いよいよ今週末からユーロ2024が始まりますが、それに関連してマレーシアの通信社ブルナマが興味深いニュースを報じています。その見出しは「45万リンギ相当のサッカーユニフォームのコピー商品がユーロ2024を前にプタリン・ストリートで押収された」というものです。プタリン・ストリートとは、クアラ・ルンプールにあるチャイナタウンの通りの名ですが、その両側に露店が並び、グッチやルイヴィトンのブランドバッグや、ロレックスやタグホイヤーの時計からナイキやアディダスのジャージや靴など、様々なコピー商品を売ってることで有名な場所です。この記事では、日本で言えば消費者庁にあたる国内取引・生活費省の取締局が様々なブランドのサッカーユニフォームのコピー商品6,230着、価格にして45万リンギ(およそ1500万円)分を押収したというもので、そのユニフォームはユーロ2024に出場するチームのものだったということです。またこれらのユニフォームはユーロ2024を前に需要が高まったことから国外から持ち込まれ、1着あたり120リンギ(およそ4,000円)ほどで売られることになっていたようです。
ユニフォームのコピー商品は、マレーシア対台湾のW杯予選が行われたブキ・ジャリル国立競技場の周りでも人目を憚ることなく売られており、そこではマレーシア代表のユニフォームが30リンギから50リンギ(およそ1,000円から1,700円)で売られており、購入しているサポーターも目につきました。14,000人以上集まった観客の多くが黄色い代表ユニフォームを着ていましたが、コピー商品でない純正のユニフォームが300リンギ(およそ10.000円)する中、果たして何人が純正ユニフォームを着ていたのでしょう。
ちなみに下は本日6月14日の英字紙スターです。(筆者撮影)裏一面のスポーツ欄は、どこの国の新聞?と思えるくらいユーロ2024一色ですが、表一面は他のニュースを押しのけて、酸をかけられ、手術、治療、療養を経て初めて公の場に姿を表し、記者会見を行った代表FWファイサル・ハリムの記事になっています。見出しの”Mickey will not be a mouse.”は、ファイサル選手の愛称”Mickey”に掛けられています。

酸をかけられた代表FWファイサル・ハリムが事件後初の会見:「サッカー選手引退も考えた」
上でも書いたように昨日6月12日には、先月5月5日に不審者から酸をかけられ、4度の手術を経て療養中の代表FWファイサル・ハリムが事件後初めて公の場に姿を表し、所属するスランゴールFCの練習施設で記者会見を行いました。その席でファイサル選手はいつピッチに戻れるかはわからないが、身体がサッカーを欲していると話しています。
「担当医からは、少なくとも3ヶ月は療養が必要と言われており、その後はチームの練習に復帰できるだろうとも言われている。」と述べる一方で、「自分の感覚では回復状態も早いので、1ヶ月もすれば練習に戻れるのではないかと思っている。」とも述べ、早い回復は多くのファンが祈ってくれたおかげだと感謝の意を表しています。
また今回の事件については、自分も家族も命に関わるケガを負わなかったことが幸いだったと述べる一方で、これまでのどのような相手にも敬意を失わずに接してきた自分が被害者となった理由がいまだにわからないと話しています。
「皆が私の性格を知っているはずだ。自分は相手が誰であれ、どのような相手にも礼を失するようなことや、高慢であったことはないと思っている。これまでは誰にでも常に笑顔であろうとしてきたが、その生き方を変える必要があるのかも知れないとも思っている。」と述べたファイサル選手は、一部の人々にとっては自分「ナイスガイ」過ぎたのかも知れないので、今後はいつでもフレンドリーある自分の姿勢も改めたいと述べています。
会見中に涙ぐむ場面もあったファイサル選手ですが、家族が精神的な支えとなってくれた一方で、その家族のことを考え、一時はサッカー選手を引退しで故郷で家族と静かに暮らすことも考えたことも明らかにしています。
