9月19日のニュース・ACLエリート:ジョホールの初戦は中国王者相手に敵地で引き分け・MFLがシーズン途中の規定変更を発表-ACL出場クラブは外国枠選手が最大で12名まで登録可能に

ACLエリート:ジョホールの初戦は中国王者相手に敵地で引き分け

ACLエリート東地区第1節でマレーシア王者のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は昨季の中国王者、上海海港とアウェイで対戦し2度のリードを守りきれず、引き分けて勝点1を獲得しています。

下は上海海港(左)とJDT(右)の先発XIですが、ジョホールは現在開いているマレーシアリーグ今季2度目のトランスファーウィンドウで獲得したGKアンドニ・スビアウレ(スペイン2部CDエルデンセから加入)、DFパク・ジュンホン(タイ1部ラーチャブリーFCから加入)、MFイケル・ウンダバレナ(スペイン2部CDレガネスから加入)、MFエディ・イスラフィロフ(アゼルバイジャン1部ネフチ・バクーより加入)、FWホルヘ・オブレゴン(クロアチア1部HNKリエカから加入)が国内リーグ戦より先にACLでデビューしています。またこの他の先発メンバーではマレーシア人選手は22歳のFWアリフ・アイマンと38歳のMFナチョ・インサの2名だけ、しかもインサ選手はスペイン出身の帰化選手で、マレーシア生まれは11名中でアリフ選手ただ1名、ベンチ入り23名中でもマレーシア生まれは4名です。先発XIが発表になった際には、このチーム編成でマレーシア代表というのもモヤモヤしましたが、それを吹き飛ばしてくれたのがアリフ選手でした。


アリフ選手は、国内リーグでは2021年から3年連続でMVPと最優秀FWに選ばれている他、マレーシア代表では28試合で7ゴール9アシスト、そして昨年までのACLでは18試合に出場して3ゴール3アシストを記録しています。そんなマレーシアの若きエースがこの試合では上海海港相手に躍動し、2ゴールを挙げる活躍を見せました。

試合開始から上海海港がアリフ選手の1点目は45分でした。右サイドでパスを受けると、そのままドリブルで上海DF3名を交わして左足を一閃。このシュートが右サイドネットに決まり、敵地でJDTが先制して前半を折り返しました。

しかし後半開始早々の48分に上海海港が追いつきます。オスカルからのパスをゴール右サイドのウィリアン・ポップがシュートするも、これはJDTのGKアンドニ・スビアウレがブロックしたものの、そのこぼれ球に詰めていたグスタヴォが押し込んで、1−1と試合は振り出しに戻ります。

しかしその8分後、今度は左サイドのホルヘ・オブレゴンが右サイドのスペースをボールを出すと、そこに走り込んだアリフ選手がDFをかわし、飛び出したGKと1対1になるも落ち着いてゴールを決め、JDTが再びリードを奪いました。

再びリードしたJDTでしたが、73分にやはり上海海港が追いつきます。ペナルティエリア左外で得たフリーキックをオスカルがグランダーでゴール前へ出すと、JDTのDF陣はこれをクリアしようとしますが、フェロズ・バハルディンのクリアはゴール前にいた元Jリーグ福岡のウィリアン・ポップに渡ってしまいます。ポップ選手にこれをボレーで決められて、追いつかれたJDTでしたが、7分のアディショナルタイムも上海海港の猛攻をGKアンドニ・スビアウレのスーパーセーブなどもありなんとか防ぎ、敵地で貴重な勝点1を獲得しています。

JDTの次戦は10月1日にホームのスルタン・イブラヒム・スタジアムに、初戦で浦項スティーラーズに4−1で勝利した上海申花を迎えます。一方、上海海港はアウェイでその浦項スティーラーズと対戦します。

ACLエリート東地区第1節
2024年9月18日@浦東足球場(中国、上海市)
上海海港 2-2 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️上海:グスタヴォ(48分)、ウィリアン・ポップ(73分)
⚽️ジョホール:アリフ・アイマン2(45分、56分)
🟨上海海港(2)、🟨ジョホール(2)

この試合のハイライト映像。アストロ・アリーナのYouTubeより。
MFLがシーズン途中の規定変更を発表-ACL出場クラブは外国枠選手が最大で12名まで登録可能に

