ACLエリート(ACLE)東地区グループリーグA組は第4節が行われ、マレーシアリーグで10連覇中のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が、11月1日にKリーグ3連覇を果たしたばかりの蔚山HD(韓国)をホームのスルタン・イブラヒム・スタジアムに迎えています。
今季のACLEで蔚山HDは、第1節(H)では川崎フロンターレに0−1、第2節(A)では横浜Fマリノスに0−4、第3節(H)ではヴィッセル神戸に0-2とJリーグクラブ相手に0勝3敗、得点0失点7と見事な負けっぷり。しかしこれはKリーグ終盤の優勝争いの最中だったこともあり、ACLEよりも国内タイトルを優先したことによるものでしょう。となると、蔚山HDがACLEに集中できるのが今節のJDT戦からということになります。
なおJDTと蔚山HDは、2022年、23023年と過去2シーズンいずれもACLグループリーグで同組になっており(当時は前身の蔚山現代)、コロナ禍の影響からマレーシアでの集中開催となった2022年シーズンは2度の対戦でいずれも2−1でJDTが勝利しています。また昨季2023年シーズンは蔚山がホームで3-1、JDTがホームで2−1とそれぞれ勝利し、通算成績はJDTの3勝、蔚山HDの1勝、得点はJDT7に対して蔚山6となっています。
3シーズンで5度目となる今季の対戦ですが、今回はさらに「因縁」がありました。2021年シーズンから蔚山HDの指揮をとっていたホン・ミョンボ氏は、今年2月のアジアカップ後に解任されたユルゲン・クリンスマン氏に代わる韓国代表監督とし7月に韓国サッカー協会に引き抜かれました。シーズン途中でチームを投げ出したホン前監督には批判の声も多かったと聞いていますが、空席となった監督の座には、チームOBでもあるキム・パンゴン氏が就任しました。そのキム氏は2022年1月からマレーシア代表の監督を務めていましたが、今年7月に「個人的な理由」から2025年12月まで残っていた契約を破棄して突如辞任し、そのおよそ2週間後に蔚山HDの監督就任が発表されました。就任時にはFIFAランキング147位だったマレーシア代表を一時は16年ぶりとなる130位まで押し上げたキム監督が、その契約期間を17ヶ月も残してチームを投げ出したことに対して、マレーシア国内では大いに失望されました。しかし就任当時は4位だった蔚山HDを今季のKリーグ優勝に導いたキム監督にとって、今回のJDTとの対戦はいわば「凱旋」と考えられていました。
試合前日に行われた公式会見でも、4ヶ月ぶりにマレーシアの地を踏んだキム監督は終始笑顔を絶やさず、その口調も滑らかでした。マレーシア代表の主力選手の大半がJDTの選手であることもあり、勝手知ったる他人の家とも言わんばかりの余裕で、アリフ・アイマンの名前を出して称賛するなどのリップサービスを見せた一方で、ここまでのACLEでは0勝3敗、しかも3試合連続0封負けのチームに初勝利を期待していると話しました。
「私はマレーシアに戻ってこられたことにワクワクしている。また久しぶりにマレーシア代表で一緒だった大好きな選手たちとも再会できた。しかし今回は勝利を目指してここにいる。皆さんにエキサイティングなシアを披露できるよう、チームはホームのJDTに対して引き下がることなく、激しくプレーするだろう。」と試合前の抱負を語ったキム監督はさらに「JDTがどれほど強いチームかということは十分知っている。しかもJDTのホームでの試合はどのアウェイチームにとっても容易ではない。厳しい試合になることは十分承知している。」と話しています。
下はこの試合の両チームの先発XI。国内リーグ日程にも選手層にも余裕があるJDTですが、前節第3節で1−3と敗れた光州FC戦からは3バックの左で失点につながるミスを犯したDFフェロズ・バハルディンに代わりDFシェーン・ローリーが入った以外は変更はありません。一方の蔚山現代は4日前の江原FCとの試合の先発XIからFWカン・ユング、MFコ・スンボム、Dイ・ミョンジェがベンチ外、MFイ・チョンヨンがベンチスタートと、ケガ人を抱える中で選択された布陣でした。
試合はホームのJDTが開始から積極的に攻め、早くも4分には蔚山HDのGKチョ・ヒョヌのクリアミスからペナルティエリアでアリフ・アイマンがボールを奪うとホルヘ・おブレゴンへパス。しかしこれを決めることができず、JDTは先制の機会を逃します。しかしその3分後には、再びアリフ・アイマンが相手DFキム・ヨングォンからボールを奪うと、そのままドリブルでペナルティエリアに入り右足を一閃。シュートがゴール左隅に決まり、あっという間にJDTがリードを奪います。これに呼応するようにペースを上げた蔚山HDは、21分にはペナルティエリア内でダリヤン・ボヤニッチががシュートを放つも、これをエディ・イスラフィロフがブロックしてことなきを得ます。
後半に入ると蔚山HDは50分にキム・ミヌのクロスが途中出場のイ・チョンヨンに直接わたりますが、そのシュートはJDTのGKアンドニ・ズビウーレが反応できなかったものの、ゴールポストを超えてしまいます。逆にJDTは68分、右サイドを上がったオスカル・アリバスがペナルティーエリアの外からシュートを放ち、これがボヤニッチの足に当たって高く上がると、GKチョ・ヒョヌの頭絵の上を超えてゴールインし、JDTはリードを広げます。
そして88分には、途中出場のアフィク・ファザイルが中央でフリーになっていたやはり途中出場のベルクソン・ダ・シルバへ絶妙なパスを送ると、ベルグソンは強烈なボールを蹴り込み、自身の今季ACLE初ゴールを決めます。この3点目で蔚山HDを突き放したJDTが勝利し、チームは2勝1分で勝点7となり東地区3位に浮上しています。一方の蔚山はACLE4連敗、しかも全て0封負け、総失点は10で12チーム中の12位のままです。
中国リーグ王者の上海海港と引き分けていたJDTは、韓国リーグ王者の蔚山HDも撃破したことになります。残念ながらグループリーグではJリーグのクラブとの対戦はありませんが、ノックアウトステージでの対戦も期待できることから、まずは次戦となる11月26日の山東泰山で勝点を積み重ねて、グループリーグ突破に近づきたいところです。
2024年11月5日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 3-0 蔚山HD FC
⚽️ジョホール:アリフ・アイマン(8分)、オスカル・アリバス(67分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(88分)
蔚山HDの江坂任選手は先発してフル出場しています。