7月18日のニュース・給料7ヶ月未払いのKLシティFCがリーグに支払減額を泣きつく・KLシティFCキャプテンは分割支払いに条件付きで合意・KLシティFCの給料未払い問題は政争が原因-前KLサッカー協会会長

給料7ヶ月未払いのKLシティがリーグに支払減額を泣きつく

昨年12月以降の7ヶ月にわたる給料未払いが報じられているKLシティFC。このKLシティFCを間接的に運営するクアラルンプールサッカー協会(KLFA)のノクマン・ムスタファ事務局長は、マレーシアスーパーリーグ(MSL)を運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)に対して、リーグが開幕していなかった今年1月から3月までの給料について、支払額を減額することを認めて欲しいと要求していると、英字紙ニューストレイツタイムズが報じています。なお今季のMSLは、春秋制から秋春制への移行措置として、従来の1月/2月ではなく、5月に開幕しています。

ノクマン事務局長は、リーグ開幕が遅くなったことで、入場料収入などがない1月からの数ヶ月について給料の未払いが発生し、その結果未払いの総額が膨れ上がっていると説明しています。

「今季は従来のシーズンと異なっていること、さらに例えば月給が6万リンギの選手には、リーグ開幕前の期間についてはその半分を支払うことを了承して欲しいことを、MFLがクラブに代わって選手たちに説明してくれれば、それが大きな助けになる」と述べたノクマン事務局長は、MFLが数シーズンかけて秋春制に移行してくれれば、このような問題を起こらなかったと、「恨み節」も付け加えています。

また未払い給料の中、5月と6月の給料については、支払いに当てる資金が来週までに確保できることをKLシティFCのスタンリー・バーナードCEOを明らかにしており、残る5ヶ月分についても、分割して年内に支払いを完了することは選手たちと同意済みであると説明し、後は念書に、選手らがサインするだけの状況であると、ノクマン事務局長は述べています。

KLシティFCキャプテンは分割支払いに条件付きで合意

未払い給料の分割による支払いについては、KLシティFCのキャプテン、パウロ・ジョズエもコメントしており、分割払いという方法には同意するものの、その具体的な内容については書面で内容を確認する必要があると述べています。

2017年からKLシティFCでプレーするジョズエ選手は、35歳ながら代表でも主力としてプレーすることから、給料未払い問題を抱えるチームを早晩去るのではないかと言われていますが、スポーツ専門サイトのアストロアリーナの取材に対しては、「(チーム残留について)自分は全く問題ない。何度も述べているように、チームが困窮していても、自分が愛するチームをそれを理由に去るつもりはなければ、他のチームに移籍するつもりもない。」と述べています。

その上で、未払い給料を分割で支払うことには同意するが、その具体的な内容を確認する必要があると述べています。

「自分は2年契約を結んでいるが、もしチームが(金銭的な)問題を抱えているのであれば、給料減額に応じる用意もある。大事なことはチームが未払い給料を完済するという責任を果たすつもりがあるがどうかを示してくれれば良い。」と寛容な発言をしています。

KLシティの給料未払い問題は政争が原因-前KLサッカー協会会長

KLシティFCを間接的に運営するクアラルンプールサッカー協会(KLFA)の会長職を2019年から務め、今年3月に辞任したカリド・サマド氏は「隠れた手」がKLシティFCが受け取るはずの資金が渡ることを阻止していると主張しています。

英字紙ニューストレイツタイムズによると、カリド・サマド氏は、KLシティFCが将来的に「隠れた手」の影響で解体の恐れがあると懸念しています。KLシティFCの本拠地があるクアラ・ルンプールは、スランゴールやジョホールといった州とは異なり、マレーシア政府の連邦直轄地省の管理下にあります。政治とサッカーが密接に結びつくマレーシアでは、連邦直轄地相がそのままKLFA会長に就任することが慣例化しており、2018年に連邦直轄地相となったカリド氏は、2019年にKLFAの会長に就任しています。

2020年の内閣改造で連邦直轄地相を交代した後もカリド氏はKLFAの会長として残り、在職中のKLシティFCは、2021年マレーシアカップ優勝、2022年AFCカップ(現ACL2)準優勝、2023年FAカップ準優勝という成績を残してきました。しかし、自身がKLFA会長のままでは、「隠れた手」がチームへの資金提供を妨げることを知り、辞任することを決めたと説明しています。

「私は3月に辞任したが、これは選手たちに給与が支払われ、KLシティFCのリーグ参加に必要な国内クラブライセンスが取り消されないようにするためだった。その後、2023年の未払い給与を解消するためにクアラルンプール市役所(DBKL)から300万リンギ(およそ1億円)が与えられるはずだった。」

