キム・パンゴン代表監督が「個人的な事情」を理由に契約期間を1年以上残して辞任
マレーシアサッカーに激震。マレーシア代表のキム・パンゴン(金判坤)監督が7月16日に「個人的な事情」を理由に辞任を発表しています。スランゴール州プタリン・ジャヤにあるマレーシアサッカー協会(FAM)の本部では特別会見が開かれ、その席上でキム監督は2025年12月末までの契約を全うすることなく、即時辞任すると発表しています。キム監督はおよそ1ヶ月前のW杯アジア2次予選台湾戦後、予選敗退が決まった後の会見では「できるだけ長く監督を務めたい」と話していただけに、この豹変ぶりは関係者だけでなく、国内サッカーファンも困惑しています。
「皆さんに残念なお知らせがあります。私は個人的な事情から代表監督を辞任することを決めました。」と記者会見を始めたキム氏は、以下のようなコメントを述べています。
「(私の辞任に)失望した方々に謝罪したい。(就任した)2022年1月以来の2年と半年の間、マレーシアの方々のおかげで、この上なく素晴らしい時を過ごすことができた。」
「2022年6月には、予選突破では43年ぶりとなるアジアカップ出場を決め、FIFAランキングも130位まで上昇した。今年1月のアジアカップでは、FIFAランキング22位の韓国とも引き分け、サッカーにおけるマレーシアの誇りも見せることができた。」
「残念ながら、我々はW杯アジア2次予選では3勝し、勝点10を獲得しましたが、最終予選には進むことはできなかった。この事実は、今後代表チームをどのレベルまで強化していくか必要があるかのヒントになると思う。」
「(代表チームサポーターグループの)ウルトラス・マラヤの声援は、いつも私に大きなモチベーションを与えてくれ、FAMの支援は強さを与えていくれていた。またマレーシア政府にも感謝しており、マレーシアスーパーリーグの各クラブにチーム強化のための十分な支援を受けたことを感謝したい。」
またFAMのモハマド・ユソフ・マハディ副会長は、スペイン出身でバルセロナのユースのコーチを務めた他、アデレード・ユナイテッド(オーストラリア)やキッチーFC(香港)などで指導経験があるポー・マルティ・ヴィンセント コーチが監督代行を務め、残るコーチ陣は全員残留することも明らかにしています。
パウ・マルティ監督代行の最初の仕事は9月に予定されているムルデカ大会で指揮を取ることだと述べたモハマド・ユソフ・マハディ副会長は、FAMの代表チーム運営委員会が今後、マルティ監督代行やチームのパフォーマンスを評価し、11月から12月にかけて予定されている東南アジアサッカー連盟(AFF)選手権、そして来年3月に予定されている2027年AFCアジアカップ予選の前には、続投か新監督獲得かを決めたいとしています。
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不満は全くなかったとも述べたキム氏ですが、辞任理由の「個人的な事情」の詳しい内容を会見の席で問われると、全ては既にFAMのハミディン・アミン会長に説明済みだとして、メディアには詳細を明かすことはありませんでした。
「(個人的な事情の)内容については、ここで明かすつもりはない。なのでこれ以上その件について話すのはやめよう。」と述べたキム氏は、ハミディン会長にも聞かないで欲しいとメディアに釘を刺していました。
一部メディアは、キム氏は辞任する意向をこれまで何度か伝えてきたものの、ハミディン会長がこれを拒否していたとしており、直近では6月11日のW杯アジア2次予選の台湾戦直後にも辞任を申し出たと報じています。
在籍期間907日、監督として35試合を指揮し、20勝5分10敗の結果を残したキム氏は、監督就任以来61名の選手を代表に招集し、マレーシアのFIFAランキングを就任時の154位から、現在は135位まで引き上げています。
なお今後について、キム氏は洪明甫前監督が韓国代表の監督に就任したことにより現在空席となっている。韓国1部Kリーグの蔚山現代の監督就任の噂もあります。選手としてプレーした蔚山現代に監督として凱旋する形になりますが、この蔚山現代は今季のACLエリート(ACLE出場が決まっており、同じくACLEに出場するジョホール・ダルル・タジムFCと同じくになれば、再びマレーシアの土を踏むことがあるかもしれません。
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また辞任会見中の発言に、ジョホール・ダルル・タジムFCのオーナーで前マレーシアサッカー協会会長でもあるジョホール州皇太子トゥンク・イスマイル殿下が疑問を呈しています。
