・バンガウラを獲得しています。この2選手は、マレーシアカップに出場するA1セミプロリーグのチームに限り特例として認められた追加の外国籍選手2名の枠での登録となり、マレーシアカップのみの出場が認められます。なおマレーシアカップに出場するトップリーグ、マレーシアスーパーリーグ(MSL)のチームは、ベンチ入り6名(アジア枠1名、アセアン東南アジア枠1名を含む)、同時出場5名が可能となっています。
28歳のナニテラミオ選手は195cmの長身センターバックで、グジャ・ユナイテッド(マルタ1部)、ドラヴァ・プトゥイ(スロバキア2部)、OFKすパルタク(ブルガリア2部)やサイゴンFC(ベトナム1部)でのプレー経験があります。また20歳のバンガウラ選手については、マラッカFCからは「プレーメーカー(司令塔)」ということ以外の情報開示はなく、また調べたところTransfermarktにもデータが見つかりませんでした。
昨季はMSLのヌグリスンビランFCで監督を務めたK・ディヴァン監督が率いるマラッカFCは、明日11月23日にマラッカFCのホーム、ハン・ジェバ・スタジアムで行われるマレーシアカップ1回戦のトレンガヌFCと対戦します。