キム前代表監督-「危険」発言は自身の英語力の拙さによるもの
7月16日に突如、マレーシア代表監督を辞任したキム・パンゴン監督が、退任発表記者会見中に退任の理由を質問された際に「それをこの席で明らかにするのは『危険だ』」と発言しました。これに対して、ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)のオーナーで前マレーシアサッカー協会(FAM)会長のジョホール州皇太子、トゥンク・イスマイル殿下を筆頭に、その「危険」が何を指すのか真意を問う声が上がっていましたが、キム前監督は、自身の拙い英語が誤解を招いた原因であると説明しています。
XユーザーのリマウXIによると、その後、リマウXI氏も同席する中で、キム前監督は、FAMのユソフ・マハディ副会長とともにイスマイル殿下と面会したということです。そしてその席上で「危険」の意味を問われると、自身の英語力の拙さが原因であったとイスマイル殿下に説明したことを明らかにしています。キム前監督はマレーシア代表について、戦略的な部分についてはさらに調査を進める必要があるが、その詳細をメディアの前で明らかにすることは適切でないと考えた結果、「危険」という表現を使ったと、イスマイル殿下に説明したということです。
キム前監督は2025年12月まで代表監督としての契約をFAMと結んでいましたが、7月16日付で代表監督を辞任することを発表しています。
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クアラ・ルンプール市内のホテルに滞在していたイスマイル殿下は、キム前代表監督から説明を受けた後、自身のSNSに投稿しています。韓国の一部メディアがキム前代表監督は、洪明甫監督が韓国代表監督に就任したことで空席となっている韓国リーグ王者の蔚山現代監督就任の可能性を報じていることもあり、「おそらく(マレーシア代表監督よりも)魅力的なオファーがあったのだろう。もし本当に蔚山現代からのオファーであれば、幸運を祈る。これまでの貢献にも感謝したい。」と投稿しています。
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これを報じた英字紙ニューストレイツタイムズは、キム前監督がイスマイル殿下に直接説明したことでこの件は一件落着のように報じていますが、キム監督の意図したことは単なる戦略面のことではなく、マレーシアサッカーの暗部に触れるものではないかと考えるサポーターは少なくないでしょう。もちろん真相は闇の中で、キム監督の英語力の問題だっただけかも知れませんが、W杯予選前に招集したい選手が招集できない、FIFAデイズで思うような練習試合が組めない、などクラブに対して、サッカー協会に対しても少なからず不満はあったと予想されるキム前監督が、「立つ鳥跡を濁さず」(韓国にこの諺があるかどうかはわかりませんが)で、辞任の際に波風立てず、丸く収めようとしたと勘ぐりたくもなります。
契約を破棄して辞任したキム前監督にサッカー協会は1億円超えの賠償金支払いを求める
7月16日に辞任を発表したキム・パンゴン前マレーシア代表監督に対して、マレーシアサッカー協会(FAM)は賠償金316万リンギ(およそ1億700万円)を請求することが明らかになったことを、スポーツ専門サイトのアストロ・アリーナが報じています。
FAMのマハディ・ユソフ副会長は、17ヶ月の契約期間を残して辞任したキム前監督のこれまでの貢献を考慮し、請求を急くつもりはないと述べる一方で、今後はこの問題の法的解決に向けてFAM理事会が開かれると述べています。
サッカー協会会長はヴィンセント監督代行へのサポーターの支援を求める
7月16日に行われたキム前監督の辞任会見には、雇用主のマレーシアサッカー協会(FAM)のトップでもあるハミディン・アミン会長が同席していませんでした。これはハミディン会長がパリオリンピックに出場するマレーシア選手団の団長として現在、自転車チームが合宿を行なっているスペインに滞在中だからでした。英字紙ニューストレイツタイムズは、突然の辞意を伝えられたハミディン会長は何度も翻意させようと説得したものの、キム前監督の辞任の決意が固いことを知ると失望した述べる一方で、ちょうど休暇で母国スペインに戻っていたポー・マルティ・ヴィンセント監督代行と早速、スペインのマヨルカで面会して今後の予定について話し合いを行ったと報じています。ヴィンセント監督代行は、キム前監督の元で代表チームのコーチを務めていましたが、キム前監督辞任により監督代行となることがFAMから発表されています。