ACLエリートの上海海港対ジョホール・ダルル・アマンFC戦が行われたその同じ日に、マレーシアンフットボールリーグ(MFL)は2024/25シーズンのリーグマニュアルの改定をひっそりと発表しています。この改定では、条件次第では外国人選手の登録が最大12名まで認められるようになります。

複数のクラブが給料未払い問題を抱える中、マレーシア・フットボールリーグ(MFL)は本日、MFL参加各クラブの過半数の同意とMFL理事会の承認を受けて、2024/25シーズンのマレーシアリーグマニュアルの改定を発表しました。

現在のMFLの規定では、1部リーグのマレーシアスーパーリーグに所属するクラブは、最大で9名の外国籍選手の登録が可能です、9名の内訳は無条件で7名、アジア枠1名、東南アジア枠1名です。また試合では6名がベンチ入り可能で、同時にピッチに立てるのは5名まで(無条件3名、アジア枠1名、東南アジア枠1名)となっています。またアジアサッカー連盟(AFC)主催大会のACLエリートとACL2に出場するクラブについては、特例でさらに1名の外国籍選手の登録が認められていました。

今回の改訂では、AFC大会出場の特例枠を持つクラブについては追加で2名、合計すると最大で12名まで外国籍選手の登録が認められるようになり、その2名はマレーシア国内リーグではU23チームが対戦するMFLカップでのみプレーすることが許されます。

この改定は、ACLエリートに出場しているジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)が提出した提案に基づいています。今回の改定は、AFC主催大会だけでなく、東南アジアサッカー連盟(AFF)の主催大会にも適用され、ACLエリート出場のJDT、ACL2出場のスランゴールFCだけでなく、AFFクラブ選手権「ショッピーカップ」に出場するにトレンガヌFCとKLシティFCについても、最大12名まで外国籍選手を登録することが可能となります。

この2名の追加外国籍選手枠に関する改定は、AFCによる外国人選手無制限登録の決定に基づくもので、AFCやAFF主催の国際大会でマレーシアのクラブの競争力を高めるためのものだとしています。なお、国内リーグのスーパーリーグ、国内カップ戦のマレーシアカップ、およびマレーシアカップに出場しないクラブが対戦するMFLチャレンジカップ2024/25については、トップチームの外国人選手登録枠はこれまで通り、最大7名(ベンチ入りが可能な6名+1名)です。

またまた若いマレーシア人選手の出場枠を確保するため、リザーブリーグに当たるU23チームが対戦するMFLカップの登録枠については、23歳以上のマレーシア人選手が最低5名と外国籍選手最大3名(そのうち2名が同時にピッチでプレー可能)の規定が維持されます。

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前述したように、昨日の上海海港対JDTの試合では、JDTの先発XIの内、マレーシア生まれは2ゴールを決めたアリフ・アイマン1名だけで、残りは全員が外国籍或いは外国生まれの帰化選手でした。そんなメンバーを擁しても中国リーグの昨季チャンピオンと引き分けだったことを考えると、「アジアで他国のクラブと対等に戦う」という観点からは、この外国籍選手枠増は必要なことのように思えます。

その一方で、国内リーグに目を向けると、給料未払い問題を抱えるクラブが複数あり、それにより勝点剥奪などの処分を受けているクラブすらあります。今回の改定による上限の12名まで外国籍選手を獲得できるクラブがあれば、運営資金などの理由から試合に出場できる5名の枠すら満たしていないクラブもあるマレーシア国内リーグは、既に「持つもの」が「持たないもの」を駆逐する状況になっています。現在は2部プレミアリーグが休止中で、給料未払い問題が起こらなければリーグ最下位となっても下部リーグへの降格の心配もない「異常事態」に救われているクラブもある中、今回の改定がさらにリーグ内での分断を引き起こすことは明らかです。

またJDTは国内随一の施設を持ち、選手の福利厚生も暑く、多くのマレーシア人選手がJDTでプレーすることを望んでいます。マレーシア代表の選手も多く所属していますが、昨日の上海海港戦では、GKシーハン・ハズミ、DFマシュー・デイヴィーズ、DFラヴェル・コービン=オング、DFフェロズ・バハルディン、FWロメル・モラレスといったマレーシア代表の主力選手が全員ベンチスタートでした。この内、マシュー・ディヴィーズとフェロズ・バハルディンは交代出場がありましたが、実情はマレーシア代表選手はACLEの試合以外の国内リーグでのローテーション要員に成り下がっているとも言え、MFLによる今回の改定はこの状況をさらに進めていくことにもなりそうです。