「しかし現在まで、チームは(今シーズンのために)1セントも受け取っていません。ある個人が(KLFA)会長になることを熱望していると聞いているが、現在もそのポストは空席のままであり、その人物がKLFA会長にならない限り、クラブには1セントも与えられないだろう。」

「こういった政治的な駆け引きために、KLシティFCの状況はますます困難になっており、KLシティFCの選手たちが政争の犠牲者になっている。私は非常に失望している。私が辞任すれば、資金がクラブに提供されると約束されていたが、それは実現していない。」

「私はこの問題をアンワル・イブラヒム首相およびザリハ・ムスタファ連邦直轄地相のに対して注意を喚起しており、速やかに解決策が見つかることを望んでいます。」

「この状況をこれ以上長引かせるべきではない。KLFA会長になりたがっている人々に望むことは、少なくとも選手たちを気遣ってほしいということだ。政治的な利益ではなくKLFAとKLシティFCを優先して欲しい。」とかリド氏は述べています。

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元国民信託党(Amanah)のカリド氏(2020年の総選挙で落選)が3月に辞任して以来、KLFA会長不在の状態が続き、その後任には、チームの「後援者」でもある人民正義党(PKR)のファーミ・ファジル通信相が有力とされていましたが、ここに来て同じPKRの天然資源及び環境保持相のニック・ナズミ・ニック・アフマド氏も関心を示していると報じられるなど、混沌としています。国民信託党と人民正義党はいずれも政府与党連合に所属する政党ですが、与党内での議席数は国民信託党12に対して人民正義党38ということもあり、売名にもってこいのKLFA会長を既に国会議員でもないカリド氏が務めていたことが、人民正義党にすれば気に入らなかったのかもしれません。


2024/25シーズンマレーシアスーパーリーグ第5節の結果とハイライト映像(1)・谷川由来選手所属のクチンシティと佐々木匠選手所属のヌグリスンビランがそれぞれ今季初勝利、佐々木選手はマレーシア初ゴールも挙げる

3週間ぶりに再開したマレーシアスーパーリーグ(MSL)の第5節が7月12日から14日にかけて開催されています。第4節を終えて今季未勝利だったチームは3チームありましたが、その3チーム、谷川由来選手所属のクチンシティ、佐々木匠選手所属のヌグリスンビラン、そしてペナンが、いずれも今季初勝利を挙げています。

なお今季のMSLは13チームで編成されており、第5節はトレンガヌFCの試合はありません。また来週はFAカップ準決勝1stレグが行われるため、第6節は7月25日(木)から27日(土)に予定されています。
*試合のハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグ(MFL)の公式YouTubeより。

クチンシティが今季初勝利

MSL2024/25 第5節
2024年7月12日@サラワク州立スタジアム(サラワク州クチン)
クチンシティFC 2-0 PDRM FC
⚽️クチンシティ:ダニアル・アミル(分)、ジョーダン・ミンター(24分)
🟨クチンシティ(2)、🟨PDRM(3)
MOM:ジョーダン・ミンター(クチンシティFC)

開幕から3分1敗と未勝利ながらも、6月29日のFAカップではリーグ2位のスランゴールに黒星をつけるなど、徐々に調子を上げてきていたクチンシティがPDRMを下して、今季初勝利となる日本人選手対決を制しています。

クチンシティの先制点は開始2分でした。PDRMゴール近くで相手のミスからボールを奪うと、最後はジョーダン・ミンターから出たボールをダニアル・アミルが押し込んで、ホームのクチンシティがリードを奪います。しかし試合はPDRM優勢で進み、35分には、クチンシティの谷川由来選手が自陣ペナルティエリア内でファディ・アワドを足してPKを与えてしまいます。しかしエースのイフェダヨ・オルセグンのPKは冷静に反応したGKシャーリル・サアリが止めてゴールを許さず、前半は1-0のまま終了します。

後半に入っても、やはりPDRMが攻勢を強めますが、クチンシティが耐え凌ぐと、ロスタイムには、今度はPDRMのミャンマー代表DFチョー・ミン・ウーが自陣ペナルティエリア内でジョーダン・ミンターを倒して、PKとなります。このPKをジョーダン・ミンター自身が決めてリードを広げたクチンシティがそのまま勝利し、今季初勝利を飾るととともに、順位を8位から7位に上げています。

