給料7ヶ月未払いのKLシティがリーグに支払減額を泣きつく
昨年12月以降の7ヶ月にわたる給料未払いが報じられているKLシティFC。このKLシティFCを間接的に運営するクアラルンプールサッカー協会(KLFA)のノクマン・ムスタファ事務局長は、マレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)に対して、リーグが開幕していなかった今年1月から3月までの給料について、支払額を減額することを認めて欲しいと要求していると、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。なお今季のMSLは、春秋制から秋春制への移行措置として、従来の1月/2月ではなく、5月に開幕しています。
ノクマン事務局長は、リーグ開幕が遅くなったことで、入場料収入などがない1月からの数ヶ月について給料の未払いが発生し、その結果未払いの総額が膨れ上がっていると説明しています。
「今季は従来のシーズンと異なっていること、さらに例えば月給が6万リンギの選手には、リーグ開幕前の期間についてはその半分を支払うことを了承して欲しいことを、MFLがクラブに代わって選手たちに説明してくれれば、それが大きな助けになる」と述べたノクマン事務局長は、MFLが数シーズンかけて秋春制に移行してくれれば、このような問題を起こらなかったと、「恨み節」も付け加えています。
また未払い給料の中、5月と6月の給料については、支払いに当てる資金が来週までに確保できることをKLシティFCのスタンリー・バーナードCEOを明らかにしており、残る5ヶ月分についても、分割して年内に支払いを完了することは選手たちと同意済みであると説明し、後は念書に、選手らがサインするだけの状況であると、ノクマン事務局長は述べています。
KLシティFCキャプテンは分割支払いに条件付きで合意
未払い給料の分割による支払いについては、KLシティFCのキャプテン、パウロ・ジョズエもコメントしており、分割払いという方法には同意するものの、その具体的な内容については書面で内容を確認する必要があると述べています。
2017年からKLシティFCでプレーするジョズエ選手は、35歳ながら代表でも主力としてプレーすることから、給料未払い問題を抱えるチームを早晩去るのではないかと言われていますが、スポーツ専門サイトのアストロアリーナの取材に対しては、「(チーム残留について)自分は全く問題ない。何度も述べているように、チームが困窮していても、自分が愛するチームをそれを理由に去るつもりはなければ、他のチームに移籍するつもりもない。」と述べています。
その上で、未払い給料を分割で支払うことには同意するが、その具体的な内容を確認する必要があると述べています。
「自分は2年契約を結んでいるが、もしチームが(金銭的な)問題を抱えているのであれば、給料減額に応じる用意もある。大事なことはチームが未払い給料を完済するという責任を果たすつもりがあるがどうかを示してくれれば良い。」と寛容な発言をしています。
KLシティの給料未払い問題は政争が原因-前KLサッカー協会会長
KLシティFCを間接的に運営するクアラルンプールサッカー協会(KLFA)の会長職を2019年から務め、今年3月に辞任したカリド・サマド氏は「隠れた手」がKLシティFCが受け取るはずの資金が渡ることを阻止していると主張しています。
英字紙ニューストレイツタイムズによると、カリド・サマド氏は、KLシティFCが将来的に「隠れた手」の影響で解体の恐れがあると懸念しています。KLシティFCの本拠地があるクアラ・ルンプールは、スランゴールやジョホールといった州とは異なり、マレーシア政府の連邦直轄地省の管理下にあります。政治とサッカーが密接に結びつくマレーシアでは、連邦直轄地相がそのままKLFA会長に就任することが慣例化しており、2018年に連邦直轄地相となったカリド氏は、2019年にKLFAの会長に就任しています。
2020年の内閣改造で連邦直轄地相を交代した後もカリド氏はKLFAの会長として残り、在職中のKLシティFCは、2021年マレーシアカップ優勝、2022年AFCカップ(現ACL2)準優勝、2023年FAカップ準優勝という成績を残してきました。しかし、自身がKLFA会長のままでは、「隠れた手」がチームへの資金提供を妨げることを知り、辞任することを決めたと説明しています。
「私は3月に辞任したが、これは選手たちに給与が支払われ、KLシティFCのリーグ参加に必要な国内クラブライセンスが取り消されないようにするためだった。その後、2023年の未払い給与を解消するためにクアラルンプール市役所(DBKL)から300万リンギ(およそ1億円)が与えられるはずだった。」
「しかし現在まで、チームは(今シーズンのために)1セントも受け取っていません。ある個人が(KLFA)会長になることを熱望していると聞いているが、現在もそのポストは空席のままであり、その人物がKLFA会長にならない限り、クラブには1セントも与えられないだろう。」
「こういった政治的な駆け引きために、KLシティFCの状況はますます困難になっており、KLシティFCの選手たちが政争の犠牲者になっている。私は非常に失望している。私が辞任すれば、資金がクラブに提供されると約束されていたが、それは実現していない。」
「私はこの問題をアンワル・イブラヒム首相およびザリハ・ムスタファ連邦直轄地相のに対して注意を喚起しており、速やかに解決策が見つかることを望んでいます。」
「この状況をこれ以上長引かせるべきではない。KLFA会長になりたがっている人々に望むことは、少なくとも選手たちを気遣ってほしいということだ。政治的な利益ではなくKLFAとKLシティFCを優先して欲しい。」とかリド氏は述べています。
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元国民信託党(Amanah)のカリド氏(2020年の総選挙で落選)が3月に辞任して以来、KLFA会長不在の状態が続き、その後任には、チームの「後援者」でもある人民正義党(PKR)のファーミ・ファジル通信相が有力とされていましたが、ここに来て同じPKRの天然資源及び環境保持相のニック・ナズミ・ニック・アフマド氏も関心を示していると報じられるなど、混沌としています。国民信託党と人民正義党はいずれも政府与党連合に所属する政党ですが、与党内での議席数は国民信託党12に対して人民正義党38ということもあり、売名にもってこいのKLFA会長を既に国会議員でもないカリド氏が務めていたことが、人民正義党にすれば気に入らなかったのかもしれません。