2026年W杯アジア3次予選がアジア各地で行われる中、B組のパレスチナ対ヨルダンがマレーシアのクアラ・ルンプールで行われました。試合は先制を許したパレスチナが一度は追いついたものの、最後は失点を重ねて1−3で敗れています。この結果、パレスチナは成績を1分1敗として勝点1でB組の5位となり、勝利したヨルダンは1勝1分で勝点4とし韓国、イランと並んだものの得失差などでB組首位に浮上しています。
今年1月のアジアカップ2023準優勝でFIFAランキング68位のヨルダンは、アジア3次予選の初戦では同136位のクウェートとホームで対戦しながら、ロスタイムに同点ゴールを許して1−1で引き分けるスタートを切っていた一方で、同96位パレスチナは、初戦ではアウェイの韓国戦(同23位)に引き分けていました。
イスラエルとの紛争で自国での試合開催が難しいパレスチナは、欧米各国がテロリストと非難するイスラム組織ハマスへの同情論が強く、パレスチナとの連帯を示す大規模集会が何度も行われたマレーシアを今回のW杯予選の合宿地とし、今月1日から初戦の韓国戦に向けて準備をしてきました。その甲斐もあってか(?)韓国戦にまさかの引き分けで勝点1を獲得すると、その勢いで第2節のヨルダン戦に臨みました。なおこの日の先発には、クランタン・ダルル・ナイムFCでプレーするMFオディ・クハルブが韓国戦に続いて先発しています。
一方、初戦をホームでこちらもまさかの引き分けでスタートしたヨルダンは、第3節ではアジアカップでの対戦では1勝1分の成績を残したとは言え、格上の韓国との対戦も控えており、この試合に勝利し、勝点3を積み上げたいところです。この日の先発には、マレーシアスーパーリーグのスランゴールFCでプレーするMFノー・アル=ラワブデの他、この予選後からやはりスランゴールFCに加入するFWアリ・オルワン、そして昨季までスランゴールFCに在籍し、シーズン終盤に判定に不服なことから審判を蹴ってマレーシアリーグから無期限出場停止処分を受けて退団したDFヤザン・アル=アラブ(現韓国1部FCソウル)などが揃い、初戦のクウェート戦からのメンバー変更は1人だけというほぼ不動の布陣です。
試合は開始からヨルダンが激しく攻め、5分にはエース、ヤザン・アル=ナイマトがセンターサークル付近からドリブルで一気に左サイドを駆け上がると、ペナルティエリア内ではパレスチナのDF陣を左右に交わしてから豪快にゴールを蹴り込んで、ヨルダンがあっさりと先制します。
その後もヨルダンは猛攻を続けますが、パレスチナGKバラ・カルーブのスーパーセーブやシュートがゴールポストに阻まれるなどで、追加点を奪うことができません。そこから徐々にカウンターを見せていたパレスチナは、41分に左サイドのカミロ・サルダナからのクロスを、それまでもヨルダンペナルティエリアに切り込んでいたウェッサム・アブ・アリがフリーになっており、落ち着いて頭で押し込み、同点に追いつきます。
1-1のスコアで前半を折り返すと、後半の開始5分にヨルダンが再びヤザン・アル=ナイマトのゴールで逆転すると、72分にはスランゴールFCでプレーするノー・アル=ラワブデが決定的となる3点目のゴールを決めて、アジア3次予選初勝利を挙げています。
FIFAW杯2026アジア3次予選
2024年9月10日@KLフットボール・スタジアム(クアラ・ルンプール)
観衆:3,012名
パレスチナ 1-3 ヨルダン
⚽️パレスチナ:ウェッサム・アブ・アリ(41分)
⚽️ヨルダン:ヤザン・アル=ナイマト2(5分、50分)、ノー・アル=ラワブデ(72分)
🟨パレスチナ(2)、🟨ヨルダン(0)
MOM:ヤザン・アル=ナイマト(ヨルダン)
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マレーシアとは全く関係がない試合でしたが、W杯3次予選を観戦する機会は貴重なので、午後10時のキックオフ時間にもめげずスタジアムに足を運びました。数日前にはムルデカ大会でマレーシアがレバノンを破って優勝した試合を見ましたが、正直なところ、試合の迫力はこの日の試合の方が桁違いに高かったです。攻守の切り替えの速さや、削れても簡単に倒れずに前を目指す姿など、言葉は悪いですが、勝利で得られるものがプライドでしかないムルデカ大会よりも遥かに大きいものが得られるW杯予選の意味を強く感じました。またこのレベルで、そしてこのプレッシャーのもとで試合を続けていけば、どんなチームでも強くなっていくだろうという印象でしたので、このレベルに残っている東南アジア勢唯一のインドネシアは、帰化選手頼りの補強方法はともかく、ベトナムやタイを抜いて東南アジアトップの実力をつけてしまいそうです。それは実際にサウジアラビアやオーストラリアとの引き分けにもその一端が見えるように思います。
またこの試合はパレスチナのホームゲームとして行われましたが、マレーシアにこんなにパレスチナ人がいるのか、と思うくらいの観衆がパレスチナ側のスタンドに陣取っていました。またこの試合のチケットは40リンギ(およそ1,300円)とされていましたが、どういうわけかスタジアムの前ではタダ券が配られていて、私もそれをもらって入場しました。(この日配られていたチケット。見にくいですが”complimentary”「無料」の文字が見えます。

下はパレスチナが同点に追いついた場面のスタンドの様子です。この他にも”Free Palestine”「パレスチナを解放せよ。」などの横断幕もスタンドでは見られました。