クチンシティの谷川由来選手は先発してフル出場しています。またPDRM FCの鈴木ブルーノ選手は先発して、70分に交代しています。

クダは連勝で6位浮上

MSL2024/25 第5節
2024年7月12日@ダルル・アマン・スタジアム(クダ州アロー・スター)
クダ・ダルル・アマンFC 3-0 クランタン・ダルル・ナイムFC
⚽️クダ:リザル・ガザリ(10分)、シャフィク・アフマド(58分)、ソニー・ノルデ(73分)
🟨クダ(1)、🟨クランタン(2)
MOM:ソニー・ノルデ(クダ・ダルル・アマンFC)

ここまで2勝2敗ながら、開幕前に給料未払い問題による勝ち点3を剥奪され、9位に留まっているクダですが、FAカップでは準決勝進出を決めるなど、6月以降は4勝1分0敗と好調が続いています。この試合でも、その勢いそのままに、クランタンの倍以上となる16本のシュートを放つなど、終始、試合を支配して快勝しています。

ヌグリスンビランは今季初勝利に加え今季初勝点

MSL2024/25 第5節
2024年7月13日@MPTスタジアム(パハン州テメルロー)
スリ・パハンFC 0-2 ヌグリスンビランFC
⚽️ヌグリスンビラン:バラトクマル・ラマルー(24分)、佐々木匠(90+3分PK)
🟨スリ・パハン(2)、🟨ヌグリスンビラン(2)
MOM:佐々木匠(ヌグリスンビランFC)

開幕直前にアズミ・アブドル・アジズ監督が新たに就任したヌグリスンビランは、開幕から3連敗で、今季未勝利のチームの中でもリーグで唯一、勝点が0でしたが、佐々木匠選手の1ゴール1アシストの活躍もあり、待望の初勝利を挙げています。

開始から両チームとも積極的に攻める展開となった試合は、ヌグリスンビランが24分に先制します。左サイドのペナルティエリアの外でフリーキックを得ると、佐々木匠選手はゴール前への速く低いクロスを蹴り込みます、これをゴール前のバラトクマル・ラマルーが押し込んで、今季リーグではチーム2点目となるゴールを決めて、ヌグリスンビランが今季初めてリードを奪います。しかしスリ・パハンも40分にPKを得ますが、これをステファノ・ブルンドがポスト上に大きく外して、同点とする好機を逃してしまいます。

ヌグリスンビランのリードで始まった後半は、スリ・パハンがギアを上げますが、ヌグリスンビランの守備陣が持ち堪えると、ロスタイムにはハイン・テット・アウンがスリ・パハンのペナルティエリアで倒され、ヌグリスンビランがPKを獲得すると、これを佐々木選手が右隅に蹴り込んで、マレーシア移籍初ゴールを決めます。リードを広げたヌグリスンビランはこのまま逃げ切って、今季初勝利を上げるとともに、今季初の勝ち点も獲得しています。なお、ヌグリスンビランの佐々木匠選手は先発して、フル出場しています。

ジョホールは開幕から5連勝

MSL2024/25 第5節
2024年7月13日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバFC 1-3 ジョホール・ダルル・タジムFC
⚽️サバ:ガブリエル・ペレス(分)
⚽️ジョホール:ロメル・モラレス2(21分、44分)、ベルグソン・ダ・シルヴァ(90+3分)
🟨サバ(1)、🟨ジョホール(2)
MOM:ロメル・モラレス(ジョホール・ダルル・タジムFC)

ジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は開幕からの連勝を5に伸ばしています。これまで下位チームとの対戦が続いていたJDTは、リーグ4位のサバと対戦。20分にロメル・モラレスのゴールで先制すると、44分には再びモラレス選手がゴールを決め、前半を2−0で折り返します。

前節終了後に、エースのラモン・マチャドが退団し、得点力低下が懸念されたサバでしたが、51分には、JDTのペナルティエリア内でパク・テスがマシュー・デイヴィーズに倒されると、このPKガブリエル・ペレスがゴールし、1点差に詰め寄ります。しかしサバは、ロスタイムに今度は逆にPKを与えてしまい、ベルグソン・ダ・シルヴァが再びリードを2点に広げるゴールを決めるとそのまま試合が終了し、サバはJDTに冷や汗をかかすことはできたものの、連勝を止めることはできませんでした。

ペナンも今季初勝利

MSL2024/25 第5節
2024年7月13日@ペラ・スタジアム(ペラ州イポー)
ペナンFC 2-0 ペラFC
⚽️クチンシティ:ネト・オリヴェリア(45+3分)、アリフ・イクマル・リザル(90+7分)
🟨ペラ(2)、🟨ペナン(2)
MOM:シーク・イズハン(ペナンFC)

