今季最初のカップ戦となるマレーシアFAカップ(FAカップ)の1回戦が6月12日から始まっています。今季のFAカップは1部スーパーリーグ13チームと3部セミプロA1リーグ8チームの16チームしか参加せず、この1回戦に勝てば既にベスト8というなんとも寂しい規模のカップ戦です。
新型コロナ禍以前最後となった2020年大会は3部や4部のクラブなど58チームが参加していた大会でしたが、2022年は33チーム、昨季2023年は20チーム、そして今季はついに16チームの大会となってしまいました。特に下部リーグのクラブにとっては、マレーシアスーパーリーグを頂点とするこの国のサッカー界の一員ということが実感できる貴重な大会だと思うのですが、運営側のマレーシアンフットボールリーグ(MFL)にはそういった気持ちが共有されていないのかも知れません。
*各試合のハイライト映像はマレーシアンフットボールリーグの公式YouTubeチャンネルより
マレーシアFAカップ1回戦:初戦からいきなりジャイキリ!3部リーグの大学生チームが1部のPDRMを3-0で破る
サッカー天皇杯では、筑波大学がJ1首位の町田ゼルビアを破る「ジャイキリ」を果たしていますが、今季2024/25シーズン初のカップ戦となったFAカップ1回戦でも、マレーシア3部リーグのセミプロA1リーグに所属するマレーシア大学フットボールチーム(MUFT)が1部スーパーリーグのPDRM FCを3-0(前半2-0)で撃破し、ジャイキリを達成しています。
先週マレーシアで行われ、U20全日本大学選抜が優勝を果たしたアジア大学サッカートーナメントでは、準優勝の韓国とグループリーグで引き分けるなど、これまでの大会で最高記録の5位に終わったMUFTは、鈴木ブルーノ選手やヨルダン代表MFファディ・アワド、ミャンマー代表DFチョー・ミン・ウーら外国籍選手全員がベンチ外、マレーシア人選手だけで編成されたPDRM FCに対し、開始5分であっさり先制します。
MUFTのシャヒール・ラーマンがペナルティエリアの外から放ったシュートはPDRM FCのDFに当たり角度が変わり、そのままゴールイン。さらにその4分後にはヴィキィ・オウエン・マリナスがセンターサークル付近から前線に絶妙のパス。これを受けたハディ・モハマドが2人のPDRM FCのDFをかわしてゴール!開始から10分でMUFTがプロを相手に2−0とリードを広げます。
MUFTが2点リードしたまま前半を折り返すと、後半にはPDRMも試合のペースを上げて反撃を試みますが、MUFTのGKアシュラフ・ファディルのスーパーセーブもありゴールを破れず、逆にMUFTは途中出場のザリフ・ナザンがロスタイムにゴールを決め、ジョホール・ダルル・タジムFCとの準々決勝に駒を進めています。
スタッツ的にはPDRM FC、MUFTともシュート数11で並んでいますが、PDRM FCは枠内2に対して、MUFTは枠内6とまさっています。しかしこの試合のMOM(Man of the Match、優秀選手)にはなぜか0-3 で敗れたPDRM FCの選手が選ばれています…。
PDRM FCの鈴木ブルーノ選手はベンチ外でした。
2024/25マレーシアFAカップ1回戦
2024年6月12日@MPSスタジアム(スランゴール州スラヤン)
PDRM FC 0-3 マレーシア大学フットボールチーム(MUFT)
⚽️MUFT:シャヒール・ラーマン(5分)、ハディ・モハマド(9分)、ザリフ・ナザン(90+2分)
🟨PDRM(2)、🟨MUFT(2)
MOM:アミルル・ワイィ・ヤアアコブ(PDRM FC)
マレーシアFAカップ1回戦:クチンシティがロスタイムの決勝ゴールで前年準優勝のKLシティを撃破
今季リーグ戦未勝利のクチンシティと対戦した昨季2024年シーズンのFAカップ準優勝を果たしたKLシティFCは、延長戦のロスタイムに決勝ゴールを許して1回戦で敗退しています。
いずれも6月11日のW杯アジア2次予選台湾戦に出場したハキミ・アジムとパウロ・ジョズエのゴールで2点を挙げたホームのKLシティFCはクチンシティFCはヌル・シャミー・イスズワンらのゴールで追いつくと、レギュレーションタイム内では2−2と両チーム譲らず、延長戦に入ります。