辞任会見中、キム監督は報道陣から前回(6月12日のW杯アジア2次予選敗決定時)の記者会見では続投を希望しながら、わずか1ヶ月で辞任を表明したことから、この間で何が変わったのかという質問に対して、ここではとても「危険」なので話せないと説明し、ハミディン・アミンFAM会長が全ての詳細を知っていると述べて、明確な回答をしませんでした。
イスマイル殿下は、この「危険」という表現を使ったキム監督に対して、「危険」が何を意味するのかを具体的に述べるべきだと話しています。イスマイル殿下は「(辞任理由を説明することの)何がそんなに難しいのか。ファン、政治家、メディアの皆がキム監督が『危険』と言った意味を尋ねるべきだ。」と自身のSNSに投稿したイスマイル殿下はさらに「もっと具体的に言うべきだ。(辞任理由を表明することで)撃たれるのが怖いのか。 誘拐されるのが怖いのか。 蹴られるのが怖いのか。 正直に言うべきだ」とも投稿しています。
AFC-給料未払い問題が解決しなければFAMとMFLへ制裁もありうる
英字紙ニューストレイトタイムズは、 マレーシアサッカー協会(FAM)と国内リーグを運営するマレーシアンフットボールリーグ(MFL)は、国内リーグ(Mリーグ)に給与未払い問題が続く場合、アジアサッカー連盟(AFC)からの制裁を受ける可能性があると報じています。
2022年からFAMは、クラブライセンス発給権限をMリーグを運営するMFLに委譲していますが、AFCは、給料未払い問題が頻発する現在の状況が改善されなければ、FAMとMFLはMリーグクラブへの国内ライセンスの交付権限を失うリスクがあると、AFCのウィンザー・ポール・ジョン事務局長は述べています。
このブログで何度も取り上げていますが、Mリーグでの給料未払い問題は常態化しておりており、直近ではKLシティFCのキャプテンでマレーシア代表でもプレーするパウロ・ジョズエが昨年12月以降の7か月分の給与が未払いであると主張しています。またKLシティ以外のMリーグクラブでは、サバ、ケダ、スリパハンなどが財政的な困難に直面しているとこれまでたびたびメディアで報じられています。
ウィンザー事務局長は、AFCは、FAMとMFLに対して給料未払い問題を迅速に解決するよう厳しい警告を発し、この問題が深刻化した場合、AFCが介入する用意があるとも述べています。
給料未払い問題を抱えるクラブに対してウィンザー事務局長は「クラブが選手に給与を支払うための財務的安定性がない場合、サッカーに関わる資格はない。またクラブのオーナーは現実的である必要がある。労働者に給与を支払うことができない場合、サッカークラブを始めるべきでない。」と話す一方で、未払い給料問題に苦しむ選手に対しては、「選手たちはマレーシア人や外国籍を問わず、権利が保護されるべき従業員であり、給与を受け取るためにあらゆる手段を講じることができる。」と述べたウィンザー事務局長は、クラブ内で給与紛争が解決できない場合、選手たちはマレーシアプロサッカー選手協会(PFAM)などの団体に助けを求めべきと話しています
KLシティのブラジル人GKコーチはベトナムリーグのベトテルへ
英字紙スターは、KLシティFCのギリェルメ・アルメイダGKコーチがチームを退団し、ベトナムリーグ(Vリーグ)のベトテルFCのGKコーチに就任すると報じています。
アルメイダGKコーチと同じブラジル出身でKLシティFCでキャプテンを務めるパウロ・ジョズエも先週のクラン渓谷ダービー、KLシティFC対スランゴールFC戦が、アルメイダコーチのKLシティでの最後の試合であったことを認める発言をし、選手にポジティブな影響を与えてくれていたアルメイダコーチの退団はチームにとって大きな痛手となるだろうと話しています。
なおKLシティは昨年12月以降、7ヶ月分の給料が未払いとなっていることが報じられており、ジョズエ選手はアルメイダコーチの退団をきっかけに、他の選手やコーチがチームをさるのではないかと心配していると話しています。
41歳のアルメイダGKコーチは、CRヴァスコ・ダ・ガマ(ブラジル)でGKコーチを務め、マレーシアではケヴィン・メンドーザ(フィリピン代表、現インドネシア1部プルシブ・バンドン)や、マレーシア代表とKLシティでプレーするアズリ・ガニ、マレーシアU23代表のアジム・アル・アミン(スランゴールへ期限付き移籍中)など、指導してきた実績があります。