開幕からの4試合で3分1敗、しかもわずか1ゴールだったペナンは、この試合では2ゴールを挙げて今季初勝利を飾っています。

前半ロスタイムにペナルティエリアの外ながらゴール正面でフリーキックを得たペナンは、ネト・オリヴェリアがポスト右隅に素晴らしいキックを直接決めて、先制します。

後半に入るとペラも好機を作りますが、その前にことごとく立ちはだかったのはこの試合のMOMにも選ばれたGKシーク・イズハンでした。逆にペナンは、後半のロスタイムにも自陣ゴール前からのロングボールを繋ぐと、最後はアリフ・イクマル・リザルがこれを蹴り込んで、ペナンが決定的となる2点目を挙げて勝利しています。

クラン渓谷ダービーはKLシティに軍配-スランゴールは首位ジョホールが遠のく2敗目

MSL2024/25 第5節
2024年7月14日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
KLシティFC 1-0 スランゴールFC
⚽️KLシティ:ヨヴァン・モティカ(63分)
🟨KLシティ(5)、🟨スランゴール(3)
MOM:ヨヴァン・モティカ(KLシティFC)

試合前には昨年12月以降の給料が支払われていないことが報じられたKLシティが、ここまで3連勝中のスランゴールを相手に互角な勝負を見せ、63分に上げた虎の子の1点を守り切って、今季2勝目を挙げています。

スランゴールのニザム・ジャミル監督はここまで全ての試合に先発していたキャプテンでシンガポール代表のCBサフワン・バハルディンをスタメンから外し、5月26日以来の先発となるウズベキスタン代表CBウマル・エシュムラドフを代わりに起用、またレギュラーが確定しない左ウィングにシャヒル・バシャーを起用するなど、好調のチームから敢えて選手の入れ替えを行なっています。この他、前節のペラ戦でのレッドカードで出場停止となったアレクサンダー・アギャルカワに代わる左サイドハーフには、レバノン代表のノー・アル=ラワブデを起用するなど、布陣を変更しています。

一方のKLシティは、帰化選手のDFニコラス・スウィラッドとフィリピン代表FWパトリック・ライヒェルトがいずれもケガでベンチ外とこちらもベストメンバーとは言えない布陣です。しかもFAカップでは1回戦で敗退しているKLシティは、前節6月21日以来、3週間以上も試合がなく、ミラスロフ・クリヤナツ監督も実戦から遠ざかっているKLシティと、試合をほぼ毎週行い、勝利しているスランゴールとではチームの勢いが違っていると、試合前会見で口にしていました。

下馬評ではスランゴール有利という試合は、いざ蓋を開けてみると、KLシティのゴール近くまでは何度もボールは運べるものの、ここまで3ゴールのロニー・フェルナンデスや、アルヴィン・フォルテスが厳しいマークにあい、シュートまでには至りません。逆にKLシティはカウンターから度々、スランゴールのゴールに迫り。試合は白熱します。

前半を0−0で折り返すと、63分にはスランゴール陣内でボールを奪ったケニー・パッラジからジョヴァン・モティカへパスが渡ると、ペナルティエリアに持ち込んだモティカ選手が飛び出してきたGKサミュエル・サマヴィルの股間を抜くシュートを決め、KLシティがこの試合で先制します。結局、この1点が決勝ゴールとなり、KLシティはリーグ戦では26年ぶり(!)となるホームでのスランゴール戦勝利となりました。

JDTとの開幕戦を辞退し、勝点3を失っているスランゴールにとっては、首位JDTとは勝点差が6となる痛い敗戦となりました。

2024/25マレーシアスーパーリーグ順位表(第5節終了)

順位チーム勝点
1JDT51550017314
2SEL59302752
3TRE48220725
4SAB47211660
4KLC47211660
6*KDA56302532
7KCH56131761
8PEN56131321
9PDRM5411347-3
10SRP4411237-4
11PRK53104610-4
12KDN5310437-4
13NSE43103310-7
チーム名:JDT-ジョホール・ダルル・タジムFC、SELースランゴールFC
SAB-サバFC、TREートレンガヌFC、SRP-スリ・パハンFC
KLC-KLシティFC、KDA-クダ・ダルル・アマンFC、PEN-ペナンFC
PRK-ペラFC、PDRM-PDRM FC、NSE-ヌグリスンビランFC
KDN-クランタン・ダルル・ナイムFC、KCH-クチンシティFC
*クダ・ダルル・アマンFCは開幕前に勝点3剥奪処分を受けています。