延長戦も120分を過ぎてロスタイムに入り、PK戦かと思われたそのとき、右サイドをドリブルで上がったヌル・シャミー・イスズワンからのクロスを途中出場のザフルル・ニズワン・ズルキフリが決め、この決勝ゴールでクチンシティFCが勝利しています。クチンシティFCは準々決勝でスランゴールFCと対戦します。
クチンシティFCの谷川由来選手は先発してフル出場しています。
2024/25マレーシアFAカップ1回戦
2024年6月14日@KLフットボールスタジアム(クアラ・ルンプール)
KLシティFC 2~3 クチンシティFC
⚽️KLシティ:ハキミ・アジム(14分)、パウロ・ジョズエ(39分)
⚽️クチンシティ:フィレモン・アニー・スタンリー(26分)、ヌル・シャミー・イスズワン(68分)、ザフルル・ニズワン・ズルキフリ(120+3分)
🟨KLシティ(3)、🟨クチンシティ(5)
MOM:ジェイムズ・オクゥオサ(クチンシティFC)
マレーシアFAカップ1回戦:スリ・パハンはPK戦で今季未勝利のペナンに敗れる
ホームのダルル・マクモル・スタジアムでピッチ改修工事が行われているため、今季はおよそ140km離れたテメルロー・スタジアムでの試合を強いられているスリ・パハンFCは、今季リーグ戦で開幕から3引き分けと勝利のないペナンFCと対戦し、PK戦で敗れています。
前半終了間際にナビル・ラトピのゴールでペナンFCがリードすると、後半にはスリ・パハンFCがミコラ・アガポフのゴールで追いつき、試合は延長戦に突入します。しかし延長でも決着がつかずPK戦へ。するとここでスリ・パハンFCは、エースのクパー・シャーマンが1人目のキッカーとなることを拒否。試合後の会見でファンディ・アフマド監督は事前にPK戦の順番は決めてあったと話すなど、明らかに混乱があったスリ・パハンFCは2人がPKを外し、最後はナビル・ラトピが決めて、ペナンFCをベスト8へ導いています。なおペナンFCはクダ・ダルル・アマンFCと「マレー半島北ダービー」となった準決勝で対戦します。
2024/25マレーシアFAカップ1回戦
2024年6月14日@テメルロー・スタジアム(パハン州テメルロー)
スリ・パハンFC 1-1 ペナンFC(PK戦 3-4)
⚽️スリ・パハン:ミコラ・アガポフ(79分)
⚽️ペナン:ナビル・ラトピ(41分)
🟨スリ・パハン(3)、🟨ペナン(4)
MOM:ナビル・ラトピ(ペナンFC)
マレーシアFAカップ1回戦:トレンガヌは逆転でペラを破りベスト8入り
リーグ2位のトレンガヌFCは同8位のペラFCを逆転で破り、ベスト8を決めています。先制したのはペラFCでした。フリーキックからのセットプレーでDFルイス・エンリケ・モッタがゴール前のこぼれ球を蹴り込んでペラFCが6分に1点をリードします。しかしDFトミー・マワトが自陣ペナルティエリアでマヌエル・オットを倒してトレンガヌFCにPKを与えてしまいます。これをサファウィ・ラシドが決めて追いついたトレンガヌは、さらに、42分にはマリン・ピルがペナルティエリアの外から低い弾道の強烈なゴールを決めて、前半でトレンガヌFCが逆転します。
後半追いつきたいペラにとって痛かったのは、フィルダウス・サイユディが69分にサファウィ・ラシドへのファールで一発退場となったこと。最初出されたカードはイエローでしたが、VARによるチェックが入るとレッドとなりました。ペラはGKラマダン・ハミドが好セーブを連発して、トレンガヌFCの攻撃を耐えていただけに、この退場でペラFCは一気に勢いを失いました。トレンガヌFCはケガから復帰したアザム・アズミを終盤に起用しするなどして逃げ切り、準々決勝ではサバFCと対戦します。
2024/25マレーシアFAカップ1回戦
2024年6月14日@スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(トレンガヌ州ゴン・バダ)
トレンガヌFC 2-1 ペラFC