さらにハミディン会長は、ヴィンセント監督代行がマレーシア代表をさらなる高みへと引き上げられるよう、サポーターからの支援を求めていると話しています。
予選突破を経て43年ぶりにアジアカップ出場を果たすなど、キム前監督のもとでマレーシア代表はFIFAランキング154位から一時は130位までランクアップ(現在は134位)するなど躍進したマレーシア代表に対するキム前監督の貢献は決して忘れられないだろうと話したハミディン会長は、優秀な指導者は一箇所に長く止まらないのはサッカー界の常識であるとして、後任のヴィンセント監督代行が指揮するマレーシア代表に対してもこれまでと変わらない支援をサポーターから求めたいと話しています。
ヴィンセント監督代行の初仕事は9月に予定されているムルデカ大会で、そこで良い結果を残すことができれば、11月の東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権「三菱電機カップ」でも式を取る可能性があります。
ヴィンセント監督代行はキム前監督の路線を継承
新たに就任したポー・マルティ・ヴィンセント監督代行は、残ったコーチ陣とともにキム・パンゴン前監督の指導方針を今後も一貫していくことを表明しています。マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン会長とスペインのマヨルカで会談したヴィンセント監督代行は、自身を信じて監督代行に任命したハミディン会長に謝意を述べるとともに、自身と残ったコーチ陣がマレーシア代表を更なる高みへの引き上げる自信があるの述べています。
これを報じた英字紙ニューストレイツタイムズの記事によれば、ヴィンセント監督代行は、ハミディン会長との会談の中で、代表チームの一貫した方向性を1年や2年という単位ではなく、より長いスパンで考えることで意見が一致したと話しているということです。
バルセロナU18チームのコーチなどを務めたヴィンセント監督代行は、一緒に働く機会を与えたくれたキム前監督に感謝の言葉なども述べているということです。なおマレーシア代表のコーチ陣に加わる以前にも、ヴィンセント監督代行は、キム前代表監督が本稿代表の監督時代にコーチ陣の一人でした。
パラリンピック協会会長のビジネスマンがKLシティ買収に名乗り
このブログでも頻繁に取り上げているKLシティFCの給料未払い問題ですが、そのKLシティFCの買収に名乗り出た人物がいると英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。
その人物とは、マレーシアパラリンピック委員会の委員長でもあるビジネスマンのメガット・シャーリマン・ザフルディン氏で、ニューストレイツタイムズの取材に対して、運営資金に関する問題を抱えるクラブの51%の株式を取得して、主要株主になる意思があることを表面しています。
KLシティFCは先週、発表していた5月と6月分の未払い給料の支払いについても、資金不足から実現できていません。
サッカーへの投資は初めてとなるシャーリマン氏ですが、既にKLシティFCのスタンリー・バーナードCEOと、KLシティFCを間接的に運営しているクアラルンプールサッカー協会(KLFA)のノクマン・ムスタファ事務局長へは買収条件などを文書で提出したことを明らかにしています。
FIFAやAFCが掲げる「インクルーシブフットボール」(年齢、性別、障がいの有無に関係なく、誰もが一緒に楽しむ、多様性を受け入れた包括的なサッカー)にもとづき、クラブの活性化と地域と一体化した運営を目指したいと話すシャーリマン氏は、KLシティFCを単なるサッカーチーム以上のものにするため、最終的にはマンチェスター・シティFCのエティハド・スタジアムやバイエルン・ミュンヘンFCのアリアンツ・アリーナのような地域社会が誇れるようなホームスタジアムの建設も検討しているとしています。