クダ州サッカー協会会長-給料未払い問題が起こるのはリーグの仕組みに問題がある
給料未払い問題が続いていることで、ついに主力選手が練習をボイコットしているクダ・ダルル・アマンFCの本拠地があるクダ州のサッカー協会会長が、問題の根源はリーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)が導入している仕組みにあり、特定のクラブにのみ有利な仕組みになっていると批判しています。
クダ州サッカー協会会長で、クダ州首相でもあるムハマド・サヌシ氏は、トップリーグに参加しているクラブがリザーブチームや年代別の州代表チームを全て運営するという仕組みは既に破綻しているとし、給料未払い問題の原因とも言えるこの仕組みの運用を直ちに止め、新たな仕組みを考える必要があると述べています。
「トップリーグでプレーする各州のプロクラブが全ての年代別州代表チームまでを運営するという現行の仕組みは破綻しており、一部は州サッカー協会が運営できるような仕組みにするべきだ。現行の仕組みが明らかに機能していないのに、なぜMFLに参加する全てのクラブが同じ仕組みで運営されるべきだと考えているのか。もし多くのクラブが経営難に陥り、一握りのクラブだけが生き残ったら、その数クラブだけでリーグを行うことが果たして可能なのだろうか。」と述べたサヌシ州サッカー協会会長は、直ちに現行の仕組みをやめるべきだと主張しています。
また州首相としては、給料未払い問題を抱えるクダ・ダルル・アマンFCについては既に民営化されたクラブであり、州の公金で支援する義務はないと述べています。
「クダ・ダルル・タジムFCは民営化されているが、それでもクダ州政府は、ラブライセンス取得への支援として、今年だけで既に200万リンギ(およそ6500万円)を運営資金として提供している。」と述べたサヌシ州首相は、過度に高給となっている選手の給料の見直しを中心にクラブの経営方針を見直す必要があるとも話しています。
「(民営化前にクラブに対して)クダ州政府系企業のクダ州開発公社が6000リンギや7000リンギといった給料しか払っていなかったにもかかわらず、マレーシアカップで優勝を果たしている。現在は何万リンギも給料をもらっている選手がいるクラブがこれほど低迷しているのはなぜか。それは現行のクラブ運営の仕組みに欠陥があるからで、各クラブがそれぞれの資金にあった運営方法で運営されるべきだ。」と述べ、クダだけでなく他の州のクラブも財政問題に直面している事態を理解するべきだとも話しています。
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各州代表チーム対抗のカップ戦「マラヤカップ」(現在のマレーシアカップ)から始まったマレーシアのサッカーは、長らく各州のサッカー協会がプロクラブを運営していたという歴史があります。2019年以前の記録では、例えばクダならばクダFAがクラブ名になっていますが、これはクダ州サッカー協会(クダFA)が運営するクラブだったからです。この2019年以前は、大半のクラブが州政府による州サッカー協会への支援や、州政府系期間がスポンサーになるという形で公金、つまり税金がクラブ運営に使われ、選手の給料なども州政府からの資金で支払われていました。
しかし2020年からFIFAの指導を受けたMFLはクラブの「民営化」、つまり各州サッカー協会はプロクラブを手放し、クラブは新たにオーナーを探すことが義務付けられるようになりました。この結果、州政府からの直接支援を失った各プロクラブの中には、新たなオーナーやスポンサーを見つけられないにもかかわらず、それまでと同じような経営を続け、さらに2020年は新型コロナ禍で無観客試合でリーグが行われた結果、入場料収入も無くなり、財政が悪化したクラブがいくつもありました。
さらにMFLは各クラブに対してU23選手主体のリザーブチームやU21、U19など年代チームの保持を義務付けましたが、これが前述のサヌシ氏が指摘していたことでした。従来は各州のサッカー協会が運営していた年代別チームをプロクラブの管理下に置いたことで、その運営費用は一気に増出する一方で、前述の通り運営資金獲得が難しくなったクラブの中には、この年代別代表チームの選手への給料支払いが滞る事態も起こっています。
移籍情報:前岡山のハディ・ファイヤドがPDRMにローン移籍
マレーシア王立警察が運営するPDRM FCは現在、マレーシアスーパーリーグで現在6位ですが、現在開いているトランスファーウィンドウで、かつてファジアーノ岡山やアスルクラロ沼津に在籍していたFWハディ・ファイヤッドを同じスーパーリーグのペラFCから期限付きで移籍で獲得したことを発表しています。ローン期間は今季2024/25シーズンいっぱいということです。
日本出身の鈴木ブルーノ選手も在籍するPDRM FCにローン移籍したハディ選手は、昨季も同じPDRM FCにやはりローン移籍しており、このときはリーグ戦とマレーシアカップを合わせて11試合に出場し、マレーシアカップのスランゴール戦で挙げたゴールが唯一のゴールでした。
24歳のハディ選手はジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のセカンドチームJDT IIに在籍していた2018年に17歳ながらマレーシアU23代表入りし、同年1月の韓国U23代表戦で代表デビューを果たすと、さらにアジア競技大会、AFC U23アジアカップ予選でもプレーしました。2019年にはマレーシア人選手として初めてJ2のクラブに移籍しましたが、移籍した岡山では出場機会を得ることができず、2021年には出場機会を求めてJ3のアスルクラロ沼津に期限付き移籍しました。しかし沼津へ移籍からわずか1ヶ月で右膝前十字靭帯(ACL)断裂の重傷を負い、このシーズンを棒に振ったものの、ケガから復帰した2022年シーズンは4月21日のヴァンラーレ八戸戦に84分から出場し、待望のJリーグデビューを果たしたものの、出場時間は合計43分、また出場した試合も含めベンチ入りは5試合の記録を残し、昨季は出身地でもあるペラ州のペラFCへ移籍し、マレーシアリーグに復帰すると、昨季途中にPDRM FCにローン移籍しました。
昨季末にローン期間を終えてペラFCに復帰したハディ選手ですが、今季はトップチームでは出場機会がなく、2シーズン連続でのPDRM FCへのローン移籍となりました。なお今季のPDRM FCには、今季の4ゴールも含めてリーグ通算74ゴールを挙げているイフェダヨ・オルセグンの他、2017年シーズンにはマレーシア人選手得点王に輝いたシャーレル・フィクリと鈴木ブルーノ選手もそれぞれ既に今季2ゴールを挙げており、昨季よりもFW陣の層が厚くなっており、そこへ割って入ることができるかどうかが注目されています。
インドネシアとマレーシアの間で帰化選手候補の争奪戦勃発!?