⚽️トレンガヌ:サファウィ・ラシド(36分PK)、マリン・ピル(42分)
⚽️ペラ:ルイス・エンリケ・モッタ(6分)
🟨トレンガヌ(1)、🟨ペラ(2)、🟥ペラ(1):フィルダウス・サイユディ
MOM:マリン・ピル(トレンガヌFC)
マレーシアFAカップ1回戦:クダはエベネゼル・アシフアーのハットトリックで3部のブキ・タンブンに圧勝
クダ・ダルル・アマンFC(クダFC)は、エベネゼル・アシフアーのハットトリックを含む5ゴールで、3部セミプロA1リーグのブキ・タンブンFCに快勝し、準決勝ではペナンFCと「マレー半島北ダービー」で対戦します。
2024/25マレーシアFAカップ1回戦
2024年6月14日@ダルル・アマン・スタジアム(クダ州アロー・スター)
クダ・ダルル・アマンFC 5-0 ブキ・タンブンFC
⚽️クダ:ミロシュ・ゴルディッチ(15分)、アミルル・ヒシャム・ケチク(21分)、エベネゼル・アシフアー3(39分、69分、79分)
🟨クダ(0)、🟨ブキ・タンブン(1)、🟥クダ(1):アイマン・アフィフ
MOM:エベネゼル・アシフアー(クダ・ダルル・アマンFC)
マレーシアFAカップ1回戦:サバは3部のKLローヴァーズをラモン・マシャドのハットトリックなどで一蹴
コタ・キナバルで行われた一戦は、代表ストライカーのダレン・ロックとCBのガブリエル・ペレスをケガで欠くサバFCが、3部セミプロA1リーグのKLローヴァーズFCを7-0で破り、準々決勝進出を決めています。
FIFAデイズによるリーグ中断期間には、ジャカルタで開催された大会に出場したサバFCは、試合感も問題なく、開始17分にサディル・ラムダニのフリーキックが直接、ゴールし先制すると、ラモン・マシャドも2ゴールを挙げ、前半だけで3−0とKLローヴァーズFCを圧倒しますが、後半に入っても攻撃の手を休めず、パク・テスやラモン・マシャドのゴールでさらに4点を追加して圧勝しています。
2024/25マレーシアFAカップ1回戦
2024年6月15日@リカス・スタジアム(サバ州コタ・キナバル)
サバFC 7~0 KLローヴァーズFC
⚽️サバ:サディル・ラムダニ(17分)、ラモン・マシャド3(28分、45分、59分)、パク・テス(51分)、ジャフリ・フィルダウス・チュウ(71分)、ラフィ・ナゴールガニ(90+3分OG)
🟨サバ(1)、🟨KL(2)
MOM:ラモン・マシャド(サバFC)
マレーシアFAカップ1回戦:JDTは2季連続国内三冠へ向けてクランタンを粉砕
昨季のFAカップ覇者のジョホール・ダルル・タジムFC(JDT)は、今季リーグ戦では開幕から3連敗中のクランタン・ダルル・ナイムFC(KDN FC)とホームで対戦し、4-0で快勝しています。
KDN FCは試合開始から自陣に引き気味の布陣だったこともあり、JDTの先制点は44分でした。右サイドのムリロ・エンリケからのクロスをベルグソン・ダ・シルヴァがヘディングシュート、ゴールライン上でこのボールをフェルナンド・フォレスティエリが押し込んで、JDTが先制します。
JDTが1点のリードを保って折り返した後半は、途中出場のロメル・モラレスやアリフ・アイマンら今月の代表戦の招集を「ケガ」を理由に辞退した選手たちが躍動、さらにこちらもGKシーハン・ハズミもフル出場し、代表合宿を辞退して十分な英気を養った様子が窺い知れました。JDTはこの勝利でベスト8進出を決め、マレーシア大学フットボールチーム(MUFT)との対戦が決定しています。
2024/25マレーシアFAカップ1回戦
2024年6月15日@スルタン・イブラヒム・スタジアム(ジョホール州イスカンダル・プテリ)
ジョホール・ダルル・タジムFC 4-0 クランタン・ダルル・ナイムFC
⚽️ジョホール:フェルナンド・フォレスティエリ(44分)、ロメル・モラレス(61分)、パク・テス(51分)、フランシスコ・ジェラウデス(52分)、アリフ・アイマン(90+4分)
🟨ジョホール(1)、🟨クランタン(2)
MOM:アフィク・ファザイル(ジョホール・ダルル・アマンFC)