「(サッカー選手を引退して)数万リンギの給料を失うことは、家族と安心して暮らせることに比べれば重要なことではない。しかしスランゴールFCは自分が入院中も、また今後も家族の安全、安心を保証するといってくれたので、早く回復してピッチに戻ろうという決断をした。」とファイサル選手は話しています。
また今回一番辛かったことを問われたファイサル選手は、4歳になる一人息子を1ヶ月以上もハグできなかったことだと答えています。
「自分は息子とはとても仲が良いが、事件の後は手術や治療などもあり、父親としてはそんな簡単なハグすらしてあげられなかった。そのため息子は自分の愛情が感じられなかったのではないかと苦しんだ。また退院後も傷のせいでしばらくはハグできず、やっと数日前にハグすることができたばかりだ。」とも話しています。
会見の最後には改めて、早く元気になって、またサッカーをしたいという強い決意も表明しています。
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ファイサル選手の事件から1ヶ月以上経過しているにもかかわらず、事件の捜査状況は明らかになっていません。ファイサル選手が襲われたショッピングモールのセキュリティーカメラの映像なども公開されていますが、警察からは捜査の進展は発表されておらず、多くのサッカーファンはもちろん、一般市民もその捜査能力にフラストレーションが溜まっています。
スランゴールのヨルダンU23代表FWが長期離脱へ
ファイサル・ハリムを欠くスランゴールFCは、開幕前には特にFW陣を積極的に補強しましたが、その一人がヨルダンU23代表FWのラジク・バニハニです。しかしこのラジク選手は、代表戦でリーグが中断した期間中に行ったインドネシア遠征で足首を痛め、最低でも6週間離脱しそうだと、スポーツ専門サイトのアストロ・アリーナが報じています。
スランゴールFCは、サバFCとともに先月5月にジャカルタで開催されたRCTIアルティメイトスポーツ国際親善大会に参加しましたが、決勝のプルシブ・ジャカルタ戦でラジク選手はハードタックルを受け、ラジク選手は足首を痛めて途中交代を余儀なくされました。タックルをした選手が退場処分となるほどの激しさでしたが、その後の検査の結果、少なくとも6週間はプレーができないことが明らかになりマイ啓明学院他。
酸を浴びせられて療養中のファイサル選手に代わる左ウィングの選手として、開幕直前に獲得が決まったラジク選手が長期離脱となったことで、スランゴールFCはチーム内からその代わりを見つける必要があります。現状では、マレーシアU23代表のシャヒル・バシャー、ムカイリ・アジマルが有力候補ですが、ニザム・ジャミル監督が明日のFAカップ1回戦ヌグリスンビランFC戦では誰を左ウィングで起用するかに注目です。
トレンガヌはサポーターが反対する5000万円超のスポンサー契約を破棄
トレンガヌFCは、金融関連のサービスを提供するXFOX社との間で結んだ150万リンギ(およそ5000万円)のスポンサー契約を破棄することを公式SNSで発表しています。
6月9日に結ばれたばかりのスポンサー契約でしたが、XFOX社がマレーシア国立銀行から認可をうけていない金融関連サービス企業ではないことが明らかになり、そのスポンサー契約の有効性についてトレンガヌFCサポーターを中心に多くの疑問の声が上がっていました。
トレンガヌFCのサブリ・アバスCEOは、スポンサー契約の破棄について、クラブを支えるサポーターの意見を考慮した上での決断だったとしています。また契約破棄に関して、トレンガヌFC、XFOX社ともに同意した上で、これ以上この問題を長引かせたくないとして解決が図られたとしています。この結果、トレンガヌFCは既に受け取っていた150万リンギをXFOX社に返却されるということです。
またサブリCEOは、来月7月17日から始まる東南アジアサッカー連盟(AFF)クラブ選手権ショピーカップ(Shopee Cup)に出場するトレンガヌFCにはさらにスポンサーが必要だとして、新たなスポンサー獲得を目指すとしています。