かつてはセリエAのインテルのオーナーでもあったリック・トーヒル氏が2023年にインドネシアサッカー協会(PSSI)会長に就任以降、インドネシアの血を引く選手を次々と帰化させる積極的な補強策によって強化されたインドネシア代表は、現在、東南アジア勢として唯一、2026W杯アジア3次予選に進出しています。
7月に発表された直近のFIFAランキングではマレーシアより一つ上の133位ながら、アジア3次予選では同56位のサウジアラビアとはアウェイで、さらに同24位のオーストラリアとはホームでそれぞれ引き分けるなど、強豪国に引けを取ることなく存在感を示しています。
このインドネシア代表は、先日のサウジアラビア戦を例にとれば先発XIの内、インドネシア生まれの選手は2名で、残りはオランダ生まれ8名、ベルギー生まれ1名と、かつての宗主国オランダ出身の選手たちを中心に帰化選手を揃えた強化策が功を奏していることから、東南アジア各国は同様の強化方針を進めており、マレーシアも例外ではありません。
マレーシアも先日終了したムルデカ大会に出場したメンバーを見ると、7名がマレーシア国外で生まれた選手ですが、そのうち2名はマレーシア人の血を引かない、国内リーグで5年間プレーしたことでマレーシア代表の資格を得た選手です。しかも、インドネシアの帰化選手と大きく異なるのは、外国生まれの選手7名のうち、マレーシア国外でプレーしているのはタイ1部のブリーラム・ユナイテッドでプレーするディオン・コールズと、ベトナム1部のホーチミンシティFCにローン移籍中のエンドリック・ドス・サントスだけで、残りはマレーシア国内リーグでプレーする選手です。オランダやベルギーの1部リーグでプレーするインドネシアの帰化選手たちに比べると、その辺りも物足りないところです。
マレーシアサッカー協会(FAM)は、近年、マレーシアの血を引く選手の発掘にも積極的で、このブログでも取り上げた通り、オランダ1部ゴーアヘッドイーグルズでキャプテンを務める27歳のDFマッツ・デアイルに接触していることが明らかになっています。
そんな中でインドネシアのメディアが、やはりマレーシアの帰化選手候補となっているオランダ出身のFWフェルディ・ドゥルイフがインドネシア代表でプレーに興味を持っていると伝えています。
これを伝えているのはインドネシア最大のメディアグループ傘下のトリビューン・ニュースで、同メディアはオーストリア1部SKラピード・ウイーン所属のドゥルイフ選手がが、インドネシア国籍を取得して代表入りする予定のAMFエリアノ・レインダースのSNSにコメントを残したことが、ドゥルイフ選手がインドネシア代表でプレーすることへの関心の現れだとかなり恣意的に報じています。なおドゥルイフ、レインダースの両選手は昨季はオランダ1部PECズヴォレでチームメートでした。
ドゥルイフ選手は自身がマレーシアと関係があるという噂がSNSを通じて広まった後、「マレーシアのためにプレーしたいという気持ちはずっとあった。現在は、祖母が実際にマレーシア生まれであることを証明する書類を準備中だ」と述べています。
身長190cmで26歳のドゥルイフ選手は、AZアルクマールのアカデミー出身で、オランダU17、U18、U20など年代別代表でもプレーし、SKラピード・ウイーンに移籍する前にはNECナイメーヘンやKVメヘレンなどオランダとベルギーの複数のクラブでプレーしており、トランスファーマルクトの統計によると、キャリア通算では266試合に出場し112ゴールを記録しています。
またこのドゥルイフ選手の他、英国2部バーンリーFCのキャプテンである28歳のMFジョシュ・ブラウンヒルが、将来的のマレーシア代表入りに向けてマレーシア国籍を取得する用意に向けて、現在、マレーシアサッカー協会(FAM)と連絡を取り合っていることも明らかになっています。さらにPSVアイントホーフェンU21に所属するである19歳のFWイギー・フーベンもクアラ・ルンプール出身の祖母がおり、機会があればマレーシア代表入りしたいという発言も報じられています。